特集

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TEXT & PHOTO:桂伸也
~海外でプレーすることの意義~

「ロックと生きる」BEEAST編集部員による全力特集「Editor’s Note…PASSION」。第19回はHEAD PHONES PRESIDENTと、台湾のHeavy Rockバンド恕solemnという二つのバンドを通じて、海外で活躍することの意義、海外のファンやバンドとつながる意味などを考えていきたい。
 
台湾という国は日本にも近く、かつ歴史的にも密接な関係があり、台湾の人々も日本文化に関心を持つものが多い。そのため日本から海外に向けての活動を目指すバンドが多く出るようになった今日、ターゲットとして挙げる国の一つとなっている。近年ではDeath MetalバンドのCHTHONIC(下記補足参照)が積極的な活動を展開している中で、歴史的な事件をもとに構成した作品を発表、国内でも大きな反響を受けた上に、バンドとしても世界的に多くの注目を集めている。彼らに追いつかんとばかりに、他の台湾のロックバンドも世界を目指している様子もうかがえる
 
彼らは海外への挑戦にどのような思いを描いているのだろうか?台湾の地を踏んだ日本のバンドが感じる印象も、非常に興味深いものだ。今回は2014年10月8~13日にHEAD PHONES PRESIDENTの招聘によるジャパンツアー『SOLEMN JAPAN TOUR w/ HEAD PHONES PRESIDENT』出演のため来日した恕solemnと、HEAD PHONES PRESIDENTAnza、Narumiの二人との対談インタビューを行い、両バンドの出会いや現在の付き合い、双方が抱く思いを通じて、これらの興味深い実態を探ってみた。
 

恕solemn
 
◆メンバーリスト:
豆腐Evelyn Tofu、以下Tofu:Vocal)、小睿Ray Wu、以下Ray:Bass)、阿文Zac Shen、以下Zac:Guitar)、小鈺Shiauyu:Drums)、小黑Black:Guitar)
 
2003年、リーダーのRayと、ギターのZacを中心に結成。その後幾度かのメンバーチェンジを重ねながら、現在の5人体制に至る。その間に『Riot Century』『SHOO』『Catch This Mad Feeling』『Ultimate Metal Vol.2 Asia United』『The Road to Reform』の、5枚のアルバムをリリース。『Formoz Festival』『Mega Port Festival』など台湾国内の大型音楽祭にも出演を果たし、2010年の夏にはシンガポール、タイ、香港の3ヶ国を巡るツアーを敢行。
 
さらに今年はアルバム『Devastated Ruins』『Krumlov Winters』をリリース(2枚同時リリース)、そして2014年10月8~13日にHEAD PHONES PRESIDENTの招聘によるジャパンツアー『SOLEMN JAPAN TOUR w/ HEAD PHONES PRESIDENT』にて、初来日公演を果たした。台湾のHeavy Rockシーンでは最も注目されているバンドの一つであり、CHTHONICに続く台湾Heavy Rockシーンの本命として期待されている。
 
オフィシャルFacebookページ:
https://www.facebook.com/Solemntw?ref=br_rs

 
補足:CHTHONIC
 
1995年結成。台湾のグラミー賞と言われている「金曲奨(ゴールデン・メロディー・アワード」、「金音奨(ゴールデン・ミュージック・アワード)」「総統文化奨」を複数回にわたり受賞。さらにイギリスのユニバーサル・ミュージック傘下のレーベルSpinefarm Recordsと契約し、ワールドワイドに活動をしている。ここ数年、国際的なマーケットの開拓に力を注ぐソニックは、全世界で30か国以上、400回以上の公演を記録した。LOUD PARKやFUJI ROCK FESTIVAL(通算2回)、さらに昨年はSUMMER SONICと、日本の大規模なロックフェスにも度々出演し、たくさんの支持を集めている。
 
モデルとしても活躍、その美貌でもファンを魅了するベーシスト兼リーダーのDoris、人権擁護団体アムネスティ台湾の理事をつとめる、ボーカリストFreddyと、単なるミュージシャンとしてだけでなく、幅広い活動を展開することで台湾全土からの注目を集めている。
 
出典:Howling Bull公式サイト
http://www.howling-bull.co.jp/



恕solemnコメント動画
 

HEAD PHONES PRESIDENT Anzaコメント動画

 
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1.台湾の人って、初対面でもすぐ友達になっちゃう、そんな感じ。(Narumi)

 

—今回は初来日公演を果たした台湾のバンド恕solemnのことと合わせて、海外で活躍することの意義、アーティストはそれをどのように考えているかをおうかがいしていきたいと思います。恕solemnのいる台湾の音楽シーンとはどのようなものなのでしょうか?

