演奏

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TEXT & PHOTO:桂伸也

 
BEEASTの記事でも度々紹介してきたHEAD PHONES PRESIDENTは、現在ラウドロックのトップバンドの一つとして精力的な活動を続けている。そのフロントマンとして絶対的な存在感を示しているボーカリストAnza。彼女は、2014年5月24日に彼女のソロによるライブを行った。
 
以前、BEEASTの記事『Editor’s Note…PASSION Mind16(桂伸也)』では、アイドルからロックボーカリストへの挑戦を始める際の経緯をインタビューし、成長に従った彼女自身の気持ちの変化を探ったが、このステージではある意味、実際に彼女の人生の中で、どのように成長を遂げてきたのかが表されている。
 
彼女の芸能生活22周年を記念する会でもあったこのイベントには、その活動の中で出会い、今でもつながりを持つ人物たちがゲストとしておとずれ、ステージを盛大に盛り上げた。また、この日のステージはマチネとソワレ(演劇公演で、昼夜2回公演が行われる際に称されるそれぞれの呼称。)というスタイルで行われ、両会とも会場は多くの観衆により大盛況となった。今回はそのマチネ(昼間興行)のステージの模様をレポートしよう。
 

Anza 動画コメント(+ステージハイライト)

※本映像は臨時撮影のため、一部お見苦しい部分、お聴き苦しい部分があることをご了承ください。

 
◆ゲストメンバーリスト:
小田マナブ(朗読劇 &Vocal)、藤原ゆき(朗読劇)、
はるか(from Rouse Garden :Vocal)、
奥山桃子(Vocal)、岩名美紗子(Vocal)
加藤智子(Piano)、坂口勝(Percussion &Vocal)、HIRO(from HEAD PHONES PRESIDENT :Guitar)

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会場が暗転すると、スクリーン前に置かれたプロジェクタにAnzaのデビュー前から現在に至るまでの軌跡が映し出された。アイドル、ミュージカル、舞台女優、そしてミュージシャン。一番新しい映像は、昨年出演した『Ozzfest』のステージの模様だろうか。これらの映像からは、彼女の活動が広範囲にわたり、それぞれの活動の中ではまったく違うことをしながらも、懸命に自分の表現をつかもうと努力するAnzaの表情が見られた。その芯の強さを感じさせるまなざし。そして最後に「ANZA SOLO LIVE」のテロップとともに、いよいよステージの幕が開けられた。

朗読劇/ソロコーナー
 
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ステージにはゲストの小田藤原の二人が、それぞれ上手、下手にたたずむように立っていた。加藤が「アメージンググレース」のイントロを爪弾き始めると、ステージ後方の幕よりAnzaがステージ後方より現れ、その荘厳で美しいメロディを歌い始めた。
「Amazing Grace How sweet the Sound
That saved a wretch like me….」
 
長きにわたって人々の間で歌われ続けたその聖歌の優しいメロディが響く。まるでAnzaが「さあ、聞いてごらん」と、彼女の物語の世界へ観衆を誘っているようにも聴こえた。暖かくも気持ちに訴えてくるようなメロディから、Anzaがみずから筆をとったという朗読劇へ。小田、藤原が、日常から見える不安と様々な意志を語り始めた。「自分は何のために生きているのか?」誰しもが抱える、非常に大きなテーマだが、やがて二人が交わすふれあい、会話により最後にはポジティブな意思へと変わった。微妙なニュアンスを含めて表現されたその一幕。
 
HEAD PHONES PRESIDENTの詞には、人間の深層心理をえぐるような深い世界観がある。その一端がここでも見られた。彼女がこの時に見せた幅広い表現力、世界観があるからこそ彼女、そしてバンドは独自の個性を発揮することができる。やがて歌にははるかが加わり、美しくも力強い響きが物語の余韻を一層味わい深いものとした。
 
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朗読劇のあとは、加藤坂口、そしてHIROとともに、快活な歌を聴かせるAnza。シリアスな雰囲気から一転し、「Dream」「彼方へ」「ナデセ」と、彼女のソロ名義の楽曲へ。親しみやすいメロディの中には、彼女のいきいきとした表情が光っていた。
 
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『レ・ミゼラブル』/『GIFTをあなたに』コーナー
 
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続いてはかつてAnzaがミュージカル『レ・ミゼラブル』で共演した坂口、『GIFTをあなたに』で共演した小田を迎え、舞台の思い出とともに、その舞台で披露された曲を披露。故本田美奈子にあこがれて目指したという『レ・ミゼラブル』は、2003年から2006年にかけてエポニーヌ役を務め、『GIFTをあなたに』では2006年から3年、そして2013年には特別版として行われた公演に出演した。両舞台とも彼女にとっては思い出深い作品となったにちがいない。その歌の艶やかな表情、歌にあわせた体の動き、表情の動きの中には、彼女がこれらの作品に真剣に取り組み、しっかりと役を自分に重ね合わせた努力の成果が現わされた。
 
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『セーラームーン』コーナー
 
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続いて加藤、HIRO、坂口によるインストをはさみ、かつてミュージカル『セーラームーン』で共演した奥山、岩名を迎え、舞台で使用されていた曲をプレー、合わせて当時を懐かしく振り返った。再会した二人と語り合っているAnzaの表情は、まるで楽屋裏のような、飾り気のないリラックスしたものだった。当時の気持ちのままに、二人とともに弾けるように踊り、歌ったAnza。彼女の人生の中で、当時の生活も彼女自身には大きな意味のあるものだったに違いない。
 
