演奏

TEXT:鈴木亮介 PHOTO:矢沢隆則

2013年7月にメジャーデビューを果たしたたんこぶちんが、デビューから丸3年を迎えた。17歳から20歳に、ミュージシャンとしても女性としても大きく進化を遂げたたんこぶちんの、ここまでの集大成となるワンマンライブ『デビュー3周年記念ワンマン~たんこぶちん変身ノ巻~』が2016年9月15日(木)に開催された。その舞台に選ばれたのは、自主企画など数々のライブを行ってきたホームグラウンドの一つ、東京・渋谷 TSUTAYA O-WESTだ。
 
平日にも関わらず開場と同時にたくさんのファンがフロアを埋め尽くす。たんこぶちんカラーの赤いタオルやTシャツを身にまとう人も多く、先日リーグ優勝を決めた広島東洋カープのような力強い熱狂が開演前から期待される。
 
たんこぶちん メンバー:
MADOKA(Vocal & Guitar)、YURI(Guitar)、NODOKA(Bass)、HONOKA(Drums)、CHIHARU(Keyboard)

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冒頭、ステージ正面のスクリーンに映像が。たんこぶちんがこの3年間世に送り出してきたミュージックビデオが順々に流れる。2016年から徐々に時を巻き戻す。そして、デビュー曲「ドレミFUN LIFE」が流れると、ステージにメンバーが登場!客席から大きな手拍子が起こる。
 
ロングパンツにヒールを履いたMADOKA。これまでのショートパンツにTシャツという姿から、大人っぽい雰囲気に変身。他のメンバーも皆”10代”からの卒業、脱皮を衣装でも音でも表現している、そんな印象だ。1曲目は1stアルバム収録の「走れメロディー」、2曲目は2ndアルバム収録の「Alright !!」。それぞれ疾走感あふれる選曲だが、ただただ爽やかというだけでなく、コーラスにメリハリがあり、演奏の安定感と相まって”進化”を感じる。
 
「みんなで素晴らしい一日をつくっていきましょう!最後までよろしくお願いします!」そう宣言するMADOKAYURIのツインギターがグイグイ引っ張る。CHIHARUは可憐に鍵盤を撫でる。リズム隊も、笑顔を絶やさないHONOKA、泰然と構えるNODOKAが土台を作る。3曲目「うたひかれ」では四つ打ちのシンバルがシャープで心地よい。

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「こんなにたくさん集まってくれてうれしいです。無事3周年迎えられました、ありがとう!」…集まったファンに早速感謝の気持ちを伝えたMADOKA、「みんなでおんなじ音を鳴らして楽しんでいこう!」と開会宣言。”みんなでおんなじ音を鳴ら”す。たんこぶちんのライブを、他のガールズバンドが「幸福感にあふれている」「お客さんが終始笑顔」と評するのをよく耳にする。同業者の目から見ても印象的な「楽しさ」の理由は、「同じ音を鳴らす」という、楽しさの共同作業があるからだ。
 
4曲目「鳴らせ」はカラフルでロックなイントロ。YURIの力強いギターがインパクト大。5曲目「ze ze ze」ではさらに加速。どちらも3rdアルバム収録曲だ。夏の終わりの、ほんのりとノスタルジックな(でも、秋に比べると明るく快活な)青空と入道雲。そんな光景が音で表現される。10代にバイバイと手を振ったたんこぶちんは、前しか向いていない。
 
ドラムのカウントと、綺麗なピアノ。5人の音が揃う。6曲目「Bye Bye~君といた春~」だ。ここまで、デビューからのリリース順に選曲されたセットリストになっていることに気付く。ヒストリーは最新作・4枚目のアルバムへと進む。MADOKAの右手を挙げる仕草やギターを弾く佇まい、指遣いには、ロックスター然とした貫禄さえ感じる。
 
続く7曲目も4thアルバムから「さよならbaby」。MADOKAはマイクスタンドに手をかけ、直立して歌い上げる。サビではギターをかき鳴らしつつ、主役は歌だ。安定感のある演奏、そして客席との一体感。その中心に、MADOKAの芯の通った歌声が君臨する。「ありがとう。」演奏が終わるとMADOKAは一言つぶやき、首にタオルをかけた。

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いったん休憩。「みんな以上に私たちのほうが楽しんでます」と客席を和ませつつ、MCでは「これまでの印象的なライブ」という話題に。2013年3月、母校を貸し切って行ったライブから、「お客さんが少なく悔しい思いをした」というときの写真も。デビューからは3周年だが、バンドの結成自体は今年で9年、来年で結成10周年を迎えるたんこぶちん。デビューしてからの3年間は全部が濃かったといい、その過程ではうまくいかないこともあったという。「何回もつまずいて転んできました。でもそのたびに私たちもみんなもきっと、起き上がってはいあがって、そこでまた新しい始まりが待ってます。たくさんの始まりを繰り返して強くなって、もっと絆が深まっていくんじゃないかなと私は思ってます」と語るMADOKA。そんなバンドとして大切にしてきた思いを込めた「はじまりのうた」を8曲目に演奏。
 