 
Ray:そうですね…たとえば日本ほどバンド数はない。だからバンド同士で激しい競争みたいなものはないと思います。台湾のリスナーは、わりとメジャーとインディーズの音楽を聴く人というのがそれぞれはっきりと分かれていて、「メジャーの音楽を聴く人は、インディーズは聴かない」みたいな人も多いんです。
 

—日本のリスナーからすると面白い光景ですね。わりとリスナーの好みがはっきりと分かれているのでしょうか?

 
Ray:そうですね。ただその中でもHeavy Rock系バンドのCHTHONICは唯一、そのラインを超えたバンドといえるでしょう。CHTHONICはインディーズ的なメタルの音楽をやっているけど、バンド以外のほかの活動で多くの人の注目を浴びていることもあり、メジャー音楽嗜好の多くの人もCHTHONICの音楽に興味を持ち始めているんです。
 

—確かにCHTHONICは、いま最もホットなバンドの一つでもありますね。みなさんがバンドの目標を掲げる上で、たとえば「CHTHONICのようなバンドになりたい」という指標はあるのでしょうか?

 
Ray:いえ、みんなそれぞれ好きなバンドというものは他にもありますので、特にそういうわけはないです。ただ恕solemnは台湾から出て、いろんな国でライブをやってみたいという思いが強い。そういう意味では、彼らにあこがれています。彼らは国際的にも有名なバンドであるし、恕solemnもそうなりたいと思っています。今回制作したアルバム『DEVASTATED RUiNS』は、実はCHTHONICのギタリストであるJesse Liuの家のスタジオで収録したんです。実はみんな友達みたいな関係で。
 

—そうでしたか!?あこがれの人たちと仕事ができるというのは、夢のような出来事ですね。

 
Anza:台湾ってそういうところがあるんですよ。インディーズバンドでもCHTHONICのスタジオで録らせてもらったり、プロデュースしてもらったりということはよくあります。ある意味日本より制作はやりやすい気もします。
 
Narumi:「初対面でもすぐ友達になっちゃう国民」、僕はそんな印象を持っています。日本ほどタテの関係というものがない。だから一緒にライブをしたらすぐに友達になっちゃう、というか会ったらすぐ友達という感じ。
 

—台湾に行くのが楽しみになりますね。日本ではあまり見られない光景でしょうし。台湾のミュージシャンは、他のジャンルをどのように意識されていますか??

 
Ray:台湾には、それほどジャンルが細分化されていないので、全く違うジャンルのプレイヤーとの共演も結構多いですね。
 
Anza:日本だったらあまり考えられないですよね。たとえばハードコアだったらハードコア、メタルはメタルみたいな感じに、日本のミュージシャン、バンド同士の共演はわりと境目を設けるケースがあるけど、台湾は本当にフリー。そういう意味で、台湾は私たちにとってとてもプレーしやすい国だと思っています。
 

—そんな台湾のシーンに対し、HEAD PHONES PRESIDENTとしてはどんな印象を持たれたのでしょうか?

 
Narumi:そうですね…たとえば彼らのようなHeavy Rockを踏襲したサウンドを持つバンドは、今現在、日本にもメチャメチャたくさんあるけど、台湾にも結構出始めていて流行と化しつつあるみたいですね。日本からHeavy Rockバンドが来ると、すごく人気があって盛り上がっています。
 
ただ、台湾のバンドはそれぞれしっかりと個性を持っていて、独自の進化を遂げている印象があります。比較すると日本のものは何かのマネみたいで「それはちょっと…」と思えるものも少なくはない気はする…台湾のバンドって、たとえば「このジャンルが好きでやっている」「かつ、その中でちゃんと自分を表現している」という印象を受けます。
 

—では、逆に日本のバンドが勉強させてもらえることも多いのでしょうか?

