2012年、BEEASTの特集記事『EffEXPO ~見て、聞いて、弾いて、学べる、エフェクターの祭典~』でもレポートした、エフェクターの祭典EffEXPO(エフェクスポ)が今年も開催された。2012年と比較すると2日間続けての開催、さらに新たな試みとして、大型アンプで思う存分ロックギターサウンドを堪能してもらおうという企画『大型ギター・アンプ爆音試奏』コーナーが設置されるなど、内容もボリュームもパワーアップしての開催となり、主催である『ElectricGuitar』誌の「もっとエフェクターという対象に対して興味を持ってもらいたい」という思いの強さがうかがえるイベントとなった。
前回も本誌BEEASTも取材を行ったが、今回はさらに深くイベントに関わるべく積極的に参戦、BEEAST presentsとしてイチオシのアーティストを集め、ライブステージを行うという企画を敢行した。また、前述の企画『大型ギター・アンプ爆音試奏』にもタッチし、BEEASTの連載でもおなじみのギタリストである福原善勝がレクチャーとデモ演奏を行うという企画を立ち上げ、内容盛りだくさんの参加となった。今回は本誌企画をメインに、エフェクターという切り口から広がる可能性をイベントの様子からレポートしてみたい。また、この企画の一部では、新たな試みとして「生でライブレコーディングを実践」するという画期的な企画が行われた。こちらの模様は本記事に続けて公開される続編、Part 2にて詳しくレポートを行う予定。本記事のレポートと合わせて是非ご覧いただきたい。
BEEASTは今回のEffEXPO開催に際し、フレッシュな若手バンドのあいくれ、クレヨンイーター、浮遊スル猫と、今絶好調の江戸前ハードロックバンド快進のICHIGEKI、そして超絶ギターの極みとして名高いKelly SIMONZという5組のバンド、アーティストを招聘し熱いステージをお送りした。布陣も非常にバラエティに富んだそのステージレポートからお送りしよう。
1.1 Kelly SIMONZ
今年NAMM Show 2013への出演や台湾でのセミナー公演など活発な活動を行い、ロックギタリストとして近年注目を集めているギタリスト、Kelly SIMONZ。BEEASTではコラム執筆、さらに最近ではガールズバンドDRUGSTOREの連載記事で、ギタリスト相馬亜美へのレクチャーに登場するなど、本誌にも非常にゆかりの深いアーティストだ。今回はMarshallアンプをバックにソロでの登場となった。デモ演奏ステージでの短い時間枠の中でも、怒涛のプレイで観衆を圧倒、大いに会場を沸かせてくれた。
彼のサウンドの特徴は、その圧倒するような音圧からは考えられないくらいにクリーンなギターサウンド。本誌の連載記事『愛しのサプリメント~ ビタミン1』でのレクチャーでも分かるとおり、クリーンだからこそ超絶テクニックが映えるサウンドが生まれる。それが実践されるのが彼のステージだ。そしてロックならではの爆音を容赦なく打ち鳴らす。それこそが彼の信条でもある。彼のようなギタープレイに憧れるキッズは、単なるテクニックなどの断片的なところではなく、是非彼のステージでその真髄を体験してみて欲しい。
http://www.kellysimonz.com/
◆セットリスト
M01. 1. Future Destination
M02. Hikari
M03. Anything Goes
M04. EX-40
M05. EX-97
M06. ピアノソナタ悲愴
M07. King Of The Castle
M08. RONDO KSV007
M09. Pray For The Moon
M10 Opus# 1
1.2 快進のICHIGEKI
◆メンバーリスト:
久雄(Guitar)、コータ(Vocal)、潤(Bass)、佑一(Drums)
Effexpo全体を振り返ると、登場したアーティストは殆どがギタリストによるソロプレイだったが、その中でバンド形態による出演で注目を集めたのが快進のICHIGEKIだ。近年は楽器ショーケースイベントでRolandのデモプレイヤーとして登場したり、KTR(楽器店MUSIC LAND KEYのオリジナルブランド)のサポート契約を行ったりと、楽器業界にも非常に注目を集めている彼ら。今回はBEEASTの企画にて参戦、ここでも彼らならではの熱いステージを繰り広げてくれた。
今回のステージで、彼らは冒頭で説明した「生でのライブレコーディングデモ」を実施。もともとリリースする音源にも、積極的にライブ音源に取り組んでいる彼らだけにステージの完成度、演奏力は申し分ない。後程確認された話では、この日フロアに訪れた観衆は快進のICHIGEKI初体験の者も多かった模様だが、そんなハンデも感じさせず、彼らの得意ワザである「3歩前へ」で観衆を強烈にステージに引き込んだ。抜群のステージの出来には、レコーディング結果も非常に期待できるところだ。このようにサウンド、そして音源の製作過程が実感できるという意味で、今回は非常に有意義な企画となった。この詳細については、後日公開される本記事のPart 2にて詳しく記載予定の為、是非合わせてご覧いただきたい。
http://k-ichigeki.com/
◆セットリスト
M01. 君にBANG!
