演奏

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TEXT:野村佳緒理

世代を超えたロックファンが集結する、タワーレコード主催のロックイベント、『MAVERICK KITCHEN』。5回目となる今回は、なんと14組というイベント史上最多バンドが出場!しかも、伝説のパンクバンドアナーキーがオリジナルメンバーで17年ぶりに再結成!ということで、開催2週間前にはSOLD OUTを記録!9時間を超えたロックイベントは、終始、ロックファンとロックンローラーと、そしてCD不況の逆風にも負けず“NO MUSIC,NO LIFE.”を体現し続けるタワーレコードとの、三者三様のロックに賭ける想いが混然一体となった、5周年にふさわしい歴史的イベントとなった。

OKAMOTO’S
1-1 1-2

ゴールディンウィークの真昼間、定刻通りに現れたトップバッターは今回最年少のOKAMOTO’S!1曲目は甲本ヒロトザ・クロマニヨンズ)とのレコーディング・セッションで話題となった「共犯者」、2曲目は早くも踊りださずにいられないナンバー「Beek」。ヴィンテージサウンドへの敬愛を物怖じなく表現する立て続けの2曲で『MAVERICK KITCHEN Vol.5』の幕を華麗にオープン!「MAVERICK KITCHEN5周年おめでとう!楽しんでってくれよ!」オカモトショウの叫びに、観客たちもすっかりハイテンションで応える。

続いて全編英語詞の「Are You Happy?」。happyを自覚して感覚に忠実に生きることを提案する、恩着せがましさのないメッセージソングだ。テンポダウンしてそれぞれの楽器が交互にリードを取りながら、「Are you happy?」と繰り返すオカモトショウのテンションを徐々に高めていく、圧巻のアレンジ。ドレープを翻すように手足をくねらせるオカモトショウの動きに見とれながら、観客は声も出せない浮遊感にいざなわれていく。

そして最後の2曲は、陶酔を自ら打ち破る、ビート感たっぷりの「恋をしようよ」「まじないの唄」。先人たちに礼を尽くすような質の高い演奏と、自由自在なステージングを披露して、4人のオカモトは颯爽とステージを後にした。
 

◆セットリスト
M01. 共犯者
M02. Beek
M03. Are You Happy?
M04. 恋をしようよ
M05. まじないの唄
◆OKAMOTO’S
オカモトショウ(Vocal)
オカモトコウキ(Guitar)
ハマ・オカモト(Bass)
オカモトレイジ(Drums)
◆OKAMOTO’S 公式サイト
http://www.okamotos.net/

シズヲバンド
2-1 2-2

続いて登場したのは渋い大人のロックを聴かせるスリーピースバンド・シズヲバンド。日本の老舗ロックバンド、ニューロティカのギタリストだったシズヲ(Guitar&Vocal)を中心に結成されたバンドだ。

まずは2枚のアルバム「ミエナイホシ」、「壊レ者」からそれぞれの1曲目、「途方にくれる」、「ラブソング」を披露。シンプルでタイトな演奏と、冷めた現実を直視する詞の世界に思わず聴き入ってしまう。続く「探し物、それはそこにあるのかい?」では印象的なギターリフに、ベースもヴォーカルもぐっと低音を響かせて観客を痺れさせる。

ここでシズヲのMCが入る。「シズヲバンドで初めて出れました。日本一のロックフェスだと思っています!」。実はシズヲバンド、本日トリを務めるアナーキー仲野茂率いるゲタカルビのメンバーとして、これまでも『MAVERICK KITCHEN』に参加している。さらにこのイベント主催者のタワーレコード販売促進部・国広氏への感謝の言葉を呟くと、新曲「そのままでいい」を骨太にがなりたてる。続く「月」は高円寺の情景が目に浮かぶ、身に沁みる名曲。最後は「砂漠」、「アイノウタ」と盛り上がり、一切のデフォルメのない音楽が終わりを迎えた瞬間、男たちの賛同の拍手と声援が鳴り響いた。
 

