特集

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TEXT:児玉圭一 PHOTO:幡原裕治、矢沢隆則、吾妻仁果

国内のロックシーンの最先端を駆け抜け、輝き続けるフロンティアたちの横顔に迫るインタヴュー特集「ROCK ATTENTION」。第37回に登場するのはSHOW-YAだ。
 
1980年代後半、男性バンド主導だったハードロックシーンの中から抜群の演奏力とパワフルなライヴパフォーマンスを武器に頭角を現し、瞬く間に”クイーン”の称号を与えられたSHOW-YA。四半世紀を越えるその長い歴史の中では、1991年のヴォーカル寺田恵子の脱退、1998年の活動終了という危機もあった。しかし、不屈の寺田恵子の呼びかけにより2005年に再結成を果たしたSHOW-YAはファンの熱い支持に応えるべく精力的なライヴ主体の活動を繰り広げ続け、来年2015年にはデビュー30周年という輝かしいアニヴァーサリーイヤーを迎えようとしている。
 
その記念すべきデビュー30周年プロジェクトの第1弾として今回リリースされるのが、SHOW-YA初のカヴァーアルバム『Glamorous Show~Japanese Legendary Rock Covers』だ。アルバムに収録された全11曲は、80~90年代の日本のロックシーンを一世風靡した男性ロックバンドのヒットナンバーのみという大胆不敵なラインナップ。これは否が応でも盛り上がらずにはいられない。
 
今回のインタヴューで寺田恵子は、注目のカヴァーアルバムの制作秘話を始めとして、全収録曲の解説、そしてライヴに賭ける情熱とデビュー30周年に向けての抱負を1時間に渡って語ってくれた。常に自らの限界を打ち破るべく全身全霊で闘って来た寺田恵子の熱い想いを是非感じていただきたい。
 

◆SHOW-YA プロフィール
【SHOW-YAプロフィール】
メンバーは寺田恵子(Vocal)、中村“captain”美紀(Keyboard)、角田“mittan”美喜(Drums)、仙波さとみ(Bass)、五十嵐☆sun-go☆美貴(Guitar)。1982年、ヤマハ主催のバンドコンテストのレディース部門で最優秀グランプリバンドを受賞。1985年、東芝EMIよりメジャーデビュー。その後の5年間で11枚のシングルと8枚のアルバムをリリース。7thアルバム『Outerlimits』は、60万枚を売り上げた。8thシングル『限界LOVERS』は30万枚突破のロングセラーとなる。武道館公演の他、87年からは自らのプロデュースで女性アーティストだけを集めたイベント『NAONのYAON』を毎年日比谷野音で開催。1991年2月、方向性の相違から寺田恵子が離脱。その他のメンバーは、ステファニー・ボージャスをヴォーカルとして迎え、第2期SHOW-YAをスタート。その後渡米するなど精力的に活動を続けたが、1998年9月SHOW-YAとしてのバンド活動を終了する。以降は各自ソロ活動を開始。その間、寺田恵子は1992年に『PARADISE WIND』(バルセロナオリンピックNHKイメージソング)でソロデビュー。現在までに、シングル7作品、アルバム5作品をリリース。ミニアルバムを4枚発表している。
デビュー20周年の2005年、デビュー時のオリジナルメンバー5名にて再結成。2008年には17年ぶりに『NAONのYAON』を開催する等、ライヴを中心に、精力的に活動を開始。そして2012年、22年ぶりとなるニューアルバム『GENUINE DIAMOND』をリリース。2013年には23年ぶりのシングル「V.S. MYSELF」をリリース。今年2014年『NAONのYAON 2014』を皮切りに、30周年イヤーに向けて新たなスタートをきる。

 

 

選曲は「同じ時代を生きた友達や共に頑張った人達が中心」。 「カヴァーするバンドのパワーを殺さず、かつSHOW-YAの歌い手として楽曲の魅力をどう表現するか」
—10月22日に『Glamorous Show~Japanese Legendary Rock Covers』がリリースされますが、男性バンドの曲のみを収録したカヴァーアルバムというコンセプトを30周年記念プロジェクトの第一弾として選択した理由を教えてください。

