特集

TEXT:鈴木亮介 PHOTO:ヨコマキミヨ、三橋コータ

Photo四半世紀を経てようやく、人間椅子の時代が来た。いや時代が彼らに追いついてきた?いずれにせよ2013年の邦ロックの教科書に人間椅子が掲載されるのは誰の目にも明らかだ。
 
8月に21枚目(オリジナルとしては17枚目)となるアルバム『萬燈籠』をリリース後、様々なメディアに露出しファンの期待値を高めに高めたところで、いざ全国ツアー「レコ発ツアー ~萬燈籠~」へ。9月12日の札幌ベッシーホールを皮切りに青森、仙台、博多、熊本、大阪、神戸、名古屋、東京の全国9都市・10公演を敢行。仙台公演、大阪公演と東京公演(2日共)はチケットが完売。その他会場も連日大入りとなった。その道中には和嶋慎治鈴木研一の地元・青森県で開催された「AOMORI ROCK FESTIVAL ’13~夏の魔物~」にも出演し、地元ファンを沸かせた。
 
本誌BEEASTでは、列島を席巻した人間椅子の地獄旋風の締めくくりとなる、9月29日(日)「おどろの日」、9月30日(月)「どろろの日」の2daysの模様を写真たっぷり、テキストたっぷりの「大盛りレポ!」でお届けしたい。かつてOzzy Osbourneは「オレの音楽を聴くと地獄に堕ちると言ったヤツがいるが、それなら地獄は満員だぜ!」と言ったそうだが、この「おどろ」と「どろろ」の両日間、満杯の渋谷O-WESTは地上の楽園ならぬ地上の地獄。ここ日本で発生した、圧巻の満員地獄絵図をとくとご覧いただこう。
 
人間椅子 メンバー:
和嶋慎治(Guitar & Vocal)、鈴木研一(Bass & Vocal)、ナカジマノブ(Drums & Vocal)
 
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Day 1(2013.9.29) ~おどろの日~ (PHOTO:ヨコマキミヨ)

 
2階席まで人が溢れかえる渋谷O-WEST。午後6時ちょうど、あの鈴の音が鳴る。始まりの合図に、歓喜し拳を挙げる客席。2年前のO-WEST(参照:冬来たりなば春遠からじ ~人間椅子ワンマンツアー 2011年師走~)と比べても明らかに歓声のボリュームが増し増しになっている。とりわけ、20代…中には10代?の男性ファンの割合が増えているように感じられる。そんな大歓声の中登場した3人。神妙な面持ちでスタンバイする鈴木研一、弦を触りながら入念に演奏の最終確認をする和嶋慎治、腕を回しストレッチするナカジマノブと、三者三様。そして、SE「此岸御詠歌」が終わると、まるで一曲演奏し終わったかのような大歓声が起こる!既にボルテージは最高潮だ!
 
待ちに待った1曲目は和嶋慎治がメインボーカルをとる「黒百合日記」。鈴木研一は濁流がうねるようなベースラインで客席を挑発。既に高すぎるくらいに高まったボルテージをさらに上昇させる。続く2曲目は鈴木研一がメインボーカルをとる「地獄変」。ナカジマノブも挨拶代わりにとツーバスを激しくお見舞いする。それに呼応し、歪む和嶋慎治のギター。さらに、あの”地獄のせせら笑い”を完全再現する鈴木研一にも大きな歓声が。ここまで新譜『萬燈籠』の収録順に進む。

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「こんばんは、人間椅子です!おどろの日にふさわしく、どーーんよりした曲から始まってしまいましたね」…開口一番、いつもの調子で話し始める鈴木研一。「こーんなにノリの悪いバーンドのために、こーんなにもたくさんの人が集まってくださって…ありがとうございます!」と続ける。すかさず客席から「ノブ~!」コールが入り、それに陽気に応えるナカジマノブ。そして和嶋慎治も「おかげさまで全国大入りでございまして…今日のおどろの日、チケット発売した初日に即日完売しましてね!バンド生活25年、こんなことは初めてです!ここまで来るのに25年かかりました!」と感謝感激。三者三様に、この日のステージを特別な気持ちで迎えているようだ。
 
続けて、そのブレイクのきっかけとなった、今年5月のOZZFEST JAPAN 2013出演を改めて振り返る。「勉強になりました。一番思ったことは、外人にはかなわない!」和嶋慎治はそう語りつつ、「海外のバンドに影響を受けたハードロックに日本語を載せて、日本的な感じでやっていきたいと、改めて思ったわけであります」と自らの信条や今後の人間椅子の針路が改めて明確になったことを宣言。喝采を浴びる。
 
