演奏

TEXT:kai PHOTO:K

2013年11月17日、予報にもなかった冷たい雨が夕暮れから降り出した日曜日だった。しかし、大阪・阿波座BIG JACKは、寒さも物ともせず開場とともに”その人”の登場を待ちわびる大人達の熱気に包まれていた。
 
「松尾宗仁(from ZIGGY)in大阪 ROCK AND ROLL FREEDOM!」と銘打たれたこのイベントは、本誌編集部の大阪室長・八神灰児率いるZIGGY承認のカバーバンドGIZZYが、スーパーギタリスト松尾宗仁を迎え共にステージの上で共演するという夢のような企画だ。関西ではワンマンライブを何度も行うなど確固たる実績を持つGIZZYが、本家・松尾宗仁とどのような融合を果たすのか、期待が高まる。

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まずはオープニングアクトとしてJulyが登場。相川七瀬のカバーバンドだ。赤いスパンコールのインナーにニーハイブーツ、赤と黒でコーディネートされた衣装で華やかに登場すると、1曲目は大ヒットナンバー「トラブルメイカー」。YOKO(Vocal)の明るく伸びやかな歌声に、フロアでは早くも一緒に歌い踊るオーディエンスの姿が見られる。
 
「盛り上がっていきましょう!」MCでTakashi(Guitar)が軽く挨拶すると、HIRO(Bass)の五弦ベースが小気味よいリズムを刻み、ujiのドラムもそれにならい、誰もが聞き覚えのあるヒット曲へどんどん誘っていく、華やかなステージ。ラストの「夢見る少女じゃいられない」まで全6曲、元気いっぱい笑顔いっぱい見事にイベントの幕開けを飾ってくれた。
 
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◆セットリスト
M01. トラブルメイカー
M02. LIKE A HARD RAIN
M03. BREAK OUT
M04. 恋心
M05. 彼女と私の事情
M06. 夢見る少女じゃいられない
◆July ホームページ
なし

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オープニングアクト2バンド目は、Dalice(たつき/Vocal)、(よう/Bass)、(せん/Guitar)、(けい/Drums)の4人組のうちほとんどのメンバーがまだ10代という、若手イケメンロックバンドだ。「やぁ、こんにちは。ボクの名前は”たつき”…さぁみんな、あがっていこうか!」V系らしいナルシストモード、ご愛嬌たっぷりの挨拶に、フロアの女性陣からは思わず笑みがこぼれる。
 
女性陣の視線を奪ったところで、ここぞとばかりに煽る煽る。ビートの効いた派手な曲あり、ダークな世界観に浸れる怪しげな曲あり。その存在感をたっぷり発揮し、今後の活躍を大いに期待させる堂々たるステージであった。
 
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◆セットリスト
M01. Birth
M02. Like a Gun
M03. V.A.M.P
M04. Who is she?
M05. Envy
◆Dalice ホームページ
なし

二つのオープニングアクトが終了したところで、今回のイベントの主催・GIZZY八神灰児ナカZが登場。八神灰児の軽妙なトークと人の良さそうなナカZのコンビネーションで会場を沸かせたところで、いよいよ”その人”、松尾宗仁が大きな拍手と歓声に迎えられ登場した。
 
シルバーグレーの混ざった髪をオールバックに整え、細身のピンストライプの黒のジャケット、白いストールを軽く結び、濃い色のサングラス、いかにもロックスターのオーラを放っていた。ご本人にマイクを譲って、ここからしばらく松尾宗仁が一人ステージに残り、トークタイム。
 
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「みなさん、こんばんは。松尾宗仁です。まずこういう楽しいイベントに呼んでいただいてホントにありがとうございます。」ゆっくり話し出す松尾宗仁に、一同釘付け。キッズの頃より憧れ続けた「その人」の存在感に圧倒されたように、少々緊張するオーディエンス達。その空気を察知したのか「あのさ、まず聞きたかったのが大阪ってさ~、なんで…」なぜ大阪のエスカレーターだけが左側通行なのかという素朴な疑問を投げかけて、場内の笑いを誘い緊張感を一気に和ませてくれた。
 