M02. 毎度ありMy LIFE
M03. 大人子守唄
M04. MASAKAレボリューション
M05. 音座芸夢
1.3 あいくれ
◆メンバーリスト:
橋口元美(Vocal)、野坂恒太(Guitar)、高橋史明(Bass)、米谷優馬(Drums)
EffEXPOのステージでトップバッターとしてステージに登場したあいくれ。台風が接近したこの日だったが、そんな不運にもめげず彼らならではのステージを堂々と繰り広げてくれた。ボーカル橋口元美のふわふわとした雰囲気と、ステージに漂う独特の空気感。その空気をかき消し打ち破るような野坂恒太のギターと米谷優馬のドラム、激しいパフォーマンスを繰り出すベーシスト高橋史明。一見不釣合いな組み合わせが絶妙なバランス感覚でかみ合い、独自の世界観をアピールしてくれた。今回のイベントに出演したアーティストのなかでは最年少ということもあり、これからの活躍に大いに期待していきたいバンドだ。
http://aikure1.jimdo.com/
◆セットリスト
M01. 彼と世界
M02. 空費
M03. つま先立ち
M04. 訪れる朝の空蝉
1.4 クレヨンイーター
◆メンバーリスト:
市川マコト(Vocal &Guitar)、アキヤマカズヒロ(Guitar)、富田康文(Bass)、武藤巧磨(Drums)
2日に渡りEffEXPOのステージに登場、イベントを盛り上げてくれたのはクレヨンイーター。ギター2本にベース、ドラムという構成、そのソリッドなサウンドとパフォーマンスは、様々なロック界の巨匠たちに対する熱烈な尊敬の念すら感じられた。ストイックなまでに完成されたサウンドと、フロントマン市川マコト を中心として見せた情熱的な表情は、ロックの醍醐味をダイレクトに伝え、魅力いっぱいのステージを展開してくれた。また、スタンダードなスタイルをしっかりと踏襲したクレヨンイーターのサウンドやパフォーマンスは、「ロックなサウンドを作り上げるには?」「ロックなステージを展開するには?」と悩んでいるロックフリークたちにも、大きなヒントを与えてくれるに違いない。是非一度チェックしてみて欲しい。
http://crayoneater.xxxxxxxx.jp/
◆セットリスト
10/26
M01. 性別があるらしい
M02. サタニックマジョルカ
M03. まだ!
M04. 空飛ぶ象
M05. 頭の中の虫
10/27
M01. 水槽
M02. マチノアグピタ
M03. まだ!
M04. 空飛ぶ象
M05. おめん
1.5 浮遊スル猫
◆メンバーリスト:
さはら(Vocal &Guitar)、やがわいちる(Vocal &Bass)、おみ(Drums)
フレッシュな若手バンドの3バンド目は、浮遊スル猫。ガールズによる3ピースで構成されたバンドだ。小柄で少しキュートな雰囲気もある印象からは想像も出来ないほどハードで情熱的なプレイを展開し、いい意味で観衆の期待を裏切る興味深いステージを展開した。あいくれ、クレヨンイーターと同様に彼女らもまた独自の世界観を表すサウンドを披露。3人という少ない構成でも様々なアイデアで観衆の興味を引くサウンドを持っており、この日のステージでも短い時間ながら「また見たい!」と思わせるだけのアピールをしっかり展開。エフェクターへの造詣も深い彼女らだけに、先ごろリリースが発表された彼女らのアルバム含め、是非一度そのサウンドには触れてみてもらいたい。
http://fuyusuruneko.web.fc2.com/
◆セットリスト
M01. 惰性と憂鬱
M02. 好奇の眼
M03. ダルケ
M04. over
※取材上で可能な限り収録したもので構成しています。
他にもGalneryusのSyuやビジュアル系エアバンドゴールデンボンバーのプロデュースで有名なtatsuo、そして本誌のコラムでもすっかりお馴染み小林信一をはじめたくさんの凄腕ギタープレイヤーが会場に集い、卓越したパフォーマンスの一端と、和やかな中にも興味深いサウンド情報を交えたトークで、フロアの観衆の関心をひきつけていた。
2.1 Syu
2.2 小林信一
2.3 tatsuo
2.4 鈴木健治
2.5 山口和也
2.6 町田昌弘
2.7 堀内陽躍
2.8 菅原潤子
2.9 Jikki
