演奏

TEXT:桂伸也 PHOTO:桜坂秋太郎、桂伸也

国内ロックギタリストの中でも最高峰のテクニックとロック魂を持った屈指のプレイヤーとして名高い、Kelly SIMONZと、島紀史。御互いへの尊敬の件を持ちながらも、そこにプレイヤーとしての品位を競い合う様は、ギター界の宮本武蔵と佐々木小次郎とでもいえるような様相を呈している。

そしてこの春、Kelly SOMONZ率いる BAD TRIBEと、島紀史率いるCONCERTO MOONが、因縁の対決ともいえるような夢のダブル・ヘッドライナー・イベント『ATTACK OF THE DOUBLE AXEMAN』が開催された。ギターというポイントもさることながら、その最高のロック魂を持ったミュージシャンとしてのプライドを賭けた壮絶なバトルの模様を、今回はたっぷりレポートしよう。この対決のファイナルとなった渋谷BOXX。開演を待つ会場は、まるで巌流島の対決を彷彿させる緊張感に包まれていた…

1.Kelly SIMONZ’S BAD TRIBE
 
BAD TRIBE is:
Kelly SIMONZ(以下、Kelly:Guitar & Vocal)、Tim Miller(以下、Tim:Bass)、Yosuke Yamada(以下、Yosuke:Drums)
 
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厳かなオーケストレーションのSEが、会場全体に、これからやって来る戦慄の瞬間を予感させた。そしてステージに現れた3人が叫ぶ。それにあわせて、フロアの観衆も大きな歓声を上げる。かくして「Eternal Flame」より、BAD TRIBEの進撃が幕を開けた。フロアの緊張感を片時もほぐさない超絶ギター、コンビネーション抜群のリズム帯、もうお腹いっぱいになっても、「まだまだ!」とばかりに迫り来る、Kellyの超絶ギターが炸裂。更には、初っ端から「さあさあ、もっともっと!」とばかりにあおりを入れるKellyの姿に、興奮を隠せない観衆。
 
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グルーヴ抜群のTimのベースと、ヘヴィネスを加えるYosukeのドラムからなるリズム隊は安定感抜群。Timは、時におどけながら客を楽しませたかと思うと、次の瞬間には緊張感抜群の空気を作り出す。そのカッコよさは本物と認めざるを得ない。4曲目の「ANGEL EYES」ではベース・ソロで抜群のカッコよさを披露、超絶プレイを連発するKellyとともに、‘どや顔’をしっかり決め、フロアの観衆にしっかりとアピールする。その表情には全く嫌味など見られず、むしろその様子にしっかりと納得させられずにはいられないありさまだ。
 
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そして恒例の、Kellyのソロタイムへ。劇的な「トッカータとフーガ」のメロディが炸裂。そのメロディでフロアとの掛け合いを見せると、後は土壇場。そして「悲愴」へ。この流れはある意味Kellyサウンドの真骨頂ともいえるようなドラマチックでシリアスな展開を見せる。曲中で短調~長調のキーチェンジでは、長調の際におどけるようなパフォーマンスを披露。かと思えば、短調に戻った途端に攻撃性抜群のキラーな技をクライマックスに連発。
 
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いよいよ後半戦。フィニッシュに向けてKellyのプレイは留まるところを知らない。スケールの大きいアメリカン・ロックを思わせる「Anything Goes」でギターによるメロディをたっぷり聴かせ、アピールするたびにフロアの観衆の笑顔がこぼれる。そして故Gary Mooreに捧げたという美しいメロディの「Pray For The Moon」から、Kelly最大のテーマ曲ともいえるOPUS#1へ。もう彼が何を弾いても、彼のペースであることは間違いない。だがそんな速弾きの中でもパッションやエモーションを忘れず、ギターからは「歌」が流れ続ける。時にTimとの抱腹絶倒のMCを交えながらも、Kellyの伸びやかながら、センチメンタルな雰囲気を醸し出す「STAY IN MY HEART」から、怒涛の「FLYAWAY」でステージはフィニッシュを迎えた。
 
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2.CONCERTO MOON
 
CONCERTO MOON is:
島紀史(以下、:Guitar)、久世敦史(以下、久世:Vocal)、長田昌之(以下、長田:Drums)、三谷耕作(以下、三谷:Support Bass)
 