 
Anza:もちろん、たくさんありますね。
 

2.メンバーチェンジは30人以上。(Ray)

 

—バンド恕solemnのことをおうかがいしたいと思います。今年で結成12年ということですが、メンバー構成はどのように変化していったのでしょうか?

 
Ray:僕とギターのZacは結成当時からいるのですが、ほかのメンバーは時々にチェンジしたり、新加入したりしました。のべ30人以上も(笑)
 

—そんなに!?スゴイですね…でも今のメンバーは最高ですね、素敵な女性のメンバーが二人も(笑)。新たに加入したメンバー3人(Tofu,Shiauyu,Black)は、どういういきさつでバンドに合流されたのでしょうか?

 
Ray:ドラムのShiauyuは、4年前に加入しました。以前彼女はほかのバンドにいて、ある時僕とZacがライブで彼女を見たときに、そのパフォーマンスのすばらしさに惹かれてスカウトしたんです。ボーカルのTofuは以前から友達で、2年前に前任のボーカリストが抜けた際に彼女を誘いました。また、もともと恕solemnは4人構成でしたが、リズムギターが欲しいと思い、Blackを呼びました。彼もライブを見てスカウト。
 

—なるほど。女性としてHeavy Rockでバンドに入るということは、それほど抵抗はなかったのでしょうか?

 
Shiauyu:私はありましたね。やっぱり初めてオファーを受けた時には、抵抗感はありました。台湾ではメタルバンドってやっぱりそれほどみんなが聴いているジャンルの音楽じゃないから、最初は嫌な感じというか・・・抵抗は感じました。でも恕solemnのメンバーと知り合って、徐々にメタルの世界にはまっていきました。
 
Ray:彼女は、実は医者でもあるんですよ。
 

—医者ですか?それはまた興味深いプロフィールですね。やはりインディーズアーティストは、台湾でも他の職業をやりながらバンドをやられている方も多いのでしょうか?

 
Anza:そうですね、台湾のバンドはみんな。日本もそうだけど、音楽だけで食べていくのは相当厳しいし。
 

—難しい課題でもありますよね。Tofuさんは、どういうきっかけでこの音楽に興味を持たれていったのでしょうか?

 
Tofu:私は最初にPub Rock(1970~80年代にかけて、主にイギリスを中心に一般的に認知されたロックの一形態)のボーカルをやっていたんです。そのときに友達から恕solemnのEPをもらって聴いたのが、バンドに触れたきっかけでした。その中の1曲にすごく感動したんです、その曲の内容と歌詞に。そこから動画サイトを検索してDAZZLE VISIONHEAD PHONES PRESIDENTなどの音楽を発見し、Heavy Rockに興味を引かれて、自分でもやってみたいと思ったんです。
 

—なるほど。でも女性がお二人バンドにいるというのは、女性メンバーとしては心強いのではないでしょうか。逆に男性の方が肩身が狭いということはありませんか?(笑)

 
Tofu:いいえ!全然!(笑)特にそれほど感じてはいませんね。
 

3.私は以前から(恕solemnを日本に)呼びたいと思っていました。(Anza)

 

—HEAD PHONES PRESIDENTが恕solemnとお付き合いを始めたのは、いつぐらいのころだったのでしょうか?

 
Ray:2007、2008年に台湾で行われた『Formoz Festival』(1995年から行われている台湾のロックフェスティバル)というイベントからですね。
 

—長いお付き合いですね。

 
Ray:いやいや、付き合いというか、そのころ私たちはまだ彼らのファンだったんですよ。
 
Anza:でもそのころからコンタクトを取りながら、昨年の3月に行われた『MEGAPORT FESTIVAL 2013 大港開唱』というイベントで初めて共演しました。そのころから私たちが台湾に行くと必ずサポートしてもらっています。そして今回は初めて逆に私たちが彼らをサポートして、日本での公演を行ってもらうことができたんです、やっとね。
 

恕solemnとしては、HEAD PHONES PRESIDENTのプレーをご覧になった時に、どんな印象を持たれましたか?

