特集

TEXT:鈴木亮介 PHOTO:ossie

「女子高生人気ナンバー1バンド」としてメジャーシーンを駆け抜けてきたseven oops(セブンウップス)が、メンバー全員30歳になるタイミングでバンド名を変え、バンドとしての”第2章”をスタートさせた。2018年11月7日(水)に4thアルバム『songs for...』をリリース。2019年1月からは待望のバンドスタイルでの全国ツアーの開催が決まった。
 
メロディー・メーカーとして大きな役割を果たしていたMICHIRU(Guitar)の脱退と、レコード会社の移籍。それでもバンドは歩みを止めず、年2回のアコースティックスタイルでの全国カフェツアーを行いながら、曲作りも着々と進め、1年9カ月ぶりのオリジナルアルバム『songs for...』リリースに漕ぎ着けた。
 
一足早く『songs for...』を聴かせていただいたが、これまでのファンからすると予想外な楽曲も含め、バンドの大きな前進、広がりを感じるとともに、音楽を心底楽しみ、聴く者皆をも楽しませてきたseven oopsだからこそ到達できる境地なのだとも感じ、納得した。とにかく名盤だ。特に彼らの故郷・沖縄と初めて向き合った「この島で」は、三線の伝統的美を取り入れながらも新しさがあり、沖縄出身ミュージシャンの代表曲の一つに仲間入りする名曲だ。
 
名盤『songs for...』が生まれた背景、そして第2章の展望を、バンドの2017年~2018年の歩みとともにメンバーに尋ねた。
 

seven oops プロフィール
左からNANAE(Vocal)、KEITA(Bass)、MAIKO(Drums)。
2004年、高校2年の時に男女4ピースバンド「7!!」として結成。バンド名の由来はボーカルNANAEの名前を「7(ナナ)」と「エッ!!」に分け、それぞれを英語に訳した「seven」「oops」をつなげたもの。
2011年、映画『高校デビュー』主題歌でメジャーデビュー後、人気アニメ『NARUTO-ナルト-疾風伝』や『君と僕。』、『金田一少年の事件簿R』、『四月は君の嘘』や、映画『今日、恋をはじめます』、ドラマ『勇者ヨシヒコと導かれし七人』等のテーマソングに続々と起用される。
地元沖縄ではオリオンビール「オリオンスタイル」やLAWSONのCMに出演・楽曲起用され、人気・知名度ともに上昇中。
NANAEは2014年4月~2016年3月までtvk『saku saku』6代目MCを務め、現在は沖縄の総合不動産会社 琉信ハウジングのCMに出演中。また、MAIKOと二人で沖縄RBCiラジオで毎週日曜に『7!!ナナマイのうさがみそーれー!』にレギュラー出演。MAIKOはFM YOKOHAMA『かりゆし☆らんど』に毎月第1日曜に“美らリポーター”として出演中。
2017年末にギター・MICHIRUが脱退し、2018年よりバンド名表記をseven oopsとする3ピースバンドとして活動。2018年9月から「seven oops Acoustic Tour-NEW! NEW! NEW!-」を開催、会場限定販売CDを発売。11月7日(水)に徳間ジャパンより4th アルバム『songs for...』のリリース決定!

「使い捨てのラブソング」 音楽への向き合い方が変わる中で
— アルバムの1曲目からいきなり「東京」という題名で驚きました。ライブのMCでも仰っていましたがこの曲はまずタイトルを「東京」と決めて作っていったそうですね。

 
KEITA:はい、そうです。
 

— 「東京」というタイトルの曲はこれまで数多くのミュージシャンが発表してきました。そこは頭の中で意識があったのでしょうか?

