特集

TEXT:桂伸也 PHOTO:万年平男、桂伸也
女性達の輝く場所 ~ガールズ・シーンの新たな拠点~

「ロックと生きる」BEEAST編集部員による全力特集「Editor’s Note…PASSION」。第3回目は編集部員の桂がお届けする。今回テーマとして挙げるのはガールズ・ロック。かつてはSHOW-YA、PRINCESS PRINCESSという二台双頭の隆盛が有名だったが、近年はSCANDALFliP、メタルではAldiousLIV MOON等を筆頭に様々なジャンルから個性豊かなガールズ・グループがどんどんと現れている。一昔前に比べると明らかにガールズ達が活躍するステージは増え、もはやロック・ファンとしてもこのムーヴメントを無視することは不可能ではないだろうか。
 
BEEASTでも数年前より取材を続けているイベントとして、『WOMEN’S POWER』がある。先日も『WOMEN’S POWER 20th Sp. 2012/1/9@渋谷O-WEST』でレポートした通り、20周年という長い歴史をもつこのイベントは、その長きにわたる活動もさることながら、まだそれ程ガールズ・ロックという音楽が世に定着していなかった頃から既に、そこにスポットを当て続けていたというところに、大きなポイントがある。また、大きな音楽マーケットの流れから見れば、ほんの小さなイベントと見られるかもしれないが、そこから時には大きく世に羽ばたいたアーティストが現れていることも、ガールズ・シーンを考えた上では見逃すことのできないものといえよう。
 
そしてこの秋、この『WOMEN’S POWER』の新たな動きとして、新興レーベル『WOMEN’S POWER LABEL』が発足した。イベントという形だけでなく、音源のリリースでガールズ・シーンを大きくプッシュしていくと見られるこのレーベル。これからのガールズ・シーンに対して、いったいどのような動きを見せていくのだろうか?今回はこのレーベルと、イベント『WOMEN’S POWER』とのつながりから、これらが今後ガールズ・シーンにどのような影響を及ぼしていくのかを探っていきたいと思う。
 
hana
 

1.CREA インタビュー

 

 
まずはレーベル第一弾アーティストとなるCREAのメンバーへのインタビューよりそのバンドとしての正体と、ガールズ・シーンを更に切り開いていく彼女らの本音に迫ってみた。
 

「CREAっていうカッコいいバンドがいるらしいぜ!見に行こうよ!!」と言われるバンドになりたい。

—まず、CREAというバンドのことについてお伺いしたいと思います。結成のいきさつって、どのようなところでしたか?

 
Aiko:ドラムのMikuが、メンバーに声を掛けて集まったのがきっかけですね。
 

—それは人づてに、ということですか?

 
Miku:いえ、もともと全員友達でした。先に声を掛けて作ったのがCREAの前身バンドだったのですが、Aikoの知り合いでAnnaが加入し現在のメンバーとしてCREAが誕生しました。
 

CREAっていう名前の由来はどのようなものだったのでしょうか?何かバンドの強いイメージを示しているようにも見えましたが。

 
Miku:私の実家で飼っているワンちゃんの名前がCREAっていうんです(笑)。その名前自体の由来は、『HEROES』っていう海外のアクションドラマに出てくる女性の名前がCREAだったのですが、もともとCREAっていう名前は聡明な、とか女性らしい、というような含みの意味もあるということで、響きも女性らしいのでそういう名前にしました。
 
Aiko:聞いただけでバン!とインパクトがある名前が欲しくて色々考えまして。「もっと早く決まるんじゃないか」って思っていたんですけど、決まるまですごく時間が掛かりました。なかなかぱっとしたものが見つからなくて。そう悩んでたときに、Mikuの家にいるイヌの名前がCREAだと知って、「あっ、カッコいいじゃん?」って思いまして、決定と。
 
Miku:だからその名前のイメージ等がありきのバンドではないですね。色々あった候補の中で、この名前がグッとくるというところがあったので。
 

—なるほど。キャッチフレーズとしてお持ちの「ありそうでなかった」というイメージは、具体的にどのようなものを指しているのでしょうか?