 
Ray:いやもう、ただ「このバンド、スゲーな!」という思いだけでしたね。あの2007、2008年の『Formoz Festival』のときにHEAD PHONES PRESIDENTを見て、ドラマティックなパフォーマンスに、強いインパクトを感じました。台湾のバンドとは、パフォーマンスのタイプが全く違いましたし。
 

—なるほど。Anzaさんから見た恕solemnの印象はいかがだったのでしょうか?

 
Anza:Tofuの印象が強かったですね。以前私は、彼女の前任シンガーが在籍していたときのプレーを動画で見ていたんですが、その時はどちらかというとデスボイスをメインで歌っている印象がありました。でも彼女はそれと比較するとメロディをきれいに表現するのがすごくうまくて、かつデスボイスの張りもいい。声がすごく良いな、という印象を持ったんです。そんな印象を持って彼らを改めて久しぶりに見たときに「あっ、このバンドは日本に連れてくるべきバンドだ!」と直感的に思いました。日本でも彼らのようなスタイルのバンドはなかなかないと思うんですよね。
 

—なるほど。それは恕solemnを初めて見た時から、何かAnzaさんの心に刺さるものがあったということですかね。

 
Anza:そうですね。私は見たことないタイプでしたし。
 

—なるほど。ちなみにHEAD PHONES PRESIDENTとして台湾でライブをやられた時には、どんな印象を持たれたのでしょうか?

 
Anza:台湾は日本のバンドをすべて歓迎してくれる、そんな印象でした。台湾ではもう7~8回くらいライブを行っていますが、行くたびにお客が増えているし。ただ、台湾ではバンドを「良い」と思ったらまた来てくれる、思わなければ来ない。そういう意味ではアメリカやヨーロッパのスタイルと似ているかもしれないですね。
 
それと、ジャンルがそれほどなく、バンドの数はそれほど多くはないけれど、どのバンドも正直、クォリティは高い。そして「もっと外に出たい!」という気持ちを強く持っています。日本のバンドにあこがれを持ってくれているけど、逆に私たちからすると、台湾のバンドの方がやる気や、胸の中にある熱いものが前面に出ているようにも見えます。ライブハウスがそれほど多くないし、限られた環境の中にやっているから、逆にその願望は強いのかもしれませんが。
 
Ray:いや~でもHEAD PHONES PRESIDENTみたいなバンドを、私たちは「カリスマバンド」だと思っていますよ、台湾のバンドはまだみんな負けているし。
 
Anza:え~、カリスマじゃないって(笑)。それに負けているなんて。そんなことない(笑)
 
Tofu:(日本語で)イヤイヤ、ホントウダヨー!(笑)
 
Ray:今回のツアーで見たバンド全員も、全部すごいと思いました。また改めてみなさんを台湾に呼びたいと思っています。
 
Anza:今回のSoundWitchEACH OF THE DAYSは、彼らともすごく仲がいいんです。日本のバンドは、今台湾ですごくがんばっているので、日本のバンドを呼びたいという気持ちも彼らは持ってくれているし、逆に彼らの中には(日本に)来たいと思っている人もいるんです。だからもうちょっと日本と台湾のつながりが強くなればいいと思っています。
 

—なるほど。今回彼らを招聘されたのは、今現在のタイミングで「彼らは日本に来るべきだ」という判断があったのでしょうか?

 
Anza:いえ、というより私は以前から呼びたいと思っていました。HEAD PHONES PRESIDENTが2014年に出した新譜(『Disillusion』)を7月に台湾で先行リリースして、プロモーションなどで私たちが台湾に行ったときにサポートもしてもらったこともあり、ちょうど時期がうまく合ったことあって「じゃあ10月に来てよ」と彼らに打診したんです。そして彼らのスケジュールが合ったのが今回。恕solemnも新しいCDを2枚出したタイミングだったし、ようやく満を持して来てもらった次第です。
 
Ray:(日本語で)ホントウニアリガトウゴザイマシタ!(笑)
 

4.毎年日本にも来られるようになりたい。(Ray)

 

恕solemnのみなさんは、今回の日本からのオファーを受けた時の気持ちはどのようなものだったのでしょうか?

