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Let The Music Do The Talking 〜テイク9

TEXT:桜坂秋太郎 PHOTO:ヨコマキミヨ

PhotoCONCERTO MOONは、1996年の結成から独自のハードロック/ヘヴィメタルのスタイルを貫き、リーダーでありコンポーザーでもあるギタリスト島紀史を中心に突き進んできた。現在のメンバーは、島紀史(Guitar)・井上貴史(Vocal)・長田昌之(Drums)・杉森俊幸(Bass)。その4人による渾身の一撃といえるアルバム『ANGEL OF CHAOS』が、2010年7月7日リリース。島紀史に直撃インタビューをして、楽曲もサウンドも絶対の自信作という『ANGEL OF CHAOS』を語ってもらった。島紀史が何を思って作り上げたアルバムなのか、少しでも伝われば幸いである。

発売に先立って、サンプルを聴かせてもらった。今までも名盤と言われるアルバムをリリースしてきたバンドだが、メンバーの脱退などにより順調なバンド活動とは言いがたい時期を何度か味わったCONCERTO MOONだ。しかし現在のメンバーで新しい時代を作ろうという意気込みを、『ANGEL OF CHAOS』からはハッキリと感じ取ることができる。島紀史の才能が吼える“意地”のようなものを私は感じた。ハードロック/ヘヴィメタルが好きな人にお薦めできるのはもちろん、あまり得意ではない方にも『ANGEL OF CHAOS』を聴いてもらいたい。レコード店の試聴でも、ネットの試聴でもかまわないと思う。

ストラトキャスターによるハードロック/ヘヴィメタルは、俗に“様式美”というカテゴリーでくくられることが多い。正確に言えば、ストラトキャスタータイプのエレキではなく、シングルコイルピックアップの純粋なストラトキャスターの話だ。クラシック音楽が好きな私は“様式美”な旋律は大好物。しかしCONCERTO MOONを“様式美”と片付けてしまうことだけは止めてほしい。ストラトキャスターを使った最高のハードロック/ヘヴィメタルを奏でていることは、『ANGEL OF CHAOS』を聴けば一発でわかるはず!極上のギターサウンドとパワフルなロックに触れてほしい。

— 新譜「Angel Of Chaos」がついに完成ですね!今回の聴きどころを教えてください。

Photo島:まぁ、ミュージシャンは新作が完成した直後は「今回のアルバムは最高傑作だ!」なんて言うもんですが、ご多分に漏れず僕もそう言うわけです(笑)。聴き所という事ですが、全部(笑)!曲・ヴォーカルライン・歌詞・リズム隊の圧力等々、すべてがイメージに極めて近づいた作品に仕上がったと思います。あっ、もちろんギターもね(笑)。

— 確かに全体を通して音に圧力があります。ミックスダウン(※録音したそれぞれの楽器バランスを調整して最終的な完成形へと整える)や、マスタリング(※最終的に行う音質や音量の調整)の段階で意識したことがあれば教えてください。

島:ミックスダウンでは、長田のダブルベースドラム(※俗称ツーバス)を強調しようと、最初から思っていました。スネアしか聞こえないようなミックスが、あまり好きではないですし、今回の楽曲はダブルベースドラムが鍵になってますから。その上で、全体のバランスが上手く取れるようにしました。細かいニュアンスも聞いてもらえるはずです。マスタリングでは、最近主流のコンプで潰して、全体の音圧をやたら上げる感じにはしたくなかったんですよ。もちろんリミッティングはするわけですが、全体の奥行きとかも感じてもらえる感じに仕上げたつもりです。

— 新譜「Angel Of Chaos」で使用した機材関係を教えてください。

島:ギターはSCHECTERです。自分のシグネイチャーモデルのブラックのやつ。ちょっとした部分に友人が作ってくれたオリジナルのエレアコを使いました。アンプは、バッキングギターの大部分は、’73年製のマーシャル1959。一部バッキングとオブリ(※オブリガート:ヴォーカルパートなどがロングトーンやブレイクに入った時に入れるオカズ的フレーズ)とギターソロは、マーシャルのヴィンテージモダーン。スピーカーキャビネットはセレッションのヴィンテージ30が入った1960。エフェクターはマクソンのST-9とボスのNS-2のみです。シールドはEx-proのFLシリーズ。こんな感じかな。

— 島さんのギターサウンドの要は、SCHECTERから生まれていると思いますが、どのくらい最高のギターですか?

