演奏

MOSQUITO SPIRAL

TEXT & PHOTO:桜坂秋太郎

日本のロックの歴史は、最近単行本などが多く発売されているので、後追いで知るには良い環境が整っている。ロック好きな人には、歴史はぜひ読んで知ってもらいたいと思う。しかし今、現在進行形のバンドで物凄くカッコよいバンドが日本には存在しているのも事実。それは一部のロックマニアだけが知っているという状況を、現場に足を運ぶ機会の多い私はとても痛感している。MOSQUITO SPIRALはその代表的なバンドだろう。このカッコよさは半端じゃない。日本の音楽シーン、ロックシーンの文化的な成長を切に願う。
 
メンバーは、BAKI(Vocal)・KASUGA(Guitar)・ANAI NIKICHI(Bass)・KYO(Drums)。わざわざ説明する必要も無いメンバーだが、初めてMOSQUITO SPIRALを知る人のために補足だけしておこう。先のロックの歴史単行本などにも出てくるGASTUNK。リスペクトされているバンドとしては日本トップクラス。GASTUNKが活躍していた時代を知る者で、GASTUNKが嫌いというロッカーを私は知らない。それほどの大きなインパクトをシーンに与えたバンドの看板、カリスマヴォーカルのBAKIを中心に、2004年から本格活動している。すでに3rdアルバムまで発売していて、ライヴもコンスタントに展開。
 
KASUGAは、THE RYDERSを経てLAUGHIN’NOSEへ加入し、10年間を過ごした名ギタリスト。ANAI NIKICHIは、日本のロック史に輝くSHEENA & THE ROKKETSTHE ROOSTERZで活躍し、THE WILLARDにも在籍。デビューは陣内孝則率いるTH eROCKERSなので、超がつくベテランベーシスト。KYOは海外でも注目されたMAD3を経て、MOSQUITO SPIRALの2代目ドラマーとして、KYOYA(元THE WILLARD、現LAUGHIN’NOSE)の後をしっかりと支えている。
 
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2010年5月2日、連休中の新宿駅は恐ろしいほどに混雑している。大久保駅から歩けばよかったと思いながら、雑踏を突き進む。歌舞伎町を越えたあたりからひと気が無くなり、コリアン料理の店が増える。今夜の会場となるURGAは、異国情緒な空気ただよう中に存在している。会場内に入ると、詰めかけたオーディエンスがビールで陽気なトークを繰り広げている。ステージ前方はすでに人で埋まっている。左右どちらかの壁側をキープしないと撮影ができない。少しくぼみのある左側へ決めて機材をセッティング。スタンバイok。いよいよ照明が落とされ、「CAFE THE BLACK」でスタート!
 
間髪入れずに「REFECTION」それから「SHINING ON」。オーディエンスはすでにハイ状態。KYOのリズムに身をゆだね、ANAI NIKICHIのグルーブに腰を振る。今夜はワンマンなのでじっくりとMOSQUITO SPIRALを楽しめる。MCをはさまずに進行するステージは、「GO INSANE」から「SAKEBEODORE」、そして「(DON’T FORGET TO)BOOGIE」と「THE IN CROWD」。すでに汗だくのKASUGAが一心不乱にエモーショナルなフレーズをプレイ。何とも絵になる。すごくセクシーだ。
 
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KASUGAのギターサウンドはアルバム『IN THE CROWD』からヘヴィになり、MOSQUITO SPIRALが進化をするバンドだとシーンにアピールした。確かにパンクギタリストという枠を超越したギタリストだと思う。パンクロックの持つパッションを抱きながら、あらゆる音楽を貪欲に吸収してきたテイストが、キャリアを経て開花したのかもしれない。MOSQUITO SPIRALのサウンドは、KASUGAの肩に乗っていることがステージを観ていて伝わってくる。ギターサウンドも申し分ない。時々取材を忘れて聴き入ってしまう。
 
「LOVE IN VEIN」から「CYCO EATER COMES」へ。多くのオーディエンスが何かしらの声をあげている。MCレスのステージ展開ゆえ、曲間のわずかな隙間に「最高」「かっこいい」といった声が聞こえる。中盤は、「REBEL」に「END OF TIGHT」、「EVERLASTING FLOWER」へ。鼻をつく匂いがする。オーディエンスを見ると、髪の毛をぐちゃぐちゃにした汗だくの野郎がBAKIに手を差し伸べている。伝説のロッカーBAKIが、今もこうして最高の歌を届けてくれるという素晴らしさに、私も感動している。できれば私もBAKIに触りたい。触れるくらいの前列で暴れたい。
 