◆セットリスト
M01. 途方にくれる
M02. ラブソング
M03. 探し物、それはそこにあるのかい?
M04. そのままでいい
M05. 月
M06. 砂漠
M07. アイノウタ
◆シズヲバンド
SHIZUWO(Vocal & Guitar)
SAMON(Bass)
NABO(Drums)
◆シズヲバンド 公式サイト
http://www.shizuwoband.com/

DOES
3-1 3-2

Gary Glitter「Rock and Roll」のギター音が響く中、そのSEをぶったぎるいきなりのドラム音、そこから止まらない疾走感で終始カッコ良すぎるライブを繰り広げたのは、結成10周年のDOES。1曲目「シンクロニズム」から予想外の爆音を響かせる。飾らず、シンプルに「どうも、DOESです」とだけつぶやいて、2曲目はアニメ「銀魂」テーマとなったヒットチューン「曇天」!すっかり会場の熱をあげたところで、3曲目には麗しいギターリフにドラムとベースの振動が心地良く絡む「サブタレニアン・ベイビー・ブルース」。「浅き夢みし」「赤とんぼ」といった和テイストの歌詞が不思議なほどブルージーに耳に響く。

続く「チャイナ・マーダー」では一転、閉塞感を帯びたサウンドで観客を酔わせると、ほとんど言葉を発しなかった氏原ワタルがギターを掻き鳴らし、黄色い声援を煽って一言、「もっと……」と囁くと、その流れのままデビューシングル「明日は来るのか」に突入!「やれやれやれやれ……」のキレっぷり、苛立ちそのままの激しいサウンドに揺さぶられる観客!最後は新曲「殺伐とラブニア」を高速で披露。全員九州男児の水分を絞り切った硬質なロックサウンドに、会場は割れるような拍手を送った。
 

◆セットリスト
M01. シンクロニズム
M02. 曇天
M03. サブタレニアン・ベイビー・ブルース
M04. チャイナ・マーダー
M05. 明日は来るのか
M06. 殺伐とラブニア(新曲)
◆DOES
氏原ワタル(Vocal & Guitar)
赤塚ヤスシ(Bass)
森田ケーサク(Drums)
◆DOES 公式サイト
http://www.does-net.com/

MOSQUITO SPIRAL
4-1 4-2

「MAVERICK KITCHENへようこそ!」ギター音を背にしてBAKIがそう叫んだだけで、会場の空気が一変した。わずか数秒で尋常でない魅力を放ったこのバンドは、凄腕のベテランが集結したMOSQUITO SPIRALKASUGALAUGHIN’NOSEで、ANAI NIKICHIザ・ロッカーズTHE WILLARDで活躍し、KYOMAD3解散後に加入。BAKIのオーラの凄さは、L’Arc~en~Ciel黒夢など後続アーティストに影響を与えたGASTUNKのカリスマシンガーなのだから当然と言えば当然だ。

「FIGHT FOR…」、「THREE SIXTY」といきなりのスピーディーな展開ながら、決して上滑りしないBAKIの歌唱力に会場全体が圧倒される!続く「AKARI」は高音でうねる演奏が印象的な妖艶な楽曲。「灯りをつけてくれ」というリフレインのたびに会場の熱がじわじわと引き上げられてゆく。

ここで「心の片隅にMOSQUITO SPIRALをちょっとだけ刻んで帰ってくれ」と語るBAKI。観客は既に大喝采で応える!ステージと観客の間に温かい空気が通う中、4曲目は男の色気が炸裂する「KISS」。なんとここまで全曲がニューアルバム「LIGHT ON SHADE」に収録される新曲でありながら、新曲とは思えない凄まじい盛り上がり!そして聴く人に勇気を与える説得力に満ちた「REBIRTH」、本当に雨に打たれているかのような熱唱となった「SAVING GRACE」でフィナーレ、しばし歓声と拍手が鳴りやまなかった。しかし、この時点でまだ午後3時、まだ10組のライブが残されている今回のMAVERICK KITCHEN。どこまで濃く、お得なイベントなのだろう。インターバルのドリンクにはたまらず長い列ができた。
 