 
寺田:SHOW-YAデビュー30周年ということで何かをやろうと何回かミーティングをして、その中で「X JAPANの『紅』をカヴァーしてみたらどう?」という提案が(スタッフから)あり、私も面白い、やってみたいと思いました。それがきっかけで、どうせやるならカヴァーアルバムをやってみようかと。コンセプトをわかりやすくするため、男性バンド括りで作ることになりました。初めは「男バンドに限らず…」という意見もあったけどね。
 

—カヴァーアルバムはソロヴォーカリストの方が出すことが多いですが、バンドで、しかも日本の男性バンドのカヴァーだけを女性アーティストが出すのは史上初の試みだと思います。

 
寺田:そう言われるまで、自分たちでは意識してなかったね(笑)。80年代の後半はすごいバンドブームだったので、女バンドよりは男バンドのカヴァーの方が曲の選択肢が増えたかなって思います。
 

—カヴァーアルバムは選曲が重要なポイントになると思います。今作の選曲のポイントを教えてください。

 
寺田:基本的には自分達に縁のある人やバンドを中心に選びました。自分達がリスペクトしていて影響を受けたバンドとなると、すごく上の世代のバンドになってしまうじゃないですか?それで男のバンドっていう括りになると、それこそグループサウンズとか、そっちの時代まで遡ってしまうので…
 

—70年代のニューロックとかですね。

 
寺田:うん。だから、それよりも下の世代で、自分達と同じ時代を生きた友達や共に頑張った人達を中心に、メンバー全員で選びましたね。そこからちょっと下の世代のバンドに関しては、みんなで「このバンドカッコいいよね」とか「この曲良いよね」とか、あとはメンバーがとっても好きで、以前から私に歌わせたいと思っていた、という曲を選んでいます。
 

—そうなると、最初に候補に挙がった曲はやはり…

 
寺田:それは、やっぱり「紅」(笑)。カヴァーアルバムを作ろうというコンセプトがそこから始まっているので。
 

—それが発火点になったわけですね。

 
寺田:そうですね。X JAPANSHOW-YAと同じ千葉県出身バンドだし。あと、もう亡くなっちゃったけどTAIJIくんは中学生の時から知っているので…。
 

—このアルバムを聴かせていただきまして、すごくライヴ感がみなぎっていて、まるで一発録りのような印象を受けました。

 
寺田:あっ、ほぼそうですね(笑)。基本、「ちゃんと作る」…って言い方も変なんだけど、きっちり作り込むというやり方もあるんだけど、自分の場合はライヴで歌うということを想定してやっているので。だから綺麗に歌うというよりも、そのカヴァーするバンドのパワーを殺さないで、なおかつ自分がSHOW-YAとして歌うときに、その楽曲の魅力をどうやって表現するんだろう?という想いで歌いました。
 

—その曲の魂を自分らしい所でつかんで、あとはエモーション一発で行くというか。

 
寺田:そうですね。歌入れは多くても2回くらいです。それほどテイクは重ねてはいないですね。HOUND DOGの「嵐の金曜日」に至っては、「ちょっと試しにやってみようか」って…普通はレコーディングの現場ってキックコンソールがあって、レコーディングブースがあって、壁一枚隔てられているじゃないですか。それがこの曲では、エンジニアの横にピアノを出して、そのピアノの前にマイクを立てて、その前に私が立って、顔を見ながら、「じゃあ、ちょっと軽くやってみようか」って言ってやったテイクがアルバムに収録されているんです。
 

—それは貴重なエピソードですね。

 
寺田:みんなに「これでもういいんじゃない?」って言われて、「ウソでしょ!?これからじゃないの!?今の録ってたの?」って言ったら「録ってるよ」って(笑)。
 

—このテイクはすごく良いですね。オリジナルのドラマティックに盛り上がるアレンジに対して、敢えてピアノ伴奏だけで歌い上げているこのヴァージョンは嬉しい驚きでした。

 
寺田:あっ、本当に?ありがとうございます。本当はね、ヒット曲というかみんなが知っている曲っていうと「ff(フォルティシモ)」になると思うんですよ。でもこの曲には思い入れがあって、しかもバンドでじゃなくて、「今回だけはゴメン、ピアノと歌だけにさせてくれないかな」っていうのをみんなにお願いして。男バンドの括りで今回は曲をチョイスしているんだけど、この曲に関しては女性として、素直に優しい感じで歌いたいと…。
 