島:取りあえず言えるのは、理想のストラトを現実の物にしてもらっているという事ですね。ネックのシェイプ、ボディーのコンター(※体が当たる表面と裏側の削り加工処理)、ウエイトバランス・材の選定に至るまで、これほど自分の理想に忠実なギターは無いと思っています。特に、今メインで使ってるブラックのやつは完成形だと思います。今それを踏まえた新しいやつを作ってもらっているのですが、出来上がってくるのが凄く楽しみですね。

— 先日4人編成になったCONCERTO MOONを拝見しました。現在のラインナップの手ごたえを教えてください。

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島:出来る最大限のプレイを今やっている自負は有りますが、もっともっと押し上げられるとは思っています。そういう意味では、凄い可能性を今のラインナップに感じていますね。

— 5人前提の構成とは作曲やアレンジに差があると思いますが、新譜「ANGEL OF CHAOS」で意識した部分があれば教えてください。

島:アレンジに差があるとすれば、キーボードソロが無い事くらい(笑)。曲作りは基本的には変わってはいないです。ただ、メロデイーを大々的に受け持つ楽器がギターだけになったので、今まではキーボードに割り当てていたパートもギターでこなしていく事になります。それゆえに、モアギターな男らしいメタル感は強まったと思いますね。今回のアルバムで意識したのは、メタルのハードエッジな部分とメロディアスさの共存ですかね。それこそが、このバンドの持ち味だと思っていますから。

— CONCERTO MOONファンの期待に応える作品を作ろう!というような一致団結はメンバー間でありましたか?

島:少なくとも、自分達のやるべき事をやるしか無いわけですし、自分達が誇れる作品を目指すしか出来ませんから。それをファンの皆さんが気に入ってくれたら、それ以上の事は無いですね。自分達の作品を評価するのは、自分達では無く、聞いてくれた皆さんですから、リリースしてからは祈るだけです(苦笑)。自分達を、自分達で高く評価していい気になりたく無いし。ただ今回の作品は、メンバー全員が誇れる作品を目指しましたので、そこを目指して一丸となって突き進んだ事は、さらにバンドを強くしたと思います。

— 井上さんの歌がベストな状態で収まっているように思います。何かアドバイスをされたのでしょうか?

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島:もちろん、作曲者としてのイメージを細かくは伝えますし、井上の良さがより伝わるようにしたかったので、そういう風に言ってもらえてうれしいですよ。アドバイスというより、いつも以上に彼とはコミュニケーション取りましたし、良い声の瞬間を逃さないようにジャッジしました。僕も、彼のベストな歌が作品に出来たと思います。

—- 歌もギターソロも、島さんのメロディへのこだわりを感じます。何度もトライ&エラーで色々なメロディを載せた上で決めている感じですか?それともヒラメキ一発でしょうか?

島:歌に関しては、今回は歌詞を歌録りが始まってから日本語交じりに書きかえた事もあって、井上と相談しながら、ベストなメロディを模索しました。一番大事な部分だし、おっしゃる通りトライ&エラーを繰り返しました。ソロはヒラメキ一発の側面が強いですけど、いつもメロディアスである事は意識しています。何度も弾き直したりは、新鮮味が無くなってしまうのでやらないのですが、イメージしたプレイがまとまらない時は、翌日に持ち越したりはしますね。

— 「Plectrum」や「Just Before Midnight」は実に素晴らしいインストですが、インスト物と歌物を作る時の差があれば教えてください。

島:歌詞を書かなくてすむ事かな?(笑)。冗談はさて置き、ギターで歌とは違う感じでメロディをアピールしなければいけないわけですから、全く別の物を作るくらい差があると思います。人の声の表現力に迫らないといけないのは大変な事ですが、こんな風に褒めてもらえるとチャレンジした甲斐がありますよ(笑)。それと「Plectrum」は、僕自身のキャリアの中で、最もプレイするのが難しい物をやろうと思ったので、凄いチャレンジでしたね。コンサートでプレイするのが恐ろしい曲になりました(苦笑)。

— 曲間のつながり方なども最高ですが、曲順はどのように決めたのでしょうか?

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島:曲順は最後まで悩みましたから、そう言われるとホッとしますよ(笑)。これはいつも意識する事ですが、作品がコンサートのセットリストの様に、バランスの取れた感じにはしたいと思っています。良いテンション感じゃないかなと思います。曲間はテンションを維持する為に、ほとんど曲間の無い部分と、ペースを変える為に、長めに空けたところの対比が上手くいったのかも知れませんね。

— CONCERTO MOONは海外でもプレイされていますが、Ritchie BlackmoreやYngwie Malmsteenといったストラトヒーロー達と肩を並べるため、本格的海外進出は考えていますか?

島:肩を並べるなんて、大それた事は絶対に言えないですが(苦笑)、海外のレーベルとの交渉は地道に進めています。今回のアルバムは日本語詞で歌っていますが、海外のレーベルとの交渉がまとまれば、英語バージョンを録音して、海外にアプローチを考えています。ツアーにも行きたいですから、今回のアルバムで具体化させたいですね。

— ところで、CONCERTO MOONとは別の音楽として、ソロ発表などの予定はありますか?