 
Aiko:私たちの音楽は、いわゆる“王道のロック”という形で打ち出そうとしていました。それは言い方は何ですが、ありふれたイメージを持たれると思いますが、そういう意味では「ありそうで」っていう意味になります。でも、その中で、CREAというバンドとして、王道の中でも個性が光るCREAらしさというものを打ち出したいと思い、「なかった」というイメージを作っています。個々のメンバーは、それぞれ個性的な人間が集まっているので、それを凝縮したものとしてそのキャッチフレーズを打ち出そうと思いました。
 

—HPに記載されている、影響を受けたアーティストってかなり多岐にわたっているというか(笑)Yngwie J.Malmsteenとか、Helloween村上“ポンタ”秀一や、Steven Tyler。今迄リリースされた音源からはなかなか想像できないアーティストもあって、確かに個性的ではありますが、その「ありそうでなかった」という部分は、バンド結成時からコンセプトとして打ち出されていたのでしょうか?

 
Miku:いや、そうではないですね(笑)前身バンドのほうがもっとポップで明るい感じをやっていましたが、今このバンドではもっと大人っぽくてカッコいいバンドにしたいと、漠然と思っていました。それからAnnaが入って1年ぐらいが過ぎて、気づいたらこの方向に固まっていったんです。もともとの「大人っぽくカッコいい」っていうところはブレていないですが。
 
Aiko:ただ闇雲にロックをするというわけではなくて、伝えるところは伝えたと思ってるんです。Nakiの歌詞もそうですが、本当に考えさせられたり、グッと来るものがあったり、言葉遊びがあったり、それぞれが本当に個性的で趣味もバラバラなんだけど、4人が集まることによりCREAが出来上がる、みたいな。
 
Naki:でも本当に4人の個性が絡んでいい感じに進んでいると思います。最初からカッコいいバンドにしたいと思っていたイメージが、ようやく固まってきたかな?って思っています。
 

—今回、WOMEN’S POWER LABELからリリースされる第1弾アーティストという部分から、ある種ガールズの象徴的な面が見られろと思いますので、このポイントについてお伺いしたいのですが、結成当時から“ガールズ”という部分にこだわりってあったのでしょうか?あえて女の子4人という格好になったのは?

 
Miku:そうですね。みんな今まで特にガールズという格好にこだわっていたわけではなく、そのときそのときでバラバラでした。でもCREAに関しては、私がガールズ・バンドをやりたいと思ってみんなに声を掛けたんです。AikoからAnnaを誘ってもらったときも女の子だからということで入ってもらったし、男性のメンバーという選択肢はなかったですね。
 
Anna:私は別にこだわりはなかったけど(笑)
 
Aiko:Mikuに呼ばれたから私もやる、みたいな。その点での黒幕はMikuですね(笑)
 

—ガールズだとやりやすい部分みたいところってあったのでしょうか?

 
Mi:いや~特には。場合によると思います。でもガールズでのいいところっていうのはあるかも。
 
Naki:みんなで一緒に寝れたり。着替えたり(笑)
 
Aiko:変に気を使われなくて気が済むかもね。
 
Naki:男の子だと変に気を使われるかもしれないけど、女の子同士だとガチンコで言い合えるしね。超体育会系(笑)
 

—逆にやりにくいところってあります?

 
Naki:そういうところは特には。女の子らしい女の子じゃないから(笑)だから、「クリスマスは絶対休みたい」みたいなのはないですね(笑)
 
Anna:誕生日にリハに入ってるもんね(笑)
 

—うわ~ちょっと淋しいけど(笑)バンドへの情熱が伺えますね。バンドとしての目標ってどんなところにおいていますか。たとえば今目指しているところって、どんなところでしょう?