—メイクを落とした寺田さんの素の表情が見えるような透明感がありました。

 
寺田:うんうん、そういう形が…バンドだけど、そういう曲があっても良いんじゃないかなって。で、「レコーディングしますよ!」ってならないうちにレコーディングは終わってしまったので(笑)。まあ、リハーサルの時からCaptain中村“captain”美紀)と2人で「あうんの呼吸」でやろうと練習もしていたし…私、今アコースティックで、ソロでライヴをやっているんですよ、弾き語りとかを。それを時々Captainにピアノで手伝ってもらっていたこともあって、今回のレコーディングも割とすんなりできたように思います。
 

—レコーディング自体は短期間で完了したのでしょうか?

 
寺田:いや…結構長かったですね。長いというか、レコーディングの間にライヴとか色んなものが入っていたので、飛び飛びのスケジュールで。期間でいうと、6月の終わりくらいから入っています。準備期間も含めると4~5カ月はかかっているんだけど、実質的なレコーディング時間はその半分以下ですね。
 

—それでは収録曲に関して、1曲目から順に伺っていきたいと思います。

 

 

アルバム全曲コメント
【M01. 紅/X JAPAN】

寺田:とにかくテンポが速いしキーも高いので、メンバー全員が「この曲に戦いを挑むんだ!」というぐらいの勢いで、原曲の良さを殺さぬよう全身全霊でやりました。私自身がこの曲に関して特に気をつけた部分は、とにかく重たく、どっしりし過ぎないということ。風のようにウワーッと(笑)。あとはギターに関しては元々X JAPANはツインギターなので、その辺でsun-go五十嵐☆sun-go☆美貴)は苦労したんじゃないかなと思います。
 

—個人的には、この曲に限らず、アルバム全体に今のビート感が漲っているなという感じがしました。基本的にオリジナルに近いアレンジだけど、今のビート感があるなと。

 
寺田:あっ、そういう感じがしたんだ?うちのリズム隊が頑張ってくれたお陰ですね(笑)。でも本当に「オリジナルの感じを崩すのはなるべくやめよう」っていうのは話していたんです。でもやっぱりSHOW-YASHOW-YAなので、SHOW-YAならではの良さも入れて行きたいっていう部分もあり。あとはキーボードがいないバンドじゃないですか、X JAPANって。だからキーボードに関してはCaptainも苦労して入れていましたね。
 

【M02. 虹/L’Arc~en~Ciel】

寺田:これはとても綺麗な曲で、どちらかというとSHOW-YAが得意とするハードな曲ではないので、ヴォーカルを聴かせて、メロディの綺麗さの中に力強さも含ませました。演奏的にはどっしりした感じで仕上がっていて…ただhydeくんの独特な歌い回しってあるじゃないですか?あのゆったり感。それ(を自分なりに表現するの)がちょっと大変だったかな。
 

—僕の個人的な印象では寺田さんのヴォーカルが凄く艶やかだなと思いました。

 
寺田:ああ、本当に?嬉しい(笑)。L’Arc~en~Cielは自分達より下の世代になるので、80年代のLAメタルみたいな時代とは違うサウンド感があるじゃないですか?だから、それを自分達に表現できるのかなっていう不安はレコーディング前にあって、カヴァーするにあたって改めて何回も聴き返したときに、不安は正直ありましたね。
 

【M03. HOWEVER/GLAY】

寺田:これはレコーディングが大変だった!重くならなくて、軽過ぎなくて…淡々としていながら、曲の持つ大きな世界、ダイナミクスを表現するのは大変だったし、歌に関してはとってもレンジ(=音域)が広い曲なので、レンジの広さを持ちながら、自分独自の表現力も入れて行かなければいけないというのは本当に大変だったです。
 