観客も思いを一つに、手を挙げ、歌い上げる。そういえばこれまでのライブではあまり意識したことがなかったが、5人は音だけでなく体の揺れ方もシンクロすることが多い。続く9曲目「1秒」はCHIHARUのキーボードのグリスなど細かな音飾の遊びが楽しい、ポップな曲。新たなたんこぶちんのチャレンジ、開拓心が垣間見える楽曲だ。
 
さらに10曲目は新曲!夏の終わりに、「本当は夏に海でやれたらいいねー」とメンバー同士話し合っていたという楽曲、その名も「サマーソング」を披露。クールなギターに四つ打ちバスドラ、飛び跳ねずにはいられない楽曲に、観客もタオルを振り回して応える。白熱した空気はそのままで!HONOKAのホイッスルから、11曲目「偶然と運命に。YURIのギターはさらに勢いに乗る。NODOKAも笑顔で低音をうならせる。最後のサビのコーラスでは、MADOKAがお立ち台に乗って煽り、観客に歌わせる。心地よい一体感はどこまでも続く。

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しばしの静寂。チューニングを終え、「まだまだ暴れ足りないよね?」とMADOKAが水を向けると、大きな歓声が上がる。12曲目は『TANCOBUCHIN vol.3』収録の「Let it Die~ミッドナイト ウォーリーゲーム~」だ。音階を上げて、勢いもさらに階段を上るように加速。13曲目「泣いてもいいんだよ」。「そりゃ!」のタイミングでYURIがフロアに気合い注入する。
 
新曲を境に、今度は4枚目、3枚目、2枚目…とリリース順をさかのぼったセットリストになっている。13曲目は2ndシングル「シアワセタランチュラ」だ。この曲がリリースされた当初のライブを観ているが(参照:【特集】The 7th Music Revolution 東日本FINAL)、そのときと比べて印象が全然違う!とか、見違える進化を遂げた!とか、そういう感想は正直に言うと持てなかった。それは、彼女たちがデビュー当初の3年前から既に各々の個性を光らせていたということ、そしてその魅力をブレずに磨き続けているということに尽きるのだと思う。着実に螺旋階段を昇っていることは確かだ。これからどうなっていくのだろう、という天井の見えない楽しさもあるし、長く付き合っていける安心感もある。一過性の消費物で終わらない、長く残る音楽とはそういうものだろう。
 
「ラスト行くぞ!」MADOKAがお立ち台に左足を引っかけて、YURINODOKAがポジションチェンジ。「We Gonna ROCK」でボルテージ最高潮のまま、走り切る!この曲でのMADOKAの演奏スタイルは”全力少女!”という感じだったが、この日は肩で風を切るような、どっしり落ち着いた力強さを感じた。螺旋階段を昇りながら、たんこぶちんは着実に進化を遂げている。

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アンコールの声に答えてメンバー再登場。恒例のグッズ紹介に加えて、来秋公開の映画『二度めの夏、二度と会えない君』のヒロイン役にMADOKAが選ばれたことを発表。さらに、劇中歌を全てたんこぶちんが担当すること、他のメンバーも映画に出演することも発表され、大きな拍手と歓声が巻き起こる。
 
アンコール1曲目は「花火」。たんこぶちんの名を国内にとどまらずヨーロッパにまで広めた、代表曲の一つだ。アウトロのカッコよさは何度聴いてもたまらない。そして最後は初心に帰って”楽しいバンド”たんこぶちんを体現したデビューシングル「ドレミFUN LIFE」。背後のスクリーンには当時のミュージックビデオが流れる。
 
最後、たんこぶちんは「これからも一緒に歩いていきましょう!」とあいさつし、ステージを降りた。”走る”ではなく、”歩く”という言葉を選んだところに、頂点宣言をした彼女たちの決意を感じた。長く愛されるバンドへ。たんこぶちんの歴史はまだ始まったばかりだ。

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◆セットリスト
M01. 走れメロディー
M02. Alright !!
M03. うたひかれ
M04. 鳴らせ
M05. ze ze ze
M06. Bye Bye~君といた春~
M07. さよならbaby
M08. はじまりのうた
M09. 1秒
M10. サマーソング
M11. 偶然と運命
M12. Let it Die~ミッドナイト ウォーリーゲーム~
M13. 泣いてもいいんだよ
M14. シアワセタランチュラ
M15. We Gonna ROCK
-encore-
M16. 花火
M17. ドレミFUN LIFE
 

◆たんこぶちん 公式サイト
http://www.tancobuchin.jp/
 
◆インフォメーション
「佐賀さいこうフェス」
・2016年11月19日(土)【佐賀】佐賀城外壁 西側特設ステージ
 
映画『二度めの夏、二度と会えない君』MADOKAの出演が決定!(ヒロイン森山燐役)
映画公式サイト:
http://nido-natsu.com/
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