 
KEITA:ありましたね!色んな「東京」という曲があって、自分も書くとは思っていなかったんですけど…今回アルバムを出せるという話になったときに、前から演奏している「この島で」を絶対最後に持っていこうと決めていて、そこからアルバムのコンセプトを考えたのですが、そこで1曲目は「東京」で始めたいなと思ったんです。
 

— 東京から始まって”この島”=沖縄で終わるというコンセプト。もう少し詳しく教えてください。

 
KEITA:「原点回帰」ですね。各々みんな頑張っている場所があるけど、それとは別にふるさとはそれぞれあるし、その原点を大切にしてほしいなという思いです。
 

— 地方から上京して活躍する人もいるし、東京に夢を抱く人もいる。ミュージシャンにとっては、東京という街はイコール、メジャーシーンなのかなと思います。

 
KEITA:そうですね。
 
MAIKO:うん。憧れっていうか。
 

— その視点から見ると、この曲で描かれていることは、seven oopsの皆さん自身の今置かれている状況や心境を重ね合わせているのかなと思ったのですが。

 
KEITA:それはもちろんそうなんですけど、たとえば「あ、この曲がヒットするんだ」とか、「こういう曲は全然ヒットしないんだ」という思いもあって、東京って本当によくわからない街だなと思っています。それは自分たちの結果も含めて。
 

— そういうことへの怒りというか、「チクショーやってやるぞ」という前向きなエネルギーが込められているように感じました。

 
KEITA:そうかもしれません(笑)
 

— バンドの歩みを振り返りたいのですが、昨年(2017年)にMICHIRUさんが脱退することが決まって、バンドとしての目標、目指してきた方向性などの変更を余儀なくされたと思います。3人の中ではどのような話し合いがあったのでしょうか。

 
MAIKO:まだまだ手探りな段階です。でもその中でも大事にしたいと思ったのは、「3人は常にちゃんと同じ思いでいよう」ということです。4人でいたときは、めっちゃ仲は良かったですけどMICHIRUとそういう話をすることはなかったので。普段から意思確認じゃないですけど、「頑張っていこうな」というのを、各々の中では考えていてもそれを口にすることがなくて、同じ気持ちだろうなって思っていたのが(MICHIRUに脱退を告げられて)違った!という驚きがありました。
 

— 仲が良かったからこそ、本当に大切なことを言葉にしてこなかった?

 
MAIKO:あれ以来3人の絆がめっちゃ深まったんですよ。意思確認も増えてきたので、そこは大切にして、どんな状況であろうと、続ける。3人で続けるということを大切にしたいなと思います。それは決まっているんですが…
 

— それで、ギターがいなくてもライブを続けるという道を選んだんですね。

 
MAIKO:どんな活動をしていくのかはまだまだ手探りの状況ですが、今年に入ってアコースティックツアーを始めてから、MICHIRUがいなくなったことをきっかけに進化できたなと思います。まだまだですけど、やればできるんだということがわかってきた。NANAEちゃんもピアニカに挑戦したり、私も三線弾いたりカズーで色々やったり、KEITAも春に比べてギターが上達したし。まだまだやれるなって感じたので、これからも色んなことにチャレンジしていこうと思います。
 
NANAE:前向きな気持ちしかないです。(MICHIRUが)やめたことでさみしい思いや喪失感はありましたが、彼も新たな道に進みたいということで前向きな気持ちで脱退したので、私たちもここから先は前向きな気持ちで色んなことに挑戦したいと思います。
 
MAIKO:意外とやってみたらしっくりくるんですよね。最初は「えーハーモニカ吹きながら?」なんて言ってましたが(笑)
 

— 確かに春のツアーと秋のツアーで、同じアコースティックなんだけど全然違う!って思いました。特に、アルバムに入っている新曲がアコースティックでやっているのにアンプにつないだエレキやドラムの迫力と変わらない迫力を感じました。アルバム収録曲はMICHIRUさんの脱退後に作った曲が多いのでしょうか?