【M04. MARIONETTE/BOØWY】

寺田:BOØWYも、「B・BLUE」とか何曲か候補曲があったんだよね。同じレコード会社の先輩だったし、武道館のイベントで共演した思い出もあるし…
 

—当時BOOWYは飛ぶ鳥を落とす勢いでしたね。

 
寺田:うん。女の子だけじゃなくて男のファンもすごく多かった。それでBOOWYに憧れてバンドを組んでデビューしている90年代のバンドがいっぱいいるじゃないですか?そういうこともあって、縁の深いBOØWYを選びました。彼らのああいうビートはSHOW-YAではあんまり表現したことがないんだけど、そんなに違和感はなかったですね。
 

—ちょっとニューウェイヴっぽい曲ですね。

 
寺田:うんうん。実際そういう曲を自分も子どもの頃に聴いていたし、すんなりレコーディングできた曲でしたね。
 

【M05. JAM/THE YELLOW MONKEY】

寺田:THE YELLOW MONKEYは、わりと年代も近いので…デビューは彼らの方が遅いのかもしれないけど、バンド活動自体はほぼ同じ時期に開始しているんですよ。「JAM」はレコーディング時に初めて聴いて、「ああ良い曲だな」って。詞も良いし、曲も良いし…個人的にはああいうメッセージソングっていうのは大好きなんですよ。この曲もSHOW-YAの中ではそんなにやっていない曲調かもしれないけど、メンバーのみんなもこれぐらいのビートの感じもすごく好きなようです。
 

【M06. CRAZY NIGHT/LOUDNESS】

寺田:先輩の二井原実とは一緒に西寺実というユニットを組ませてもらっていたり、ライヴも一緒にやったりとかしていたので…その時に私はコーラスで参加していた曲なんですが、メインで歌うのはこれが初めてです。私は英語のカヴァー曲はライヴを除くとほとんど歌ったことがなくて…。演奏に関しては、やはりSHOW-YAメンバーの得意ジャンルなので、みんな楽しそうに生き生きと演奏していましたね(笑)。それに対して私は、とにかく英語の発音を人が聴いてちゃんと英語に聴こえるように、英語の分かるエンジニアの方に「この発音で合ってる?」ってチェックしてもらっていましたね。
 

—そういうことを気になされるんですね?

 
寺田:やっぱり気にしますよね。だって全編英語じゃないですか?それで例えばLOUDNESSのファンがこれを聴いた時に「あ、カッコ悪い、この英語」っていう風にはなりたくないし。コーラスで参加していた頃から二井原の歌を傍でずっとカッコいい!と思って聴いていたわけだから、それを台無しにしてはいけないので。
 

【M07. 嵐の金曜日/HOUND DOG】

寺田:中学か高校一年生くらいの時に、テレビの音楽番組でこの曲をやっているのを聴いてすっごい感動したのを覚えています。今回のラインナップを見てもらうと分かように、(カヴァーしたいバンドは)ほぼキーボーディストがいないバンドばっかりなんですよ。鍵盤のいるバンドの曲もやりたくて、「キーボーディストがいるバンドってどれだろう、どれだろう?」って探していたら「あっ、HOUND DOGがいるじゃないっ!」って。
 

【M08. MORE/EARTHSHAKER】

寺田:EARTHSHAKERも大先輩だけど、とっても仲の良いバンドで…10代の頃からすごくお世話になっているバンドです。MARCYとは西寺実でずっと一緒に歌っていたから、MARCYの歌い癖っていうのが分かるのね!だから自分の歌にしようと思っていても、どうしても、その癖が出ちゃうんだよね。で、EARTHSHAKERには「RADIO MAGIC」っていう有名な曲があるじゃないですか?その曲と「MORE」とで「どっちにする?」っていう話があったんだけど、私は「MORE」が歌いたかった。
 

—どちらも甲乙付け難い名曲ですが、「MORE」はやっぱり最高傑作だという感じがしますね。

 
寺田:ライヴであのイントロが始まるとお客さんが「ウォーッ!」となるでしょ?やっぱりすごい名曲だし、リフも完璧だし。ただ、SHOW-YAでこの3連のドンドコドンドコドンドコっていう曲はあんまりないんですよ。それで、一見簡単そうでも演奏陣にとっては難しい曲だと思うんですよ。カヴァーしたことがある人は分かると思うんだけど、ずっと3連をキープするっていうのは難しくて。
 

