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TEXT & PHOTO:桂伸也
「心の国境を打ち壊せ!!」沖縄の雄、ROACHが語る『098-(ゼロナインエイト)』

「ロックと生きる」BEEAST編集部員による全力特集「Editor’s Note…PASSION」。第5回目は桂がお届けする。以前、『密着レポート第14弾 ROACH ~『No Reason in the Pit』TOUR FINAL ONE MAN~』でも紹介したバンドROACHが去年の初秋、東京から始まるツアーイベント『098-(ゼロナインエイト)』を開催した。今回はこのイベントの模様や発端の経緯等から、沖縄に住むミュージシャン達の熱い思いを探っていきたい。
 
ROACHは沖縄を拠点として活躍するロック・バンド。ハードなサウンドと沖縄の人間であるというスピリッツを融合した、確固たるサウンドを特徴としている彼らは、沖縄出身というステータスを自分たちの中に大きなものとして持ち、ROACHというバンドの存在をアピールしている。さらに彼らは昨年、自身の主催にて『098-』イベントを開催した。098とは固定電話で使用する沖縄の市外局番、つまりこのイベントは沖縄という場所をテーマに取り入れたイベントなのだ。2010年に渋谷CLUB QUATTROにて第一回が開催されたが、今年はツアーの形式にて、東京は恵比寿のリキッドルームにて行われ、大きくスケールアップした。
 
日本では今でも一昨年発生した震災の余波を引きずり物議を醸し出す状況が続いているが、以前から同様に様々な話題が絶えないのが沖縄という場所。日本文化と琉球文化という2つの風土を持つ一方で、米軍基地や尖閣諸島などの問題を抱えている沖縄は、日本の中でも常に多くの注目を集めている。本土に暮らす者からすると、何かと住むには大変な場所なのではないか?という認識もあるかもしれない。しかし実際、沖縄に暮らす者は、どう意識しているのだろうか。
 
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1)taama(ROACH:Vocal)インタビュー

 
ROACHは昨年、3枚目のミニ・アルバム『OKINAMERICA』を発表した。そのアルバムタイトルには、“沖縄”と“アメリカ”というホットなキーワードが並んでいる。彼ら自身の沖縄という場所に対する思い、そして『098-』というイベントへ込めた思いを、ヴォーカリストのtaamaにバンドを代表してインタビューしてみよう。

1.『098-』は、「沖縄のバンドが大きなところでライブができる!って、夢を見てくれればそれでいい」という思いで始めました。
 

—『098-』は2011年が最初とのことですが、こういったイベントを東京でやろうと思ったきっかけとはどんなことだったのでしょうか?

 
taama:沖縄からライブをしに本土に出ることというのは、行ったことがないバンドにとっては、とてもハードルが高いことなんですよ。僕らもそうだったけど、まずやり方がわからなくて「東京でライブハウスってどんなところがある?」「ん~武道館?」「Club Citta’?」って感じで(笑)。大きなハコしか知らなくて普通のハコは全然分からないし、ブッキングの仕方も分からなくて繋がりも無い。だから行きたくても行けないバンドも一杯あって。
 
自分はいい時代の沖縄のインディーズ・シーンを見ていたこともあったし、そこからいろんなものをもらってバンドをやっていたので、それを返したいな、って思ったんです。それで今自分に出来ることは、沖縄から外の世界を見せることかなと思って。それと沖縄のバンドって以前は結構よく一緒にやっていたけど本土に行くとだんだん個別に動くようになるし、たまには外でも一緒に集まるときがあってもいいんじゃないかと思ったんです。
最初は沖縄から飛び出して、「沖縄にもこんなにいいバンドが一杯いるんだよ」っていう気持ちでツアーを始めたけど、回っていくうちにいつの間にか「本土にもこんなにいいバンドがあるんだぜ」「こんなにいいシーンがあるんだ」っていうのを逆に沖縄の人にも知ってもらいたいっていう思いが出てきたのが発端でしたね。
 

—それは、ある程度活動を続けてきた今だから思ってきたのでしょうか?それとも出ようとしたとき既にそう思っていた?