「(ハンドマイク)持ってるのかったりぃ~から、これで。」とマイクスタンドを要求。フリーハンドになったところで、タバコに火を点け一服。それだけでもう絵になる。フロアからは元ロックキッズ達のキラキラとした憧れの眼差しが注がれ、その一言一言を聞き漏らすまいと熱心に耳を傾ける様子が見られた。
 
18歳の時に音楽のプロになりたいと志し、20歳の時に東京に行くしかないと思い立ち上京したという、当時の話。アパートも見つからず晴海埠頭で一週間くらい野宿をしていたけれど「俺たちはロックンロールだ!カッコイイことをしているんだ!」と感じていたという。そのハングリー精神が糧となり、その後スターダムにのし上がっていったなんて、いかにも大物誕生にふさわしいエピソードだ。そんな中にも、男の共同生活ならではのマル秘裏事情や、ZIGGYを結成するにあたりメンバー探しでのエピソード、デビューに至るまでのストーリー、自身の音楽のルーツなど貴重なネタの大放出!
 
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「でも楽しかったなぁ。金がなくても面白かった。これがプロになるってことか…そう思った。うん…」サングラスの奥で当時の思い出を今一度、めぐらせているような松尾宗仁の姿が印象的だった。
 
「20代の時に30くらいになった自分の姿をイメージしていたんだ。で、30になったときは40のイメージ、40過ぎたときは50のイメージをしてきた。どうやってロックンロールと共に歳をとっていくか、どういうことをやっていくか、常に考えていた。」そう語る松尾宗仁。先日来日した71歳のPaul McCartneyや、同じく71歳のKeith Richardsに刺激され、51歳の今、すでに20年後の自分の姿を見据えているという。なんとも力強い言葉だ。
 
結成30周年、来年に向けてのZIGGYの動向に、期待を持っていいに違いない話題にも少しだけ触れたところで、時間いっぱいとなりトークタイム終了。さぁ、いよいよ待ちかねたZIGGY承認カバーバンド、GIZZY松尾宗仁本人とのセッション大会だ!

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ゼマティスのオリジナルだと聞くギターのボディーには、キラキラと美しい装飾が施されていた。しかしそれ以上にギラギラのオーラを放つ松尾宗仁。これぞ、本物のロックスターの風格だ!「この日を待ちわびていました。楽しんで帰ってください。よろしくお願いします!」八神灰児の挨拶の後、静かなアルペジオ。『ZIGGY ~IN WITH THE TIMES~』より「HOW」。美しいスローテンポの曲調から、キャッチーなサビに向かってぐんぐん加速する神曲だ!
 
観客はスローなメロディーに身をゆだね、目の前のギターヒーローに敬意を表するように、音に合わせてステージにむけて手を伸ばす。中には、自らがロックキッズであったころに思いを馳せセンチメンタルになっていた者もいただろうが、ワン!トゥー!スリー!フォー!の合図とともに客席は一気にヒートアップ。観客全員が拳を振り上げ、ご機嫌なロックンロールショーの始まりだ。音楽の勢いは止まることなく、続いては「FEELIN’ SATISFIED」。ビートに合わせてテンションもさらに急上昇!
 
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「のっけから最高でした!松尾宗仁with GIZZYです。よろしくお願いします!」割れんばかりの大歓声で答えるオーディエンス。胸の前に拳を作って、ガッツポーズで答える松尾宗仁と、深々と頭を下げるGIZZYメンバー。「ZIGGY愛とロックンロール魂とGIZZY愛で、盛り上げていこう!」との八神灰児の言葉に、期待を抑えきれない。「それじゃぁみんなで声を出して~、このナンバーをお送りしたいなと思います。『BORN TO BE FREE』!」曲中の「OH NO!」「WOO YEAH!」のかけ声もタテノリのリズムも、観客の体にしっかりと刻み込まれている。
 
表情豊かなナカZのドラムプレーがリードするGIZZY松尾宗仁が奏でる極上のZIGGYナンバー。そのサウンドとハッピーな空気が客席を支配したまま、「MAKE IT LOUD」、「I WANT YOU LOVE」と軽快なロックンロールナンバーでどんどん盛り上げていく。粋なカッティングの松尾宗仁のギターソロにも痺れまくりだ。GIZZYの4人もまるでオリジナルバンドのように堂々とした演奏を披露し、ステージの上にもフロアにもハッピーなエネルギーが渦巻いている。「客席、歌、上手いっすね~」思わず八神灰児の口から出たこんな言葉に、場内がどんな様子だったか察していただけるだろう。
 
