演奏

TEXT & PHOTO:鈴木亮介

50歳を迎え、ますます血気盛んにロックンロール街道を突っ走る、松尾宗仁。彼の新たなプロジェクトが、遂に始動した。その名も松尾宗仁&ブラックリムジン!バンドメンバーは盟友・大島治彦(Drums)に加え鈴木穣(Guitar/マルコシアス・バンプ)、森本ひとみ(Bass/BATTLE AXE、SCHOOL DAZE、碇健太郎バンド)、林田圭子(Harp & Chorus/ex:THE VACATIONS)という、バンド名の通りゴージャス感の漂う強力な布陣だ。
 
記念すべき初陣の舞台は横浜7thアベニュー。そして対バン相手はSDR(セドロ)!仲野茂(Vocal/ゲタカルビ)、内藤幸也(Guitar/ARB)、EBI(Bass/ユニコーンMADBEAVERS)、名越藤丸(Drums/CAUCASUS)という、これまた最強の布陣で2006年のARB活動停止後にセッションを経て結成されたパンクバンドだ。今宵はこの豪華2マンを本誌独占レポートでお届けしたい。
 
Photo Photo

Photo Photo

Photo Photo

Photo Photo

先攻は松尾宗仁&ブラックリムジン。5人が定位置に就くと、記念すべき1stライブの第1曲目は、「愚か者のパレード」。松尾宗仁にとって思い入れの強く、ZIGGYを離れた後も常に奏で続けてきた渾身のブルースロックナンバーだ。林田圭子の女声コーラスとブルージーなハープが加わることで、いっそう楽曲の持つ切なさが際立ち、1曲目にして早くも目頭が熱くなる。間髪入れずに2曲目はTHE PRODIGAL SONS後期の作品で音源化されていない「Dear Mr.Survival」。初めて聴いた時の鳥肌は未だ覚えているが、この曲もハープがいい仕事をする。3曲目はソロ作品「風になる」、これまたファンにはたまらないナンバーを続ける。
 
Photo Photo

Photo Photo Photo

Photo Photo

ケイコさ~ん!」客席から歓声が上がり、最初のMC。松尾宗仁にとって、バンドを従えたライブとしては実に8ヶ月ぶりのステージだ。松尾宗仁は言葉少なに、しかし本気のトーンで「このバンドで頑張っていくからさ」とファンに宣言。「すっげー久しぶりというか…ライブでやるのは多分初めて」と前置きした4曲目はソロ名義の「SHAKE FREE!!」。大島治彦のパワフルなドラミングと松尾宗仁のギターが華麗にハイタッチを決める、爽快なロックンロールナンバーだ。
 
5曲目はTHE PRODIGAL SONS時代の未発表曲「Low Life Baby」、6曲目も同じくTHE PRODIGAL SONS時代にリリースされた「Valley Of The Sun」と続く。イントロのカッコよさを追求する松尾宗仁の楽曲はどれも開始数秒で心の高鳴りがピークに達するのだが、”ブラックリムジン“になったこの日のライブは格別。鈴木穣の歪むギターサウンド、心に沁み入る森本ひとみのベースサウンドが、松尾宗仁サウンドを何倍にも引き立たせるのだ。初ライブにして、過去最強のグルーブ感がたまらない!
 
Photo Photo

Photo Photo Photo

Photo Photo

「12月にバンマス(=松尾宗仁)から声をかけられて、それから3月に写真を撮って、4月にリハをして…ここまであっという間だった」と振り返る森本ひとみ。「スーパーギタリスト」と松尾宗仁から紹介された鈴木穣も「50になってさ、新しいバンドやってるとは思ってなくてさ…」と笑いを誘うが、その瞳は本気だ。「一緒に楽しんで、一緒に育てていただきたい。一緒に頑張っていきたいと思います」と気持ちを述べると、7曲目はこの5人になって初めての新曲「麻薬のような愛」。映画のオープニング曲のようなワクワク感と、切ない歌声、5人個々の見せ場や細かな音の装飾もありつつ、メインフレーズに向けて徐々に5人の音が大きく揃っていく感じがドラマチックな楽曲だ!(音源化切望!!)
 
