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TEXT:鈴木亮介 PHOTO:幡原裕治
2日目・25日(木)の出演者は7!!、たんこぶちん、The nonnonの3組。今年メジャーデビュー5周年を迎える7!!のNANAE(Vocal)はライブ前に「360度見られる空間でライブをするなんて不思議な気持ち。このような特別な空間だからこそ、よりみんなとひとつになって楽しめそう」とコメント。5人組ガールズバンドたんこぶちんはアコースティックスタイルでライブハウスに出演するのは今回が初めてとなり、「いつもの楽曲も少しゆったり聴いてもらえれば」とコメントしていた。 ◆The nonnon
最初に登場するのはThe nonnon。「暑くないですか?」西脇友美(Vocal & Guitar)はアコギを軽く触りながら、観客を気遣う。
ナオ(Drums)がカホンに座り、1曲目「くもりのち晴れ」がスタート。友美は目をつむりながら、透き通る歌声をゆったりと届ける。場内どこからともなく手拍子が起こり始めると、それに力を得てカホンとアコギの強さも増す。カホンの低音には灯油ストーブのような温かさがある。 続く2曲目「ルミナリエ」では、軽やかなカホンに友美のカズーも加わる。曲ごとにがらっと空気を変えるのはさすがだ。歌はまっすぐ、姿勢を崩さずに歌い上げ、間奏では客席を振り返り、あちこちに視線を送る友美。その流麗で真心のこもった歌で確実に心をつかみつつ、音を「届ける」ことも忘れない。一方ナオはカホンということもあり座った姿勢のままだが、左右あちらこちらに視線を送り、一人ひとりをピックアップする。 「みんなリズム感がいいこと!」「あたたかいね、手拍子がいっぱい」2人で感想を述べ合うと、友美のマイク位置を移動して先ほどと反対側を向き、3曲目は「エンドロール」。切なく力いっぱいの歌唱に、観客は手拍子をやめて聴き入る。機械作業的に全ての曲を盛り上げようとするのではなく、360度全てにいる各々がThe nonnonの音楽と真正面から向き合い、その魅力を堪能している。人間味があふれ、人肌に近い熱気があふれるThe nonnonのライブは、アコースティックでも変わらずロックだ。 どんどん熱気を帯びる会場。「こんなふうに蒸し暑い夏の日の歌を…」と前置きして4曲目は友美のソプラノが高く高く伸びていく「65%」。ナオも歌を口ずさみながら友美と一緒に詩の世界観、その土台の部分を創り上げる。
「ここに来てる人たちは音楽が好きな人たちですよね。私たちも同じ」「私は特にライブが好き。その日にしか味わえない感動があるし、人と対面して見にきてくれた人とその場の空間を共有できる、それがバンドをやっていて一番楽しいこと」…友美はほんの少し首をかたむけると、剣を刺すように正面を睨み、感情いっぱい内面からえぐり出して歌う。5曲目は新しいアルバムの中で”一番みんなに聴いてほしい歌”という「ヘドロになりそう」。間奏のギターの弾き方も先ほどとは別人のように内面に向き合い、暴力的に音を弾き出す。
観客は友美の魂こもった歌に感化され、無意識のうちに手拍子を始めた。アウトロで、友美はナオと目を合わせ、この曲を弾き始めてから初めて笑顔を見せた。そして、360度に向けて言い放つ。「ありがとう!」 漢気あふれる4分間から、6曲目は「まわる」、まずは観客とサビ部分の歌唱を練習。一発で成功すると、すぐさま演奏スタート。見事な一体感、手拍子が力強くなる。「サビで歌うからね、覚悟しておくように」と友美。その佇まいはさながらリングに立ったヒーローだ。 「大事だということを忘れて、傷つけてしまったことに、後から気づく…そういうことが少なくなればいいな。そういう思いで作りました」…最後7曲目は「ハネムーン」。ナオのカホンが軽快に歌う。「家に帰ったら、大事な人にやさしくしてあげてください」…友美の歌は強さと優しさが共存する。「幸せはここにあるなんて平和ボケだよな この景色さえも当たり前じゃなくなるよ」そんなフレーズを置き土産に、The nonnonのステージが終わった。
◆The nonnon メンバー
西脇友美(Vocal & Guitar) ナオ(Drums) ◆セットリスト M01. くもりのち晴れ M02. ルミナリエ M03. エンドロール M04. 65% M05. ヘドロになりそう M06. まわる M07. ハネムーン ◆The nonnon 公式サイト http://the-nonnon.com/