【M09. 激しい雨が/THE MODS】

寺田:THE MODSは中学生の頃、受験勉強の時にすっごくハマって聴いていたバンドなんですよ。まあ、勉強してるっていうよりは、ずっと流していて「うおーっ、カッコいい!」って言っていたんだけど(笑)。私もハードロックはやっているけど、意外とパンキッシュなものとかロックンロールとかもすごく好きなので。それで「THE MODSとかはどうだろう?」という話をメンバーにしたら、ドラムのミッタン角田”mittan”美喜)もTHE MODSが大好きで、彼女は元々パンクとか音数の少ないバンドが大好きなんですよ。パンキッシュな感じは、今までのSHOW-YAとは違うサウンド感を楽しめると思います。
 

—この曲も詞が良いですね。今の時代にフィットしているというか。

 
寺田:いいよね!メッセージを持つ曲っていうのは、やっぱり時代を超えても、ずっと心の中に響いてくるじゃないですか?ロックンロールとか、80年代の前後には、そういうメッセージのある曲が多かったから…だから、自分でも歌いたかったので選んだけど、意外とハマれて良かった(笑)。正直言うと、私はわりとノペッとした歌い方をするタイプなので、そういう部分では、パンキッシュというと変なんだけど、そういう歌を自分がどうやって表現できるのかなっていう不安は若干あったけど、まあ、すごく好きな曲なので(笑)。
 

【M10. Runner/爆風スランプ】

寺田:爆風スランプもアマチュア時代から良く知っていて、同じコンテストの全国大会に出たというつながりもあって、この曲は入れたいなって思いました。この曲は、重た過ぎず、軽過ぎずのビートですね。あと、やっぱり、サンプラザ中野くんの独特な歌い方とか、こう、ずっと「ンモーッ!」ていう感じの歌い方をするじゃないですか?だから、それがあっての、たぶんトータルでの「Runner」だと思うのね。それを軽く「走る♪走る♪」と歌うと、やっぱりあの良さっていうのは出ないんだと思うんですよ。ただ、私はああいう形で「グワーッ」と歌えるタイプではないので、例えば自分が爆風スランプの中にゲストで呼ばれて歌いに行った時は、「こうやってたぶんお客さんに向って歌うかな」っていうのを想像しながら…。
 

—シミュレーションをしていたんですね。

 
寺田:うん、シミュレーョンをして歌ったんですよ。最近、中野くんとは一緒によくライヴをやる機会があって。それから一緒によく海外へライヴで行っていたので…爆風スランプはそれぞれ独自の世界観を持っている人達が集まって、その世界観のまんまバンドになっているじゃないですか?「ロックンロールだよ」とか「これはファンクだよ、これはヘヴィメタだよ」とかじゃなくて、それがみんな一緒になっているから…あのノリを保ちつつ、勢いがあって、本当にこう力強く、走っているんだっていう、「俺たちは走ってるっ!」みたいな感じを出すっていうのは、やっぱり、大変と言えば大変だったかな。
 

【M11. ROSIER/LUNA SEA】

寺田:LUNA SEAは後輩バンドなんだけど、メンバーの真矢くんとかちゃん(河村隆一)とは面識もあるし、仲良くしてもらっているので、LUNA SEAの曲はやりたいなと思ってました。LUNA SEAの曲って、SHOW-YAと同じように、バンドの独特のグルーヴ感があるんですよ。パッと聴くと「あっ、できるんじゃね?」って思うのかもしれないけど、「いやいやいやいや、意外と難しいんですよ!」みたいな(笑)で、ちゃんの声はすごくクリアかつ低音も響いて綺麗な声で、高音もすごい綺麗じゃないですか?レンジがすごく広いんだけど、そのレンジの広さの中で、ずーっと綺麗なのね。GLAYの「HOWEVER」も大変だったんだけど、実を言うと、自分的にはLUNA SEAの曲が一番大変だった!
 

