演奏

TEXT:鈴木亮介 PHOTO:矢沢隆則

Photo本誌特集BEEAST太鼓判シリーズ第24弾アーティスト『MUTANT MONSTER』でもご紹介した、ガールズバンドMUTANT MONSTER待望の初ワンマンライブが12月1日に開催された。会場は渋谷道玄坂に新設されたライブハウスBURROWだ。インタビューでも語ってくれた通り、3人にとって特別な場所に、運命的に作られたライブハウス。これはもう想像以上の化学反応が生まれるに違いない。
 
そんな期待は、BURROWの分厚い扉を空けた瞬間に、一瞬でかすんでしまった。自分の期待値をさらに大きく上回る熱気が、開演10分前にも関わらず途切れない客の列から伝わってきたからだ。受付の段取りが悪いのではない。あふれんばかりの観客で場内がすし詰め状態になっているのだ。ひょっとすると、ステージの撮影ができないかも…そんな不安さえ襲ってきた。開演の時が、刻一刻と近づく。
 
◆メンバー:
BE(Bass & Vocal)、MEANA(Guitar & Vocal)、CHAD(Drums)

それぞれのカラーを基調としたシャツに黒のニーハイソックスといういで立ちで、メンバー3人が登場!軽快なSEが手拍子を誘う。定位置に就き、軽くセッティングするや否や、CHADが4カウント!「バラバラ!全部! oh oh oh !!」それはもう競馬のゲートが開いた瞬間のような躍動感と期待感の急上昇!「バラバラ」「有料恋愛」「レイラのリスカ」と序盤3曲は、ここにいる全員が口ずさめるであろうヒットチューンの連発。MEANABEの歌い分けやコーラスが適宜散りばめられていることで「勢いがいい」「フレーズが特長的」なだけではない、味わい深さがある。
 
「ワンマンへようこそ!」MEANAが一言煽ると、すぐさま4曲目「神様!!お願い」へ。グングンボルテージの上昇していく客席へ、さらにミュータントシャワーを浴びせる!5曲目「NO WAY !!」ではCHADの高速ドラムがさらに客席を盛り上げる。その後も「ヒロイン」、「空想」、「夜が眠るまで」と快調に飛ばしていく。
 
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「皆さん盛り上がってますか?今日は思う存分楽しんでいってください!」MEANAの呼びかけに、当然よ!とばかりに歓声で応える観客。「東京以外から来た人?手挙げてください!」後方からCHADも呼びかける。MUTANT MONSTERのステージと客席との対話を見ていて感じるのは、その強い信頼関係。音楽がしっかりと心を捕まえているから、少ない言葉、シンプルな言葉の掛け合いの中にも、長年連れ添うカップルの信頼感のような空気が漂う。
 
アットホームな空気感の中、「懐かしい曲たちをやります!」とBEが前置きし、CHADがシンバルを3カウント。歌い始めたのはデビューアルバム『FOLLOW ME』収録の「修正ペン」だ。遊び心と若さの詰まった歌詞に、階段をたったったっと二段跳びするようなギターのシンプルながら楽しいコード進行が、脳内で何度も何度もリフレインする。続く「モノクロ」はBEの沸き立つベースが超絶クール!さらに「ANSWER」、「砂漠」と『FOLLOW ME』の収録曲を4曲続ける。
 
「ANSWER」ではBEMEANAが奏でるロックンロールサウンドと、ツインズの歌声のハーモニーに、観客も「Oi! Oi!」声を出さずにはいられない!「砂漠」は3人個々の音をしっかり独立して聴かせ、アルバム音源とはまた違った味を出す。CHADのドラムも、全体を引っ張るスピード感を持ちつつもサビではきっちり決めてアクセントを作り、歌声を際立たせる。
 
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少々スローな「Refrain」を挟んでいったん緩めた所で、すぐさま急ピッチなドラムでガラっと空気を変え、観客を煽る。14曲目は「何色」。CHADがしっかり土台を作り、BEMEANAがアクティブにベースをギターをかき鳴らしつつ、綺麗にコーラスを決める。パワフルなガレージサウンドと透明感あふれる歌声の融合は、ガールズバンドならではの醍醐味だ。
 
「盛り上がってる?みんな、まだ半分以上あるから、体力残しといてね!」CHADが呼びかけると、客席からは「ありがとう~」と嬉しいレスポンスが飛び、メンバーも観客もほっこり。この3人でこれからもノンストップで走っていく、とMEANAが宣言。感慨に浸っていると…
 