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Judas Priestの「You’ve Got Another Thing Comin’」がSEとして鳴り響いたかと思うと、いよいよCONCERTO MOONの登場だ。先程のKellyのステージともまた趣を変え、こちらは前置きから強烈なスピードナンバー2曲でぐっと押し捲るステージ。「Kellyさんでお腹いっぱい?いやいや、無理にでも喰ってもらいますからね!!」久世のアピールが、観衆の闘争心をあおる。ヘヴィなナンバーを更に立て続けに決めていく。シンプルだがどっしりした安定感のある三谷のベースに、攻撃性を加える長田のドラムが、曲の土台をしっかりと打ち立てる。そしてのギターは、CONCERTO MOONの曲を成立させるための中核として、大きな存在感を示す。現存する日本のロック・ギタリストの中でも、一際大きな存在になりつつある。更に彼は、このイベントで相対しているKellyと、程よいコントラストの違いを見せていた。
 
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正しくヘヴィ・メタルを楽しんでいるファン達が、フロアをいっぱいにしている。印象的なサビが現れるたびにメロディを自分達も連呼し、そしてメロイックサインを久世に向ける。この時点で、まだ飛び切り派手なアピールを見せたわけではなかった彼だが、しっかりと自分の歌をバンドサウンドに定着させながら歌う堅実性で、プレイをしっかりと盛り上げる。「今日はね、俺達もファイナルでとことんやっちゃうけど、皆さんもとことんやっちゃおうぜ!」彼の叫びが、またフロアを興奮の坩堝に叩き落とす。
 
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更にヘヴィなナンバー「TAKE YOU TO THE MOON」へ。会場全体が、もう楽しむという向きに対して抑えが効かない状態に陥る。‘そもそも抑えなど必要なのか?’とばかりにフロアをまくし立て、爆発する久世。そして、ハードでヘヴィなサウンドの中、連発される島の超絶ソロフレーズ。Kellyの良きライバルとして、負けられないという思いもあったのだろうか?そんな彼の意思を汲み取ったかのように、フロアは終始頭を振りまくる客でいっぱいだ。
 
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「今日の皆さんはテンション上げてくれますね!ありがとう!」久世の一言が、フロアとステージを更に一体にさせてくれる。一曲一曲のキメにぴったりあわせるフロア。まるでアキバ系のオタ芸のようにそのアクションがフロアのあちこちでびしっと決まる。曲を聴き込み、知り尽くしたファンも多い、そんな意味でこの日のCONCERTO MOONのライバルは、Kellyだけではなかったようだ。そのことを十分理解していたようにも見え、彼らに気を抜く素振りは少しも見られなかった。「東京の底力を見せてもらおうか!?」久世が叫んだ。バラードなど一曲もない、ハード&ヘヴィなナンバーだけで押し捲ったCONCERTO MOONのステージ。ラストナンバー「CHANGE MY HEART」のコールがされると、フロアから「キャー!」という歓声が上がる。もう避けられないくらいに完成されたサビ、そしてギター・ソロ前のフック満載のブリッジ。エンディングのクライマックスに向けて、観衆の思いとともに、その勢いは更に加速した。そして正に怒涛のエンディングが決まると、4人は深々とフロアに向けこの日のステージへの感謝を告げ、ステージを降りた。
 
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3.セッション
 
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大きなアンコールを求める拍手が鳴り響く。その思いに答え、CONCERT MOONの4名が登場。「あれー?今ので満足いかなかったみたいですね?(笑)」久世のジョークが、フロアを和ませる。そして、このツアーでCONCERTO MOONをサポートした、元オリジナルメンバーでもあったベーシスト、三谷を再度紹介、彼に対する感謝の思いを告げながら演奏再開。と、いきなりプレイを仕切りなおし、ダブル・ヘッドライナーとして最大の見せ場、お楽しみの場所としてKellyを呼び込み、演奏は再開。RAINBOWの名曲、「Kill the king」に続き、Judas Priestの「The Hellion」から「ELECTRIC EYE」という流れ、ストラトキャスター・ギタリスト二人のステージとしては非常にレアな選曲だ。それに輪を掛けてKelly vs という最強ギタリスト同士の壮絶なバトル。相手に食って掛かるように必至の形相で相手を睨みながらながら、それぞれの超絶技を連発する様は圧巻。会場は異常とも見られる盛り上がりを見せた。仕舞いにはYosukeもステージに登場し、長田とともにドラムをプレイし会場を盛り上げる。そして盛大なフィニッシュへ。ステージは、こうして幕を閉じた。
 
