演奏

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TEXT:桂伸也 PHOTO:ヨコマキミヨ

 
BEEASTの『ROCK SAMURAI STORY 快進のICHIGEKI』などでも度々その活動を紹介してきた、ハードロックバンド快進のICHIGEKI。彼らは今年いよいよバンド活動10周年を迎えた。日本のロックが産声を上げて半世紀、10年を超える活動歴のあるバンドも多く現れてきている。しかし彼らのように全く同じメンバーでその歴史を全うすることは、実際には簡単なものではない。その意味で彼らの築き上げた10年という歴史は、非常に大きな意義のあるものといえるだろう。
 
その実績を次のステップへつなげるべく、彼らは2013年末(『【ピックアップ!】『~快進のICHIGEKI 10th Anniversary~ 【殿生誕前夜祭SP】』ミニレポート』参照)より、『快進のICHIGEKI 10th Anniversary TOUR』と銘打ち、様々なイベントにて彼らの「討ち入り」(彼らは自身のライブをこう呼ぶ)を戦ってきた。
 
そのツアーファイナル、および10周年の総決算となるイベントが2014年5月1日、渋谷CLUB QUATTROで行われた。収容人数600~700人にもなるこのライブハウスでのステージは、彼らのワンマンステージとしては過去最高規模でのステージであり、まさに彼らの節目にふさわしいステージといえる。快進のICHIGEKIがここで繰り広げた壮絶な「討ち入り」の模様、そしてそこから見える彼らの今後の展望を、今回はレポートしよう。
 
◆メンバーリスト:
コータ(Vocal)、久雄(Guitar)、(Bass)、佑一(Drums)

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開場から程なくいっぱいになった会場の中で、観衆たち、とりわけ快進ソルジャー(快進のICHIGEKIの熱狂的なファン)が、いつものステージと変わらず彼らの登場をワクワクしながら待っていた。そして時間。彼らのオープニングでは定番のGUNS’N ROSESの「Welcome to the Jungle」がBGMとして会場内に流れると、いよいよとばかりにフロアの観衆はステージに意識を向け、大きな歓声を上げた。続いて登場のSEへ。その拍子に合わせて合いの手の声とリズムがフロアのあちこちから上がる。そして、呟くように流れる言葉。「いざ、討ち入り…」
 
最初に登場したのは佑一。フロア前方中央のお立ち台に上がると、両腕を広げ「さあ、もっと大きな声を!」とばかりに観衆をあおった。続いてクールな風貌の、弾けるような覇気を表すように叫び声を上げた久雄と続いて登場すると、観衆の興奮度は最高潮へ。ついにSEはブレイク、ステージの幕を開ける声。「快進のICHIGEKI!」
 
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次の瞬間、不意に会場の照明が落ちた。会場に広がる静寂。まるで出鼻を挫(くじ)かれたような展開にあっけにとられた観衆。が、やがて場内に異様な雰囲気を醸し出すノイズがフェードインしてきた。そのノイズ音にはいつしか、心臓の鼓動のような音が入り混じってきた。その鼓動音に合わせるようにフラッシュバックがステージを包む。いつしかその中には、ステージ中央に現れたコータの姿が映し出された。もうこれ以上ないというくらいの不安感、緊張感をその音が会場を包んだ瞬間に音はブレイクし、けたたましいドラム音とコータの叫びが一気にステージ開幕を告げる合図をフロアに打ち込んだ。「絶体絶命の愛の結晶!」
 
この落差で観衆の気持ちをグッと引き寄せた快進のICHIGEKI。ここまでくればもう畳みかけるだけとばかりに「的なbaby」のリズミカルなグルーブでさらに観衆を引き込んだ。ここから続いたのは「斬り込み戦隊ブシデンジャー」。重々しいビートとシリアスなハーモニーは、ここまでのスピーディーな流れからは意外にも思えたが、その落差にも観衆は彼らのなすがまま。淡々と続くリズムにゆったりと体をゆだね、ステージとの一体感を増した。その様子に不敵な笑みを見せた4人。昨年末より始まった『10th Anniversary TOUR』ではつねに身を削るほどの緊迫した表情でステージに立った彼らだが、序盤の彼らの表情は、一味違う雰囲気を醸し出していた。
 