「ワンマンということで…好き放題やっちゃっていいですか?」一瞬聴き逃す所であった。「私たちの人生を変えてくれたプロデューサー・THE STARCLUBHIKAGEさん、そして、たくさんの人たちに感謝を込めて…1曲持ってきました!」これは、もしかしてインタビュー時に語ってくれた「サプライズ」なのか。CHADが速いビートを刻み始める。何人か気づいた観客が歓声を上げ、コール&レスポンスが起こる。THE STARCLUBの名曲、「ROCK’N ROLL RIDER」のカバーだ!「I’m a Rock’n’ Roll~」「Rider!」「イカれ~た~」「エンジェル!」ゴキゲンなR & Rサウンドに満ちあふれる!さらに、2013年3月発売のニューアルバム『Girl’s Fight/闘心少女』収録の「日本が死ぬ日」を続け、客席のボルテージは最高潮!
 
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嬉しいサプライズはさらに続く!初披露の新曲「Mr. JACK」、「HANABI」の2曲がぶち込まれると、ダンサブルなサウンドに会場は大盛り上がり!BEの踊り狂うベースに、アップテンポながら少々の憂いを含むボーカルはこれまでのアップテンポナンバーとは違った新境地。
 
そして、一呼吸。しっとり聴かせるスローナンバー「最終電車」、パンキッシュな「GIRL’S FIGHT」と、ニューアルバム『Girl’s Fight/闘心少女』から2曲。アクティブな中にも切なさを感じさせる楽曲を続け、終盤につないでいく。
 
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いよいよクライマックス!「私たちは…この曲から始まった!『バーゲンセール』!」MEANAの言葉を皮切りに、ここにいる誰もが待ち望んでいた彼女たちの代表曲、「バーゲンセール」がスタート!停滞や障壁やジメジメ、ウジウジ…ネガティブなもの全てをぶっ飛ばす、アクセル全開の最強ロックンロールナンバーだ!BEMEANACHAD、3人が目を合わせ、最強のトライアングルができる。そして、3人同じ前方を向き、客席に向かって正面から楽器を高らかと鳴らし、突っ走っていく!向かい風を思いっきり真正面から受けて髪が逆立つような、このアドレナリン出まくりのステージは一度来たら病みつきになること必至だ。
 
しかし無情にも終わりの時間は刻一刻と近づいてくる。22曲目「可愛いだけじゃいられない」ではさらに客席を煽り、「ヘイ!ヘイ!ヘイ!ヘイ!」の大合唱!力の限り叫びつくし、ランナーズハイ状態の中、ラスト23曲目は「スポットライト」!MEANAは全身全霊ギターをかき鳴らしてみせ、BEとの綺麗な歌い分けでもまた魅せる。音と音との隙間を埋める「ヘイ!」コールで客席とも見事な一体感を見せ、大歓声の中ステージを下りる。
 
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MUTANT MONSTER、その名の通りモンスター級の魅力にのめり込んで、フロアの狭さを暫し忘れていた。方々から沸き起こるアンコールの声で、我を取り戻す。満員大入り、パンッパンに埋まったフロア。このBURROWという会場が彼女たちにとってはもはや狭すぎるハコであることを実感する。それは、バンドの可能性の大きさの証だ。
 
ハットをかぶり、黒の衣装に着替えてメンバー再登場!「めちゃめちゃ暑くなったね、始まる前に比べて」とつぶやくCHAD。「私たちの所から女の子が見えないんですけど…」「ちょっと可愛い子、前来て!」と、メンバーが女性の観客をステージ最前に呼び込む。超満員で段差のないフロアでは、比較的背が高くガタイの良い男性客に対して、女性客は委縮しがちだ。MUTANT MONSTERメンバー自身の経験もあってのことだろう、同性のファンへの優しい気遣いを見せ、男性客もいっせいにしゃがんで協力。最前列がグッと華やかになる。
 
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「みんな元気残ってる?」念のため確認したところで、さあ暴れる準備再開!イントロ、馴染みのギターフレーズ。まずは彼女たちが敬愛し、結成当初から幾度となくカバーしてきたであろうThe Crashの「I Fought The Law」を披露。続いて、自身の初期ナンバー「Preparation」を元気いっぱい、陽気に披露!眩しい楽曲に、メンバーのあふれる笑顔もあいまって、底抜けの眩しさを感じるステージ。
 