◆セットリスト
M01. FIGHT FOR…
M02. THREE SIXTY
M03. AKARI
M04. KISS
M05. REBIRTH
M06. SAVING GRACE
◆MOSQUITO SPIRAL
BAKI(Vocal)
KASUGA(Guitar)
ANAI NIKICHI(Bass)
KYO(Drums)
◆MOSQUITO SPIRAL 公式サイト
http://mosquitospiral.com/

THE BOHEMIANS
5-1 5-2

陽気なSEに待ちきれないファンの歓声が交じる。新時代のロックンロール・アイドル、THE BOHEMIANSの登場だ!赤いジャケットに黒い帽子、ドールめいたメイクを施した平田パンダが敏捷にリズムに乗り、「THE ROBELETTS」、「シーナ・イズ・ア・シーナ」、「太陽ロールバンド」と3曲休まず立て続けのはしゃぎっぷり。

歓声を浴びながら、「こんな昼間からロックンロールで騒いでるんですか?あなたたち、ロックンロール大馬鹿野郎ですね?!」と呼びかけられ、本望とばかりに観客たちも大喜び!そして4曲目はキーボードが跳ね回るキュートなナンバー「私の家」、続いてその勢いのまま賑やかな「That Is Rock & Roll」。RCサクセションの「ドカドカうるさいR&Rバンド」を髣髴とさせるこのナンバーでは、個性的なメンバーをコミカルに紹介。

ラストは高音のキーボードにギター、ベース、ドラムが次第に重なり、平田パンダビートりょうが声を合わせる、インディーズ時代からの名曲「ロックンロール」を聴かせてくれた。色とりどりのキャンディボックスみたいにキュートなステージで、MAVERICK KITCHENの会場がひとつのショウタイムと化した25分間だった。
 

◆セットリスト
M01. THE ROBELETTS
M02. シーナ・イズ・ア・シーナ
M03. 太陽ロールバンド
M04. 私の家
M05. That Is Rock & Roll
M06. ロックンロール
◆THE BOHEMIANS
平田ぱんだ(Vocal)
ビートりょう(Guitar)
星川ドントレットミーダウン(Bass)
チバ・オライリー(と無法の世界)a.k.a.ジャン(Drums)
本間ドミノ先生(Keyboard)
◆THE BOHEMIANS 公式サイト
http://the-bohemians.jp/

SLIGHT SLAPPERS
6-1 6-2

世代もテイストも自由自在のMAVERICK KITCHENとは言え、ロックンロール・アイドルの後に世界にその名を誇る東京ウルトラ・パワーヴァイオレンスバンドを登場させるとは、さすがタワレコである。会場を超破壊的な祝祭の場に変貌させ、わずか20分で11曲を超高速演奏したSLIGHT SLAPPERSの登場だ!

1曲目「Tell It Like It Is…Please」からあっという間に暴力的なボルテージに飲み込まれ、2曲目「MOONLIGHT」では唯一のミドルテンポが壮大に響いたかと思うと、「BOREDER LINE」、「SONO KANASHIKI HITO」、「A THEORY OF CONTRADICTION」、「WE WILL TAKE BACK TOMORROW」と超ファストサウンドの嵐!正直どのタイミングでKUBOTAがマイクを投げ、ドラムからジャンプし、客席にダイブしたのか、記憶も定かでない。神経の何本かが麻痺したようなトランス状態の耳に気づいたら投げ込まれるのは、7曲目「A CONFLICT」、8曲目「THE ORIGIN」の轟音の隙間に訪れる切なげな美しい響き。

続く「I WONT BELONG TO YOUR SIDE」、「GIVE ME LOVE AND TRUTH」では混沌の中で巡りあった人の姿のように斉唱が耳に入り、「THE OCEAN,AUGUST AND BLUE MEMORIES」の美しいギターリフは脳髄に沁みいるように鳴り響いた。そして勢いづいた回転が自然に止まるように、弦の音がゆるやかに途切れると同時に、興奮しきった観客から大歓声が湧き起こった。全貌など全く掴めぬまま、会場にはただ、余分なものが気化した後の圧倒的なカタルシスが満ちていた。
 