 
taama:今だからだと思います。沖縄から出ようとしていたときは、自分たちの力試しをしようくらいの思いでしたから。
 

—たとえばtaamaさんが思い描いている沖縄のシーンって、どんなものでしょうか?

 
taama:僕は完全に自分の10代のころのインディーズ・シーンが一番の原点なんです。そのころは、1,800人キャパのホールが沖縄にもあって、そういうところをインディーズ・バンドたちが埋めていたことがあって、居酒屋や洋服屋などがみんな繋がって有名なバンドをガンガン呼んで、皆で凄く盛り上がっていました。だからロック・スターってヒーローだったし、そんな状態が僕の中に強い印象として残っています。
 

—その時に比べると、今はもっと落ち着いてしまった感じでしょうか?

 
taama:そうですね。MONGOL800地獄車INDIAN-HIなどが一杯出てきた時代で、オムニバス・アルバムが飛ぶように売れた時代で、そんな相当盛り上がっていたころに比べるとね。
 

—では、イベントを東京でやろうと思ったきっかけは何だったのでしょう?

 
taama:単純に来る回数が多くて、人が集まり易いということもあったので。今渋谷にはすごく御世話になっているし、頼っているうちに友たちも増えて街中で歩いていたり飲みにいったらそこで知り合いに出会うことも多くて、すごく居心地もいいし。沖縄とは違うけど、地元みたいな感覚なんですよね。
 

—今回、ツアーという格好にしたのはどんな意図があったのでしょうか?

 
taama:挑戦というところです。特に大阪、沖縄、東京でやらなきゃいけないっていう理由があったわけじゃないですが、沖縄のバンドで去年やって楽しかったし、それで夢も見られたし。ツアーに行く先々でも自分が沖縄出身なんだ、っていうバンドも多くて、そういうのもいるんだなって思ったら、もうちょっとやってみようかなって。去年は前夜祭を沖縄で一日、東京で本編をやりましたが、今回は東京、大阪、沖縄で本編をやって、東京で2daysにして前夜祭を行って、沖縄のバンドを一杯つれてこれたら最高だな、って考えました。
 

—沖縄については凱旋公演という感じですね。今回のバンドはどういう繋がりで選んだバンドですかね?

 
taama:東京、大阪は、沖縄から既に外に出て頑張っているバンド仲間をメインとして声を掛けました。沖縄はまだ地元で頑張っているバンドで、先輩や最近対バンできていない同世代のバンド、若いバンドに声を掛けて。ちょうど自分たちがそれらの中間の世代のバンドで、先輩のバンドを見る機会や若い子のバンドとやる機会ってお互いになかなかないので、自分たちがそういうつなぎ役になれたらいいなって思いまして。
 

—例えばROACHほど驚異的な数の場所をツアーして回っているバンドっていうのもなかなかいないと思いますが…

 
taama:いや、自分たちではそうでもないかと思いますが(笑)。これは僕の記憶というかイメージだけど、昔はバンドって、やたらとツアーを回っていたイメージがあったんですよ。ポスターやフライヤーがグワーッと日程で埋まっているのが、自分たちの中ではステータスだったんです。沖縄の中だったら月に五本くらいで多いという感じで、それに比べると本土や海外のバンドってドワーッと入っていたから。やっぱりあれにすごく憧れていました。だから初めてツアーを回った時もそう思っていました。一回だけ東京でライブをやって、その時は先輩が沖縄でやったことがあったというだけでライブハウスに電話して、「やらせてください!」って。その時に御世話になったのが今のマネージャーなんですが(笑)。そこから「全国ツアーをやりたいんだけど、組み方わからないから教えてくださいって(笑)。だから1ヶ月で20~25本ってできるんですかね?って感じから始まったのがツアーでした。
 

—去年実施されたときには、沖縄舞踊のチームなどもありましたよね?

