演奏

TEXT:下村祥子 PHOTO:鈴木亮介

まだ夏の暑さが残る渋谷・スペイン坂に、WWWの開場を待つファンの列がすでに長く伸びていた。オープンが迫るにつれて、続々と集まってくるその一人一人の“ライブが楽しみで仕方ない!”という想いが、笑顔やおしゃべりを巻き込んだ大きな固まりになって、どんどん膨らんでいくようだった。

この日はTOKYO FMの音楽番組「RADIO DRAGON」が主催するイベントで、ライブはそのままオンタイムの番組内で完全生中継。出演はどちらもスリーピース・ロックバンド、a flood of circleDOES。大型フェスやイベント、お互いのライブツアーのゲスト出演など、数多くの同じステージに立った盟友同士の対バンとあって、チケットは争奪戦の末、即日ソールドアウト!始まる前からすでに熱い、熱狂と興奮のロックンロール・パーティーの模様をここに再現!

 


ラジオ番組が始まる午後8時、「RADIO DRAGON」のパーソナリティを務める高山都菅野結以が登壇し、出演者を紹介。そして先攻のa flood of circleがSEの流れる中、大きな拍手と歓声を浴びながらステージに登場。佐々木亮介(Vocal & Guitar)、HISAYO(Bass)、渡邊一丘(Drums)に、サポートの曽根巧(Guitar)が加わった4人編成。赤い革ジャンを着た佐々木亮介の第一声「おはようございます、ア・フラッド・オブ・サークルです」は、彼らのライブ開始を告げる決めゼリフだ。次の瞬間、ギターのカッティングのイントロからすぐ「The Beautiful Monkeys」がフルボリュームでスタートすると、オーディエンスもいきなりテンションマックス!WWWの床は大きく揺れ、無数の拳が天を突き、時に人が頭上を飛んでいく。「オーライ渋谷!初っ端からロックンロールぶっ飛ばしていきますけど、ついてこれますか!俺たちにはラジオとかライブハウスとかカンケーねぇんだよ!!」
 
 


 


抱えきれないほどの苛立ちと焦燥感を内包した熱さを、爆発的なエネルギーにかえて、スピードと爆音でぶっ飛ばしていく。ヴォーカル佐々木亮介は、不器用で無骨で攻撃的で、だけどきっと誠実でどこか影のあるロックンロール・ヒーローだ。フジロック、ライジングサン、ロックインジャパンなど、数々の主要大型フェスに参戦して知名度とファン層を広げ、いまやその勢いは止まることを知らない。しかし彼らのストーリーは決して順風満帆ではなかった。2006年に4人組バンドとして結成したa flood of circleは、インディーズでの精力的なリリースやライブ活動を経て、2009年にメジャーデビューを果たすが、同年ギタリストが失踪。さらに2010年末にベーシスト脱退という危機を乗り越え、新たなベーシストとしてHISAYOtokyo pinsalocksGHEEE等でも活動中)をメンバーに迎え入れ、現在に至っている。
 
 


 


赤い網タイツに、バッチリ入れたアイメイクと真っ赤な口紅、それでいてゴリゴリでグルーヴィなベースラインを奏で、ブルースにロックとダンスを融合したa flood of circleのサウンドに欠かせない存在となった、HISAYO。曲間には客席から「姉さーん」と声援がかかる。軽やかに舞うようにベースを弾く姿は、これまでにいなかったタイプの女性ベーシスト!ぜひご注目を。
 
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会場には、a flood of circleDOESのバンドTシャツ着用のお客さんの姿が目立つ。曲によって頭の上で手拍子し、「シーガル」でのシンガロングも完璧!全身でライブを体感し、楽しんでいるのがわかる。ステージの最前線に立ち、オーディエンスと接触ギリギリまで攻めていく佐々木亮介HISAYO、パワー全開でたくましい肉感的なドラムを叩き出す渡邊一丘(タンクトップ姿や時に半裸姿だったりするけど、実は超イケメン!)。耳に残るギターのフレーズと、心に突き刺さる歌声、油断していると振り落とされそうな必殺ロックチューンを連発し、あっという間にa flood of circleは、全力疾走で駆け抜けていった。
 
 


 


ラスト1曲を残すのみとなったMCで、a flood of circleから重大発表があった。12月5日に新しいCDをリリースするという。タイトルは『FUCK FOREVER』(ラジオで生中継されているライブで、あまり連呼できないタイトルではあったが)。インペリアルレコード移籍第一弾となるミニアルバムで、現在レコーディング中。きっと酸欠ライブ必至の秋のライブハウスツアー各地でも、収録曲が披露されることだろう。(かなり早い)2013年に向けての新たなロックンロール宣言が飛び出したところで、新作にも収録されるという「見るまえに跳べ」でオーディエンスと共に大暴れして、a flood of circleのステージは幕を閉じた。
 

◆セットリスト
M01. The Beautiful Monkeys
M02. Human License
M03. シーガル
M04. 胸いっぱいの愛を
M05. プシケ
M06. Boy
M07. 見るまえに跳べ

 
◆a flood of circle 公式サイト
http://www.afloodofcircle.com/
 
≪カントリーロードツアー2012≫
a flood of circle w/グッドモーニングアメリカ
・2012年11月05日(月)【千葉】LOOK
・2012年11月08日(木)【神戸】太陽と虎
・2012年11月09日(金)【松山】サロンキティ
・2012年11月11日(日)【大分】SPOT
・2012年11月14日(水)【横浜】F.A.D
・2012年11月16日(金)【盛岡】CLUB CHANGE WAVE
・2012年11月17日(土)【水戸】ライトハウス



 