 
KEITA:そうです。
 

— アコースティックで演奏することを意識して作ったということは…

 
KEITA:特にないですね。のびのびと作りました。
 

— アルバム2曲目に収録の「使い捨てのラブソング」もアコースティックツアーで披露されました。この曲もまさにパワーを感じたのですが、同時に怒りのような、沸々と込み上げるものを感じました。

 
KEITA:怒りももちろん込めていますが…これまでいろんな曲を書いてきて、自信曲があったときも、「この曲はじゃあ温めておいてここぞというタイミングで出しましょう」と言われて、僕らとしては「この曲は早く出したい」と話したんですけど、でもそれでずっと温めていたのに、それがさらっと「え?このタイミングで?」という出され方になってしまったことがあって。
 

— そういうのは本当悔しいですね。

 
KEITA:自分の曲を「使い捨てられた感じ」というのは何回か経験しました。ほかにも、街中で僕たちの楽曲に限らず、本当に良い曲が流れているのにみんなそこに注目していなかったり。人の音楽に対する聴き方が多種多様になっていて、昔より幅広くなっていますが、一方では名曲が生まれづらい。いい曲はいっぱい生まれているけどそれが浸透しづらい世の中なのかなと思います。
 

— 確かに音楽の聴かれ方というのは変わってきていますよね。特にここ数年は、CDから、配信、サブスク、”タダで聴ける時代”にもなって、またオーディオからイヤホンへの遷移も。作り手、弾き手としてもその聴かれ方の変化は感じることが多いですか?

 
KEITA:非常に感じます。
 

— その時代の中で、作り手として特に大事にしていること、特に伝えたいことはどのようなことですか?

 
KEITA:うーん…でも、やっぱり自分の思いを曲にところどころ散りばめますけど、最終的に判断するのは聴き手なので。聴き手が聴きやすい楽曲を作るようには心がけています。自己満足にはならないように。
 

— 一方、KEITAさん自身も聴き手として様々な音楽に触れ、特にメジャーアーティストとして活動する中で様々なミュージシャンとの交流もあると思います。今回のアルバムは従来の7!!のイメージを大きく塗り替える、音楽的に進化したseven oopsを感じられますが、自身の聴く音楽や吸収するものも変わってきていますか?

 
KEITA:あー…気にしたことがないですね。もしかしたら、変わっているかもしれないですね。確かに、昔は読まなかった活字を読むようになったし、バラエティ番組をあんまり見なくなっているし、映画も結構趣味が変わっているかもしれませんね。
 

— 音楽の面でも変化していますか?

 
KEITA:以前はミュージシャンとの交流が全くなくて、ここ数年沖縄のミュージシャンの方と仲良くさせてもらって…全員先輩なんですけど、BEGIND-51かりゆし58といった方々との交流が増えて、そこから刺激を受けていますね。先輩方とお話し、ライブをみていると、まだまだ頑張らないといけないなと思いますね。

7!!でできたこと、できなかったこと
— 2018年に入り、バンド名をseven oopsに一新するとともにレコード会社の移籍も発表されました。3人それぞれ、2017年までの7!!で「これはできた!」ということ、「これはできなかった!」ということを教えてください。

 
MAIKO:うーん…渋谷公会堂でのワンマンライブはなかなか簡単にできることじゃないものを、しかも結成10周年のときにあの大きなステージに立たせていただいて、聴きに来てくれる人がいるのはありがたいことだなぁということと、できなかったことは4人で続けることが叶わなかったということですね。
 

— 2014年の渋公のステージは、やはり7!!の歴史を語る上で外せないですね。

 
MAIKO:特に私はあのときはドラムが楽しくなかった時期…逃げ出したかったというか、無駄に考えすぎてる時期で、プレッシャーをすごく感じていました。今だったらあのステージをもっと楽しくできたかなっていう悔しさもあるんですけど、あの渋公というステージに立つことは望んでもなかなかできることではないので、ありがたいことだと思っています。
 

— あの渋公の舞台から客席を見るなんてなかなかできないですからね。

 
MAIKO:そうですね!
 
NANAE:もうなくなっちゃったし。
 
MAIKO:なくなる前にできてよかった。
 

— NANAEさんはどうですか?