そんな宣言にさらなる説得力を持たせるのが、続く3曲目「桜爛漫」。これぞ和ロックという、桜吹雪舞い散る様を思わせるギターリフ。ここでは鈴木研一ナカジマノブの重低音はギターの引き立てに徹する。まさに大樹の根幹を為すヘヴィなサウンドだ。さらに同じ「桜」つながりで、坂口安吾の同名小説をモチーフにした、「桜の森の満開の下」を続ける。1stアルバム『人間失格』に収録された、おどろおどろしさを徹底追究した曲だ。さらに5曲目「ねぷたのもんどりこ」から6曲目「幽霊列車」(8thアルバム『二十世紀葬送曲』収録)へと、新旧織り交ぜたラインナップを連続させ、25年の歳月を想起させる展開に。

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「B級ロック、今一つ突き抜けないバンドが好きで…」と語り始める鈴木研一。B級ロックっぽいものを作ろうと最初からハードルを下げている、と自虐的に語る鈴木研一に、「まぁね、25年もやってきたら色んな曲ができますよ!」と重ねる和嶋慎治。それに対して鈴木研一、「25年…折り返し地点。42.195キロだったら…21キロくらい…走りましたよ。また21キロ頑張りますよ!」と宣言し、客席をいっそう沸き立たせる。
 
7曲目「月のモナリザ」では和嶋慎治が魂込めたギターソロを披露!「なかなかいい曲だったね」と鈴木研一もここにいる全ての人間を代表して絶賛する。アドリブをたくさんできるのがロックの醍醐味、と和嶋慎治もご満悦の様子。さらに8曲目「暗い日曜日」の哀愁漂う旋律から、9曲目「死神の饗宴」、10曲目「相剋の家」と極上の音楽を続ける。ナカジマノブの太く力強い土台に、どろどろと流れるメロディ。「獄中の友 中傷の秋 月経の春 相剋の家」…刹那、全ての音がスパッと立ち消え、「あぁ 淡い光~」とこの転調には思わず鳥肌が立つ!
 
いよいよ終盤。ここで、「渋谷の皆さん!」快活なアニキの声が響く。ナカジマノブのMCだ。たくさんの前でやれて幸せ、と語るナカジマノブ。「俺ら幸せだぜ!今日がめちゃめちゃ楽しいぜ!」「俺が歌う所がやってきました!歌っちゃってもいいですか?ダムが好きな俺が歌ってもいいですか?」元気いっぱいのナカジマノブに、客席のあちこちからアニキコールが起こる。「覚悟は出来てるか?」威勢のいいコール&レスポンスに続いて歌うのはもちろんこの曲、今作『萬燈籠』で唯一メンバー3人で作曲し、ナカジマノブがメインボーカルをとる「蜘蛛の糸」だ!もがき苦しむような絶叫から、センチメンタルな歌唱まで、彩り豊かに歌い上げる。和嶋慎治のギターソロも眩しい。
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ナカジマノブを称える「アニキ~!」も止まない中、終盤は「新調きゅらきゅきゅ節」から「恐怖!!ふじつぼ人間」、「人面瘡」、そして「針の山」へと怒涛のラストスパート。「新調きゅらきゅきゅ節」では鈴木研一のベースがハーメルンの笛吹きのごとく客席を操り、「きゅっきゅきゅ~きゅっきゅきゅ~」の大合唱を巻き起こす!ナカジマノブもハイハットを高鳴らせ、和嶋慎治もすかさず背面弾きを披露!
 
「恐怖!!ふじつぼ人間」では鈴木研一が不気味な高笑いとともに猛烈なベースラインを披露し、妖艶に踊り狂う。「人面瘡」では孤高のギター職人・和嶋慎治の深淵奥の奥、底の底まで引きずり込むアルペジオが会場を一つにする。ライブシーンにおいては爆音の盛り上がりを「一体感」と評することがあるが、これほど静かに、6弦の響きだけで全観客・全空気を掌握できるロック・ギタリストは、和嶋慎治のほかにいるだろうか。
 
さぁ全エネルギーを出し尽くせ!最後は「針の山」!疾走感あふれるラインに合わせて頭を振りまくる!渋谷O-WEST地獄は沸点超過、隅々が煮えたぎったままにフィナーレを迎える。

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熱烈なアンコールの声に応えて、メンバー再登場。和嶋慎治ナカジマノブはツアーTシャツ、そして鈴木研一はおなじみの白装束だ。またしても巻き起こる「アニキ~」コール。ナカジマノブ、大人気だ。
 
「あんまりやってない曲をやってもよろしいでしょうか?僕らも愛を歌いたい時があるんです!」ということで、アンコール1曲目は11thアルバム『修羅囃子』収録の「愛の言葉を数えよう」。フィードバックの効いたファズギターのアドリブに続いて、Jimi Hendrixの「Fire」を彷彿とさせる歌い出し。ギターとドラムの明快なビートに合わせて客席から手拍子が起こる。続いて5thアルバム『踊る一寸法師』収録の「ダイナマイト」は鈴木研一がメインボーカルをとり、ブンブンベースをうならせる。その爆音ロックサウンドはタイトル通り、ダイナマイト・ボム!
 