セットチェンジを挟んで、後攻はDOES。流れ出したSEに合わせて、会場からノリのいい手拍子がわきあがる。ステージに登場したメンバーは、氏原ワタル(Vocal & Guitar)、赤塚ヤスシ(Bass)、森田ケーサク(Drums)に、サポートのシラサワオサム(Guitar)のこちらも4人編成。不意にエッジの効いたギターの音が鳴り響くと、会場の空気は一変した。重厚感のあるビートが特徴的な1曲目「ユリイカ」に、自然と身体がリズムを刻む。「♪今宵、渋谷で乱痴気騒ぎ~」と替えて歌った歌詞にファンも興奮!間髪入れずにヒットナンバー「曇天」のイントロが始まれば、瞬時にワーっと歓声が上がった。鳴り続けるギターロックに、口ずさみたくなる疾走感のあるメロディーが気持ちいい。
 
「イエーイ!今日はラジオの生放送が入ってるから、ウン●とかチ×コとか、絶対に言ってはいけません!だからみんなこの夜を、ナイスデイにしよう!」という氏原ワタルの禁断のMC(もちろん、オーディエンスは大ウケの大歓声!)に続けて、最新アルバム『KATHARSIVILIZATION』(カタルシビリゼーション)から軽やかなハーモニーが印象的な「ナイスデイ」を、そして数曲を挟んで「カタルシス」「今を生きる」を披露。どれも震災後に生まれた楽曲で、DOESの楽曲全ての作詞&作曲を手がけるソングライター氏原ワタルからの、歌詞にもメロディーにも込められたメッセージを受け止めながら、オーディエンスは大事な今を笑顔で踊るのだ。
 
 


 


2003年に福岡で結成されたDOESは、2006年にメジャーデビュー。2007年にアニメ「銀魂」のエンディング・テーマに起用されたシングル「修羅」が、音楽チャート初登場9位にランクインし、その後も「曇天」「バクチ・ダンサー」など数々のヒットを飛ばしてきた。また、アラバキロックフェス、ロックインジャパン、ライジングサンなど、各地の大型フェス出演の常連となり、その圧倒的なライブ・パフォーマンスには定評がある。
 
a flood of circleとよく一緒にやる機会が多いんですけど。一昨日も佐々木くんと飲んでて。…どれだけ仲がいいんだって話ですが(笑)」というMCから、DOESも新作のリリースを発表。アニメ「宇宙兄弟」のオープニング・テーマとなるシングル「夢見る世界」を11月14日にリリースする。ここでその演奏を聴くことは叶わなかったが、ワンフレーズだけ歌ってみせてくれた。またライブで盛り上がること必至のヒットナンバーが誕生しそうだ。
 
 


 


ラストソングは「バクチで踊れーーー!」の号令で始まった「バクチ・ダンサー」。この畳み掛けるようにドラマティックな曲の展開に、誰もが踊らずにいられるわけがない!大揺れのWWWはオーディエンスの熱気で、冷房が効いているとは思えないほど。前のめりなスピード感にあふれたダンサブルなビートが、見事にフロアを熱狂の渦に巻き込んだまま、DOESのパフォーマンスは終了!もちろん、アンコールを求める拍手は鳴りやまなかった。
 
 


 


アンコールに応えて、DOESのメンバーがステージに戻ってきた。ライブ本編まででラジオの生中継が終了したため、氏原ワタルが「せっかく今日は仲良しバンド同士がやってるから、アンコールは何をやってもいいということで」と前置きすると、a flood of circle佐々木亮介をステージに呼び込んだ。再登場となったの佐々木亮介は「お邪魔します。俺、今から全力でカラオケ大会をやるから(笑)」とハンドマイクを握った。イントロに合わせて客席から“オイ!オイ!”コールが起こると、氏原ワタル佐々木亮介のWボーカルによる「修羅」が始まった。ステージを走り回って、客席を煽りまくるの佐々木亮介のパフォーマンスに、フロアはぐちゃぐちゃの大騒ぎとなってこの日一番の盛り上がりへ。「サイコー!めっちゃ楽しい!まだ帰りたくなくなっちゃった!」というの佐々木亮介を「まだ帰さんで~」と氏原ワタルが引き留めて、さらにDOESのデビューシングル「明日は来るのか」に突入。歌っている本人たちも、演奏するメンバーも、一緒に熱唱するファンも、本当にみんなが楽しそうだった。最高のクライマックスを迎えて、イベントはすべて終了した。
 

◆セットリスト
M01. ユリイカ
M02. 曇天
M03. ナイスデイ
M04. 赤いサンデー
M05. 世界の果て
M06. カタルシス
M07. 今を生きる
M08. バクチ・ダンサー
-encore-
E01. 修羅
E02. 明日は来るのか
◆DOES 公式サイト
http://www.does-net.com/
 
≪DOES TOUR 2012
[Mr.Quattro&The Other Man]≫

・2012年12月08日(土)【福 岡】DRUM Be-1
・2012年12月09日(日)【広 島】NAMIKI JUNCTION
・2012年12月14日(金)【梅 田】CLUB QUATTRO
・2012年12月15日(土)【名古屋】CLUB QUATTRO
・2012年12月20日(木)【渋 谷】CLUB QUATTRO
・2012年12月24日(月)【仙 台】CLUB JUNK BOX


◆TOKYO FM「RADIO DRAGON」
毎週月~木 20:00~21:40 放送中
http://www.tfm.co.jp/dragon/

両バンドとも新作リリースを発表し、年内の全国ツアーも決まって、これからまた別々の道を突き進んでいく。でも再び同じステージに立つときが、きっとやってくるだろう。この日のオーディエンスの多くが、どこかでa flood of circleDOESの対バンイベントがあるなら、また観に駆けつけたいと思ったに違いない、忘れられない一夜となった。

 
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