 
NANAE:今まで身内や友達同士でライブに来てもらって聴いてもらっていたものが、デビューしてからたくさんの人に聴いてもらえるようになって、さらにアニメの主題歌をやることで海外の人にも聴いてもらえるようになって、そこから4人で海外に行ってライブができたことは私の中では大きくて。
 
KEITA:そうだね。
 
NANAE:ものすごくいい刺激にもなったし、世界をまたいで私たちの曲が届いているんだっていうのがすごく自信になったし、海外でライブができたってことはものすごくうれしいことの一つです。できなかったことはMAIKOとも被るんですが、4人で色んな目標があって、紅白に出たいねとか、武道館立ちたいねとか、そういう思いが叶えられなかったのはちょっと悔しいなと思うんですけど…
 

— そうですね。

 
NANAE:みっちーは脱退してしまったけどseven oopsの活動はずっと続くので、その中で私の目標が達成できていけばいいなと。そのときにまたみっちーを呼んで、ステージを見てもらって、お前らよくやったなって…ぎゃふんと言わせたいじゃないですけど、そういう思いはあります。
 

— 確かに7!!の活動の中で海外って大きいですよね。世界中にseven oopsの音楽を好きな人がいるというのは、誰でも気軽にできることではないと思います。ライブも様々な国で行われていますが、特にどの国が印象に残っていますか?

 
NANAE:私は一番最初に行ったインドネシアですね。初めての海外でみんなパスポートも持ってないから、まずそこから始まって。現地でおなかを壊したりとかいろんなことがありましたが、すごく大きなステージだったし、ちゃんと届いてるんだなって。日本語でレスポンスをしてくれる人もいて、単純にすごいな!と思いました。
 

— お客さんはほとんど現地の人ですもんね。

 
NANAE:そうですね。
 
MAIKO:いまだにインドネシアの方からSNSでめっちゃメッセージをもらいます。いまだに来るってすごいなって思います。いつかまた行きたい。
 

— KEITAさんはどうですか?できたことと、できなかったこと。

 
KEITA:どちらも挙げたらきりがないですね。できたことは本当に色んな経験をさせてもらえたし、島から東京、海外、全国色んな所を回らせてもらって、アルバムも3枚出させてもらえたし、ベストアルバムも出せたし、いつも数多く夢見たことを数多く叶えさせてもらえたし。逆に紅白に出ることや武道館、アリーナツアーなど、夢を見続けてきている中でもまだ実現できていないこともあります。その中でも特に印象の強いものを挙げるとしたらMAIKOも言った渋公や、MICHIRUの脱退ですね。
 

— 皆さんがずっと沖縄に住んでいるからかもしれませんが、seven oopsは一年中日本全国色んなところに行っているという印象があります。率直に言って、移動って大変じゃないですか?

 
MAIKO:いやー慣れましたね。むしろ楽しいです。わくわくする。
 
NANAE:沖縄は疲れた時に帰って癒される場所になっていますが、そこを飛び出して色んなところに行けるというのは刺激的です。
 

◆リリース情報
4th ALBUM『songs for...
・2018年11月07日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD)3,611円+税 
通常盤(CD)3,000円+税
<収録曲>
M01. 東京
M02. 使い捨てのラブソング
M03. 記憶
M04. Ride on!
M05. モノポリー
M06. いつのまにか
M07. 恋する惑星
M08. 夏のロマンティカ
M09. 青春Days
M10. fun!
M11. この島で
 
 
楽しさとは真逆の、過酷なレコーディング
— アルバムの4曲目「Ride on!」はアップテンポでアコースティックライブでもすごく楽しかったし、バンドの楽しさを象徴する曲だと思います。その勢いのまま5曲目「モノポリー」でも、間奏でみんなの楽しい感じが出ていますね。

 
NANAE:そうなんです。あのMICHIRUさんがここで登場します。
 
KEITA:キーボードのおーちゃん大坂孝之介)さんもね。
 

— レコーディングもこの楽しい感じそのままだったのかな?と想像してしまいますが…

 
MAIKO:レコーディングはですねぇ…
 
NANAE:(ため息をつく)
 
MAIKO:楽しくなかったです!
 
一同:(笑)
 
KEITA:今回は一番大変でしたね。
 
NANAE:いやー大変だったぁ。
 
MAIKO:何度もこうやってCDを作らせていただいて、レコーディングも経験していますけど、いっちばんキツかったです。
 
KEITA:制作期間が…短かったのかな?
 