 
Naki:たとえば、“みんなが知っているバンド”になりたいと思っています。今、ライブに力を入れているので、ライブの面白さや興奮で、「あっ、CREAっていうカッコいいバンドがいるらしいぜ!見に行こうよ!!」と思ってもらえるようなバンドになれたらいいなって思っています。
 
Anna:初めて音楽に触れて、志している人に憧れてもらえるようなバンドになりたいんです。「CREAみたいになりたい」って思ってくれる人がいたら、嬉しいな。
 

メンバー全員の心がつながった『LINK』。これでファンともつながりたい。

—リリースされたニュー・アルバム『LINK』についてお伺いしたいのですが、タイトルに何かこのアルバムのコンセプトみたいなものはあるのでしょうか?タイトル・ナンバーとして同名のナンバーを1曲目に置いているところからも、何か強い思いが感じられるのですが。

 
Naki:もともと1曲目の「LINK」が、メンバー全員でセッションをして作った曲なんです。だからメンバー全員の心がつながったというか。歌詞の内容も自分の思いを未来につなげるというような思いをこめたので、このタイトルにしました。だからこれを引っさげて、全国に届けたいという思いがあります。全国のまだCREAを知らない人に知ってもらいたい、全国のCREAファン、“クレアリスト”って呼んでるんですけど(笑)その人たちともつながりたい、そんな思いから、『LINK』というタイトルにしました。だから、この1曲目の「LINK」は、アルバムを通してCREAの意志を掲げるような意味として位置づけています。
 

—なるほど。では、他の曲もこの曲のコンセプトがベースとして作り上げられているのでしょうか?

 
Naki:いや、割といろんな色を打ち出したアルバムになりました。
 
Miku:一枚を聴けば、“十曲十色”じゃないけど。
 

—ではそれほど強く全体のコンセプトとして一定のポリシーにこだわったわけではないと?

 
Naki:そうですね。ただ、CREAの一枚目のアルバムでそれぞれメンバーのカラーを入れて詰め込んでいったので、「それを含めた全部が『LINK』してCREAだよ!」っていうような。
 

—具体的なことを教えていただければと思うのですが、曲はどなたかがメインで作られたのでしょうか?

 
Naki:いや、曲も詞も、それぞれ全員バラバラですね。
 
Aiko:多いのはNakiMikuかな?
 
Anna:曲によりますね。ガーってセッションして作ったときはNakiが歌詞を書いたり、ものによってはMikuが全部作詞作曲まで作ってきたこともありますし。作り方もバラバラですね。
 

—メンバーそれぞれのおススメナンバーを教えていただけますか?ではまずAnnaさんはいかがでしょう?

 
Anna:私は自分の曲!って言いたいんですけど(笑)私的に推したいのは2曲目の「Last Dance」ですね。この曲は聴くと分かりますが、結構ベースがゴリ押しの曲なんです。イントロのベースが自分のベースラインになっていて、意識して聴いてもらえると嬉しいですね。
 

—アルバム全体を通して聴いてみると、全体的なイメージとしてはさわやかな感じですが、個々のサウンドは今言われたように割とゴリゴリな感じですよね。ロックな感じです。

 
Anna:そうですね。特にあの曲は攻め込みました。
 

—なるほど、かなりとがっていますよね(笑)Mikuさんはいかがでしょうか?

 
Miku:私は、リズムとして好きな曲が、自分の作った曲で悪いのですが5曲目の「mellow out」ですね。初めてシーケンサーで初めて細かいリズムを組み込んで、それと自分のドラムを合わせて作ったような曲なので、細かく聴いてみるといろんな音が聴こえるんです。自分自身がすごく好きで、親も気に入ってくれているんです。あと友達も(笑)
 

—親にアルバムを聴いてもらったのですか?

 
Miku:そうですね。よくライブを見に来てくれていますし(笑)。
 

—たとえばドラマーさんが作曲をするときって、どんな部分が主体になるのか、っていうところに興味があるのですが、たとえばMikuさんの場合はどうでしょう?やはりリズムを主体に大きなイメージを作る感じでしょうか?