8曲目「O.K」、9曲目「バッドタイミングブルース」と畳みかけ、フロアの熱気も半端ない。林田圭子のハープが華麗に踊る中、歌詞の通り「まだ早い、まだ早い」と心の中でつぶやきつつも、ついに訪れてしまった、最後の曲。名残惜しさは大島治彦の高速ドラムロールで打ち破かれる。軽快なナンバー「Venus, Queen, Angel」で、松尾宗仁&ブラックリムジンの初ステージは幕を閉じる。百戦錬磨のプレイヤーが揃ったとはいえ、これほどまで一体感のある、新しい魅力が楽しめるステージになるとは、この日を待ち望んでいたファン達さえも予想しなかっただろう。次は7月20日、満を持して都内初ライブを代々木Zher the ZOOで行う。さらなる新曲も用意されているとのこと。ロックンローラー・松尾宗仁は一時たりとも後ろを振り返らず、走り続ける。
 
Photo Photo

Photo Photo

Photo Photo

◆セットリスト
M01. 愚か者のパレード
M02. Dear Mr.Survival
M03. 風になる
M04. SHAKE FREE!!
M05. Low Life Baby
M06. Valley Of The Sun
M07. 麻薬のような愛
M08. O.K
M09. バッドタイミングブルース
M10. Venus, Queen, Angel
 
◆松尾宗仁&ブラックリムジン 公式サイト
http://www.sounin-matsuo-blacklimousine.net/
◆インフォメーション
・2013年07月20日(土)【代々木】Zher the ZOO
 
Photo

Photo Photo

Photo Photo

Photo Photo

松尾宗仁&ブラックリムジンの残した熱が冷める間もなく、後攻・SDRの4人が揃いのモスグリーンをまとい、ステージに姿を現す。外国のパレードのような穏やかなSEとは裏腹に、仲野茂は早く叫びたくて仕方ないという様子。そして、内藤幸也のギター、EBIのベース、名越藤丸のドラムが同時多発的に爆音を轟かせ、静寂を打ち破る!SDR、ここに見参!
 
再び、EBIの静かなベースで一呼吸、かと思えば名越藤丸の力強いばちさばきで爆発!1曲目はSDRが誇るキラーチューン「タンツボ政府」!続く2曲目「バラバラ」、3曲目「コーヤ・モーヤ」と、シンプルながら心地良く耳に残りやすいフレーズの楽曲。EBIのベースライン、内藤幸也のギターリフ、どちらも楽しい音遊びをとことん追求した…という印象で楽しい!
 
Photo Photo

Photo Photo

Photo Photo

「今日盛り上がらないでいつ盛り上がるんだ。また当分ライブないし…今日7月の分と8月の分やっとくよ」開口一番、笑いを取る仲野茂。「まぁ今日は中華料理屋の餃子で胸やけすることもなく…」アットホームな空気が流れるが、すぐさま「笑い飛ばすぜ~!」絶叫から、4曲目「笑いとばせよ」へ。緩急の切り替わりが早いのは、底抜けにカッコイイ楽曲の為せる技。逆の見方をすると、緊張感を解きほぐすようなMCのお陰で、肩肘張らずに純粋に音楽を楽しむことができる。それが、SDRの魅力だろう。
 
粒のそろったドラムが盤石な土台を作る5曲目「マスメディア」、地を這うようなベースサウンドが印象的な6曲目「感動」と、2ndアルバム『!(ビックラゲーション)』収録の曲。どちらも仲野茂の現代社会への怒り、アンチテーゼが書かれてはいるが、決してシリアスになりすぎたり、暗い気持ちになったりはしない。それは「感動」の一節「あいつは頭で考える オレたちゃ体が覚えてる あいつは頭で動いてる オレたちゃ体が動き出す」この歌詞に全て集約されているのではないか。演説や絶叫スピーチではない、音楽としての表現、作品に徹しているのだ。だから、「笑い飛ばそうぜ!」とステージを楽しめてしまうのだ。
 
Photo Photo

Photo Photo

Photo Photo

ステージを縦横無尽に動き回り、汗だくになりながら熱唱する仲野茂。激惚れなステージを披露したかと思えば、曲が終わるやいなや「オレもちょっと今、幸也のギターソロに感動しすぎてウッて(笑)あまりの感動で胃液が上がってきたぜ」と観客を爆笑させる。どぎつい下ネタも交えつつ、「河口湖で久々に合宿した成果を」と、ファンには嬉しい新曲「マッドランナー」を続けて披露!時折入る妖艶なギターリフが独自の世界観を作る。さらに「アオレイノレ」、「気分は戦争」と手加減することなくぶっ飛ばしていく!ファンクミュージックっぽいメロディも混じりつつ、最後は元気に明るく「戦争ー!」と観客とともに絶叫。SDRにしか出せない世界観だ。
 