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「ここまで来て、踊れないなんて言わねえよな!?」彼の言葉は、観衆が自らの気持ちを奮い立たせることに大きな手助けをしていた。そして「本音ストリップ」で、またフロアは蜂の巣をつついたような大暴れ。そしてこの日の礼を告げたコータが、再び観衆を鼓舞するように叫んだ。「今日はとことんならず者のロックを聴かせてやるよ!」「おらぁ!かかってこいや!てめえら!」その言葉に続いて、「人でなしブルース」「とおりゃんせ」へ。間髪入れずにテクニカルな佑一のドラムソロから、新曲「幸福パンデミック」を披露。コータの作詞らしく、猛烈にノれる曲調の中で意味深な言葉がまき散らされた。さらに壮絶な空気感と切なさに満ちあふれた「少年ダイナマイト」へ。
 
思いがはじけるようなナンバーが続いたあとは、一度コータがステージから掃け、久雄、潤、佑一によるインストナンバーを披露。「暁」と名付けられたその曲は、アメリカンハードロックを彷彿とさせる豊かなスケール感と、優しさを感じさせるハーモニーを兼ねそろえたバラードだ。壮絶な「討ち入り」を身上とする彼らの、もう一つの面がそこで披露された。彼らのルーツと、そのルーツをもとに構築された世界観を目いっぱい広げた上で、久雄が情感をたっぷり込めたギターで舞い、歌った。
 
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そしてコータが再びステージに現れ、彼の「この曲に自分を何度も重ね、歌ってきた。そして、最近ようやく心に沁(し)みつくようになってきた」というバラード「四季-喜怒哀楽-」へ。最近のライブでは、特別なステージを除き、サードアルバム『快進のICHIGEKI』以降の楽曲をプレーすることが多かったが、の中でも彼らのステージの中では未だによくプレーされていた入魂の楽曲の一つ。その意味でもこのセット中では重要な一曲といえる。
 
猛烈なハードナンバーが続いたこのステージの中で、このナンバーは大きなアクセントになった。この日彼らが聴かせたそのメロディ、ハーモニーは、単純な上手/下手を超えた、彼らにしか奏でられないハーモニーが存分に披露され、会場中の人々の気持ちをガッチリとつかんだ。久雄、佑一、潤、そしてコータそれぞれが奏でる音の一音までに、まるで彼らの呼吸音が聞こえてくるくらいの研ぎ澄まされた感性が表現された。
 
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このツアーのことを振りかえり、コータが語った。「丸4カ月。10年の中のたった4カ月だぜ。その中でも挫折したり、自信を無くしたりしたこともあったけど、(それを乗り越えて)今日ここに立っていることを有り難く思っているぜ!」この日を迎えるにあたり、彼らはそれぞれのイベントでいつも以上の覚悟を決めて臨んでいた。その成果が現れたことは、クールながいつものステージ以上に満面の笑みでプレーを楽しんでいたことからもうかがえた。
 
しかしその覚悟は、この日だけのものではない。彼らが未来に突き進むための覚悟を示すようにコータが後半戦突入を宣言。「大人子守歌」の開始とともにそのリズムに合わせ、会場を揺らすがごとくフロアの観衆は飛び跳ねはじめた。続けて「ピンポンDAマーチ」「どんでん返スキャンダル」と、再び観衆を高揚させるビートが炸裂。
 