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和やかなムードでライブは中盤へ。松尾宗仁からのリクエストで実現したという「I CAN’T STOP DANCIN’」、アッパーなナンバー「WHISKY R&R AND WOMEN」とお馴染みの人気ナンバーを次々と熱演し、フロアとステージの境目などなく会場全体が一体になる。
 
続く「I’M GETTIN’ BLUE」で、沸点に達したフロアからの大合唱が沸き起こる。くわえタバコでクールにギターを掻き鳴らす松尾宗仁。グッと腰を落としてブレイクしたり、ギターのヘッドをグイっとフロアに向けて構えたり、ステージでの所作のすべてがロックンロールギタリストとしての風格にあふれ、観客を魅了。熱気に包まれたまま、本編が終了した。
 
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もちろんすぐさま起きる大きなアンコール。「宗仁宗仁!」熱いコールで迎えられ松尾宗仁が再びステージへ。「楽しいや。なんか23歳くらいに戻った感じ。」ステージ上の松尾宗仁は上機嫌だ。普段のライブではお目にかかれないラフなトークも、こういうイベントならではの楽しみだ。
 
そして、アンコールに演奏されたのはこの曲。「ZIGGYと言えば、このナンバーを忘れてはならないと思います。行きます!『GLORIA』!」「イェ~イ!」その拳の数がどれだけこの瞬間を待ちわびていたのかを物語っている。体を揺らしながら、それぞれの思いの中で、この曲と共に過ごした場面を誰もが、いくつもいくつも思い浮かべていたに違いない。
 
そして、シンバルのカウントがとうとう最後の曲の合図をする。最後は「SING MY SONG」だ。ステージに押し寄せんばかりに興奮したオーディエンスがいくつもの拳を振り上げて「オイ!オイ!」で応える。八神灰児も叫ぶ。「本当に本当に、最高の夜をありがとうございました。松尾宗仁さんに大きな拍手を!ロックンロール!ロックンロール!」
 
最後の音が途切れたその後も、鳴り止まぬ拍手と歓声。青春のギターヒーロー、憧れのロックスターと同じ時を共有したという満足感で、会場中が一つになった。
 
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◆セットリスト
M01. HOW
M02. FEELIN’ SATISFIED
M03. BORN TO BE FREE
M04. MAKE IT LOUD
M05. I WANT YOU LOVE
M06. I CAN’T STOP DANCIN’
M07. TOKYO CITY NIGHT
M08. 6月はRAINY BLUES
M09. ONE NIGHT STAND
M10. WHISKY R&R AND WOMEN
M11. I’M GETTIN’ BLUE
-encore-
M12. GLORIA
M13. SING MY SONG
◆松尾宗仁 公式サイト
http://www.sounin-matsuo.net/
◆松尾宗仁&ブラックリムジン 公式サイト
http://www.sounin-matsuo-blacklimousine.net/
 
◆ライブインフォメーション
・2014年01月25日(土)【代々木】Zher the ZOO
 ※松尾宗仁&ブラックリムジン 初ワンマン
 
◆GIZZY 公式サイト
http://gizzy.info/

 
時が流れて、その記憶の中にいつもは無いように思えても、音楽と共に鮮明に蘇るものがある。ZIGGYの音楽と人生で最も多感な時期を過ごしたであろうアラフォー世代。憧れ続けたロックスターは今も尚、その生き様をさらけ出し、己の人生に勇敢に立ち向かう姿で感動をくれた。
 
時代の変化や、自分を取り巻く環境の変化にも恐れずに行こう!歳をとるのも、そう悪いことではないじゃないか!今や大人が憧れる大人、ロックギタリスト松尾宗仁。その生き様で、これからも私たちに勇気を与え続けてほしい。そしてこの素晴らしい企画で、夢の体現者となってくれたGIZZY。大人になっても夢見る素晴らしさまた見せつけてほしいものだ。それゆけ!R & R BAND !!

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【連載】第14回 Stand Up And Shout ~脱★無関心~(~CROSS OVER JAPAN~福島復興支援チャリティーライブ)
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