【密着レポート第20弾: GIRL’S SCREAM!!! TOUR2014】
創刊5周年を迎える本誌BEEASTではこれまで数多くのガールズロックバンドを紹介してきたが、その中でも今回はTHE LEAPSとMUTANT MONSTERをピックアップしたい。
今回BEEASTが取材を行ったのは、ライブに定評のある2組が激突した2マン全国ツアー「GIRL’S SCREAM!!! TOUR2014」だ。ツアーは2014年3月7日(金)の横浜BAYSIS公演を皮切りに、千葉、三重、大阪、名古屋、岐阜、滋賀、仙台と全国各都市をめぐり、2014年3月29日(土)に東京・新宿LOFTにて千秋楽を迎えた。
本記事ではその3月29日に新宿LOFTで開催されたファイナル公演に密着取材を敢行。ホンモノのガールズロックバンドのステージは、どのようにして作られていくのか。
◆MUTANT MONSTER メンバー:
BE(Bass & Vocal)、MEANA(Guitar & Vocal)、CHAD(Drums & Chorus)
◆THE LEAPS メンバー:
CELiCA(Vocal)、MAYOU(Guiter)、shioRi(Bass)、NANA-A(Drums)
昼下がりの東京・新宿。春休みの土曜日ということもあって普段以上に大勢の人でごった返している歌舞伎町の繁華街に一台のバンが止まった。降りてきたのはMUTANT MONSTERのメンバーとスタッフ。機材を今宵のステージ、LOFTに運んでいく。その後に続いて階段を下りると、既にTHE LEAPSが到着し、ドラムセットの組み立てを始めていた。
バンドマンにとっては常識だが、ライブの出演者とスタッフは開演の何時間も前にライブハウスに入り、準備を始める。そして本番の出演順とは逆に、トリを務めるバンドからリハを始めるのが通例だ。つまり、誰よりも後に出演するバンドは、誰よりも早くリハを始めるということになる。
MUTANT MONSTERとTHE LEAPSが対面。既に全国8都市を共に回った戦友同士、しっかりと信頼関係を築き上げているようで、顔を合わせるや否や2組は笑顔になる。メンバーのモノマネをしながら和気あいあいと談笑。MAYOUはMUTANT MONSTERのTシャツを着ている。
まずは今夜のトリ、THE LEAPSのリハーサルが着々と進んでいく。その間MUTANT MONSTERはCHADとBEが柔軟をしたり、MEANAが弦を張り替えたり。途中、THE LEAPSの曲をMUTANT MONSTERの3人が歌うシーンも見られたが、それはリラックスしているというより、相手への敬意のようにも感じた。
THE LEAPSのリハを見ていて強く印象に残ったのは、曲が終わる毎に「ありがとうございます!やりやすいです~」と声に出していたことだ。こうした何気ない一言で、メンバー自身は緊張をほぐしているようにも見えるし、何よりライブハウスとの目に見えない信頼関係は確実に強くなっているように思う。リハから既に泣きのギターフレーズは全開。shioRiが曲入りのタイミングや照明つくりのための曲の世界観をPAスタッフに丁寧に伝えたところで、THE LEAPSのリハ終了。定刻通りだ。
THE LEAPSメンバー4人の立つステージにMUTANT MONSTERメンバーも加わり、アンコールのリハが始まる。登場の仕方をこうしよう、とMAYOUが提案、スムーズに決まる。曲始まりの合図などを二度三度確認すると、15分程度で順調に終了。この間も、7人のガールズロッカーたちは常に和気あいあいとしていた。
続いてはMUTANT MONSTERのリハーサルだ。こちらも、音作りはもちろんのこと照明のタイミングなどをスタッフと共に入念に確認。着実にステージを作っていく。
THE LEAPSとは対照的に、MUTANT MONSTERのリハは言葉少なに各々が自分の為すべき仕事を淡々とこなしていくという、職人気質な感じだ。とはいえ、言葉を発せずクールに演奏しているようで、内に秘めた熱い闘志はひしひしと伝わってくる。ステージを降りると、スタッフと何やら議論を始めた3人。取材とはいえ聞き耳を立てることははばかられたが、音の表現方法をめぐって納得いくまでとことん話し合ったようだ。
鹿谷弥生率いるしかバンビ(準備中)とChirolのオープニングアクト2組も到着し、順次リハーサルを始める。しかバンビ(準備中)として、バンドでステージに立つのは実に8カ月ぶりという鹿谷弥生は、のっけからスウィートな歌声を披露。バンドメンバーとも息ぴったりで、8カ月のブランクを感じさせない。
最後にリハを行ったのは、今日の出演者の中で最年少、しかも唯一の10代というChirol。先輩たちに囲まれてさぞ緊張しているかと思いきや、むしろリラックスしているようにさえ見える。4人でステージに立てることに心底からうれしいといった表情。リハーサルの時点で既に演奏を楽しんでいるようだ。
一方その頃、THE LEAPSメンバーは物販スペースのセッティングを進めていた。常駐のスタッフを設けず、4人だけでブッキングの連絡をし、機材車を運転し、フライヤーを印刷し、グッズを売るというDIYスタイルで奮闘するTHE LEAPS。「これオークションで買ったんですよ」と、ガチャガチャの機械を並べるNANA-A。Twitterでの告知の文面をどうしようかメンバーに相談するMAYOU。こうした裏方的な仕事さえも、全部バンドライフとして楽しんでいるようだ。
午後5時を回り、全てのリハが終了。新宿LOFTの精鋭スタッフたちはフロアを整え、観客を迎える準備に余念がない。人気の組み合わせ、それもツアー最終日とあって、大入りになることが予想される。刻一刻と開場の時間が近づく。そして午後5時半、ついに開場。やはり男性客の割合が多い。フロアはあっという間に色とりどりのTシャツに身を包んだガールズロックファンで埋め尽くされた。
午後6時を回り、GIRL’S SCREAM!!! TOUR2014ファイナル公演がスタート!まずオープニングアクトの1組目、文字通り今宵の「GIRL’S SCREAM!!!」の幕を開けるのは、Chirolだ。
冒頭、中村恵美(Bass)が観客に手拍子を求める。まずはキラーチューン「to Remember」、サビでフロント3人の音がスパーク!西村有里香(Drums)も熱いビートを刻みつつ涼しげに歌い、一気にフロアの空気を掌握。軸の安定した疾走感…一見矛盾する印象を持つことができるのは、高校卒業から丸1年を迎える彼女たちが着実に一歩前に進んでいる証だろう。
この「to Remember」から次の「キンモクセイ」への入りでは、一瞬の化学反応で生まれるギターフレーズが胸をわしづかみにするのだが、今宵はそこにMCをかぶせる。演奏に酔いしれるよりもオープニングアクトに徹して盛り上げようという意識が全面に表れている。とはいえ、大竹智紗(Vocal & Guitar)と林ゆきの(Keyboard)の絶妙な音の交差は健在。ギターがミルキーウェイの下地を引いたところにキーボードが星屑ビーズをちりばめていくような、そんなChirolにしか表現できない銀河が今宵も見られる。
続く3曲目「空想ライダー」でコール&レスポンスで会場の沸点を急上昇させると、最後は自らの飛躍も願掛けする「泣きむしピエロ」で、あふれんばかりの思いを音に乗せて満杯のフロアに届ける。MUTANT MONSTERとTHE LEAPSの背中を見つめ、感情の塊をモッシュ、ダイブさせる…終始エモーショナルなライブが展開された。