—そうだったのですね。

 
この曲はCaptainが大好きで、カラオケでよく歌っているんですって。それで、「この曲恵子に歌ってもらいたいんだよね」って言われて軽く返答したら、驚くほど大変で(笑)。間に英語のセリフがあるじゃないですか?あれも早口言葉のようで大変だった…あれ、メンバーがやってくれるもんだと思っていたら「えっ、恵子がやるんじゃないの?」って言われて。ここは声が違う方がいいと思ったんだけど、「英語の発音も含めたら、恵子がやった方がうまくハマるはずだから」って言われて…それでエフェクターをかけて、私の声じゃないという感じにしました。女の人って高音は何とか頑張ることはできても、低音をずっと響かせるのって無理なんですよ。一瞬の低音は保つことができるのね。だけど、Aメロの所とか、「輝くことさえ~♪」(歌う)って、これをずーっと保っていないといけないと、この声帯の辺りがね、すっごい疲れるの。底と、後は上しかないじゃん!中間が無いんだもん!だから、本当に大変だった(笑)
 

 

「to be continuedにしたかった」「みんなを元気にさせたい」 今後の展望は

 

—改めて、今作でLUNA SEAの「ROSIER」を最終トラックに持ってきたのは、どういった意味合いがあるのでしょうか?

 
寺田:やっぱり、to be continuedにしたかったっていうのはあるね(笑)
 

—あ、それでは『Glamorous Show Volume 2』が、第2弾があるということですね?

 
寺田:一応今回のアルバムは第1弾とうたっていて、それで第2弾があるかどうかっていうのは、たぶんこのアルバムにかかっているのかもしれないけど…。
 

—試金石的な意味も持っていると。

 
寺田:うん。でも自分達の中では、やっぱりこれで終わりにしたくはない。第2弾がカヴァーアルバムになるのか、オリジナルアルバムになるのかは分からないけど…でも、やっぱり「出しました」、それで「終わります」じゃなくて、そこから先に何かがつながるようになったら良いなという想いも込めていますね。
 

—今作は全11曲ですが、今回録音したけど収録できなかったという曲はありますか?

 
寺田:それはないです。ただ、やりたかったバンドの曲は、まだいくつかあります。
 

—それらのバンドの曲は次回以降のお楽しみということですね…このアルバムはデビュー30周年記念第1弾で、これからまた様々な30周年記念プロジェクトが次々に打ち出されると思うのですが。正確には来年がデビュー30周年ですよね?

 
寺田:はい。ただ来年の前半戦は『NAONのYAON』の準備もしなければいけないので。30周年だけど、やっぱりコンスタントにやっていくイベントもあるので、その準備は今年の夏から始めていて。出演者が凄い人数なので、みんなのスケジュールを押さえていかなければいけないから、もう年末ぐらいからその準備に取り掛からないといけないんだけど…それと並行して曲も書いて行かなければいけないし…でもSHOW-YAって基本はライヴバンドなので…。
 

—そうですよね。

 
寺田:音を作るというのもすごく大きなことだけど、やっぱり作った時にその曲に思い入れってあるじゃないですか?だから次々に生まれた曲を出すっていうのは、それはそれで良いんだけど、ただ、1曲1曲想いを込めて作ったものは、やっぱりみんなに、たくさんの人に聴いてほしいから…『GENUINE DIAMOND』っていう22年ぶりのアルバムを2012年に出したんだけど、それはSHOW-YAが再結成してからもう7年くらい経ってからのアルバムだったんです。出そうと思えば出せないこともない、でも出すからには責任を負わなければいけないわけだし、良いものを作っていきたいと思うと、それだけの時間がかかってしまって。アルバムを出すのがミュージシャンとしての役割ではなくて、出すからにはちゃんと意味と想いがあって出さなきゃいけないと考えてます。
 

—なるほど、それはよく分かります。

 
寺田:ただ、30周年っていうね、重いモノもあるので。もう二度とやってこない30周年っていうのがあるから!
 

—30周年を迎えられるバンドってなかなかいないですからね。

 
寺田:うん、そういう部分では、30周年のSHOW-YAっていうのを見せたいっていうのもあるんだけど、ただ、無理やり曲を作ってもしょうがないので…。
 

—オリジナルアルバムは未定ということですね?