「ラスト1曲!」MEANAの宣言に続いて始まったのは疾走感みなぎりまくりの「Forever R & R」!ギターも、ベースも、ドラムも飛ばす、飛ばす!観客もある者は拳を挙げ、またある者は頭を振って、全力で応える!何と言う一体感だ、永遠(とわ)に永遠に、ロックンロールし続けたい!そんなMUTANT MONSTERのここまでの軌跡と、次のステージに進む覚悟を感じる演奏。彼女たちがステージを下りても、しばらくその残像/残響が脳内でリフレインを続けた。
 
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しかし、この特別な瞬間、バンド史上初にしてこの規模のハコでは最後になるであろう、ドキュメンタリーなワンマンライブを、まだ終わらせたくないという思いが刹那、観客の心を支配する。観客当人たちも意図していない?不思議な力が働いて、アンコールの掛け声と拍手が起こり始める。
 
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ほんの少しの間を置いて、びっくりした表情でステージに戻るメンバー3人。「もう曲ない!」「全部やったよ!」でも、その瞳の奥には「まだやりたい!」という思いが垣間見える。笑顔で再び立ち位置に戻り、BEが「ほんとにほんとに、ラスト!ラストね!」と宣言。そして「今日一番最初にやった、『バラバラ』!」
 
心拍数の上昇に合わせて、ライブ冒頭よりも気持ち速いテンポで、「バラバラ」を再び演奏。サビの観客との掛け合いも一段とヒートアップ!「バラバラ、全部!」「サヨナラ、今日で!」「アリガト、全部!」…本来の曲の意味とは違うが、その歌詞の通り、彼女たちにとってこの規模の舞台は、ここでおしまい。バラバラに解体して、もっともっと大きな舞台へ。今宵の記念すべき初ワンマンは、MUTANT MONSTER・第2章の始まりを告げるマイルストーンとなった。
 
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◆セットリスト
M01. バラバラ
M02. 有料恋愛
M03. レイラのリスカ
M04. 神様!!お願い
M05. NO WAY !!
M06. ヒロイン
M07. 空想
M08. 夜が眠るまで
M09. 修正ペン
M10. モノクロ
M11. ANSWER
M12. 砂漠
M13. Refrain
M14. 何色
M15. ROCK’N ROLL RIDER
M16. 日本が死ぬ日
M17. Mr. JACK
M18. HANABI
M19. 最終電車
M20. GIRL’S FIGHT
M21. バーゲンセール
M22. 可愛いだけじゃいられない
M23. スポットライト
-encore-
E01. I Fought The Law
E02. Preparation
E03. Forever R & R
E04. バラバラ
◆MUTANT MONSTER 公式サイト
http://www.mutantmonster.com/
 
◆MUTANT MONSTER 公式ブログ
http://www.mutantblog.com/
 
◆ライブインフォメーション
フリージアとショコラ 2014~アイドルVSギャルバン~
・2014年02月11日(祝)【渋 谷】RUIDO K2
w/ ハニースパイス / 平成琴姫 / READY TO KISS / The LET’S GO’S / AZURE#
 
SWEET BOMB presented by MUSE
・2014年02月19日(水)【渋谷】Star lounge
w/ Hurly Burly / 中谷あすみ / Kit Cat / ニーナ・シェルカ / Manumit

 
◆THE LEAPS × MUTANT MONSTER
GIRL’S SCREAM!!! TOUR2014

・2014年03月07日(金)【横 浜】BAYSIS
・2014年03月09日(日)【千 葉】LOOK
・2014年03月15日(土)【三 重】BASS 1
・2014年03月16日(日)【難 波】ROCKETS
・2014年03月20日(木)【名古屋】CLUB UPSET
・2014年03月22日(土)【岐 阜】CLUB ROOTS
・2014年03月23日(日)【滋 賀】Blue
・2014年03月27日(木)【仙 台】enn 2nd
・2014年03月29日(土)【新 宿】LOFT

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【特集】BEEAST太鼓判シリーズ第24弾アーティスト『MUTANT MONSTER』
http://www.beeast69.com/feature/89862
【レポート】LADIES FIRST vol.10
http://www.beeast69.com/report/86769