疲れをまるで知らない、どころかまだまだ欲しがる、沸騰しっぱなしの客席からの声に応えてダブルアンコール!和嶋慎治の口から、11月30日(土)にZepp TokyoにてLOUDNESS人間椅子の対バンライブが決定したという嬉しい知らせが伝えられる。これは樋口宗孝追悼ライブとして開催されるのもので、和嶋慎治いわく「正確にはラウドネスさんの前座です」とのことだが、Zeppという大きなステージでハードロックの頂点を決するような組み合わせは、今から心拍数が上がってしまう。
 
さらに、続く。「今回のおどろの日、どろろの日がこうやって2日間ともソールドアウトとなりまして、じゃあ追加公演をやりましょうということになりまして…年内はなかなかアレだったので、来年、追加公演的なものをやります。1月18日に、向かいのイーストで…」と語ると、客席は一瞬どよめき、直後にそのどよめきは大歓声へと変化する!「イーストでやるのに25年かかりました!もう向かい側に行きます!」と和嶋慎治も興奮気味に語る。往年のファンには涙せずにはいられない瞬間だろう。
 
「それではまた会う日まで、どっとはらい!」…最後は「どっとはらい」。壮大なスケールを感じさせる重低音。どろどろと大きなうねりを感じるこの曲で、初日の幕は下りた。
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◆セットリスト
M01. 黒百合日記
M02. 地獄変
M03. 桜爛漫
M04. 桜の森の満開の下
M05. ねぷたのもんどりこ
M06. 幽霊列車
M07. 月のモナリザ
M08. 暗い日曜日
M09. 死神の饗宴
M10. 相剋の家
M11. 蜘蛛の糸
M12. 新調きゅらきゅきゅ節
M13. 恐怖!!ふじつぼ人間
M14. 人面瘡
M15. 針の山
-encore-
E01. 愛の言葉を数えよう
E02. ダイナマイト
E03. どっとはらい
 
 
◆人間椅子 公式サイト
http://ningen-isu.com/
 
◆人間椅子 公式ブログ
http://ningenisu.exblog.jp/
◆リリース情報
人間椅子 21thアルバム 『萬燈籠』
2013年8月7日~発売中

 
◆インフォメーション
樋口宗孝追悼ライブ vol.5 EVERLASTING MUNETAKA HIGUCHI 2013 6th MEMORIAL
・2013年11月30日(土)【東 京】Zepp Tokyo
出演:LOUDNESS / 人間椅子 and more
 
人間椅子ワンマンツアー
「バンド生活二十五年 ~猟奇の果~」

・2014年01月15日(水)【大 阪】ROCKTOWN
・2014年01月16日(木)【名古屋】Electric Lady Land
・2014年01月18日(土)【東 京】渋谷O-EAST
 
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Day 2(2013.9.30) ~どろろの日~ (PHOTO:三橋コータ)

 
さぁ人間椅子レコ発ツアー ~萬燈籠~東京公演も2日目、そしてツアー全日程の最終日。この日の渋谷は曇り・最高気温は25度ほど。残暑の厳しさからようやく解放されたかな、という具合だ。開演前の客席を見渡すと、前日の「おどろの日」に比べて若い男性ファンの割合がやや増えた印象。そして、OZZFESTのTシャツを着て参戦というファンの姿も見られる。一体どのようなステージが展開されるのか…午後7時、あの鈴の音が鳴り響く。
 
連日超満員の観客から大きな拍手と歓声が上がる中、メンバー3人が登場。ギターを少々鳴らし、最終確認する和嶋慎治。泰然と構える鈴木研一。少々のストレッチをし、始まりの時を待ち構えるナカジマノブ。そして、SEが終わる。和嶋慎治のギターがさめざめ泣く。この侘びしげな導入は…前日は終盤・12曲目に「きゅっきゅきゅ~」の大合唱を巻き起こした、「新調きゅらきゅきゅ節」から、本日はスタート!
 
