演奏

TEXT & PHOTO:桜坂秋太郎

本誌BEEASTのオブザーバーであり、20周年を迎えたガールズロックの祭典『WOMEN’S POWER』など、数々のロックイベントを長年仕掛けてきた日本ロック界の重鎮“水津宏”。その水津宏の還暦を祝うイベント、『水津宏☆還暦までのカウントダウン(笑)ファイナル!!』をレポートしよう。このイベントの出演者の顔触れを見るだけで、水津宏という人間が、ミュージシャンからどれほど愛されているのかがよくわかる。普段は裏方に徹していて、けして表には出てこないが、還暦のお祝いパーティーにふさわしい、最高の夜となるのは間違いない。
 
一年に一度開催してきた『水津宏☆還暦までのカウントダウン(笑)』は、今回がファイナル。回数で言えばVol.10。つまり還暦の10年前からカウントダウンしてきたイベントだ。会場の目黒THE LIVE STATIONに到着すると、待ちきれないオーディエンスが階段に列をなしている。今夜のイベントは、水津宏を知らなくても十分に魅力的だ。この豪華な出演バンドを、ライヴハウスで一度に観ることができる。
 
出演…頭脳警察M.J.Q WILD FLAG快進のICHIGEKIDESTROSE(Opening Act)
MC…成田伸治成田☆一家,ex夜叉)/叩き屋MINOL丸本<ヨーラン>曜覧(ex THE HAIR、exFRONT ROW

 
 

DESTROSE

 
 

 

 

オープニングアクトはDESTROSE。メンバーは、Marina(Vocal)・Mina隊長(Guitar)・成美(Guitar)・miho(Bass)・Haruna(Drums)。私が最初にこのバンドを観たのは、2009年のBEEASTが創刊して間もない頃だったと思う。何気に何度も観る機会があったので、メンバーの変移も多少知っているが、このバンドのすごさはメンバーチェンジを繰り返して、スタイルを昇華し続けていること。観るたびに成長を感じる。いつかワンマンで2時間くらいのフルなショーを観てみたい。
 
ファンも、ツインリードのギターに2バスドラムという揺るぎないカラーを変えない姿に、心を打たれているはず。リーダーMina隊長の信念は、数々の壁をぶち壊し、女性メタルシーンの最前線で戦っている熱いバンドだ。そして素晴らしきMarinaの歌。パワフルで安定度抜群のハイトーンヴォーカルが、オーディエンスの心を鷲づかみ!この日初めて観た人の記憶にも、しっかりと焼きつけられるステージを披露!まだ1バンド目なのに、会場の熱気がすごい!
 
 





◆DESTROSE 公式サイト
http://destrose.net/
◆セットリスト
M01. Fenixx
M02. Hearts Grave
M03. Destination
M04. Skykiller
M05. Headless Goddess

 

快進のICHIGEKI

 
 

 

 

高揚感高まるSEに乗って登場は、快進のichigeki。和テイストを取り入れた注目株の若手バンドだ。本誌の特集「BEEAST太鼓判シリーズ:第5弾アーティスト」としても紹介したことがあるので、覚えている読者も多いことだろう。メンバーは、コータ(Vocal)・久雄(Guitar)・(Bass)・佑一(Drums)。演奏が始まってすぐ、カメラをかまえる私の前のオーディエンスが「うま!」と声を発する。そうなのだ、このバンドはすごく上手い。
 
でも上手いだけではない。歌のメロディが秀逸で、演奏力の高さと合わさって、類なき個性を築いている。若手バンドの中では頭一つ抜けた動員を誇りつつも、謙虚さを忘れない姿勢を高く評価したい。今はまだ長く続く階段をのぼり始めたばかりのバンドだが、これから間違いなくビッグになっていくことを今夜も確信!そう、BEEASTが太鼓判を押すバンドなのだから!短い時間でオーディエンスを楽しませる腕は本物だ!飛び散る汗の量がそれを物語っている。
 
 

 

 

◆快進のICHIGEKI 公式サイト
http://k-ichigeki.com/
◆セットリスト
M01. 斬り込み戦隊ブシデンジャー
M02. 大人子守唄
M03. 赤色の生命
M04. SHURABA音頭
M05. 音座芸夢

 

M.J.Q

 
 

 

 

続いて、アンプラグドパンクバンドというスタイルで活動中のM.J.Q。メンバーは、遠藤ミチロウ(Vocal & Guitar)・山本久土(Guitar)・クハラカズユキ(Drums)。The Doorsの「The End」をSEにメンバーが登場。消防サイレン付きのメガホンが唸ると、遠藤ミチロウ率いるM.J.Qがスタート!ベースレスの編成なのに、低音がしっかりしている。すごい!カメラを構えながら“メシ喰わせろ!”と思わず叫んでしまう。ゾクゾクするほどカッコイイ!
 