 
Ray:今回の日本ツアーは、今年の1月にAnzaが台湾に来た時の話でした。一緒に食事をしたときに、オファーの話をもらったんです。あのときはすごくビックリしましたね。すごく嬉しくも思いましたけど。もともと恕solemnは今年、ニューアルバムをリリースする予定をしていました、期日はまだ決まっていなかったけど。でも、1月にその話を聞いたことで、急いでアルバムを作りました。10月に合わせてね。
 

—そうでしたか。では、ある意味この来日に賭けるという意気込みもあったのでしょうか?

 
Ray:そうですね。ニューアルバムを持ってきて、日本のファンたちに聴かせてあげたいと思いました。
 
Tofu:海外での活動では、ライブをほかのバンドたちと一緒にやっている間に、「自分たちももっと自分のパフォーマンスを良くしたい」という思いが強くなります。競争というものではないけど、他のバンドの良いポイントと、すばらしいパフォーマンスが、すごく盛り上げてくれると感じています。
 

—確かに対バンはバンド活動として良い刺激を受けるタイミングでもありますしね。大阪、名古屋を回って、ステージに上がった印象はどうでしたか?

 
Zac:やっぱり初日ということもあって、大阪のステージに上がった時には、すごく緊張しましたね。
 
Anza:え~本当に!?そうは見えなかったけど(笑)
 
Zac:本当ですって(笑)。でも名古屋では慣れて、いつものようなパフォーマンスができるようになりましたけど。
 

—日本の観衆の反応はどのように感じましたか?

 
Zac:台湾の観客とは違うなあと思いました。日本のロックファンはすごく音楽を真剣に聴いている感じがしましたし。だからパフォーマンスをする時に受ける気持ちも、台湾でステージに上がったときよりも違う気がします。
 
Anza:台湾のライブって、モッシュとかダイブがすごいんですよ。ジャンルによっても違うんだけど。
 

—なるほど。Blackさんはいかがでしょうか?

 
Black:日本のライブハウスは、みんなプロフェッショナルでスゴイと思いました。サウンドチェックの時も、大体のスタッフさんは恕solemnの音楽を聴いたことがないにもかかわらず、サポートしてくれる照明さんもPAさんも、みんなすばらしい仕事をしてもらえました。
 

—それは、普段台湾のライブの雰囲気とは大分違うのでしょうか?

 
Black:全然違いますね。
 
Zac:サウンドチェックがすごいスピードで順調に進みましたね。台湾でのサウンドチェックは、すごく時間がかかるんですよ、PAさんが何回も話し合って…
 

—なるほど。逆に日本のステージで手ごたえを感じたようなことってありますか?

 
Black:そうですね。最初はやっぱり緊張したけど、やっぱり慣れが出てくると「こういうものなんだ」と、ステージが楽しめるようになりました。
 
Tofu:メンバーみんなの緊張は感じたけど、台湾でのパフォーマンスよりみんながんばったと、すごく感じましたね。
 

—それは興味深い反応ですね。自信というだけでなく、成長の過程が目に見えているような。HEAD PHONES PRESIDENTとして、彼らを日本に呼んだことを、今どのように感じていますか?

 
Anza:それはもう狙い通り。「お客の反応もこう来るだろう!」っていうのが見えていたし。いや、反応はそれ以上だったと思います。やっぱり日本のお客はダメなバンドだと引いてしまうじゃないですか?8日にアコースティックライブをやった時からみんなすごく集中して聴いていたし、たとえば今、大阪ってシーンがすごく難しくて、ダメなバンドだとすぐお客がライブハウスを出て行っちゃうこともあるんですけど、大阪公演ではみんなすごく聴いて反応も良かった。
 
お客はすごく暖かく接してくれたし。日本にはバンドに対して「台湾のバンドだから」という感じで見るスタンスはないと思うんですよ。「良かったから見る」そして「音源を求める」という感じ。だから彼らに対して観衆は良いと感じ、名古屋もすごく盛り上がったし、日本のお客が彼らを受け入れた姿勢を、彼らのプレーの間近に見ることができました。だから本当に呼んで良かったと思っています。
 

—なるほど。ますます相互の関係が面白く感じられますね。では最後に、今回このような機会を得られたことをきっかけに、次はどのようなことを進めるか?考えられているようなことがあれば教えていただけますでしょうか?