NANAE:いや、短いでしょ(笑)
 
KEITA:作曲して作詞している途中にレコーディングが始まって、アレンジを詰めたり…全てが同時進行でしたね。終わったらミックスの作業や直し、息つく間もなくツアーが始まって、みたいな感じだったので、今回は本当に大変でしたね(笑)
 
MAIKO:他のアーティストさんはもっと大変なのかもしれないですけど、前までが結構ゆったりとしたレコーディングをさせてもらっていて、準備期間も長かったんですが、今回はその日の夜中にアレンジが仕上がって、朝からレーディングでドラムを録らなきゃいけないから、睡眠時間を削って覚えようとするんですけど、頭が動かなくなるんですよ。もう思考停止!ダメだ!って言って。その繰り返しですんごいキツくて、実際に逃げ出したときもあったんですけど…
 

— えぇ!

 
MAIKO:でもやっぱり苦労した分、今までのレコーディングでは得られなかった達成感がすっごくありました。
 

— レコーディング中にまだできていなかった曲もあったんですね。

 
NANAE:「東京」なんてギリギリまでできてなかったですね。
 
KEITA:「東京」は制作に2カ月かかりました。あと、一番最後に作ったのが「青春Days」で。
 
NANAE:あーそうだね。
 
KEITA:レコーディングが始まっていた8月頃、東京でバンドライブがあったのですが(=8月19日開催の『098 江戸もあい ’18』)まだ曲ができていなくて、アコギを東京に持ってきてホテルで作って、NANAEを呼んで夜中まで歌を録って、急いでアレンジャーさんに投げて…くらいに切羽詰まっていました。
 
NANAE:8月のライブはD-51ポニーテールリボンズという沖縄の先輩ミュージシャンとの共演でとても楽しいイベントだったのですが、そこで盛り上がって先輩たちが「じゃあ、テーマソング作ろうぜ」と言いだして…
 
KEITA:「じゃあKEITA、よろしく!」って(笑)
 
NANAE:仕事が増えた!でもみんな喜んでたから良かったね。
 

— そんな大変な中で出来上がったアルバムなんですね。今回収録されている11曲すべてKEITAさんが作詞・作曲を手掛けていますが、曲はどうやって完成させていったのですか?

 
KEITA:基本的にNANAEと2人でやり取りしてギター1本と歌だけのものを録って、何曲かは自分でアレンジも行ったものをアレンジャーの方に送ってブラッシュアップしてもらったり、ギター1本のものをアレンジャーさんに投げて打ち合わせてして詰めていったりと、プロデュース(全体的な楽曲制作の統括)も自分でやらせてもらいました。
 

— 完成するまでに特に苦労した曲は?

 
KEITA:やっぱり「東京」ですね。リズムも全然違うしメロディ展開もマイナーから始まって一旦メジャーに行ってマイナーに戻って…
 
MAIKO:攻めたよね!
 
KEITA:自分の中には完成型のイメージがあったんですけど、それをNANAEに伝えたりアレンジャーさんに伝えたりする作業にだいぶ時間がかかりました。
 

— これまでのseven oopsにはなかったタイプの曲ですしね。

 
NANAE:そうなんですよ。構成がしっかりあれば曲全体のイメージが大体つかめると思うんですけど、構成がよくわからなくて。彼の中ではそれが成立して1曲になっているんですが、全て別の曲に聴こえてしまって。ここに行く?というメロディラインとか、自分の頭の中にないものを入れられると人間って思考停止するんですよね。それでずっとKEITAに「意味がわからない」って2カ月言い続けました。
 

— 結局歌入れはどのように行ったのですか?