 
Miku:そうですね、そういうときもあります。私の場合は大体寝ているときに曲が思い浮かんで、すぐ起きてイメージを録音してまた寝るとか(笑)、あと風呂場や台所の水場にいるとメロディが思い浮かんできたり(笑)
 

—メロディが主体のときもあるということですか?

 
Miku:そうですね。全他打ち込みで枠を作って、歌をヴォーカロイドで入れて、自分でギター弾いてみて大まかなイメージを作って、みんなに聴かせてみたりするときもあります。あと、曲として自分が好きなのは「デドリー」。あれは知らない間に自分が口ずさんでいるような曲で、本当に好きなんです。
 

—曲へのこだわり方が細かいですね。Aikoさんはいかがでしょう?

 
Aiko:私は「BY MY SIDE」がすごく個人的に好きなんです。歌詞が切ないけど曲がキャッチーでポップな感じ、でもところどころすごく激しいところもあって、とても聴き応えがある感じなんです。
 

—メロディの作り方に、何かポリシーや特徴みたいなところって、ありますかね?聴いてみて思ったのですが、全体を通してポップな明るい曲調がベースなのに、どこかにその切ないエッセンスが含まれているようにも見えますね。

 
Aiko:メロディはとにかくヴォーカルが映える感じを意識しているところですね。Nakiの声がバーン!と張って、ちょうどいい感じで伸びるように、っていうのを意識していますね。
 
Naki:あとはちょうどいい声の高さとか、キャッチーな部分を全体的に意識しています。音はゴリゴリでも、サビだけはキャッチーにしたいとか、結構多いですね。
 

—なるほど、ヴォーカルを生かす部分を重視ということですね。ではそのNakiさんがトリということで...(笑)

 
Naki:え~っと、これは「LINK」って言っておいたほうがいいのかな?(笑)あとは「デドリー」。サビの部分で、声の乗りがちょうどいいんですよね。「デドリー」は最初はもっとキーが高かったけど、どちらかというと私の声はミドルレンジでそんなに高い声は得意じゃないので、最初は「いけるかな?」って不安に思ってましたが、歌い込んでいくたびにちょうど良くなりました。CDよりライブのときのほうがバン!って来ると思うんですけど、その感じが自分で歌っていても気持ちいいと思うし、聴いてる側からしてもちょうどいいと思えるところに来たので、この2曲は推しだと思っています。
 
Aiko:結構ギリギリのラインを攻めて作った感じですね(笑)
 
Anna:「ちょっと頑張ってね!」くらいのところで(笑)
 
Naki:そうそう、やってるとだんだん高いところが出るようになってくるんですよね。音域が広がるというか。
 
Anna:それは計算済み。可能性を広げてあげたというか(笑)
 

—なるほど。でも確かにそのほうがロックっぽい勢いが出る感じですよね。

 
Naki:そうですね。あまりきれいになり過ぎないというか、自分に余裕がある感じでもないな、と思ったので。いっぱいいっぱいぐらいなほうが、必死感が出ていいかなと(笑)
 

—では最後に、アルバムのセールスポイント等をまとめて読者の方にメッセージをお願いします。

 
Naki:CREAのファーストアルバムということで、4人それぞれの個性がすごく詰まった、本当にこれから未来のCREA像に向かってLINKするような作品になったと思うので、今後のCREA像に期待していただける方は絶対にこのスタートを聴いて、「ここが原点だ」ということを認識してもらいたいです。これを引っさげて全国ツアーにも回りますので、これからの成長を見るためにも、この原点をしっかりと見てもらいたいと思います。

 
hana
 
彼女らのステージは、ガールズならではの魅力にあふれている。躍動感あふれるグルーヴィーなリズムと、ハードなギターサウンド、そして伸びやかなヴォーカル。そのロックならではのサウンドの中で、ガールズという魅力を前面に出したキュートなルックスとパフォーマンス、キャッチーなメロディの裏にある、哀愁のあるハーモニー等、男性ではなかなかたどりつかないであろうスタイルを、さも当然のよう作り出してしまう。CREAというバンドとしての経歴はまだ浅いが、彼女らのステージは既に『WOMEN’S POWER』のイベントの中でも見せ場の一つとなっている事実は、彼女らのスタイル、位置がまさに『WOMEN’S POWER』で求められていたもの、そしてガールズ・シーンで求められていたものだからではないだろうか?
 