 
Ray:そうですね、新しいアルバムを日本でもリリースしたいし、毎年日本にも来られるようになりたいですね。まだ今回は初めての来日公演だったから、それほど強い印象を日本のロックファンには与えられていないんじゃないかと思うし、もっと続けていきたいと思います。
 
Anza:私たちもそうですね。もちろん恕solemnだけでなく、台湾のバンドはほかにもいろいろつながりがあるので、どんどん日本に呼び込んできたい。また、恕solemnは今回はHEAD PHONES PRESIDENTの招聘でイベントに出演してもらいましたが、次はたとえば他のタイプのパフォーマンスを見せるバンドさんとのツアーをやってみてもらいたい。そうすればまた新たなお客さんに見てもらえると思うし。本人たちはまだそれほどと思っていないかもしれないけど、今回のツアーでは、彼らの評判はとても良かったと思います。今回見てくれた観衆は、また次回も彼らを見に来てくれるだろうし、次回もうまくやっていけるんじゃないかな。
 
「自分たちのことで精一杯」という状況を抱えるバンドも多くて、なかなか今回のツアーほどのサポートができる環境を用意するのは難しいとは思いますが、たとえば台湾に行ってお世話になったバンドがあったのであれば、逆に日本にもお世話になったバンドを呼んで、交流を深めるのも大切なことだと思います。そういう思いを「台湾に行った私たちが発する」、今回イベントを行ったねらいの一つはそれ。そうすれば、もっと台湾のバンドも日本に来やすくなるし。逆に日本のバンドが「台湾に行きたいんだけど…」と思えば、たとえば彼らにコンタクトを取ればライブをサポートしてもらうこともできるでしょう。
 
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「是非聴いてみてほしい」Rayはそう言って私に彼らの新譜『Devastated Ruins』を手渡してくれた。そのサウンドは粗削りなものだったが、これを耳にした私は、それ以上に彼らが音に込めた情熱を強く感じた。英語ではなく、敢えて母国の言葉で歌い上げ、台湾を感じさせる民族楽器のサウンドを効果的に取り入れ、曲の構成に様々な工夫を凝らして作り上げられた個性的なサウンド。彼らの音からは、自身の基礎となるもの、すなわち母国台湾と、彼らが愛するHeavy Rockという二つのルーツに対する強い尊敬心を感じさせた。
 
インタビューを通じて、そしてイベントを通じて感じた恕solemnの印象は、最初にNarumiが語ったとおりだった。自らの激情をぶつけるような激しい演奏とは対照的に、気さくで物腰のやわらかい人柄は、それぞれのメンバーに共通したものだ。そしてロックファンや、競演したバンドに対する尊敬の念の表現など、「彼らが日本に来てくれて良かった」と思える印象を与えてくれた。
 
もし彼らがHEAD PHONES PRESIDENTと出会い、つながることがなければ、私は彼らのサウンドの魅力に触れることができなかったかもしれない。それこそがこの二つのバンド、そして他の多くのバンドが、海外へ目を向ける意味とも考えられる。挑戦を続ければ、新たに多くの人の耳に自分たちの音を届けることができる。逆にファンからすれば、新しい音への出会いの機会も増えていくことができるだろう。
 
存在するバンドの数や音楽マーケットの市場規模など、音楽の環境は日本が台湾をしのいでいるかもしれない。しかし、「良い音楽を受け入れようとする姿勢」「良い音楽を紹介したいと考える姿勢」は、日本のファン、アーティストは台湾のシーンの人たちから学ぶべきところも多いのではないだろうか?その意味でも今回、彼らが来日公演を行った意味は大きい。来日に対するサポートを心から感謝し、素直な姿勢でステージを楽しんでいた恕solemnを観覧しながら、そんなことを考えさせられた。
 
恕solemnが今回来日したことで、彼ら自身にも、イベントを共にしたバンドたちにも、そして日本のロックファンにも明らかに一つの新たな道が開かれた。すべては二つのバンドの出会い、それ以前に彼らが「自分の音楽を多くの人に聴いてもらいたい」「多くの音楽に触れたい」と強く願う気持ちがあってこそ。その思いを実現する方法は様々ある。日本のロックファン、アーティストも、彼らが示してくれたこれらのヒントを手掛かりに、音楽を作る、または楽しむためのアプローチを改めて考えてみてはいかがだろうか。
 

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