 
taama:あれはあのときにブッキングしたアーティストたちが入れてくれたんです。そういうのをやりたいねって言っていたら参加してもらえるということだったのでラッキー!って。エンディングの部分で協力してもらったら凄くいい感じになったので、逆に今回はこちらから御願いして入ってもらっています。三線弾いている人やエイサーをやってる人を、その場それぞれ住んでいる人にやってもらう格好で。例えば沖縄で宴会の最後に踊る風習としてカチャーシーっていう踊りがあって、結婚式の最後やお祝い事があると必ず踊るものなんですけど、沖縄にはそういう文化があり音楽って聴くものっていうより楽しむものなんです。
 
スゴイ大きなライブハウスで、「次はBRAHMANだよ!」って言いながら三線を弾くおじさんとかで出て来てヴワァッ!と盛り上がったりとか(笑)。そういうところでは三線なのにモッシュでダイブとかわけが分からない状態(笑)。もちろん沖縄の文化を広げられればと思いますが、それもひっくるめてこの会場が一つになればそれでいい、という感じです。
 
一番強い思いとしては、このイベントは結局沖縄の子たちがこんな大きなところでライブができる!って、夢を見てくれればそれでいいんと思っています。それで頑張って、バンドやって、外に出てくればいい、そう思ったんです。イベントを実際にやって本土の友たちもいっぱい呼び込んでもらったら、「ジャンルは違うけど、沖縄のバンドっていいねぇ~!」って思ってくれて皆一つになって楽しくなれば会場の空気も一つになるし、そうすれば凄く嬉しくなる、それをまたそのつながりを通して友たちになる奴もいっぱいいて、みたいな。
 

—そういう意味では、やはり一番示したいこととは、やはり「自分たちは沖縄のバンドだよ」っていうことなのでしょうか?

 
taama:そうですね。そこはやっぱり自分たちの生まれ育った土地で、アイデンティティ等がそこにあると思うので、それは自然な流れとして表現したいというだけ。表現しているだけで何かが起こるかどうかはわからないけど、誰かがそこでMeetして、そこでその輪が大きくなるのはそれでいいかなって。

2.沖縄自体が良いところかどうかは分からないけど、それが全てをひっくるめて存在したからこそ今の自分がある。
 

—具体的に沖縄出身のみなさん自身が沖縄という場所をどう思っているかをお伺いできればと思うのですが、例えば9月にリリースされたアルバムの1曲目「LINE-小さな島の国境線-」に書かれた詞で、「矛盾に溢れた場所だけど」という表現がありますが、その詞が示すように今沖縄という場所はニュースでも毎日騒がれているようにとても複雑な問題を抱えたところだけど、逆に本土の人間からすると「琉球特有の文化」とか、観光地でとてもきれいな場所というイメージもあって、どんな場所なんだろう、という不透明な部分がありますが、実際自分たちとしてはどんなところだと思われますか?

 
taama:もちろん、いいところだと思っていますよ!僕の生まれ故郷だし、それが自然なんです。ただ「白か黒か?」って言われてもそれは白でも黒でもないし、グレーなんです、解決の出来ないグレー。でもそんな中で普通に生まれて育ったから、それをどっちだって言われたって「そんなこと知らねえよ!」って感じです(笑)。結局白黒を誰も付けきれないからそういう不透明な認識になっているし、ずっと言わないできたんです、僕は。
 
今迄2枚のミニアルバムを出して、続いて3枚目が出ましたが、やっぱりツアーや、リリースができなという状況があったのですが、そのときのフラストレーションを解放したのが先の2枚、それには沖縄から出た後の話や夢を思い描いて歌ったことがメインでした。それから続いて3枚目を作ろうとしたときに、「あれ?何を歌ったらいいのか分からない」ってなってしまったんですよ。自分の願いとか景色とか、そういうものを歌っていたけど、3枚目はさらにそこから見える未来とか、そういうものを歌っていくものなのかな?って漠然と思っていたんです。でもよく考えると、僕が沖縄にいるときのこと、自分自身のことを歌っていないことに気がついて、今度は「沖縄のことを歌おう」って思い曲を作ったんです。だから何か沖縄はどんなところってたずねられると、自分には良し悪しはわからないけど、いいところだよって思えるし。
 