◆セットリスト
M01. TELL IT LIKE IT IS
M02. MOONLIGHT
M03. BOREDER LINE
M04. SONO KANASHIKI HITO
M05. A THEORY OF CONTRADICTION
M06. WE WILL TAKE BACK TOMORROW
M07. A CONFLICT
M08. THE ORIGIN
M09. I WONT BELONG TO YOUR SIDE
M10. GIVE ME LOVE AND TRUTH
M11. THE OCEAN,AUGUST AND BLUE MEMORIES
◆SLIGHT SLAPPERS
KUBOTA(Vocal)
13(Bass)
PASSION(Drums)
MADOKA(Guitar)
SEIJI(Guitar)
◆SLIGHT SLAPPERS 公式サイト
http://www.geocities.jp/slightslapppers/

THE MACKSHOW
7-1 7-2

出演バンドが入れ代わるたび、まったく別の世界が出現するMAVERICK KITCHEN 、続いて登場したのは、サングラスに革ジャン、リーゼントでキメたスリーピースバンドTHE MACKSHOW!ファンの声援を浴びながら挨拶代わりにゆったり楽器が鳴らされ、「なげーよ!」とファンからツッコミが入る和やかなムードで、陽気なロッケンロールがスタート!

あっという間に客席前方でダンスが始まる。1曲目から「グリース・ミー」、「怪人二十面相」「赤い週末」と踊るしかないゴキゲンなナンバーが続き、KOZZY MACKから「こんにちは!何やってんだ、こんなとこで?!」と気心の知れたご挨拶。続く「CB750」、「ビッグママ・ヘイヘイ」と盛り上がり、気づけばそこはダンスホール状態!

「グッド・オールド・ロックンロール」が始まると、ツイストなんて踊ったことのないような若い観客もついつい腰を沈めて踊りだす、底抜けの楽しさ!リズム隊もかなりやんちゃに暴れている!そしてラストは手拍子で始まった何だか甘酸っぱい「恋のスピードウエイ」。バイクの疾走感そのままに走るサウンド、最後にアカペラでサビのフレーズが繰り返されると、一瞬のため息のあと、笑顔の大拍手が巻き起こった。
 

◆セットリスト
M01. グリース・ミー
M02. 怪人二十面相
M03. 赤い週末
M04. CB750
M05. ビッグママ・ヘイヘイ
M06. グッド・オールド・ロックンロール
M07. 恋のスピードウエイ
◆THE MACKSHOW
KOZZY MACK(Guitar & Vocal)
TOMMY MACK(Bass & Vocal)
BIKE BOY(Drums & Vocal)
◆THE MACKSHOW レーベルサイト
http://bad-rec.com/pc/

OLEDICKFOGGY
8-1 8-2

6人の大所帯で登場したOLEDICKFOGGY。マンドリン、バンジョー、アコーディオン、ウッド・ベース、ギター、ドラムという独特の編成。「音色は極悪フォーク、溢れる煮汁はパンクの魂。ダーティ・ポリティカル・ラスティック!!!」と名乗る彼らは、ライブの評判がとても高く、この日もその評判が本物であることを証明するライブとなった。

1曲目「カーテンは閉じたまま」ではギター中心に、往年のフォークソングのような切ないバラードを聴かせると、「神秘」「Blow itself Away」では、アコーディオンの音色が引っ張る、ラスティングワールドのラッシュ!伊藤雄和は終始ほぼ絶叫、アコーディオンとバンジョーの陽の音が忙しないリズム隊といびつに絡みまくり、体の揺さぶられ方が半端ない!全部の楽器がリズムを刻み、全部の楽器が歌っているかのような、強烈なパッション!憑りつかれた観客たちは、次から次に後ろから前へ移動、恐ろしいほどの伝播力が発揮される!