 
NANAE:「意味がわからなくてもいいからとりあえずこれを歌ってくれ」と言われたものを、1曲通してではなく「この部分、1フレーズ覚えました、それだけ歌入れます」みたいな作業を繰り返して、それをつなげてアレンジャーさんに出して、返ってきたものが1曲になって、やっとそこで「この曲ってこういうことだったんだ!」ってわかりました。
 

— なるほど。レコーディングでは部分部分を歌っていって、1曲つながったときに初めてイメージがつかめたという。

 
NANAE:パズルみたいに「このパーツとこのパーツを録ります」って進んでいったので、この曲は仕上がらないんじゃないかと私は思っていました。仕上がったときにはとても格好良かったので、ライブでやるのが楽しみです。

3人になって、新たな挑戦 続きはライブで
— アルバム全体を通して、前半の楽曲は特に、これまでのバンドのイメージを覆すような印象を持ちました。以前は曲作りに際して「どの歌詞にも共通の主人公を設定している」(参照:【特集】BEEAST太鼓判シリーズ第19弾アーティスト『7!!』)ということでしたが、”共通の主人公”である女子高生はだいぶ成長していっているし、また違う視点の曲も増えたように思います。

 
KEITA:これまでのseven oopsという概念に沿った曲も今回入れているのですが、前までの”共通の主人公の女の子”じゃない曲も入れています。以前はみんなが作詞・作曲をやったり、MICHIRUと僕が半々に書いていたので、ルールに沿って主人公は統一していたんですが、今回はMICHIRUの脱退もあったし、僕一人が作詞・作曲を行うということで、そこは割と意識せず、柔軟に書かせてもらいました。
 

— 色んなことに挑戦していく中で、seven oopsというバンドが階段を上っているんですけど、それが螺旋階段を上っているイメージがあります。特に後半の「青春Days」や「fun!」は、これまでのseven oopsの良さをそのまま昇華した印象です。

 
KEITA:そうですね。来年にはバンドスタイルで全国ツアーを回るので、そこでこういった曲を演奏するのも楽しみです。
 

— ライブで特に「この曲のここを聴いてほしい!」という点があれば教えてください。

 
MAIKO:「夏のロマンティカ」かな。ラテン調が好きで…つらいレコーディングの中でもこの曲はノリやすいので楽しんで叩けました。その印象もあるし、アコースティックライブでもエモく叩けたので、楽しんでもらえるんじゃないかな。
 
KEITA:僕は冒頭3曲ですね。これまでのseven oopsのイメージを壊すために書いた3曲なので、ライブでやるのは楽しみです。
 
NANAE:私は「fun!」、「恋する惑星」、「Ride on!」といった春のアコースティックツアーで新曲として披露した曲です。そのツアーに来てくれた人はこの曲をもう覚えていると思うので、それをバンドスタイルで表現したときにまた違う形になるのを楽しんでもらえたらと思います。
 

— アコースティックツアーといえば、MAIKOさんは三線やカズーなど様々な楽器に挑んでいますが、打楽器であるドラムとはまた違った大変さがあるのでは?

 
MAIKO:弦楽器は音階があるのが大変ですね。周りに三線を弾ける人がいなかったので、これを機会に伝統的な楽器に触れることができる!と思って「この島で」1曲のためだけに三線を練習し始めました。三線の音色って落ち着くし、楽しい。どんどんハマっていって、「弱虫さん(うちなーVer.)」のときに演奏してくださった三線奏者の宜保和也さんのおうちに通って本格的に習っています。民謡と古典までできるようになって、試験を受けられるように。
 

— アルバムの最終トラックに収録された「この島で」はseven oopsにとって初めて沖縄をうたった楽曲です。やはりほかの曲とは違った思い入れがあるのでしょうか。

 
MAIKO:歌詞の世界観も、今までの活動してきた年月があるからこそ言えるセリフだと思います。色々経験したうえで、「この島で生きていく」。その決意がすごいなって。それを書いてくれたKEITAは絶対沖縄から出ないつもりだぞ!って(笑)
 
KEITA:この曲はMICHIRUに向けて書いたんです。MICHIRUがバンドを抜けて、沖縄で違う夢に向かって進んでいく…2014年に『STARTLINE』というアルバムを出した頃からMICHIRUが「楽曲に三線を取り入れたい」と話していて(参照:【特集】7!!×MUSE音楽院×BEEAST メジャーアーティストにインタビュー体験しよう!)、当時自分は「タイミング的に今じゃないんじゃないかな」と話していたんですが、MICHIRUが抜けることになって。ずっと「三線を取り入れた曲をやりたい」と言っていたMICHIRUの願いを4人でいるうちに実現させてあげたいという思いでこの曲を作って、2017年の最後のツアーで披露しました。
 