—あまり本土の人がどう見ているか、なんて意識は逆にないということですかね?当然自分の故郷ってやっぱり誰もが誇れるところだとは思うけど、普段それほど口に出して言う人もなかなかいないですよね。それが例えばROACHのメンバーが今回『OKINAMERICA』というアルバムを出したことを含めて沖縄ということを前面に出すというのは、何か伝えたいことがあるという風にも思えましたが。

 
taama:いや、そこまでの意識は特にないんじゃないかと思います。例えば僕の見てきた先輩って、自然に沖縄を音楽で表現していて、それはあたりまえな感じになっているんだと思います。だからそこまで深く感じてはいないのが正直なところ。『098-』は沖縄のバンドで、っていうことでやっているけど、そこまで沖縄っていう部分に固執してどうこうしたい、っていう思いはないです。まあそれでも盛り上がればいいとは思いますけどね。歌い方みたいなところは変えられるものでもないし。今回アルバムのタイトルを『OKINAMERICA』にしたのは、そこにはやっぱり意味があって、「自分なりの沖縄を歌おう」っていうスローガンを自分なりに決めたからこそなんです。まあ確かに結局は沖縄に集約されるのですが(笑)
 

—アルバムのタイトルには「AMERICA」というキーワードも含まれますが、そこにも強い思いはあるのでしょうか?

 
taama:ありますね、沖縄といえば米軍基地もあるし。自分には二つの文化に触れて育ってきたという経緯があって、どちらか一つが欠けたとしたら、今僕たちはこんなバンドになっていなかったと思うし。そういう意味では、自分たちのアイデンティティを表現している言葉になっていると思うんです。
 

—今、沖縄の基地問題ってマスコミ等で、様々な問題で取り上げられているけど、その良し悪しは別としてアメリカがあったからこそ今の自分があると思いますか?

 
taama:そう思います。基地があって米兵の目の前でプレイする機会も貰いながらちゃんと日本語で歌うということを意識していましたから。確かにテレビで騒がれているような内容とは、温度差ってありますよね。それはそれで問題ではあるけど、僕が見てきたのはもっと生活の面でそんな人たちと酒を飲んで、笑って、音楽を楽しんで、一緒に遊んで、ということをやってきた場所なんです。
 
僕は政治家ではないからそんな難しいことは言えないし、自分の言葉で自分の視点から見える沖縄というものをちゃんと責任を持って言葉にしないといけないという思いがあったんです。希望や夢というものを今迄歌ってきたけど、ぶっちゃけた話として自分のことを歌わないでそういうことを言ってるんだという事実をずっとちらつかせながら生きていました。だから、自分が何かをどうしようというわけではないけど、自分の言葉で何かを言おうと思ったんです。今はとても微妙な時期で怖いときではあるけど、でもそういうことを今言わなかったら、また逃げちゃう気がして。とりあえず今、自分の口から言える言葉でいいから、ちゃんと形にしようと思ってこういうものができたんです。
 

—新作のナンバー「HIGH FIVE」のPVで英語の看板が立ち並んだ印象的な通りが映し出されていますが、あれは沖縄にあのような場所があるのでしょうか?

 
taama:そうです、あれは沖縄の北のほうにある金武町(きんちょう)っていう町なんです。そこには米軍基地があって、とても田舎なんですが、そこに米兵が落とす金で成り立っている通りがあって、働いている人も英語がしゃべれる人ばかりだし、退役軍人がお店を持っているところもある。僕らはそこでいつもライブをしていました。そこでいろんな人と触れ合って。たまたま「今回は沖縄で撮ろうか?」っていう話が出てクルーに依頼したら、彼らが選んだ場所がそこだったんです。
 

—ある意味ルーツとなる場所ですね。

 
taama:そうですね。前作でも「Be Hardcoe in KIN TOWN」という曲がありましたが、まさしくその場所なんです。
 

—すごく楽しそうな場所に見えますよね。一度行ってみたくなりました(笑)

 
taama:ああ、もうそれは是非是非!(笑)一つすごいエピソードがあって、今回のアルバムのジャケットはアメリカの国旗のペイントをされたガイコツと、日本の国旗がペイントされたガイコツの絵があるんですけど、PVで撮られた画の上のほうにも“こっちにアメリカの国旗”“こっちに日本の国旗”っていうのがあるシーンがあるんです。こっちが指示したわけでもないのに、上がってきたものにはしっかりと重なったイメージが映ってきて。ウワッ!って驚きました。僕の中ではすごい面白かったです。そういう運命的なものというか、すごく良いものが出来たと思っています。
 