4曲目「暗転」ではマイナーの効いたグルーブで、観客たちを操り人形のように踊り狂わせ、伊藤雄和の獣のような咆哮が極致に達する。そこにガラリとポップな新曲「マスターベーション」でカーニバルを現出させ、最後は「チブサガユレル」で「やり残したことはやらなくていい!」、名曲「月になんて」で「僕は間違ってないはずさ」とエモーショナルに胸を揺さぶり、言い知れぬ興奮を残したのだった。
 

◆セットリスト
M01. カーテンは閉じたまま
M02. 神秘
M03. Blow itself Away
M04. 暗転
M05. マスターベーション
M06. チブサガユレル
M07. 月になんて
◆OLEDICKFOGGY
伊藤雄和(Vocal & Mandolin)
スージー(Guitar)
TAKE(Bass)
JUNDO(Drums)
ミサ(Accordion & Keyboard)
四條未来(Banjo)
◆OLEDICKFOGGY 公式サイト
http://oledickfoggy.com/

SA
9-1 9-2

MAVERICK KITCHEN唯一の全回出場となったSA。バンドの登場前から、熱狂的なファンを中心に「SA」コールが巻き起こる。豹柄をまとったTAISEIが現れ、1曲目「YOUTH ON YOUR FEET」炸裂!楽曲はあくまでも激しく、ギターとベースの絡みはどこまでも艶やかに響く!2曲目は爽快な疾走感溢れる「さらば夜明けのSkyline」、ステージと会場の一体感が凄い。

ここで「5年連続出てる割にはSAコールが半分なんですよ」というTAISEIの言葉でファンが後ろを向いてのSAコール。場内に温かい空気が満ちたところで、一転、TAISEIの張りあげる熱唱が響きわたる!「この瞬間のミラクルがやめられねえええ……!」最高にカッコいいコール&レスポンスも決めて曲は高速の「runnin’BUMPY WAY」。続いて闘争心を奮い立たせる「SONG FOR THE LOSER」。そして心のこもったMC。「改めてこのイベント全部出させてもらって本当に誇りに思います」。すると以心伝心のファンからタワレコ販売促進部・国広氏に向けて国広コールが巻き起こる。

さらに「俺たちの方が今日最後のバンドむちゃくちゃ楽しみにしてます。今日ばっかりは14歳に戻っていいでしょうか!」とアナーキー再結成を盛り上げる男気あるMC。そして「サマーホリディズスカイ」で最高潮のテンション、NAOKIのギターが心地良さげに暴れ、ドラム音が重みを増す。ラストはバロック音楽を源とする「ラヴァーズ・コンチェルト」のカバー「DELIGHT」。さらにタワレコ限定シングル「NO MUSIC, NO LIFE.」のサビを演奏、このイベントに華を添える、熱い優しさに満ちたステージを締めくくった。
 

◆セットリスト
M01. YOUTH ON YOUR FEET
M02. さらば夜明けのSkyline
M03. runnin’BUMPY WAY
M04. SONG FOR THE LOSER
M05. サマーホリディズスカイ
M06. DELIGHT
◆SA
TAISEI(Vocal)
NAOKI(Guitar)
KEN(Bass)
SHOHEI(Drums)
◆SA 公式サイト
http://sa-web.jp/index.html

ドレスコーズ
10-1 10-2

若きカリスマ・志磨遼平をフロントマンに据えたドレスコーズThe Velvet UndergroundのSEに無遠慮にギターを被せると、1曲目は甘いしゃがれ声で始まる新曲「トートロジー」!続いて、歓声を鎮めるように「シャラップ……。はじまりの朝だ」と呟いて「Lolita」、疾走感溢れる「リリー・アン」。ファンから「全部出せよ!」と声が飛び、MCに入る志磨遼平

アナーキー再結成ということでこの場に居合わせただけで光栄です。後ろの楽屋がすごいことになってます。本で見た人ばかりで。」そして1対1のようなトーンで「パンクに気づけて良かった」と殺し文句を呟いて、ど真ん中に持ってきたのは「Automatic Punk」!アブナイ言葉の羅列に点滅するライト、破れかぶれのもみくちゃの動き、志磨遼平を操っているのか志磨遼平に操られているのか、とんでもなく熱く滑らかに、時折激情を迸らせるドラム、隙間なく低音を刻み続けるベース、やがてギターがフィードバックすると、ノイジーで眩惑的な轟音の渦が現出!志磨遼平はドラムを殴りつけるように叩き、スティックをくわえ、まるで空から降ってくる何かに踊らされるように動き続ける。

