連載

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TEXT & PHOTO:鈴木亮介

Photoいよいよ春本番。今年は一段とスギ花粉が猛威をふるっていますね。読者の皆さんの中にも花粉に苦しめられているという人も多いのではないでしょうか。

さて連載「ロック1年生」今回は神奈川・藤沢を中心に活動するChirolが登場します。メンバーは写真左から林ゆきの(Keyboard)、中村恵美(Bass)、西村有里香(Drums)、大竹智紗(Vocal & Guitar)の4名。同じ軽音楽部の同級生で高校入学直後に結成し、3年間着々と実力をつけ、高3の夏には神奈川県大会決勝進出、国内最大規模の音楽コンテスト「Music Revolution」東京ファイナルに進出、さらに閃光ライオット2012ファイナリストとして日比谷野音のステージを経験しました。4人とも高校卒業後の進路が決まり、引き続きバンド活動は続きます。

卒業間近のChirolの4人に、3年間通い続け、慣れ親しんだ校舎内でインタビューを行いました。

---まずはバンド結成の経緯を教えてください。

林:結成のきっかけは部活です。1年生で軽音楽部に入ってすぐ、同学年でバンドを組むことになり、女子6人でChirolを結成しました。女子バンドと男子バンドと男女混合バンドを作れと顧問の先生に言われ、女子バンをやりたかった人でなんとなく集まって…

---1年生は全部で何人いたのですか?

大竹:その時1年生は20人くらいです。あとは、先輩とやる人もいたり…

林:1年生の中で女子バンドは私たちだけでした。誰かから声をかけたんだっけ?

西村:近くにいたから!って感じだよね。「バンド組んで!」ってなった時に近くにいて、何となくじゃあこのメンバーでやるか…という感じで、最初は組みました。それが1年生の4月~5月頃です。

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---なるほど。皆さんはなぜ軽音に入ろうと思ったのですか?元々楽器をやっていたのでしょうか。

大竹:小さい頃は、歌うことも好きだったのですが、どちらかというとスポーツ少女で、水泳とか空手とかサッカーとかをやっていました。幼少の頃は、サーカス団に入りたかったんです(笑)広場で前転をやったり、小学校に入ったらバスケとテニスをやっていました。その後自然と音楽に興味を持つようになり、YUIに憧れて、中学生の頃から弾き語りを始めました。それで、いろんな音楽を聴いているうちにバンドをやりたいなという思いが強くなり、高校に入って軽音楽部に入りました。

中村:私の場合は…憧れのアーティストとかは別にいなかったのですが、小学生の頃から漠然と軽音楽部に対する憧れがありました。中学でもバンドをやりたかったのですが吹奏楽部しかなかったので、なおさら憧れていて…それで、高校受験をする時にいろんな学校を調べていたら、藤沢総合高校のホームページにたどりつきました。軽音楽部のページを見たら、大会とかにすごく出ていて、興味が湧いてきたので実際に学校のライブに行ったんですよ。確か地域の公民館で開催するライブだったと思うのですが、そこで演奏していた先輩がとってもかっこよくて!それで、藤沢総合の軽音楽部に入ろうと決意しました。

---中学の時は何か楽器をやっていましたか?

中村:所属していた吹奏楽部では、ユーフォニアムという楽器をやっていました…わかりますか?チューバより一回り小さい同じ形の楽器です。それをやろうと思ったのは、音が出たから…パート体験の時に一番音が出たんですよ(笑)それで選びました。

Photo西村:ベースとはだいぶかけ離れてるね(笑)軽音ではなんでベースを選んだの?

中村:それも同じ理由!中学の時に友達がギターを習っていて、貸してもらって遊んでいたのですが、コードを覚えられなくて…でも、ベースなら簡単にコピーができるということで、今度はベースを貸してもらって、そうしたらすぐにコピーできちゃった!というのが、一番の理由です(笑)

西村:私が音楽を始めたきっかけは、小学校の時にピアノを習っている友達がいて、それを見て私もねこふんじゃったを引きたいと思ってピアノを習ったのが最初ですね。それがきっかけで楽器を演奏することが好きになり、中学で吹奏楽部に入って打楽器を始めました。高校でも音楽やりたいなぁと思って、ドラムだったらその経験が活かせるので、軽音楽部に入りました。打楽器を選んだのは…吹奏楽部に入るときにピアノがなくて(笑)、でも、管楽器は苦手で。音出ないんですよ。でも打楽器は音出るじゃないですか(笑)

中村:私と同じ理由じゃん(笑)

林:私は3~4歳くらいから高校に入る頃までピアノを習っていて、音楽はずっと好きでした。誰の影響というわけではないのですが、テレビなどで楽器を演奏している人を見て憧れて、中学生頃からずっとバンドをやりたいと思っていたのです。それで、高校を決める時期に軽音が強いところを探していて、藤沢総合に出会いました。学校説明会の時に先輩が演奏しているのを見て、ここだ!と思って、頑張って勉強して入りました。本当はベースをやりたかったんですけど、オーディションがあるということを聞いて、自分ができる鍵盤にしました。

---では、バンドの活動について教えてください。結成当初は、どのような活動をしていましたか?