hana
 

1.水津宏(WOMEN’S POWER LABEL主催) インタビュー

 
次に、『WOMEN’S POWER』イベントの主催であり、『WOMEN’S POWER LABEL』の主催でもある水津宏(有限会社フライングキャット・代表取締役社長)に、今回のレーベル設立及び第一弾リリースの経緯と、レーベルを含めた今後のガールズ・シーンへの思いをたずねてみた。
 

まず先入観は抜きにしてガールズ・バンドというものを見て欲しい。その場こそがWOMEN’S POWER。

—今回WOMEN’S POWER LABELを発足された切っ掛けをおしえていただけますでしょうか?

 
水津:CDの製作や流通も昔に比べるとやりやすくなってきましたが、バンドさん側の視点からすると流通に載せるっていうのはまだ敷居が高いという現実があるんですね。今まではイベントを成立させるっていうことに力を注いできたのですが、今は裾野が広がってきてバンドの数が増えてきて、いろいろ個性的なバンドも出るようになってきた。そこで、もう一つバンドさんを応援する方法はないかなっていうところで、前々からイベントの記念としてオムニバスを出したりしたことはありましたが、今度は本格的に作品としてのCDを出したり、流通に載せるお手伝いをしようということで発足に踏み切りました。
 

—第一弾のアーティストとしてCREAを選んだ理由はどんなものだったのでしょう?

 
水津:レーベルを行おうとした現段階で、一番精力的に動いていたこと、シングルを続けてリリースしていたので、向こうで“そろそろアルバムを…”と考えられていたときだったんですね。そこで、今までは手売りで販売していたのを、流通に載せて勝負してみたら?っていう話を持ちかけてみたんです。こちらの考えるところと、彼女らの方向性が一致したということで、CREAを第一弾としてリリースしようと決定しました。
 

CREAを一つのバンドとして見たときに、魅力的に思った部分ってどのようなところでしょう?

 
水津:ロックバンドっていうといわゆるメタル系、ハードロック系にどうしても目が行くことが多いけど、その中でもガールズ・ロックバンドを考えたときに“王道”という表現を彼女らもしたのですが、ポップさも兼ね揃え、ハードな面もあり、尚且つガールズ・バンドとしての華も持てる可能性を秘めているというところで評価はしました。
 

—なにか光るものを感じたのでしょうか?

 
水津:そうですね、磨けば光るものがあると思いました。だからもっと新しいCREAというものを自分達で考えて出してけば、かなりの伸びしろはあると思います。
 

—ちょっと気が早いかもしれませんが、第二弾の計画はどのような感じでしょうか?

 
水津:もちろんありますよ、考えているところは。でも、いろんなバンドからも来て欲しいと思っているのもありますし。とりあえずはお楽しみということで(笑)
 

—公募のほうはいかがお考えでしょうか?

 
水津:もちろん、今迄のWOMEN’S POWERのイベントと同じように、出したいと思えば直接お話をしてもらえれば、まずは前向きに検討します。是非積極的に連絡してみてください。逆にそれくらいの積極性を持ってもらえればいいと思う。たとえ流通に載せるとしても売るのはあくまでバンドの力なので、一枚でも多く人に聴いてもらいたいという意欲がないとダメですし。
 

—今後、レーベルとしての目標はどのようなものでしょう?WOMEN’S POWERのイベントと合わせて、どういう位置づけのものにしていこうとお考えでしょうか?