ドレスコーズワールドを魅せつけた、圧巻の見せ場!その流れのまま「ベルエポックマン」、そしてラストはヒットチューン「Trash」。私はクズだよ、という志磨遼平の叫びはすでに伝説を観ているようだった。
 

◆セットリスト
M01. トートロジー(新曲)
M02. Lolita
M03. リリー・アン
M04. Automatic Punk
M05. ベルエポックマン
M06. Trash
◆ドレスコーズ
志磨遼平(Vocal)
丸山康太(Guitar)
山中治雄(Bass)
菅大智(Drums)
◆ドレスコーズ 公式サイト
http://the.dresscod.es/

KING BROTHERS
11-1 11-2

アンプに仁王立ちしたケイゾウの後ろ姿、眉も前歯もないマーヤの鬼気迫る形相。兵庫・西宮の最強ハードコアブルースバンドKING BROTHERSの登場だ!1曲目から「マッハクラブ」で、いきなり鼓動より速く爆走する荒々しい展開。初っ端から叫んではマイクを投げ、ダイブしては観客の頭上を舞うマーヤ、「Fuck you!」の罵声を浴びて大喜びの観客、場内は予測不能のカオスに突入!

曲の切れ目もわからなくなるほどの狂騒の中、2曲目は「ルル」、「くだらねぇくだらねぇ」と苛立ち全開、ケイゾウの低い怒声が最高にセクシャルに響き、エッジの効いたブルージーな爆音が延々続くと、前方に移動する観客が続出、マーヤの煽動も佳境に入る。「誰に邪魔されても何に邪魔されてもロックンロールは続く!ティーンエージャーがギターを手に入れられない世の中なんてクソだぜ!」彼らなりにアナーキーへのリスペクトを感じさせるMCに観客も大声で応じる。さらに声を限りに「NI・SHI・NO・MI・YA」のコール&レスポンス!

ラスト「☆☆☆☆」は、切れ目なくギター&ベースが地響きを立てる中、ドラムセットを解体し、メンバー全員が客席ど真ん中になだれ込んでのハードパフォーマンス!観客たちは狂ったように口々に喚きながら、全身汗だくのタイチを取り囲むようにして、拳を振りあげ続けた。KING BROTHERSは見事に彼らの心の鍵をぶっ壊していったのだった。
 

◆セットリスト
M01. マッハクラブ
M02. ルル
M03. ☆☆☆☆
◆KING BROTHERS
ケイゾウ(Vocal)
マーヤ(Guitar)
シンノスケ(Bass)
タイチ(Drums)
◆KING BROTHERS 公式サイト
http://www.kingbrothers.jp/

THE PRISONER
12-1 12-2

ここで女性アーティスト、NANA GNAR GNARがステージへ!高らかにオープニングテーマが鳴り響く中、THE PRISONERの登場だ!メインボーカルは赤いベレー帽にタトゥーを施した太い腕、優しい瞳のJUNICHILOW。質の高いツインボーカルと確かな演奏力で認知を高めつつあるバンドだ。1曲目は「COLOURS」、「永遠はいらないから今が欲しい」という心の叫びを疾走感あるサウンドに乗せて、会場を一気に明るいテンションで満たしてしまう。

2曲目「かくれんぼ-HIDE AND SEEK-」は童謡とロックが輪唱するような、ノスタルジィをかき立てられる独特のナンバー。3曲目「STAY FREE」ではパンキッシュなサウンドをベースに、キーボードが歌い、NANA GNAR GNARの伸びやかな声とJUNICHILOWの力のこもった声が行き交い、自由に生きる臨場感が会場全体にたっぷりと広がってゆく。どちらもこのバンドにしか表現できない、THE PRISONERならではの楽曲だ。4曲目「LETTER」はギターサウンド主体にパンチの効いたメッセージソング、最後は会場と一体になっての大合唱。そしてラストはニューアルバム「START」から新曲「夜空を見上げて」。JUNICHILOWの歌唱力が際立つバラードで感動的な締めくくりとなった。
 