—今回リリースされたアルバムの、具体的な聴き所ってどんなところでしょう?

 
taama:結構アルバム全体をばっと聴くと、曲調がそれぞれまったく違うんですよ。だけどすごくまとまってるところでしょうか。そこは面白いかなと思います。
 

—5曲目の「ウイシュガー」って、なにかインダストリアルっぽい無機質な感じで前作2枚のROACHのアルバムにはない新しい感じがしました。

 
taama:確かに。でもバンドを始めたころはあんなこともよくやっていましたね。今回は沖縄のことを歌っていますが、僕が沖縄で影響を受けた先輩へのオマージュも盛り込んでいるんです。よく「どういうアーティストが好き?」「誰に影響を受けたの?」って聴かれたら、結構今まで困っていて、「今だったらこういうの好きですよ」とか言っていたけど、そんなあやふやにしか言うことができない自分にも疑問を感じていて。よくよく考えると、僕が影響をもらったものって先程も話したけど、それは沖縄のバンド・シーンだったんです。米軍基地のそばのあの町並みとかあの中で流れるあの音、あのライブ、人柄とか。そういうものを全てひっくるめた空気が僕の中の物差しになっていて、誰というよりは「この人たち」「この島」っていう感じ。その中でも、当時自分たちがすごく大好きだったバンドのオマージュを込めているんです。
 

—そういう意味では、今までの作品は割と自分たちの中で完結している曲を作ったという印象なのでしょうか?アイデアの発想として、自分たちの言葉にこだわるようなものを作ったというか。それに比べると今回はそのオマージュ的な、自分たちの範囲を超える内容が多く含まれている格好でしょうか?

 
taama:いや、逆に一周して戻ってフラットになったような気がします。肩の力が抜けてぜんぜん無理しない、自然体で作った感じ。だから、幅を広げたというよりはすごく「自分って何なんだろう?」っていうところを掘り下げたものですね。原点回帰みたいなところ。だから自分たちでも作っていて不思議な気持ちでした。曲は結構いろんなものがあるけど、ぜんぜん無理してないし。だからどちらかといえば素の自分であるところを聴いてもらいたい、という感じですね。何か自分が影響を受けた、自分が生まれ育った沖縄っていうものを切り取って丸ごと詰め込んだような作品です。そんなところを感じてもらいたいです。
 

—なるほど。改めて注目してみたい思います。では最後に、今後ROACHと『098-』としての抱負をメッセージとしてお願いします。

 
taama:そうですね…もっと夢を見たいし、もっとみんなでいろんなことをやりたい。何かみんなでやれることをもっと広げられたらいいな、って思っています。もっと沖縄から出したいし、もっと本土から沖縄へ呼びたいし。自分たちも、もっといいバンドになって大きなステージに立って、もっとたくさんの人に見てもらいたい。自分も精一杯夢を見るから、応援してくれる人にももっと夢を見てもらいたいと思います。昨年は沖縄からいっぱい連れてきたので、今年は沖縄へたくさん連れて行きたい。ROACH自身としても確実にステップアップをしたいと思います。
 
6月に行ったO-WESTのワンマンは、ROACHとしては初めてかつ今迄で一番いいライブだったと思っていますが、実はワンマンのライブって苦手、セットリストを組んでやるライブって(笑)。やっぱりぎこちない感じがするんですよ。今までで一番いいライブをやったけど、もっとできるんじゃないかな?って思っていてもう一回リベンジしたい位に思っているんです(笑)。今、前向きに“もっとやれることがあるんじゃないか”って思っているのであれば、もう一回トライしてもいいんじゃないかって思っています。もう止まりたくない、走り続けていきたいんです。3枚目を作ったことで今度はもっとすごいアルバムを作れると思うし、何かを見つけた気がするんですよ。何かは分からないけど、次はもっとヤバいものを作るし、それを気づかせてくれた作品に今回はなったと思うし、みんなどう感じてくれるかも楽しみだし。
 