 
水津:基本的に、WOMEN’S POWERというイベントからまず先入観は抜きにしてガールズ・バンドというものを見て欲しいと思います。頑張って一生懸命やっているといいものが出来るということを分かってもらう場を作りたくて、WOMEN’S POWERという場を作ったので、次の段階としていい音楽を一人でも多くの人に聴いてもらうという場を作れるか?というのがレーベル発足の目標なので、そういう意味では全国にガールズ・バンドの魅力を届けたいというところが一番の目的。例えばその上でもしバンド側がメジャーに行きたいという意向があれば、そういう人たちのステップとしてこれが役に立てばと思いますね。バックアップしていきたい。
 

—なるほど。今、例えばメジャー・レーベルと契約してもアルバム一枚をリリースするのが精一杯というケースもあり、バンドの面倒まで見切れないという場合も多いですが、それと比較すると後々まで繋がりが出来るということでは、とても心強い感じですね。

 
水津:イベントとレーベルがひとつのものとして機能していけば、一つのムーヴメントとして盛り上がる可能性もあって、いいんじゃないかと思っています。
 

自分たちらしさを大事にしながら、成長してほしいと思います。
—今年に入って、という聞き方は語弊かもしれませんが、WOMEN’S POWERってかなり活動が活性化していますよね?年頭の20周年記念イベントとか、今回のレーベルの発足もあり、WOMEN’S POWERに出演するバンドの数も増えていたり。

 
水津:そうですね。今回(9月)は東京14バンドで大阪が7バンドだから、次は東京3日間、大阪2日間みたいな(笑)凄く裾野が広がってきていると思うんです。
 

—それは、今年に入ってから何かやろうと考えられていたのでしょうか?

 
水津:いや、こちらとしては特に何か特別にやろうとしたことは何もないですね。バンド数が増えたのも、別に意識したわけではないけど増えたというだけですから。ただ、世間的なブームとか、流行とかに対して素直にうんとは言えないところはありますけどね。今迄20年やってきて、良いときも悪いときも見てきて、その中でも一過性で終わることも多かった。だからそうならないようどうやって定着させようというのがずっと思っていることです。
 

—ちょっと変な話かもしれませんが、今年還暦を迎えられたことで、なにか気持ちの変化等はありますか?(笑)

 
水津:(笑)いや、本人は実感としてないんですよ、そういうことは。20周年のイベントも「20年もやってて凄いですね」ってよく言われるけど、本人には20年なんて実感はなくて、毎年やっていたら20年経っちゃっただけのこと。自分の歳云々っていうのも逆に実感がないんですよ。20年続いたのは、確かに自分ではビックリですけどね(笑)別に20年やろうとか思ったわけではないし、普通は「もっと大人になってもいいだろ?」とか言われますが、自分でそんな自覚もないし(笑)。だから急に何かのタイミングで変わったことはないと思うんですよ。今迄自分が出来ることをやっていて、これからもやっていくだけ、という感じです。
 

—なるほど。それでも何か盛り上げようとした成果が出てきた、みたいな実感ってあります?

 
水津:いや、それは僕の成果というよりも、バンドマン達が頑張っているものだと思います。バンドが頑張らなければ、地位も何もないはずですから。バンドが集まらなかったときは、ガールズバンド同士が「こういうバンドがいるんですがどうでしょうか?」って紹介してくれたりしたこともあった。だから皆のおかげで成り立ってきたというのもあるし、僕一人の力なんて全然ないですよ。
 

—大阪のほうも今回、数が増えましたよね。以前は関東から遠征が多かったですが、今回は大阪のバンドのほうが多い。

 
水津:そうですね。昔WOMEN’S POWERに出ていたバンドが、子育てが一段落したのでまた改めて出る、と言ってくれたバンドもいるんです。大阪のほうも盛り上がって欲しいんですけどね。この前も「子供の運動会があって…」なんて断念した子もいて(笑)。だけど、そういう世代の方も是非出て欲しいと思います。男のバンドでも還暦を過ぎてまで頑張っている人もいるし、女性のミュージシャンも長く続けられたら、是非やって欲しいって思います。
 

—では最後に、また前回の質問とダブってしまうかもしれませんが、このWOMEN’S POWER全体の動きをひっくるめて、ガールズ、ウーマンズのロックという範囲にかける期待のようなところをおしえていただけますでしょうか?