◆セットリスト
M01. COLOURS
M02. かくれんぼ-HIDE AND SEEK-
M03. STAY FREE
M04. LETTER
M05. 夜空を見上げて
◆THE PRISONER
Junichilow(Vocal)
NANA GNAR GNAR(Backing Vocal)
Osamu(Guitar)
Takashi(Bass)
Daigo(Drums)
Michiaki(Keyboard)
Tomonori(Guitar)
◆THE PRISONER 公式サイト
http://villainyprisonrecords.com/

怒髪天
13-1 13-2

そして「さっさと終わらせてANARCHY見るぞ!」と叫んで怒髪天登場!今回、アナーキーのサポートアクトを買って出た怒髪天。ナッパ服の増子直純はじめ、メンバー全員が赤い「亜無亜危異」の腕章を巻いている。1曲目はタワレコ限定シングル「NO MUSIC,NO LIFE.」。「音楽のない人生なんてアナーキーのいない日本のロック界みたい」と歌詞変更してのシャウト!そこから「酒燃料爆進曲」「ホトトギス」と、R&E(リズム&演歌)という自称に恥じぬ、エモーショナルな泥臭い男のロックが続き、観客も一緒になって大声を張りあげる大熱唱!ここで増子直純が前のめりの絶叫MC。「俺には見たいものがある!アナーキー!」そして、「ついに……ついに、ドラゴンボールが揃ったっ!」と増子節が炸裂!「こっから続けてもらおうっていうね、お願いをしに来た!」との言葉には凄い音量の歓声があがった。そして「ドリーム・バイキング・ロック」、「濁声交響曲」と男心に響くような、男たちの団結高まる楽曲が披露され、来年結成30周年を迎えるベテランバンドの猛者は、最後にもう一言、「アナーキー!」と叫んで楽屋への戻ったのだった。そして待ち焦がれたANARCHY親衛隊は、その叫びを皮切りに、15分のインターバルを物ともせず、「アナーキー」コールを開始!LIQUIDROOMに、今までにない歴史的瞬間が刻々と近づいていた。
 

◆セットリスト
M01. NO MUSIC,NO LIFE.
M02. 酒燃料爆進曲
M03. ホトトギス
M04. ドリーム・バイキング・ロック
M05. 濁声交響曲
◆怒髪天
増子直純(Vocal)
上原子友康(Guitar)
清水泰次(Bass)
坂詰克彦(Drums)
◆怒髪天 公式サイト
http://dohatsuten.jp/index_gate.html

アナーキー
14-1 14-2

2013年5月4日21時半。MAVERICK KITCHEN Vol.5、最後のステージが迫っていた。サウンドチェックの間も途切れることなく続く、怒涛の「アナーキー」コール。17年間、こうして呼ぶことのできなかった、愛し続けたバンドの名を、永遠と思われた渇望を込めて叫び続けるファンの情熱。その熱は、アナーキーをリアルタイムで見たことのない観客の間にも、じわじわと浸透していった。

そして客電が落ちたその瞬間、LIQUIDROOMを揺さぶるような大歓声が鳴り響いた!すると、バンド名の由来となった「Anarchy In The U.K.」のボサノバヴァージョンが流れ、ナッパ服に白い腕章をつけた、仲野茂(Vocal)、藤沼伸一(Guitar)、逸見泰成(Guitar)、寺岡信芳(Base)、小林高夫(Drums)の5人全員が、本当に姿を現した!そして最初に投げ込まれたのはなんと新曲、「パンクロックの奴隷」!バックの4人が声を揃えて叫び、仲野茂がシャウトする!いくつになっても、小手先とかメジャーなんて関係なく、パンクロックの奴隷のままでいいんだろ?と念押しするような、アナーキーらしい再会の一撃!

いきなりの新曲を終えて仲野茂が「帰ろうかな」と呟くと、腹の底から巻き起こる「アナーキー」コール。そして2曲目は「READY STEADY GO」、爆音のカーレースみたいな超高速疾走だ!久しぶりに合わせたとは思えない演奏の一体感が凄い!続いて前奏のギターリフで女性ファンが悲鳴をあげた、「3・3・3」!「そんなに真面目に生きてもしょうがない さぁ!さぁ!さぁ!さぁ!さぁ!さぁ!さぁ飛び出そうぜ」。凄い呼吸の大合唱!怒涛の勢いが止まらぬまま4曲目は「缶詰」、抑えつけられてたまるかとパンク魂が甦ったように、会場はモッシュ状態!