2曲目の「HIGH FIVE」はとてもキャッチーな曲で、サビを英詞にしたというのも今回初めての試みで初めてライブでやったときにはメチャメチャ感触が良くて、すごく楽しかったんです。そういう意味でもライブがすごく楽しみ。ライブでこういう風にやりたいっていう曲がちょっとずつ出揃ってきた感じですね。あとはライブでボコボコにするのみ!みたいな(笑)
 

 
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2)『098-』イベントレポート(2012/09/30 恵比寿リキッドルーム)

 
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ここからは、昨年行われた『098-』イベントの模様をお送りしよう。「楽しむぞ!」と意気込み、ワクワクした表情で会場に現れたファンたち。DJブースやプロジェクタが映し出す画、そして沖縄舞踊の荘厳な舞いでスタートしたイベント。まるで野外イベントのように和気藹々とした会場は、単なる「いいバンドを集めた」という対バンステージとは一線を画した盛大なイベント会場となっていた。
 
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転換の間にはやはり沖縄出身であるグループSOUTHT-DAAny-KeyDJ Tossyの三人が会場をしっかりと盛り上げ、一時ものんびりと過ごす時間を与えない。音が鳴り、その音に体が呼応する。そんな楽しさいっぱいの雰囲気が、イベントの開始から終了まで会場を包み込んでいた。
 
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1.7!!(セブンウップス)
 
◆メンバーリスト:
NANAE(Vocal )、MICHIRU(Guitar)、KEITA(Bass)、MAIKO(Drums)
 
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この日のスタートを飾ったのは、男女混合の新鋭、7!!。ヴォーカルのNANAEを中心として明るくポップなサウンドを繰り広げながらも、会場は既に熱気が充満。弾けるようなビートが会場中の人々の琴線に触れ、みなじっとしていられない気持ちが体の心から生まれてくる。「みんなの声を聞かせてください!」NANAEが叫ぶと、更に動き出さずにはいられないような楽しさがこみ上げてきた。MAIKOが、「せーの!」という合図で「めんそーれ!」という言葉をオープニングの挨拶として上げると、会場がいきなり一つになった感じすら見えてきた。1/18に初めて東京ワンマンを行うという彼ら。かなり荒々しいライブを展開するROACHのライブと比べると、その軽快でポップなサウンドは釣り合うのか?というイメージもあったが、その活発なライブの雰囲気、そして強気に「盛り上がる準備はできていますか!?」というNANAEのクライマックスでの叫びで、不釣合いな感じなど微塵も感じさせない。ライブを楽しむ、楽しませるという強い意志をアピールした彼らは、懸命なプレイで華々しいオープニング・ステージを飾った。
 
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◆公式サイト
http://7oops.com/

2.オズ
 
◆メンバーリスト:
NARUMI(Vocal )、いっせー(Guitar)、SHIN(Bass)、ナオヒロ(Drums)
 
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二番手として登場したのは、こちらも新進気鋭のバンド、オズ。登場からいきなり「まだまだ!もっともっと!!」とばかりにフロアをあおるNARUMIを中心に迫力のロックサウンドの中で、彼女が歌うポップでワクワクしてくるようなメロディ。さらに勢い十分の気迫溢れる雰囲気がさらに観衆をあおる。ロック・ファンにはたまらないステージだ。夢はここ、リキッドルームでワンマンのステージを行いたいという彼ら、その自身の音に賭ける情熱は半端じゃない。「オズはまだまだやりますよ!できるかどうかじゃありません!やるかやらないか?ですからね!!」オズの曲「ライオン」の一節を込めたNARUMIのMCには、この『098-』に込められた思いも強くのぞかせた。一バンド目の7!!とともに、ジャンルなんて関係ない、自分たちの音には人を楽しませる力があるんだという信念すら感じられるその勢いは特筆モノだ。いきなりダイブを連発するフロアの常軌を逸した雰囲気にまったく引く様子も見られない度胸で、終始ステージでリードを握った。
 