— 「故郷を背負う」じゃないですけど、それを曲にして色んなところで演奏するというのは、なかなか若いうちに気軽にできるものじゃないですよね。

 
NANAE:30代になったからこそ説得力がある、みたいなところはありますよね。
 
MAIKO:最初は憧れしかないから、キラキラした曲が多かったじゃん、当初。でも今では僻んでるような曲とか…「東京、手が届かない」みたいな(笑)。曲としてその中でストーリーを組んで遊んでいるだけかもしれないけど、その部分部分で出てくるワードが「それって経験したから今出る言葉なのかな」っていうのもあって。「青春Days」とかまさにそう。今だから振り返れる過去がある。あの頃は…無邪気にしていたのに…(笑)
 

— 青春真っただ中の、無邪気に自分が感じたことをそのまま曲にするというのは、それはそれで魅力があると思いますが、色々経験すると、それを客観的に見れたりとか、より伝わりやすい表現で曲にすることができますよね。

 
MAIKO:本当に、今のseven oopsですね。
 
NANAE:振り返るきっかけにもなるかもね。曲を聴くことによって今まで忘れていたものもそうだし、初心に帰る気持ち、沖縄を改めて大好きだなという気持ちもそうだし、自分たちの曲で自分たちが元気になれたりとかもするので。すごいいアルバムだなって思います。

30歳になって説得力を持つ「この島で生きていく」
— 年齢や経験を重ね、色んな土地で音楽をしていく中で自分たちの故郷、沖縄を意識するようになったのはいつ頃からですか?

 
NANAE:いつからかなぁ…
 
MAIKO:最近?
 
KEITA:沖縄のミュージシャンあるあるだと思うんですけど、10代の若い頃、一時期沖縄を毛嫌いする時期があるんですよね。三線なんてダセーとか。
 

— ありますよね。わかります。

 
KEITA:でもデビューして色んな経験をさせていただいて、先輩ミュージシャンの偉大さがわかって、島唄の良さや三線の音色の良さに気づかされて、そこから強い憧れが出てくると思うんですよ。僕の場合は20代後半くらいからですね。もちろん20代前半頃から島唄とかも聴くようになったし、好きだなっていう気持ちはあったんですが、自分たちもやってみたいと思うようになったのは20代後半頃からですね。
 

— 前からあるものを最初は「古い」としか思えないんですよね。

 
KEITA:でも実は一番ロックしてるのは民謡だから。気づかないだけで。
 
NANAE:確かに。
 
MAIKO:沖縄を離れて色々やったから客観的に見られたんだろうね。デビューしないでずっと沖縄でバンド活動をやっていたら、もし三線を取り入れたとしてもまた違ったかも。「みんながやっていたからやる」になっていたと思います。
 

— 確かに、「この島で」は三線が効果的に使われていて、昔ながらの沖縄の良さが入りつつ、でも決して古い感じの曲にはなっていなくて…

 
KEITA:そうですね。
 

— 沖縄を代表するミュージシャンの1曲、何十年も残る曲だなと思いました。

 
KEITA:ありがとうございます。そうなってくれたらうれしいです。
 

— やはり3人は今後も沖縄で暮らしていくんですか?

 
KEITA:どうですかね?
 
MAIKO:デビューしてからもずっと沖縄在住を前面に出してきたので、ここから2~3年ぐらい東京に出てやるぞ!ってやってもいいんじゃないかなという気もします。今まで島を出たことがない人間が急に東京に出てつぶれるというケースは多々あるし、そんな中でseven oopsは本当に沖縄が好きだし、リラックスした中で曲を作る方が合っているから…ということで、渡航費もかかるのに事務所が「沖縄在住」の方針をバックアップしてくれたんです。そこをずっと大切にしてもらってきましたが、もう30歳になったし、ブレない自分も持ってきているし、今ここにきても流されることはないかなと。むしろそういうものを自分の中に取り込んで新しく生み出す力が持てている気がするので、東京進出を決めてもいいのかなと思っています。
 