今回のイベントの目玉の一つでもある『大型ギター・アンプ爆音試奏』コーナーは、構内の12号館地下2階にあるホールで行われた。最大で500~600人は入ろうかという大きなホールのステージにズラリと並んだ大型アンプの様は、それだけでも壮観といえる。熱心なギターキッズも興味津々にお目当てのアンプと自慢のテクニックを組み合わせ、じっくりとアンプに耳を傾けていた。
2日間の間に数回スケジューリングされたデモタイムでは、この日試奏の補助として活躍していた福原善勝(本誌連載『アスヘノツバサ』参照)がステージで模範演奏を披露。バックアップとしてわがBEEAST編集部の編集部員である栗林啓も参加。息の合った超絶テクニックで福原善勝の師匠である小林信一の楽曲を見事にプレイした。そんな彼に興味をひかれ、師匠の小林信一もコーナーに訪れた。またこのほかにはデモ演奏でプレイしていた山口和也や、Kelly SIMONZも登場。Kellyは「爆音とはこういうものだ!」とばかりに試奏中のキッズと交流。このようなハプニングこそイベントの醍醐味の一つともいえよう。
「エフェクターの祭典」というマニアックな内容だけに、2012年に引き続きレクチャールームでのセミナーもアカデミックな雰囲気でしっかりと行われた。さらに加えて、今年はレコーディングルームでEARTHSHAKERのギタリストである石原 SHARA 愼一郎による「SHARAが教えるPro Tools使いこなし術」セミナーが行われた。エフェクターというテーマから少し取り上げる領域を広め、さらに現在現場で活躍しているミュージシャンの貴重な意見が聞けるセミナーということで、会場では沢山の聴衆が熱心に彼の講義に耳を傾けていた。
楽器メーカーによるエフェクターブースの出展も活発に行われ、ギターを抱えた観衆は熱心に各エフェクターの試奏に励んでいた。
さらにデモプレイヤーの控え室では、以前セッションを行ったことがあるプレイヤー同士が再会を喜んでいた。また、この会場で初対面となったアーティスト同士はお互いの情報を交換するなど、アーティスト側にも非常に有意義な場となっていたようだ。
このEffexpoを主催した『ElectricGuitar』誌の三谷佳之編集長は、以前こんなことを語ってた。「海外のこうしたイベントは、出演するミュージシャンが気軽に会場内を歩いているようなケースがあたりまえのようにある。このイベントもそんな感じのものにしたい」試奏を重視したブースが多く並んだこのイベントは、その意味ではミュージシャンとおとずれた観衆との距離をグッと縮めたイベントとなった。特に印象的だったのが、『大型ギター・アンプ爆音試奏』コーナー。これを含め、エフェクターというポイントから、楽器、ギターの愛好家たちの興味の対象となるポイントを広げたことも画期的だが「そこにはキッズも凄腕ミュージシャンも垣根を作ることなく集う」というような、単なる楽器の見本市ではなかなか体験できない貴重なイベントとなった。
今回は前述の通り、1日目は台風が接近し、一時は開催も危ういという声もあった今回のイベントだったが、沢山のミュージシャンたちの熱意と多くの試みでイベントは進められ、盛況のうちに終了した。楽器を扱う人でも、エフェクターは使う人が限られており、その多くはギタリストに限られる傾向にある。その点ではいろんなユーザー層に対する興味を拡大しようとする意向が見られたのが今回開催されたイベントの特徴といえよう。エフェクターというまだ人々の認識が少ない世界を、様々なアプローチで広げようとするこのイベントは、楽器を弾かない方でも絶対に何か普通と違う新鮮な体験を得られることだろう。次はどのような試みで新たな出会いを演出してくれるのか?是非その動向を注意深くチェックしてみてほしい。
◆EffEXPO公式サイト
http://www.effexpo.com/
◆DiGiRECO/ElectricGuitar公式サイト
http://www.musicnetwork.co.jp/work/digireco-electricguitar/
◆専門学校ESPミュージカルアカデミー
http://www.esp.ac.jp/
当日に来場者に配られたEffEXPO特製エコバッグを3名様にプレゼント!
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EffEXPO ~見て、聞いて、弾いて、学べる、エフェクターの祭典~
http://www.beeast69.com/feature/40881