◆インフォメーション
・2016年03月27日(日)【長野】松本Alecx ・2016年04月15日(金)【愛知】名古屋ell.SIZE ・2016年04月16日(土)【愛知】名古屋CLUB UPSET ・2016年04月30日(土)【千葉】LOOK TEAM The nonnon Fes!! 千の葉をつなぐでござる ・2016年09月04日(日)【千葉】稲毛海浜公園 野外音楽堂 ◆たんこぶちん
2組目はたんこぶちん。冒頭、MADOKA(Vocal & Guitar)が一人登場し、ギターのチューニングを終えると「私一人なのでみんなで一緒に歌いたい」と観客に呼びかける。自分から見て右半分の観客と左半分の観客にそれぞれ異なるコーラスを求め、「ハモりましょう」と促す。このMADOKAの牽引力は、初めての場所でも健在だ。
1曲目は「Alright!!」。MADOKAの歌声は、まぶしいほどに、真っ白で明度が高い。大舞台でのそれとなんら変わらない、スケールの大きさがある。全力でみんなを引っ張っていくという覚悟と力強さのあるステージに、ぐいぐい引き込まれる。「たくさんの人に360度囲まれちゃってて…後ろにお客さんがいるのが新鮮です。ツンツンとかしないでくださいね」とはにかむ。 急に渋いギターのフレーズが弾かれたその瞬間、パッと空気が変わる。続く2曲目は事務所の先輩にあたる中島みゆきがももいろクローバーZに提供した「泣いてもいいんだよ」のカバーだ。遠くに全力で届けようと歌い上げていたMADOKA、この辺りで観客に届いていることを確信すると、歌い方に緩急をつけ、落ち着いた歌声でさらに魅せる。
2曲をMADOKA1人で歌い終えると、他のメンバー4人を呼び込む。5人が円になって向かい合う。普段のバンドTシャツとは違う私服のような衣装も新鮮だ。メンバーの家に来たかのような、文字通りアットホームな空気が広がる。
5人そろって最初の曲は「花火」。 MADOKAはいっそう力強く歌い、そこにコーラスが加わり一気にスパーク!観客の手拍子も曲の持つ華やかさをさらに際立たせる。 「めっちゃ視線感じる!」「こういうスタイルは初めてで楽しい!」口々に感想を言い合うと、「寒い夏といえば皆さん的には何ですか?」と観客に質問。様々な回答が飛び交った後、MADOKAが「私はアイスクリームを落ち込んだときに食べる。心の癒し…お子ちゃまだなぁ私」と語り、自分にとってのヒーロー的存在を曲にしたという「アイスクリーム」を演奏スタート!CHIHARUとNODOKAがカズーを吹き、陽気さ全開。シンプルに楽しい曲に、カズーに、振り付け。観客もたんこぶちんの5人も心から笑い合い、笑顔が満開になる。 会場が一つになったところで、最後の曲。「弱くて自信がない自分とさよならして、強い自分になって自信を持ってみんなの前に立ちたい」と決意を語ると、最後は”お別れの曲”ということで「Bye Bye ~君といた春~」。アコギを持つYURIが切ないフレーズを弾く。落ち着き放ったその爪先から創られる安心感が360度伝播し、観客の心を共鳴させる。MADOKAの歌声も切なさを増す。お別れの寂しさと、前向きな気持ちが、歌に乗って広がる。 たんこぶちんの5人がぐるりと360度向かい合って、その周りを包み込むように360度着座の観客が囲み、皆で同じ一つの中心に向けて視線を送ることで、単に距離が近いというだけでない一体感が創出される。元気いっぱいの曲は元気いっぱいに、切ない曲は切なく、5人と同じ気持ちを共有できる。音楽で一つになるとはこういうことだよね、と思い出させてくれる30分間であった。
◆たんこぶちん メンバー
MADOKA(Vocal & Guitar) YURI(Guitar) NODOKA(Bass) HONOKA(Drums) CHIHARU(Keyboard) ◆セットリスト M01. Alright!! M02. 泣いてもいいんだよ M03. 花火 M04. アイスクリーム M05. Bye Bye ~君といた春~ ◆たんこぶちん 公式サイト http://tancobuchin.jp/
◆インフォメーション
・2016年04月09日(土)【千葉】柏PALOOZA たんこぶちん presents 「We are the Girls Band !!!!!」 vol.16 ※対バンは後日発表 ・2016年05月12日(木)【東京】TSUTAYA O-WEST ◆7!!