NANAE:決してそれで沖縄を捨てるとか離れるっていうわけではなくて、その中で沖縄に対する愛もあるし、沖縄の中で色んな活動をしていきたいという思いもあるので、拠点が変わったとしても「思い」は変わらないと思います。
 

— 今のお話でも出てきましたが、先日拝見したライブのMCでも、NANAEさんの口から「30」という年齢の話が出たのが意外に思いました。確かに30歳というのは節目で、ユニコーンやJUDY AND MARY(YUKIとTAKUYA)が解散したのも30歳手前だったりします。今回seven oopsはレコード会社を移籍してバンド名表記も変えて、第2章スタートになるわけですが、今後のバンドとして、皆さん自身の展望を最後に教えてください。

 
KEITA:特に年齢は気にせず、自然体でいきたいですね。ずっと音楽をやっていくだろうし、たぶんこのメンバーでずっとやっていくのかなと思います。
 
NANAE:私は死ぬときにあれやっておけばよかった、あれできなかったという思いを残したくないなって30になって思ったので、自分がやりたいことを後悔せずにやっていけるような30代になればいいなと思います。そうなることでseven oopsも前に進んでいける気がするので。後悔せずに、3人で、楽しむっていうことを忘れない、そんなミュージシャンになっていけたらいいなと思います。
 
MAIKO:これからどんどん年を重ねて環境も変わっていくと思うんですけど、その中でもあえて変わらない3人で行きたいです。な?
 
NANAE:(笑)
 
KEITA:お、おう(照)
 
NANAE:よく言われるんです。3人はいい意味で変わらないねって。それってうれしいことだなって。
 
MAIKO:その3人が好きっていうファンも多くて。seven oopsの魅力って自分たちではわからないけど、楽曲ももちろんですが、3人の仲良い感じが好きだからってずっと応援してくれる人が多いように思います。根本的に”人間”なのかなって。それが音にも出るし。そういう部分はずっと変わらずにいたいって思います。
 

◆リリース情報
4th ALBUM『songs for...
・2018年11月07日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD)3,611円+税 
通常盤(CD)3,000円+税
初回限定盤にのみ収録DVD:アコースティックツアー「seven oops Café Live Tour 2018-again-」@横浜公演の模様を6曲収録
 M01.相愛性理論
 M02.オレンジ
 M03.Ride on!
 M04.この島で
 M05.恋する惑星
 M06.スタートライン


 
 
songsfort songsfors
◆seven oops オフィシャルサイト
http://7oops.com/
 
 
◆ライブ情報
seven oops 4th ALBUM 『songs for...
リリース記念インストアイベント

・2018年11月09日(金)【神奈川】HMV横浜ワールドポーターズ
・2018年11月10日(土)【千葉】イオンマリンピア屋外コミュニティ広場
・2018年11月10日(土)【千葉】そごう千葉店 本館1階正面入口前広場
・2018年11月11日(日)【東京】タワーレコード池袋店
・2018年11月17日(土)【愛知】イオンモール大高 3F
・2018年11月23日(金祝)【福岡】タワーレコード福岡パルコ店
・2018年11月25日(日)【沖縄】サンエー那覇メインプレイス2F
 ※参加方法などの詳細はHP
 
 
とかしきミュージックフェス「音もだち」2018
・2018年11月24日(土)【沖縄】渡嘉敷島阿波連キャンプ場
 
うぷぷなトークでイケるのかベイビー!?吉田山田のドレミファイル♪ in 小田原
・2018年12月02日(日)【神奈川】小田原ダイナシティ
 
「seven oops LIVE TOUR 2019 -lives for you!!-」
・2019年01月14日(月祝)【東京】代官山UNIT
・2019年01月20日(日)【大阪】梅田シャングリラ
・2019年01月27日(日)【愛知】名古屋SPADE BOX
・2019年02月16日(土)【福岡】福岡DRUM Be-1
・2019年02月23日(土)【沖縄】那覇 桜坂セントラル

 
 

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