メロディアスなロックナンバー「ネイキッドキングダム」から、終盤に向けて猛攻!「バクテリア」、「サティスファイド」と、これぞパンクロック!と頭を振りたくなるナンバー連発!そして最後は内藤幸也のギターが強烈にうなる「NOフリーダム」。荒野を一歩一歩踏みしめるように、力強く音を声を刻み続ける4人。「NOフリーダム!」仲野茂の雄たけびに圧倒されっぱなしのまま、ステージの幕が下りた。
 
Photo Photo

Photo Photo

Photo Photo

アンコールの声に応えてSDR再登場!静かにEBIがベースを叩き始めると、名越藤丸も裏拍でハイハットシンバルを刻み始める。さらに内藤幸也がじわりとギターを歪ませ、そして仲野茂がエモーショナルに、情感たっぷりに歌い上げる。アンコール1曲目は「タンゴ」だ!「一つ… 二つ… 三つ数える前に、天国!」ここへきてまさか、こんなに涙腺の緩む曲が来るとは!仲野茂の最後の叫びがこだまして、そして静かに音がフェードアウトすると、この日一番の大きな拍手が沸き起こる。
 
その拍手が鳴り止むか止まないかの所で、仲野茂がマイクに向かって怒る。「トー!デーン!イーズ、バーニング!!」かつてアナーキーがリリースし、皇室批判であるとの抗議を受けてアルバム回収に追い込まれた伝説の名曲「東京イズバーニング」に落語家・立川談慶が新たな歌詞を載せて生まれ変わった「東電イズバーニング」だ。30年前、「東京イズバーニング」を支持した者、或いは非難した者は、この曲をどう捉えるだろう。楽しく、カッコよく、それでいて表現すべきことはしっかりと伝える。仲野茂筆頭に4人の変わらぬ、いや進化し続けるスピリットは、最後まで大きな歓声と拍手によって称えられた。
 
Photo Photo

Photo Photo

Photo Photo

◆セットリスト
M01. タンツボ政府
M02. バラバラ
M03. コーヤ・モーヤ
M04. 笑いとばせよ
M05. マスメディア
M06. 感動
M07. マッドランナー(新曲)
M08. アオレイノレ
M09. 気分は戦争
M10. ネイキッドキングダム
M11. バクテリア
M12. サティスファイド
M13. NOフリーダム
-encore-
M14. タンゴ
M15. 東電イズバーニング
 
◆SDR 公式ホームページ
http://sdr.rdy.jp/
◆インフォメーション
・2013年08月30日(金)【下北沢】CLUB251
 
Photo

 

★読者プレゼント★
松尾宗仁&ブラックリムジンSDRのサイン色紙(各組1枚ずつ+2組合同1枚)を、抽選で合計3名様にプレゼント!
 
qz99ご応募方法は“BEEASTファンクラブ”の方にお届けする「週刊ビースト瓦版(無料メルマガ)」にて記載いたします。
 
BEEASTファンクラブ”はコチラの『BEEASTファンクラブ』ページより簡単登録(完全無料)可能!
※『ファンクラブ』ページにある登録内容を送信してください。携帯からアクセスされている方はコチラに空メールを送信していただくか、ページ上のQRコードを読み込みの上メールしてください。仮登録の登録画面のメールが届きます。
【重要】携帯電話のドメイン指定受信を設定されている方は、prius-pro.jpのメールを事前に受信できるよう設定してください。

◆関連記事
【レポート】松尾宗仁ソロライブ with ダディ竹千代とおとぼけガールズ
http://www.beeast69.com/report/55865
【PHOTOレポ】「Greatest guitar acoustic session」
http://www.beeast69.com/report/43221
【レポート】松尾宗仁(放蕩息子会会長)生誕五十周年祭
http://www.beeast69.com/report/40753
【レポート】MAVERICK KITCHEN VOL.5(仲野茂)
http://www.beeast69.com/report/69919
【レポート】69 Paradise(EBI)
http://www.beeast69.com/report/58052