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◆セットリスト
Kelly SIMONZ’S BAD TRIBE
1.Eternal Flame
2.Cry For Love
3.TIME
4.ANGEL EYES
5.トッカータとフーガ
6.悲愴
7.Anything Goes
8.Pray For The Moon
9.0PUS#1
10.STAY IN MY HEART
11.FLYAWAY
 
CONCERTO MOON
01.SAVIOR NEVER CRY
02.SURRENDER
03.INSIDE STORY
04.STAY IN MY HEART
05.CHASING THE DEVIL
06.FROM FATHER TO SON
07.TAKE YOU TO THE MOON
08.THE SHINING LIGHT OF THE MOON
09.ANGEL OF CHAOS
10.CHANGE MY HEART
Encore(Session)
E01.Kill the king(RAINBOW)
E02.The Hellion~ELECTRIC EYE(Judas Priest)

 


 

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◆ 公式サイト
 
Kelly SIMONZ’S BAD TRIBE
http://kellysimonz.com/
 
CONCERTO MOON
http://concerto-moon.com/

 
アンコールでの壮絶なバトルの後は、爽快な空気が会場を包んだ。二人のAXEMENが振り下ろした斧は、その鋭利な刃先を激突させることで、劇的なサウンドとともに強い光を放ち、ロックを欲するファン達を照らした。その光に惜しみない歓声を上げたファン達。彼らの壮絶な戦いの日々は、紛れもなくロック・ファン達を明るく照らしてくれるものだ。この日のひと時 は、それを強く表していた。

ステージを降りたKelly。楽屋では、互いに肩を抱き、それぞれの健闘を笑顔で讃える姿が楽屋で見られた。人々の気持ちに火をつけ、前進させてくれるような活力を与えてくれたこの日の対決。次は互いにどのような手の内で激突してくれるのだろうか?どんな戦いにせよ、また彼らの激しいつばぜり合いを期待せずにはいられない。
 

東京音協主催 今後のライブ予定
 
1)Angel Witch 『JAPAN TOUR 2012』
日付・曜日:2012年6月29日(金)19:00開演
会場:Shibuya O-EAST
席種料金:立見-6500円
[メンバー]
Kevin Heybourne (Vo&G)
Bill Steer (G)
Will Palmer (B)
Andrew Prestidge (Ds)
詳細内容:
※入場時ドリンク代別途必要。
 
2)Dos a tres caidas ! ~コンチェルト・ムーン炎の三番勝負~
日付・曜日:2012年6月23日(土)18:00開演
会場:Shibuya BOXX
席種料金:立見4,500円(前売り)
[出演及びメンバー]
<人間椅子> http://ningen-isu.com/
和嶋慎治(Guitar & Vocal)鈴木研一(Bass & Vocal)ナカジマノブ(Drums &Vocal)
<コンチェルト・ムーン> http://concerto-moon.com/
島 紀史(Guitar)久世敦史(Vocal)長田昌之(Drums)三谷耕作(Bass ※サポート)
詳細内容:
※入場時ドリンク代別途必要。
 
お問合せ:
東京音協 03-5774-3030

こちらも是非ご覧ください。
 
Kelly SIMONZ:
密着レポート第6弾 Kelly SIMONZ “The Third” ? Revelation 2012
http://www.beeast69.com/feature/18098
Kelly SIMONZ 「~頭でイメージした音を歌とギターで表現するLIVE~」
http://www.beeast69.com/report/7626

 
CONCERTO MOON:
OUTBREAK7周年&長沢生誕記念 島紀史・長沢共同企画イベント
http://www.beeast69.com/report/17275
密着レポート第3弾Concerto Moon「ANGEL OF CHAOS」ツアーファイナル
http://www.beeast69.com/feature/2527
Let The Music Do The Talking ?テイク9「島紀史(CONCERTO MOON)」
http://www.beeast69.com/feature/113
CONCERTO MOON 関東5Days
http://www.beeast69.com/gig/462