 
寺田:まあ、未定ですね。ただ、出したい気持ちはある。それよりも、今回のアルバムを作った時に思ったのは、今までSHOW-YAでカヴァーアルバムって1回もチャレンジしてないし、日本のバンドのカヴァーはライヴでもやっていないので、実際にやってみてすごく勉強にもなったし、それぞれのバンドの…やっぱり売れているバンドっていうのは曲も含めてすごい力を持っているじゃないですか?
 

—間違いなく持っていますね。

 
寺田:で、それを演奏する時に、本当に自分達が「もう明日死んでもいいや」っていうくらいに魂を込めてやらないと、その楽曲とアーティストに対しても失礼だから…で、そういう風にやった時に、本当に「こんなに疲れるんだ、こんなに大変なんだ」とか(笑)、それをやり終えた後に達成感があるのと、曲を流して聴いた時に、何か自分達も元気になれるというか、「こんなに頑張って乗り越えたじゃないか!」という想いがあって…このアルバムを聴くと元気になれるんだと思うの、世の中の人が。そのチャレンジしているという想いとか、それから楽曲自体が持っているパワーとか、そういうのも含めてね。今はみんなを元気にさせたいなっていう想いが強いので、だから、すっごいライヴをやりたいよね。
 

—確かにこのアルバムを聴いているとすごく元気が出ます。もちろん、この中からライヴで何曲か演奏するんですよね?

 
寺田:そうですね、このアルバムの楽曲もやるし、あとSHOW-YAの曲にも元気になれる曲がいっぱいあるので。今は、とにかく何か知らないけど、元気にさせたいの!そういう元気にさせられるような楽曲を歌って。
 

—これから30周年に向けてのハードなライヴが待っていますね。

 
寺田:だって実際に、メンバー全員50歳を越えているので。それで、50歳を越えているメンバーの、それも女だけで、速い曲ばっかりでライヴをやって。実際、50女がやるようなパフォーマンスじゃないって自分たちでは思っているのね。本当にみんな走り回るし、汗だくだし。女なんか汗なんかかきたくないんですよ、正直言うと!化粧落ちちゃうからっ!あのー、若くないのでっ!でも、本当になりふり構わずにやっていますね。SHOW-YAの良い所は1回1回のライヴを本当に「これが最後だ」と思ってやっているので、手抜きがないんですよ。
 

—それはもうお客さんのためにですね。

 
寺田:うん。だから、みんなが観に来てくれているから、みんなが楽しんでくれるように、自分達は最大限の努力をしようって。それで「限界を超えよう」って。もう、2、3年前から限界越えになって来ているんだけど(笑)。その限界超えをやることが楽しいって思うのと、あとは限界を超えた所にまた次の道が拓けているのも事実だし。最近のSHOW-YAは限界を超えることに命を賭けているから。だから、世の中的には辛かったり、色々あったりするじゃない?だけど、辛いけど、辛いのを越えた所にまた何か道が拓けるんだっていうことを、私たちも身体を張ってやっているし(笑)、たくさんの人に体験してほしいんだよね。
 

—限界を超えた先に何が待っているのか…。

 
寺田:(笑)。うーん、行き着く所が何なのかは分からないけど、行き着く所を探すっていうよりは、とりあえずぶつかってみたら、「あっ、行けちゃった」っていう感じでも良いのかなって。そういうバンドがいても良いんじゃないって思うし、そういうバンドが一生懸命にね。だから、一生懸命やることがかっこ悪いんじゃなくて、人は一生懸命に生きないといけないんだよ、どっちみち。で、誰かのためじゃなくて、自分のために生きるんでしょう、結局は。だからその部分では、それを身体張ってこれからもやって行きたいから、今はレコーディングが終わったばっかりなんだけど、ライヴを凄くいっぱい色んな所でやりたいかな。
 

—ロック人生を体現していますね。これからもずっと。

 
寺田:うんうん、そうですね。だから、メンバーに最近よく言うのは「身体が続く限りはやろう」と(笑)。ちょっとあそこが痛い、ここが痛いっていうのは若いバンドにはたぶん分からないと思うけど、50を過ぎているバンドは、どのバンドも、男のバンドも女性ミュージシャンもたぶんみんな「あそこが痛い、ここが痛い」って話はしている筈なんだよ。でも、ちょっと痛いぐらいだったら頑張れるっていうね。ドクターストップがかからない限りは頑張ろうっていう。
 