14-3  14-4

ここで仲野茂が客席に噴射しながらシニカルに呟く。「1980年代に『’80維新』ってアルバムを作ってこの曲は飛ばされたぜ。それから今何十年たってる?日本は変わったのか?」。その5曲目は「タレントロボット」。レコード会社の大人の事情で弾かれた、アイドル風潮を皮肉るナンバーだ。そして6曲目、「奴隷の次はタレントロボット、いけてるぜ。さあ、その次はなんだ?」、低い呟きの後にいきなり張りあげられる声!「東京 イズ バーニング!」。デビューアルバム回収という伝説を生んだこのナンバーは、脆弱な現代を揶揄する歌詞に変更されて歌われた。「なにが日本国民だ なんにもしねえで ふざけてる」。

そしてひとかけらの迷いもない仲野茂のダイブが炸裂!さらに、耳をつんざくハウリングの後には高らかなギターリフ、「心の銃」!最初から最後まですべて会場が一体となった大合唱、そこに埋もれない仲野茂の声量!そして「ノット サティスファイド」、権力なんて片っ端からはねのける初期衝動を再現させて、全8曲をあっという間に暴走しきったアナーキー!小細工など何もなく自分の言葉で自分の感情を剥き出しにしたその演奏は、聴く者を一息にあの頃に連れ去ったのだった。

しかし歴史的イベントはまだそこで幕を閉じることはなかった。演奏直後に始まった「アナーキー」コールは、この後、客電がついても公演終了の放送がかかっても、やむことなく、続けられたのだ。結局、潔い疾走を終えた彼らがステージに戻ることはなかった。親衛隊の多くは、再結成のライブを目の当たりにした興奮と、報われなかった想いとで混乱し、会場を立ち去ることができずにいる。野暮な行動だと自覚しつつも、自分もその場を立ち去れず、ファンの女性に声をかけてみた。再会の喜びが大きいだけに、また会えなくなるかもしれないという不安も大きいようだった。しかし隣の男性ファンがこう言ってくれた。「次に繋がるって信じてます」。これほどに必要とされるバンドの再結成ライブを間近でみることができた自分自身の幸運に感謝するとともに、本当に次に繋げてほしいと祈らずにいられなかった。
 

◆セットリスト
M01. パンクロックの奴隷(新曲)
M02. Ready Steady Go
M03. 3・3・3
M04. 缶詰
M05. タレントロボット
M06. 東京イズバーニング
M07. 心の銃
M08. ノット サティスファイド
◆ANARCHY Original Member
仲野茂(Vocal)
藤沼伸一(Guitar)
逸見泰成(Guitar)
寺岡信芳(Bass)
小林高夫(Drums)
◆ANARCHY 公式サイト
http://www.anarchy.co.jp/

こうして『MAVERICK KITCHEN Vol.5』は幕を閉じた。父の世代から子の世代へと日本のロックは確実に受け継がれ、進化している。しかも、子は父をリスペクトしながらも、父は子に威厳を示しながらも、それぞれのパンク魂は常に切り立った崖を背にしてしのぎを削っているのだろう。そのステージに上がることのできない我々にできることは、彼らの音楽を聴き続けること、そして今日受け取ったものの手触りを忘れず、自分の生き方を自分の居場所で少し変えてみることなのだろう。

それにしても、今目撃しておくべきバンドばかり次々に登場するMAVERICK KITCHEN、嘘や戯れでなく、本当に必見のロックイベントである。来年も国広氏を中心に、タワーレコードが健闘してくれることを願ってやまない。なお、MAVERICK KITCHEN Vol.5の模様はCS放送のフジテレビNEXTで6月15日(土)21時から3時間に渡ってオンエア予定である。
 
 
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【コラム】和嶋慎治「浪漫派宣言」 第七回 マリーズ
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