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何となく終わりが近いことを知った後ろのオーディエンスが押し寄せて、前方の過密が半端ない状態だ。「DARKSIDE MOON」と「FEAR」、最後は「MONSTER」と「SPIRAL DREAM」。たたみかけるようにエナジーをオーディエンスにぶつけるメンバー。MOSQUITO SPIRALのクライマックスは、メンバー自身がアドレナリン全開。ファインダーごしにもオーラが伝わってくるかのようだ。これはオーディエンスにはたまらない。客席もすごい状態だ。
 
女性ファンが倒れる。しかしすぐ男性ファンがフォローする。そのようなオーディエンス同士でフォローする光景を何度も見かける。まるで「お互いに楽しみましょう!」と申し合わせているかのよう。この光景はなかなか見ることができない。思いやりの気持ちを持ちながら、MOSQUITO SPIRALを通じて、一つになっている。ロックの一つの理想郷を見ることができる。
 
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『IN THE CROWD』のラストを飾る「REBIRTH」でアンコールがスタート。「L.J.T.J」から「NICK’S BOLERO」。どうしても撮影をしながらのレポート取材は、作業が二倍になるので心に余裕がない。ある程度撮影が済んだ私は、本編より余裕を持ってアンコールのステージを楽しむ。ANAI NIKICHIのベースプレイを目の前で観て感動。ベースのルックス的な年季も凄いが、プレイはもっと凄い。指の動きが別の生き物のようだ。
 
「SILVER KROSS」でアンコール終了。この段階で20曲。しかしオーディエンスはさらなるアンコールを要求。しばらくして二度目のアンコールがスタート。メンバーが最後の力を振り絞って「SAVING GRACE」、そして「ISOLATION」。オーディエンスはすでに限界を超えているのではないか?と思うほどのハイテンション。22曲というワンマンならではのロングなセットリストが終了。
 
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演奏が終わる瞬間、熱いビートを叩いていたKYOが、自身のドラムセットを破壊。その光景は、お別れの打ち上げ花火のようだ。そしてメンバーがステージにそろってオーディエンスに挨拶。メンバーとオーディエンスがハイタッチで笑顔になる。双方が完全燃焼した証だ。ワンマンの素晴らしさはこの完全燃焼にあるのかもしれない。
 
普段のMOSQUITO SPIRALは、バンド間の交流を大切にしているようで、対バン形式のライヴが多い。他のバンドからのリスペクトを考えると、当然の話かもしれない。私もバンドをやっていた頃に、「もしも」があるならMOSQUITO SPIRALと対バンがしたいので、その気持ちはよくわかる。そういう意味では、ミュージシャンズミュージシャンなバンドと言える。
 
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MOSQUITO SPIRALは、日本のロックの“今”を感じることができるバンドだ。歴史あるメンバー達のお遊びバンドではない。真剣にバンドをやっていなければ、これだけ粒ぞろいのナンバーをプレイすることなどできない。日本のロックを愛する人は、現在進行形で存在するこの素晴らしきロックバンド、MOSQUITO SPIRALにハマってみることをお薦めしたい!

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■MOSQUITO SPIRAL 公式サイト
http://mosquitospiral.com/
■インフォメーション

2010年6月26日(土)【心斎橋】KING COBRA
2010年7月03日(土)【越 谷】EASY GOING
2010年7月04日(日)【高円寺】HIGH
2010年7月19日(月)【渋 谷】CRAWL
2010年8月07日(土)【新 宿】CLUB DOCTOR

■セットリスト
M01. CAFE THE BLACK
M02. REFECTION
M03. SHINING ON
M04. GO INSANE
M05. SAKEBEODORE
M06. (DON’T FORGET TO)BOOGIE
M07. THE IN CROWD
M08. LOVE IN VEIN
M09. CYCO EATER COMES
M10. REBEL
M11. END OF TIGHT
M12. EVERLASTING FLOWER
M13. DARKSIDE MOON
M14. FEAR
M15. MONSTER
M16. SPIRAL DREAM
encore-1
M17. REBIRTH
M18. L.J.T.J
M19. NICK’S BOLERO
M20. SILVER KROSS
encore-2
M21. SAVING GRACE
M22. ISOLATION