—寺田さんは、普段何かトレーニングをなさっているんですか?ジムとか。

 
寺田:やってます。私の場合はマンツーマンで加圧トレーニングをやっています。あとは、今は手をケガしちゃっているのでお休みしているけど、体幹を鍛えるためにボクシングをやっていました。
 

—寺田さんは、オンとオフのスイッチの切り替えが上手そうですね。

 
寺田:昔は下手だったの。今はすっごいオン/オフするように気を付けてる。昔はオン/オフができなくて一度バンドを辞めているので…365日24時間、音楽以外のことを考えたことがなかったのよ。寝ていても、ずっと曲を書いていたりしてたんで、追い詰められちゃったところがあって。ツアーをやって、それで体調を整えながら、ラジオとか色々な仕事をやりながら曲を書いて、レコーディングをしてっていう、一年のサイクルができちゃっていたから。ずーっと頭の中に音楽が流れている状態が苦しくて…。今はちゃんと何もしない日っていうのを作って、飲んだくれています(笑)。
 

—あっ、お酒ですね。酒は良いですよね。

 
寺田:はい(笑)。酒に逃げているって感じもあるけど。酒は百薬の長だと思っているから(笑)
 

 
ブロンドに染めた長い髪、ゆったりとしたニットローブの足元は黒いブーツ、ブルージーなハスキーヴォイスと屈託の無い笑顔。寺田恵子は、まるで1970年代アメリカンニューシネマのヒロインのような目映いオーラを放ちながら、終始フランクでフレンドリーな口調で話してくれた。彼女の熱い語りを聴きながら、僕はJanis Joplinの言葉を思い出していた。
 
「あなたがあきらめてしまえば、あなたはあなたが妥協したものになってしまう。妥協せずに戦い続ければ、あなたは最後にはなりたいものになれる」
 
一言で30年と言っても、それは気が遠くなるような長い年月だと言っていい。日々、目まぐるしく移り変わって行く日本の音楽シーンにおいて、デビューから30年を経て、妥協を許さない限界超えスピリットを貫き通そうとしている寺田恵子SHOW-YAのパワーは驚異的だと言うしかない。だから是非『Glamorous Show』を聴いてみてほしい。このカヴァーアルバムで聴かれるのは、まさしく今のSHOW-YAのサウンドだ。その強靭なバンドサウンドと全く素晴らしい寺田恵子のヴォーカルに横溢する名曲へのリスペクトの念を感じてほしい。そして限界の先を目指して走り続ける寺田恵子SHOW-YAの生きる場所であるライヴへ是非駈けつけてほしい。
 

特集記事に収まらなかったため…インタヴュー延長戦!
NAONのYAONを寺田恵子が語る! インタヴューの続きはこちら↓
http://www.beeast69.com/serial/yaon/114970

 

◆リリース情報
『Glamorous Show~Japanese Legendary Rock Covers』
・2014年10月22日(水)~発売中
<収録曲>
M01.「紅」 (X JAPAN)
M02.「虹」 (L’Arc~en~Ciel)
M03.「HOWEVER」 (GLAY)
M04.「MARIONETTE」 (BOØWY)
M05.「JAM」 (THE YELLOW MONKEY)
M06.「CRAZY NIGHT」 (LOUDNESS)
M07.「嵐の金曜日」 (HOUND DOG)
M08.「MORE」 (EARTHSHAKER)
M09.「激しい雨が」 (THE MODS)
M10.「Runner」 (爆風スランプ)
M11.「ROSIER」 (LUNA SEA)
※()内はオリジナルアーティスト


◆SHOW-YA 公式サイト
http://show-ya.jp/
 
◆ライヴインフォメーション
レコ発ワンマンライヴ『Glamorous Show』
・2014年11月30日(日)【東京】日本橋三井ホール(SOLD OUT!!)
追加公演『Glamorous Show』
・2014年12月29日(月)【東京】渋谷AiiA Theater Tokyo
 


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