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◆公式サイト
http://www.ozrin.com/

3.JaaBourBonz
 
◆メンバーリスト:
KO-G(Guitar &三線)、大湾(Bass)、YASU(Vocal)、TAKANO(Vocal)、CHINA(Drums)、志門(Guitar)
 
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前出の二バンドと比較するとよりポップで自然な明るさを感じさせるバンドJaaBourBonzが三番手として登場。軽快なリズムとポップでキャッチーなメロディを奏でる7人のメンバー、その中でもYASUTAKANOというツイン・ヴォーカルのスタイルは印象的だ。昨年に引き続いての登場(昨年はバーボンズ名義にて参加)で、激しいモッシュやダイブこそ出てこないものの、フロアの観衆はまた違ったライブやサウンドの楽しみを彼らから受け取り、終始腕を振り上げ、リズムに合わせて体を上下に揺らす。まるで漫才のような暖かい笑いをたたえたMCと、韻をしっかり踏んだ歌詞をビートに乗せた楽しいサウンドが、会場をさらに盛り上げていく。「夢は紅白に出ること」と語ったMCは冗談か本気かは分からないが、それでも「是非出られるといいな」と心から感じた観衆も少なくないのではないだろうか。途中エイサーを引き入れ行われたセッションでは、息もピッタリ。その同調する様はまさに彼らが沖縄出身というステータスを強く感じているからではないだろうか。最後は運動会のダンスのようなサークルピットがフロアに現れ、沖縄代表の素晴らしきバンドの一面を強くアピールした。
 
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◆公式サイト
http://jaabourbonz.com/

4.FLiP
 
◆メンバーリスト:
玉城裕未(以下、玉城 :Drums &Chorus)、宮城佐野香(以下、宮城 :Bass &Chorus)、長堂祐子(以下、長堂 :Guitar &Chorus)、渡名喜幸子(以下、渡名喜 :Vocal &Guitar)
 
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イベントも後半に入り、観衆もすっかり体が温まった様子。さらにやる気を見せる彼らの前に、四番手として現れたのはガールズ・ロック・バンドとして心境いちじるしいFLiP。もうすっかりメジャーアーティストとしての地位を獲得した彼女らが出てくるというだけで緊張感すら漂う。第一声から飾り気のないみずみずしいロック・サウンドが会場を包むと、またもやモッシュやダイブが連発。その中でも決してペースを乱さず彼女らのサウンドを耽々とプレイし続ける彼女らには女の子だからなどといういいわけなど微塵も見せない堂々としたいさぎよさすら感じられた。その姿には、沖縄出身のバンドマンたちの夢、女の子たちがあこがれる夢の象徴的なイメージすら浮かんでくる。それが観衆を興奮させるのは、やはりこのイベントに対する思いの強さを表している。一見華奢な女の子が、あえて力強いロックに挑み、骨太なロックサウンドで彼女ら自身の芯の強さを見せ付けたFLiP。彼女らの躍進は、さまざまなシーンで明日を夢見る人たちの大きな支えとなるに違いない。
 
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◆公式サイト
http://www.flip-4.com/

5.ROACH
 
◆メンバーリスト:
taama(Vocal )、くぼっち(Guitar)、勝也(Bass)、Daisuke(Drums)
 
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いよいよこのイベントもクライマックス、主催者ROACHの登場だ。彼らのステージが始まる直前には、ステージ前にどっと観衆がなだれ込み、観衆はみな「やってやる!」とばかりに、それぞれが意気込んだ表情をたたええていた。ステージが始まると、もうフロアはいきなりのモッシュにダイブ、そしてウォール・オブ・デスと、すみからすみまで全く落ち着かない状況。「ただいま東京!ちゃんと盛り上がって帰れよ!」taamaが第一声を叫ぶ。その思いを、まるでバケツに入れた水をフロアに振り掛けるように発したナンバー「NO REASON IN THE PIT」で、プレイがスタートした。絶え間なく続くモッシュピット。異常なまでの気迫と熱気を会場に充満させたその盛り上がりはROACHのステージだからという理由だけでなく、彼らがこの日ここにいたからという特別な事実からきたものもあったにちがいない、
 