林:最初はチャットモンチーのコピーを何曲かやって、そのあとすぐオリジナルを作り始めました。

大竹:よく考えたら6人でチャットモンチーってすごいよね!3人のバンドを、倍の人数で…

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---確かに!オリジナル曲は誰が作ったのですか?

大竹:はい!私が作りました。作詞は最初みんなでやっていて、で、メロディをそこにつけていった感じです。

西村:「どういう曲を作ろう」みたいな話は特にしなくて、大竹が曲を作れるというので、勝手に作ってきたものを「じゃあそれやろう」みたいな(笑)

---「Chirolはこういうイメージで行こう」みたいなのはなかったのですか?

林:最初はぶりぶりな感じでしたね…結成当初、ちーちゃん大竹)は下手ギターで、ボーカルが別にいたのですが、その子がアニメ声みたいな感じだったので、かわいらしい声を活かすような曲でしたね。

大竹:あと、私はChirolでのバンド活動と同時並行で、一人での弾き語りも続けていました。

中村:その後メンバーの脱退があり、1年生の9月に今の4人体制になりました。

西村:最初だれが歌うかというのも決まらず、どうするか?ってなって、じゃあみんなで歌う?とか色々考えて…そうしたら、「下手(しもて)のギターが歌えるんじゃね?」みたいな話になってね。

林:一緒にカラオケ行った時に「え?」って驚いて。そこでちーちゃんが歌うまいことに気づいて、ボーカルになってもらいました。

---4人体制になって、いよいよ本格始動という感じでしょうか。そして2年生を振り返ると、どんなことが印象に残っていますか?

Photo大竹:2年生の時は、ひたすら曲を作りました。

西村:2年生の夏にある連盟の県大会で初めて決勝に行けたよね!めっちゃ喜んだよね!

中村:あと、私たちが1年生の時お世話になった顧問の先生が2年生の時に異動になってしまったのですが、その先生が「決勝大会で待ってるよ」って言ってくれたんです!「行かなきゃ!」って、必死に練習しました。

林:初めて決勝大会に行けたのは嬉しかったし…2年生を振り返ると、とにかく泣いた1年でした!

---「泣いた」というと?

中村:夏大会で初めて決勝に行けて、秋大会でも決勝進出できて、でもどっちも賞は獲れなかったんですよ。それが悔しくて…たくさん泣きました(笑)

林:2年生の時の「悔しさ」を経験して、3年生になって、特に3年生の夏で、私たちは大きく変わりました。「去年賞を獲れなかったから今年は絶対獲りたいね」って。でも最初は自信が持てなくて…

中村:そうだね。それで、県大会に加えて閃光ライオットも、軽音楽部で毎年応募しているからということで私たちもエントリーしたのですが、最初は受かるつもりもなくて…そうしたら2次選考、3次選考と通過して、ファイナルまで行けて、夢のような…

大竹:トントントン、とファイナルまで行けちゃったから、どうしよう?って。

林:あと、ミューレボ(=Music Revolution)も!色んな大会に出られたね。

---確かに素晴らしい快進撃でしたね。中でも閃光ライオットについて、さらに話を聞きたいのですが、ファイナルのステージはどうでしたか?

Photo西村:いやー楽しかったね!

大竹:楽しかった!

---やっぱり緊張しましたか?

林:全然しなかったんですよ。デカすぎてね。

中村:事の重大さを分かってなかったんです。「いやー楽しいねー」って。客席のみんなが歌を覚えてくれて…その後、他校と合同ライブをやった時に、曲をやるとみんな歌ってくれるんですよ!閃光ライオットに出るまでは、そんなことはなかったし、CDを作ったこともなかったので、「みんな覚えてるんだー」って、嬉しくなりましたね。

---3年間軽音楽部で活動してきて、先輩や顧問、大会関係者など様々な人と接してきたと思います。振り返って、どんなことが印象に残っていますか?

林:顧問の堀籠先生が言ってくれた「否定じゃなくて肯定!」っていう言葉にいつも助けられていました。

中村:大会前に「あーもうできない!」っていう気持ちになっていると、やっぱり本番もうまくいかないのですが、「できる、できる!」って本番前に自分たちに言い聞かせると、確かにうまくいくんですよね。だから、大会の時はいつも、本番直前のステージ脇で「もう優勝してるよね!」「賞獲ってるよね!」って言い合って、そのまま演奏したんですよ。そうしたら本当にうまくできるようになってきて。

---そんなChirolというバンドの魅力、持ち味を自分たちで分析すると、どういう所にあるでしょうか?

林:そんなのあるか…仲が良いことかな?え、違う?

西村:そういうこと?(笑)

Photo大竹:ガールズバンドだけど、ナメられないガールズバンドを目指してる、みたいな感じです。

林:「ガールズ!かわいい!」っていう感じじゃなくて、男っぽさもある…

中村:オカマみたいな?

林:それは違うでしょ(笑)

西村:普段の生活が男っぽいという感じではないのですが、ステージに立つと変わる!みたいなことですね。

---何気ないやり取りを聞いていても、ものすごく仲が良い様子が伺えます。メンバー個々に、「この子はこう」っていうキャラクターみたいなものはありますか?