いよいよ最後の出演者、3組目は7!!だ。「想像以上に近いですね!」「本当よ、こんな背中にいる?」…観客からMAIKOのおでこ付近にガンマイクがセットされていることを指摘されると、会場が爆笑で包まれる。7!!のアコースティックライブでは普段通りのやりとりだが、この心理的にも物理的にも近すぎる距離感は、初見の観客には新鮮に映るだろう。
演者も観客もリラックスしたところで、演奏スタート。1曲目「メロディ・メーカー」のイントロが弾かれると客席から「やったー」との声が挙がる。細やかなギターフレーズのワクワク感に、キラキラなカホン。そして、笑顔いっぱいに皆を引っ張るのはやはり、ボーカルNANAEだ。ここがどんな場所であるとか、360度に観客がいるとか、7!!のライブはそんなことを一瞬で忘れさせてくれる。 すかさずMICHIRUが次の曲のイントロを弾く。2曲目は「弱虫さん」。みんなで一つの音楽を作っている感じだ。「デビューして今年で5周年だけど、この感覚は初めて!」「お客様にお尻を見せるなんていうのはね…」MAIKOとNANAEが感想を語る。「後ろからも前からも声がきて、こんなに盛り上がることあります?」「2曲目にして息が切れてる!」「うれしい息切れ、幸せです!」「こんなにも近くで”ランラン、フォーリンラブ”が聴けるのは初めて。今までで一番一つになっている気がします」 「私たちはバンドスタイルでやることが多くて…これはカホンという楽器で」NANAEのMCには、初めてライブに来る人や楽器に詳しくない人に対しても、さりげない気遣いが含まれている。万人に愛されるゆえんだ。 続く3曲目は別れの季節にぴったりなバラード曲「この広い空の下で」。アコースティックver.ではMICHIRUがどっしりとしたベースラインをアコギで表現し、KEITAはその上に軽やかなリフを乗せる。土台を作る男子2人に挟まれてMAIKOは自由に、楽しさ全開のカホンとコーラス。NANAEの歌声は、単に”透き通る”という一言では表し尽せない、絹のようなつや、麻のような爽やかさ、羽毛のような温かさが共存する。
長い拍手が収まると同時に、MICHIRUが静かに次の曲のイントロを爪弾く。そこに、NANAEの歌声が乗る。4曲目は「オレンジ」だ。うっとりと聴き入り、音に酔いしれる観客。アウトロまで気を抜かないMICHIRUとKEITA、最後MICHIRUは弦をキュッとグリスし、締める。
MCを挟んで後半戦はアップテンポで疾走感のある「ラヴァーズ」から、元気いっぱいにスタート。MAIKOのカホンとKEITAのギターが綺麗にそろう。歌が終わってからのアウトロでもさらに盛り上がるこの曲を経て、6曲目は新曲「世界を回せ!!」だ!ギターの遊び心もたっぷり。”天使すぎる”だけじゃないNANAEの歌声も楽しい。クライマックスに向けて、手拍子も最高潮だ。 そして最後の曲は「ドキドキ」。テンポが早まっているわけではないのに、どんどん加速していく勢いを感じる。その演奏の勢いを止めないように、全力で手拍子を続ける観客。”全員で創り上げる”という一体感を表す表現が決して大げさではない、すさまじいスケールのライブだ。 その勢いは本編を終えても衰えることを知らない。いったんメンバーがステージを去っても、アンコールの「めんそーれ!」コールが360度渦巻く。予定にない再登場を果たした7!!の4人は、「盛り上がる曲で最後終わりたいですね!あれでいい?」…と、リハーサルなしに「さよならメモリー」を演奏!観客の拍手が今の心拍数をそのまま表すようにどんどん加速していき、つられて曲のテンポもいつも以上に速くなる。最後は観客一人ひとりにアンコールの礼を言うようにしっかり体を向けて顔を合わせる4人。温かい拍手に送られて会場を後にした。
◆7!! メンバー
NANAE(Vocal) MICHIRU(Guitar) KEITA(Bass) MAIKO(Drums) ◆セットリスト M01. メロディ・メーカー M02. 弱虫さん M03. この広い空の下で M04. オレンジ M05. ラヴァーズ M06. 世界を回せ!! M07. ドキドキ -encore- E01. さよならメモリー ◆7!! 公式サイト http://7oops.com/ ![]()
◆インフォメーション
ニューアルバム『アニップス』 ・2016年03月09日(水)発売 7!!のうぷぷな日2016~どぅしぐゎーと対バンだってばよー!!~ ・2016年04月29日(金・祝)【福 岡】DRUM LOGOS w/ あゆみくりかまき ・2016年05月01日(日)【愛 知】名古屋 Electric Lady Land w/ ケラケラ ・2016年05月08日(日)【大 阪】梅田シャングリラ w/ カサリンチュ ・2016年05月14日(土)【東 京】下北沢GARDEN w/ ウソツキ ・2016年05月22日(日)【北海道】札幌DUCE w/ Softly
◆TSUTAYA MUSIC PLAYLIST(ツタプレ) ホームページ
http://www.tsutaya.co.jp/music/playlist/ ◆関連記事
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