アコースティックな楽器だけで、これほどロックを感じることがあるだろうか。山本久土のギターストロークと、クハラカズユキのタイトなビートに身体が無条件で反応してしまう。遠藤ミチロウの悪魔が乗り移ったかのような絶叫に、オーディエンスは暗示にかかり、ただリズムを取り続けることしかできない。アンプラグドパンクの持つ恐ろしいパワーに、魂が揺さぶられる!
 
 

 

 

◆M.J.Q 公式サイト
http://punk-mjq.com/
◆セットリスト
M01. ワルシャワの幻想
M02. 水銀
M03. 猟奇ハンター
M04. 負け犬
M05. Sha.La.La
M06. 原発ブルース
M07. 音泉ファック
M08. 先天性労働者
M09. 天国の扉

 

WILD FLAG

 
 

 

 

イベントは後半戦へ。本誌BEEASTで、先日行われたデビュー20周年記念LIVEを「密着レポート第10弾:WILD FLAG」として紹介したばかりのWILD FLAGの登場だ。メンバーは、山本恭司(Guitar & Vocal)・満園庄太郎(Bass)・満園英二(Drums)。山本恭司のバンドとしてデビューした当時、新人だった満園兄弟は、今では日本のロック界を背負う存在として、輝かしいキャリアを築いている。絶対的な演奏力が保証されているので、安心して観ることができるバンドだ。大声援の中、メンバーが登場し、Jimi Hendrix の「Purple Haze」でスタート!
 
満園英二がステージセンターに飛び出してきてオーディエンスをあおる!満園庄太郎が腕を高く上げてオーディエンスをあおる!会場は一気にボルテージアップ。最高峰のテクニックとパワーを持つメンバーの、3ピースバンドらしかぬ、ぶ厚いロックサウンドが会場に充満する。この音圧がたまらない!後半はお待ちかねの、WILD FLAGお約束の旗がオーディエンスの頭上に舞う。拳を上げるオーディエンスの心とシンクロしながら、ラストナンバーまで駆け抜ける!
 
 

 

 

◆山本恭司 公式サイト
http://www.kyoji-yamamoto.com/
◆セットリスト
M01. Purple Haze
M02. Freedom
M03. Live to be Wild
M04. Wild Streets corner
M05. Hunter
M06. Going On
M07. Count Down

 

頭脳警察

 
 

 

 

いよいよ本日最後のバンド。頭脳警察!メンバーは、PANTA(Vocal & Guitar)・石塚-TOSHI-俊明(Percussion)。本日のサポートは、WILD FLAGから満園庄太郎(Bass)・満園英二(Drums)がリズム隊を務め、リードギターには、快進のichigekiの久雄(Guitar)が抜擢されている。フルバンド体制の頭脳警察は、日本が誇る“日本のロック”を、オーディエンスに魅せつける。熱すぎるステージに目が釘付けだ!
 
PANTAが「久雄!」を連呼する中、久雄がリードプレイをキメル!若手アーティストへの愛を持つベテランロッカーの貫録が、観ていて気持ち良い。「今日は、快進のWILD POLICEのichigeki!」、PANTA満園庄太郎が笑う。オーディエンスとのコール&レスポンスも会場の更なる一体感を生み、あっという間にクライマックス!すぐにアンコールの大きな声が会場を包み込む!
 
 

 

 

◆頭脳警察 公式サイト
http://brain-police.net/
◆セットリスト
M01. スホーイの後に
M02. ふざけるんじゃねえよ
M03. 歴史から飛びだせ
M04. 悪たれ小僧
M05. マラッカ
M06. コミック雑誌なんかいらない(encore)

 

 

 

イベントは長丁場にもかかわらず、バンドの転換にMCを入れたことにより、中だるみすることなく進行する。イベントは、お目当てのバンドが終わると帰ってしまうオーディエンスを見かけることがあるが、今夜はそうではない。最後の最後まで楽しもう!とするオーディエンスの熱気に包まれたままだ。頭脳警察のアンコールでは、他の出演者がステージへ。ケーキが用意され、イベント主役の水津宏もステージへ登場!
 
イベントのラストソングは、頭脳警察の名曲「コミック雑誌なんか要らない」を皆で熱唱!こんな還暦祝いは見たことがない!水津宏の長年の功績が、今夜のイベントの大成功に結び付いたのだろう。オーディエンスは、普段裏方を務める水津宏を初めて観た人も多いはず。そしてこのハチャメチャな還暦祝いの盛り上がり方に、彼がどれほど愛されているかも感じることができるはずだ。
 
残念ながら日本の定番“赤いちゃんちゃんこ”を見ることはできないが、長髪にベルボトム、レイバンのサングラスという水津宏の定番のスタイルに、還暦からの更なる飛躍も期待してしまう!素晴らしいイベントが終演。何とも言えない充実感。幸せだ。…十干十二支が一回りする60年。言葉では語り尽くせない思いを胸に、水津宏はこれからも、ロックファンを唸らせるイベントを主催していくことだろう!