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taamaが去年のイベント開催を振り返り、その思いを告げる。「(今日来たバンドも)みんな言ってたよね?ここにワンマンで来るのが夢だって。俺もそう思っていたから、ここでこのイベントが出来るのがうれしくて。俺たちは沖縄のしょうもないバンドだからさ」皆で作ったイベントに感謝するtaama。ここまでの道程に対するその思いは今ここで最高の爆発を見せる。大暴れしていた観衆には、その彼の気持ちが確かに伝わっていた。彼らのプレイする曲が盛り上がるにつれ、フロアの勢いが増していく。だが観衆の暴れざまは単なる勢いに任せたいたずらではない。それぞれが宿命を抱えながらも、それをいっさい見せず「ここでそんなことをみせてどうするんだ!?楽しむしかないじゃないか!?」と、自らを解放させているかのようだった。
 
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大きなアンコールの波に押され、再びステージに現れた彼らは、最後にニュー・アルバムの「HIGH FIVE」をプレイした。
「さあ皆で 手を鳴らせ 何かがきっと変わるはず
さあ皆で 手を繋げ 僕らにはきっとできるはず
一人の幸せ願うよりも この世界の幸せ願おう」
このイベントの意味をそのまま表した言葉がフロアにふりかかると、みな「気兼ねする必要なんてないんだ」という空気を感じたに違いない。出だしから歌われるその詞の内容そのままに、みな一つになりこの空気を満喫する観衆。
 
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◆公式サイト
http://www.roach.jp/

6.セッション
 
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いよいよイベントもラスト、ステージに出演者一同が揃った。taamaのコールから全員のセッションが始まった。MONGOL800の「劇愛歌」を一口ずつ皆がまわし飲みするように歌い、ステージを楽しむ。
 
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このイベントにtaamaたちが込めた思いである「沖縄にもこんなにいいバンドがいるということを見せたい」という願いが、そのまま画として表された光景がそこにあった。最後には昨年に引き続いて沖縄舞踊のカチャーシーを出演者が踊りながら会場を回る。シャッフルするリズムが、イベントの終焉を心地良く迎える。最後は三線プレイヤーに楽器を渡されたtaamaが誇らしげにそれを弾き下ろすと、しっかりとステージを締めくくり、この盛大なイベントに幕を下ろした。
 
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昨年から続いたこのイベントが続くことを願ってやまない。taamaが語った金武町の話、イベントでプレイした各バンドの熱い思い、そしてカチャーシーを踊る面々とその様に狂喜する観衆。この日の熱い空気とともに沖縄という場所への憧れが筆者の心の中には深く刻まれた。ミュージシャンという存在ができることはしょせん限られたこと、と人は言うが、果たして本当にそうなのだろうか?taamaROACHのステージの最後に叫んだ「やってもダメだ、なんて分からないからやるのがロックだろ!?」という言葉は、その宿命に大きな疑問を投げかけた。もちろん国策などでその疑問に答えるなどということは想像もできないが、彼らの思いと行動、その真意を探り理解することは結果的にいろんな意識を変えていくことに繋がるのではないだろうか。
 
南国の日差しという明るいイメージを持つ沖縄は、本土の人間からも常に強い関心を持たれている。しかし、その実態を本当に理解している人はどれだけいることだろうか?毎日のようにニュースで流れている様々なトピックスが報じられる中でも、沖縄に住むのは同じ人間だ。そんな意味でロックという文化を通じ、沖縄と本土の距離を縮めようとするROACHのこの活動、そして彼らが沖縄に対する思いを強く主張することは、大きな意義を持っている。引き続いて彼らの動向とともにそこから広がる人々の意識の変化を追っていきたい。
 

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ROACH 3rd mini album
『OKINAMERICA』

DPCD-10002/2.500円(税込)
2012年10月03日リリース


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密着レポート第14弾 ROACH ~『No Reason in the Pit』TOUR FINAL ONE MAN~
http://www.beeast69.com/feature/29389