大竹:ゆきの)はおバカ!

西村:この子()は馬鹿でいじられ担当です。

中村:キャラ?違う、ガチな馬鹿です。

西村:ナルシスト?中村はナルシストです。

中村:大竹西村はチーム優柔不断。バンドで誰が引っ張っていく、というのも特になくて、「どうする?」「どうしよっか?」って…

西村:その中でもめぐみんぬ中村)は、優柔不断だけどたまに決めてくれる!

中村:言うけど、でも「じゃあこれでいい?」って言ったら「えー」ってみんな言う!

---1年生の時、初めて出会った時の印象と比べてどうですか?

林:ボーカル(大竹)は最初と全然印象が違う!人見知りで、喋りかけても「あぁ」って感じで、どんな子か分からなかった!

Photo西村:中村はすぐ泣く、あとはギャル、最初ギャル!(笑)

林:イメージ悪っ!

大竹:ゆっか西村)は何だろう…あ、ホクロ!ホクロ!(笑)

西村:第一印象ホクロ?ひどくない?(笑)

中村:ライブの後にも反省会というか半分雑談というか、ファミレスで、話すことがなくなっても何時間も一緒にいます。この4人は1年生の時から本当に毎日のように会っているので、互いに何でも知っているというか…

---もう家族のような存在ですね。

林:いや、家族以上ですね!

---そんな皆さんですが(笑)まもなく高校卒業ですね。卒業後の進路や、バンドの今後について教えてください。

林:3月までライブをたくさんして、曲をいっぱい作って…

大竹:ライブハウスでのライブを増やしていきたいと思っています。高校卒業後は、がフリーターで、他の3人は四大に進学します。私は英語系で、西村は同じ大学で保育系に進みます。

Photo中村:私は2人とは違う大学の、日本文学科です。

林:私は最初専門学校に進もうと思っていて、照明とかライブハウスで働けるような道に興味があったのですが、でもバンドを本気でやりたいから、他の勉強をするよりもバンドに専念したいと考えて、進学はやめました。

---高校卒業が間近に迫って、バンドを続けるかやめるか、みたいな話はメンバー間でしたのですか?

林:高3の夏、閃光ライオットのファイナルに行った時に、主催の人に「バンドは今後どうするの?ちゃんと話し合った方がいいよ」と言われて、最初はボーカル(大竹)がレコーディングしている時に残り3人で話し合いました。「うちらはやりたいけど…ボーカルが一人で弾き語りでやっていきたいのかな?」とこの3人で勘違いしちゃって。

中村:それで、大竹に「(閃光ライオットのファイナル進出で)Chirolという名前を知ってもらえるようになったし、このまま大竹が弾き語りでやれるなら、私たち3人はバンドは終わりでもいいよ」と言って…

林:そうしたら大竹が「いや、バンドやるよ、4人でやろうよ」って言って(笑)それで、活動を続けることになりました。

大竹:そうなりました(笑)

---では最後に、高校卒業後の意気込み、抱負をお願いします!

大竹:このバンドで行ける所まで行きたいですね!個人としては、もっともっとうまくなりたいです。うまくなって、いい曲を作れるようになりたいなと思います。

中村:まだ経験が少ないので、ライブ1回1回を楽しむというか大事にして、1回1回成長できるように頑張りたいです。

Photo西村:ドラムって女の子だとナメられやすいというか…貧弱なドラムを叩きたくないなと思います。男前なドラマーになりたいです。

林:もっともっとうまくなりたいです。あと…ナメられたくない!

大竹:パクられた!

西村:可愛い子ぶってんじゃねーよ!

林:ほんとひどい!…もっとうまくなって、誰よりもうまくなって、色んな人にすごいって思われるキーボーディストになります。あとはコーラスも、「うわ、あいつらやべー」ってなるくらいうまくなって、色んな人に「ああいう風になりたいね」って思ってもらえるような歌とキーボードをやっていきたいと思います。

ひと通り話を聞き終えた後、写真を撮るためにフリートークをしてもらったのですが、4人の絶妙な掛け合いは本当に家族以上の絆を感じさせてくれます。その一方で、ステージに立つ彼女たちには、同世代のガールズバンドでも群を抜くかっこ良さがあります。思わず口ずさみたくなるような、シンプルで真っ直ぐ心に届く詞に、切ないメロディ。卒業を機に、そのキラキラした楽曲を、もっともっと大きなステージに立って奏でてほしいと思います!

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◆Chirol Twitterアカウント
https://twitter.com/Chirol_official
 
◆ライブインフォメーション
・2013年03月15日(金)【下北沢】GARAGE
・2013年03月17日(日)【新 宿】Marble
・2013年03月19日(火)【下北沢】club251
・2013年03月22日(金)【渋 谷】aube
・2013年03月28日(木)【赤 坂】BLITZ

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【取材協力】
神奈川県立藤沢総合高等学校
http://www.fujisawasogo-ih.pen-kanagawa.ed.jp/

 
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