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改めてコータが、観衆への礼を込めながら、この10年の振り返りとともにこれからの決意を語った。「『これをやったら世の中変わるんじゃねえか?』っていろんなことをやってきたけど、俺たちが何をやっても変わらねえ。でも世の中は変わっていく。ムカついたけど、これが現状。今どんな気持ちでやっているかって?やっぱり『ひっくり返したい』。ただ俺、足元を見るのを忘れていたんだ。どうだい?この(フロアの)景色。素晴らしいじゃねえか!?今ここにいるみんなが俺たちの全財産だ。だから俺たちはその全財産を持って、どこまでも行って見せる!だからこれからも応援よろしくな!!」その言葉に、会場から惜しみない拍手が送られた。そして、ラストへの猛攻が始まった。
 
「ナムアーメンダブツ」から「前を向いて歩こう」「キラキララ」と続け、グッと観衆をフロアのステージ側に引き寄せると、いよいよ白熱のステージもクライマックス。この日の締めは、快進のICHIGEKIご用達のキラーナンバーが続いた。新たな快進のICHIGEKIの聖歌といえる「MASAKAレボリューション」で会場の気持ちを一つにすると、彼らにとって「これがなければはじまらない」というほどの重要なナンバー「音座芸夢」へ。
 
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バンドの壮絶なあおりからフロアの「音座芸夢、スタート!」という叫びを引きだすと、会場はさらに熱い熱気に包まれた。ラストナンバーは「SHURABA音頭」。楽しげな雰囲気の曲調の一方で、「SHURABA」という、厳しいまでの現実。それをフロア中の人間が「音頭」で吹き飛ばす。ラスト3曲は、彼ら自身に課せられた宿命、そこに懸命に立ち向かう決意を改めて表していたかのようにも見えた。
 
フロアを縦横無尽に駆け回って観衆を熱くした、仁王立ちで圧倒的なフレーズを叩き出し続けた久雄、最後列でクールな表情を見せながら、快進のICHIGEKIの強じんなバックボーンを支えた佑一、そして圧倒的な存在感を誇ったコータ。4人の思いが、まさにここに集結した。そしてエンディング。この日を迎えるにあたり協力を惜しまなかったスタッフ、彼らを信じついてくるファン、そして10年もの間に彼らを支えた人々への感謝の気持ちを叫んだコータ。続いて会場全員の人々が、声を合わせて叫んだコール。「We are fuckin’ ”快進の”!?」「ICHIGEKI!」十年の集大成となる、まさに「快進のICHIGEKI」が撃ち込まれた瞬間だ。
 
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しかしなお飽き足らない観衆はアンコールをせがんだ。「ICHIGEKI!」「ICHIGEKI!」彼らを呼ぶ声が、フロアのあちこちから上がった。長く続いたアンコールののちに、盛大な拍手と歓声で迎えられた4人。ここに立つことに対しての礼を示した彼らだったが、一向に何かを語ろうという素振りを見せなかった。しかし一瞬の不意をつきコータが叫んだ「舞唄舞魂!」改めて「討ち入り」を感じさせるような、衝撃的なアンコールだ。そんな禁じ手に見事にハメられた観衆は、その猛烈なビートとグルーブに身をゆだねるしかない、といった有様だった。
 
改めてここまで彼らをフォローしてきたファンや関係者たちへの礼と、彼らのこれからに向けた誓いを力強く宣言し、ラストコールをかけたコータ。「ラスト!メガギガテラタリラ!」会場を揺らすがごとく響く爆音とともにラストナンバーへ。そしていよいよ終演。華々しいフィナーレを飾るように、切り込み隊長のがフロアへダイブ。続いて久雄佑一までもが。ラストは、思い切りのいい飛び込みでコータがフロアの「海原」へ。そして再びバンド名を告げる終幕。こうして壮絶な「討ち入り」の時は、終わりを迎えた。
 
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◆ ライブ情報:
2014年06月20日(金) 【東 京】目黒鹿鳴館
2014年07月21日(月) 【千 葉】柏PALOOZA
【Roland機材セミナー&ライブ】
2014年06月18日(水) 【愛 知】今池3STAR
2014年06月19日(木) 【愛 知】豊橋club KNOT