島:ソロで何かやろうとは全く思っていませんが、友人と新しいユニットを作ろうとはしています。CONCERTO MOONより、もっとオーガニックな感じのハードロックかな?近いうちに動けるかもしれません。

— 小さい頃ピアノを習っていたことが、今の島さんにどのような影響があるか教えてください。

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島:1箇所に立ち止まって演奏するのはつまらないと思わせてもらった事かな?(笑)なんて。常にメロディックである事の重要性をピアノからは学んだと思いますね。

— 鍵盤で作曲やアレンジをすることはありますか?

島:それは無いですね。昔は鍵盤を弾く事も出来ましたが、今はまったくだし。僕は恐ろしいほど不器用なんですよ(笑)。

— 長い間、一貫して一本筋の通った活動をしているCONCERTO MOONですが、最後に読者向けのコメントをください!

島:僕達は、幅広い楽曲をプレイするわけでも無く、自分達の好きなメタルをプレイし続けています。僕達にはこれしか出来ませんが、これしか出来ない事を恥だとは思わないんです。それほどメタルは奥深いし、常に進化し続けていかないといけないと思っています。他に浮気する暇なんて無いわけですよ(笑)。なので、この音楽を気に入ってもらえたら幸せだし、四の五の言うより熱くプレイしますから、作品を気に入ってもらえたら皆さんとライブ会場で素敵な空間を共有したいです。一緒に熱くメタルしましょう!

ロックミュージシャンというと、一般的には近寄りがたいイメージがあると思う。しかしフレンドリーなインタビュー内容からわかるとおり、島紀史はとても気さくなアーティスト。もちろんステージの上では、サムライの刀のようにストラトキャスターを自在に操るスーパーギタリスト。その迫力は一度でも観たことがあればわかるはず。でも普段は肩肘張らず、「radio DE triumph」というお笑いヘヴィメタル番組などをやっているギャップが最高だ。

ラーメン好きで知られる島紀史に、インタビューの余談で好みを聞いてみた。“島紀史がお薦めするラーメンベスト3は?”という質問に、「それは一番難しい質問(笑)だね。高田馬場の渡なべ、岡山の天神そば、尼崎の大貫、かな。」と答えてくれた。検索してもらえれば、それぞれのラーメン店の情報は手に入る。私も島紀史お薦め店へ行って食べてみたい。まずは都内の渡なべから攻略しようかと考えている。

さて、『ANGEL OF CHAOS』のリリースに合わせて、島紀史CONCERTO MOON)の公式サイトがリニューアルした。とてもかっこいいサイトなので、そちらもチェックしてほしい。思わず笑ってしまう爆笑トークの「radio DE triumph」もサイトからリンクされている。全国12箇所の夏のツアーも決まり、あとは『ANGEL OF CHAOS』を聴き込んで会場へ行くだけ!迷うことはない!この夏は熱く「ANGEL OF CHAOS~!」と叫ぼう。

島:まずはこの「ANGEL OF CHAOS」のPVを観てください!これを観てCONCERTO MOONに興味を持ってもらえたら凄く嬉しいです!



CONCERTO MOON/ANGEL OF CHAOS


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◆島紀史(CONCERTO MOON)公式サイト
http://concerto-moon.com/

TOUR “ANGEL OF CHAOS” 2010
2010年8月18日(水)【仙 台】MACANA
2010年8月20日(金)【郡 山】CLUB#9
2010年8月25日(水)【米 子】ベリエ
2010年8月26日(木)【岡 山】クレイジーママ2ndRoom
2010年8月28日(土)【広 島】ナミキジャンクション
2010年8月29日(日)【博 多】DRUM SON
2010年8月31日(火)【金 沢】VanVan V4
2010年9月01日(水)【新 潟】CLUB RIVERST
2010年9月03日(金)【名古屋】ell.SIZE
2010年9月05日(日)【大 阪】江坂ミューズ
2010年9月07日(火)【長 野】CLUB JUNK BOX
2010年9月11日(土)【渋 谷】BOXX


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【DVD特典】※初回限定盤のみ
・レコーディングメイキング映像
・島紀史によるアルバム全曲解説
・PV:ANGEL OF CHAOS
NEW ALBUM 「Angel Of Chaos

2010.7.7 Release

01.THE EARTH DIES SCREAMING
02.ANGEL OF CHAOS
03.LOST IN THE DARK
04.RIGHT HERE , RIGHT NOW D
05.GONE
06.DANCE WITH THE GHOSTS
07.PLECTRUM
08.LET ME STAY HERE
09.LIVE TO WIN
10.JUST BEFORE MIDNIGHT
11.STAND UP AND FIGHT


XQHK-1003 / 税込¥3,500(初回限定盤《CD+DVD》)
XQHK-1004 / 税込¥3,000(通常盤《12曲入りCD》)
発売元: TRIUMPH RECORDS