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HEAD PHONES PRESIDENTコーナー
 
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舞台はまた一変し、HEAD PHONES PRESIDENTのコーナーとなった。バンドの活動でAnzaが絶対的な信頼を寄せるギタリストHIROが登場し、彼とのデュオでアコースティックによるHEAD PHONES PRESIDENTナンバーを聴かせた。曲は最新アルバム『Stand In The World』より「Stand In The World」と「My name is」。バンド形態によるラウドなサウンドとは異なりアーシーな雰囲気さえ感じられる雰囲気。新鮮さとともに、アルバムだけでは聴き得なかった彼女のバックボーンの大きさを感じさせた。
 
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Anza SOLOコーナー
 
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ラストのコーナーとして、Anzaのソロによる歌のコーナーへ。先日急逝した先輩へ捧げる、と語り彼女が歌った曲は「Dear…あなたへ」、そして「forever」。歌を捧げたというその人名は敢えて告げなかったが、それは先日急逝したUNITEDのベーシスト横山明裕に宛てたもの。生前には親交も深かった彼への、あふれんばかりの思いとともに、人生の意味を改めて問うようなAnzaの歌声。目に涙をたたえた表情を見せながら、情感を込めたメロディを歌いあげた。
 
「この日がみんなにとって明日からのエネルギーになってくれれば嬉しいなって思っています。そして皆さんには、どんなことがあっても、笑っていてもらいたい。」Anzaがそんな願いを込め、最後のナンバー「一人じゃない」が会場に響いた。時に心の叫びのような力強さを表しながら、優しいメロディが会場の人々を包み込んだ。
 
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◆ ライブ情報(HEAD PHONES PRESIDENT):
Vortex of chaos tour 2014 Tour Final
2014年07月11日(金)【東 京】原宿 ASTRO HALL
鋼鉄和洋折衷
2014年07月20日(日)【宮 城】仙台JUNK BOX
Wake Up Festival
2014年07月25~27日 【台 湾】嘉義(かぎ)
SUB-EFFECT #64
2014年08月01日(金)【愛 知】名古屋APOLLO BASE
FIVE DIMENSIONAL
2014年08月08日(金)【東 京】新宿MARZ
METAL FEMALE VOICES FEST
2014年10月17~19日 【Belgium】Wieze,Oktoberhallen

◆ 公式サイト:
http://www.anza.jp/

HEAD PHONES PRESIDENT公式サイト
http://headphonespresident.com/
◆セットリスト:
朗読劇コーナー
M01. アメージンググレース
M02. Dream
M03. 彼方へ
M04. ナデセ
 
『レ・ミゼラブル』コーナー
M05. On my own
M06. 恵みの雨
M07. ピープルソング
 
『GIFTをあなたに』コーナー
M08. 笑ったら
M09. 空を見上げてごらん
 
『セーラームーン』コーナー
M10. ~ムーンライト伝説(インスト)
M11. ~セラミュメドレーA~
   ラ・ムーン
   スィーミー僕たちの日
   ノッキンダウン
M12. ~セラミュメドレーB~
   旅立ち
   伝説生誕
   ラ・ソルジャー
M13. 輝く(岩名美紗子 ソロ)
 
HEAD PHONES PRESIDENTコーナー
M14. Stand In The World
M15. My name is
 
Anza SOLOコーナー
M16. Dear…あなたへ
M17. forever
M18. 一人じゃない
 

Anzaがいろいろな過去の遍歴を隠したり、否定したりすることはない。たとえばアイドルだったという経験ですら自己を形成する一部としてすべてを受け入れている。彼女がすべての出会いに意味があると考えているからだ。
 
HEAD PHONES PRESIDENTのステージで見られる彼女の表情、しぐさ、そして歌から感じられる彼女の核心は、この日のそれぞれの場面で同じように見られた。どれほど辛い経験でも、彼女はすべてを否定せずみずからの糧とした。そのことすべてが、今のAnzaという人間を形作っている。
 
芸能活動歴22周年、HEAD PHONES PRESIDENTのボーカリストとして15年という歴史を築いてきたAnza。彼女は単にバンドのサウンドやパフォーマンスからは推し量れないほどの、人間の厚みが感じられるアーティストだ。今後も彼女は、さらに幅を広げた活動を展開し、成長を続けていくに違いない。
 

◆関連記事
Editor’s Note…PASSION Mind16(桂伸也)
女性達の輝く場所 Part III ~ロックから人生を切り開いてきた女性たち~
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Editor’s Note…PASSION Mind15(桂伸也)
HEAD PHONES PRESIDENTの新たなチャレンジ~ロックとファッションの融合(Part 3)
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Editor’s Note…PASSION Mind14(桂伸也)
HEAD PHONES PRESIDENTの新たなチャレンジ~ロックとファッションの融合(Part 2)
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Editor’s Note…PASSION Mind12(桂伸也)
HEAD PHONES PRESIDENTの新たなチャレンジ~ロックとファッションの融合(Part 1)
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Editor’s Note…PASSION Mind8(桂伸也)
ライブサウンドの新たな試み ~HEAD PHONES PRESIDENTのチャレンジの一幕より~
http://www.beeast69.com/feature/64097
ROCK ATTENTION 19 ~DRAGON GUARDIAN~
http://www.beeast69.com/feature/54951