 
水津:そうですね…本来は音楽に性別はないはずなので、男性バンド、女性バンド、そして混合バンドとそれぞれの良さというのを、もっといろんな形で表現するバンドが増えて欲しい、というのはあります。自分達らしさというか。いろんな形でのバンドというものを注目されている中、ライブハウスでコツコツと活動しながら自分達で成長していくっていうのも大事なことだから、その部分を大切にしながら大きくなって欲しいと思います。

 
hana
 
レーベルが発足したWOMEN’S POWERは、ガールズ・ロックを支える一つの大きな拠点となった感もうかがえる。それは目に見えて存在するイベントとレーベルという門構えだけでなく、そこに水津をはじめとした多くの人からの女性、ガールズに賭ける思いの強さが込められているからに他ならない。かつて自身の思いだけでこれだけの拠点ができた例をほかに見ないだけに、ここはガールズ・ロックに対してまさに水津が願ったようなムーヴメントの発生を起こせる場所となり得るのではないだろうか?そうなっていくことを願いたい。
 
ガールズ・ロックというと思い出すアーティストとして、多くの人はRUNNAWAYSを挙げる方が殆どかもしれないが、私は、PHANTOM BLUEを挙げたい。80年代にガールズ・ハードロック・バンドとして、VIXENというバンドとほぼ同時期に登場したバンドだが、当時はまだ珍しかった男勝りのカッコよさを持つサウンドが私の気を引いた。何より彼女らの存在が気に入ったのは、世の彼女らへの評価である「VIXENのほうがルックスはいい」という声だった。VIXENは、まるでモデルのようにスタイル抜群のメンバーがズラリと揃った、文字通りの「セクシーなロック・バンド」だ。決してどちらが優れているという話ではなく、ただPHANTOM BLUEが本気で音での勝負をした気がし、さらにそれが世に認められたように思えたのだ。もちろん、彼女らならではの女性らしいテイストを盛り込んだ上でのサウンドで。
 
あれから様々なスタイルを持つガールズ・バンドが、歴史の端々に登場した。しかし、ここまでガールズ・バンドの話を並べてみたところから近日ガールズ・バンドを取り巻く勢いの強さというを感じるかもしれないが、実際にはまだバンドの絶対数が明らかに少なく、その活躍の場が十分に確保されているとは言い難いのが実情だ。しかし、何らかのタイミングからシーンは大きくなる可能性を持ち始める。引き続き、BEEASTも、この『WOMEN’S POWER』をはじめとしたガールズ・ロックの様々な動向を追い続けていきたい。
もう女性達が頂上を目指してもいいころだろう。常に殻を破り続けることでその勢いを増し、大きな存在として人々になくてはならない存在となったロック。次の殻は、いよいよ本命ともいえる、ガールズ隆盛への道の前に立ちはだかる壁、そしてその壁が破られるのも時間の問題と信じたい。
 

【WOMEN’S POWER LABE イベント情報】
『WOMEN’S POWER LABEL 発足記念EVENT』
2012.10.21(Sun) 下北沢MOSAiC
CREA / DESTROSE / FullMooN / HurlyBurly / IKEMEN
O.A:キサキ エミ
 
Flying Cat オフィシャルサイト
http://www.flyingcat-co.com/
 
CREA オフィシャルサイト
http://crea-music.com/


 

Photo
CREA 1st Full album
『LINK』

WPLE-0001/2,700円(税込)
発売中

 



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