◆ 公式サイト:
http://k-ichigeki.com/

◆セットリスト:
M01. 絶体絶命の愛の結晶
M02. 的なbaby
M03. 斬り込み戦隊ブシデンジャー
M04. 本音ストリップ
M05. 人でなしブルース
M06. とおりゃんせ
M07. Dr.Solo~幸福パンデミック
M08. 少年ダイナマイト
M09. 暁
M10. 四季-喜怒哀楽-
M11. 大人子守歌
M12. ピンポンDAマーチ
M13. どんでん返スキャンダル
M14. ナムアーメンダブツ
M15. 前を向いて歩こう
M16. キラキララ
M17. MASAKAレボリューション
M18. 音座芸夢
M19. SHURABA音頭
 
Encore
E01. 舞唄舞魂
E02. メガギガテラタリラ
 

このワンマンステージには、様々な観衆が訪れた。快進ソルジャー、対バンライブで彼らを知った「快進のICHIGEKIが気になるロックファン」、そして快進のICHIGEKIと旧知のバンド仲間など。彼らにこの日のステージ、そして今後の快進のICHIGEKIについてたずねると、様々な意見が飛び交った。
 
「もっと今注目されているようなバンドを研究して、上のステップに上がってみたらどうだろう?(いいバンドで注目されるべきなのに)もったいない。」「もっと進化してもらいたい。芯はブラす必要はないが、もっと変えられることはあるはず」「攻め続けてほしい」「あくまで自分たちのスタイルを貫いてほしい。」
 
しかし、彼らの腹はすでに決まっているようだ。アンコールでコータはこう語った。「快進のICHIGEKIは、見ての通りのバンドです!チャートに載っているわけでもないし、ドームだアリーナだなんてまだまだ。そりゃそうだ、好き勝手にやっているから。でも、一つのものを突き詰めたいんだ。途中でめげたり、方向を変えたりすることもある。でも心の奥底にある真髄までブレると、中途半端で終わるだろ?いいんだよ、これが俺たちの生きざまだ!」
 
ライブ終了時、ステージ前列でメンバーが横一列に並び、皆両手をつないで万歳をしようとしていたが、それをコータが制しフロアに叫んだ。「やめとこう!これは20周年にとっておこうな!」彼の語り口は一件、冗談交じりに聞こえたが、一方でそれは彼らの次のステップに向かう力強い第一歩であることを感じさせた。彼らはきっとやってくれるだろう、「何かを変える」ようなことを、目を見張るような快進撃を続けて。快進のICHIGEKIの20周年到来とともに、そう願わずにはいられない。
 

快進のICHIGEKI『X』
発売中
MCIC-0006/1,550円(税込)
収録曲:
M01. ナムアーメンダブツ
M02. とおりゃんせ
M03. 人でなしブルース
M04. 平和、愛、手を繋ごう
M05. チクタクコール
(※通信販売及びライブ会場での直販のみ)

 

トピックス

PHOTO:桂伸也

渋谷CLUB QUATTROのランマンライブから10日後の2014年5月11日、LIVE labo YOYOGIにて急きょワンマンライブ『【緊急参戦!!快進のICHIGEKI 代々木単独公演】』が決定、ステージが行われた。渋谷CLUB QUATTROのセットとは異なり、初期のナンバーを中心として、ハードなステージが展開された。その模様を一部、PHOTOレポートにてお送りしよう。

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◆セットリスト:
M01. カリスマの決意
M02. 拘束ルート
M03. チェス
M04. 英雄娘
M05. 永久に美しく
M06. 一流メンズ面
M07. 共存
M08. 未来永劫
M09. 人類デストロイヤー
M10. 道標
M11. ドラマスカイ
M12. 1/1000の奇跡
M13. 法則~rule~
M14. 記憶
M15. バイバイダンサー
M16. 挑戦
Encore
E01. さびしんぼクライ
E02. 音座芸夢
2nd Encore
E03. マドンナ
 

 

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