間髪入れず2曲目はギャンギャンかき鳴らすギターがたまらない「人生万歳」。鈴木研一のボーカルも、大間のマグロ漁に出る漁師のように威勢がよく、ここO-WEST地獄の大海原に波を起こす。ビシビシ刺さるナカジマノブのドラム。和嶋慎治のスコールのように降り注ぐ早弾き。そして鈴木研一が指揮を取って「万歳」斉唱!冒頭わずか2曲で一気に『萬燈籠』の持つ強烈なエネルギーを体現し、客席のボルテージを急騰させる。

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「きょうは月曜という曜日にもかかわらず、こんなにもたくさん集まっていただいて…おまけに『バンザーイ!』も『きゅっきゅきゅ~』もやっていただいて、ありがとうございます!」鈴木研一のMCに、再び沸き立つ客席からバンザイコールが起こる。和嶋慎治からも、21枚目のニューアルバム『萬燈籠』のリリース、そして全国ツアーでチケット完売が相次いだことに触れ、「バンド生活25年、こんなことは初めてでございます!」と謝意を伝える。
 
人間椅子は文学作品を題材にした曲を頻繁に作っている」という前置きから、3曲目はH・P・ラブクラフトの「時間からの影」。ラブクラフトについて「一行たりともロマンスが出てきませんし、ハッピーエンドでもなく、盛り上がるでも盛り上がらないでもなく、ただくどい文章がダラダラと…大体皆さん途中で投げ出す本なんですけど…」と評する和嶋慎治。「3曲目ですけど…乗れませんよ!全然乗れない曲ですよ!」と言いつつも大きな宇宙の流れを感じさせるサウンドは、暗い明るいの二元論で語れる暗さではなく、まさに宇宙空間の深い漆黒。さらに4曲目は、3rdアルバム『黄金の夜明け』から、同じくラブクラフトをモチーフにした「狂気山脈」を続け、ダークな異空間へといざなう。
 
歌唱後のアウトロは、4分以上に及ぶ渾身のギターソロ!
「修行のような…」(鈴木
「ラブクラフトのように、しつこいぐらいにやってみようかなと思ってですね…」(和嶋
「どこまで続くのかと思った(笑)」(鈴木
「お客さん、お疲れさまです!」(和嶋
拍手喝采。鈴木研一も「今まで和嶋くんのことを『津軽のジミヘン』とか『日本のJimmy Page』とかさんざん言ってきたけど…日本で一番ソロの長いギタリストだね」と太鼓判(?)を押す。

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さらに、リハーサル中に猫がダクトに紛れ込む”偶然の産物”により出来たという曲「猫じゃ猫じゃ」から「品川心中」へとつなぐ。ライブでは初めて聴く新曲「猫じゃ猫じゃ」から、定番曲にして和嶋慎治の落語を盛り込むなど独立色の強い「品川心中」が、何の違和感もなくつながる。それは、幅広く枝葉を広げてぐんぐん伸びながらも、あちこちに寄生するキノコの胞子ではなく、自分のホームグラウンドを一点に据えて、強靭な礎を築いている大木として四半世紀歩んできた人間椅子だからこそなせる業なのだ。
 
MCで和嶋慎治が落語の出来を省みていると、客席からナカジマノブへ「アニキ~」「ダムさ~ん!」コールが飛び交う。「ダムさんがいたりお坊さんがいたり噺家さんがいたり…芸人である前にミュージシャンなんですけれどもね」と前置きしつつ、こんなにたくさん取材を受けたのはイカ天時代以来だという話に。中にはねずみ男はまだやっているのかという質問もあったそうで、「来年25周年?」「どうですか?来年あたり復活というのは…ねずみさんが」「まぁ1回ぐらいね」と宣言!来年ということは、早ければ1月のO-EAST追加公演で鈴木研一のねずみ男衣装が復活するかもしれない。
 
さてMCは引き続き取材時のエピソードに。「『十三世紀の花嫁』は、なぜ13世紀なんですか?」という質問を受けたということだが、これは「寺山修司の映画に出ている役者が新曲を出しましたと言って登場し、ハードロックに乗せて『13世紀の結婚式のある日、花嫁がどうこう…』と詩の朗読を始めた」という和嶋慎治の夢の中に出てきたものが全てモチーフになっているのだという。1番のサビに行く前に目が覚めてしまい、続きを聴きたいと思って自分で作ったのがこの「十三世紀の花嫁」だという。
 
「優しさは物を持っていない状態でも、何もない状態でも人に与えられるものだ」という、「清貧」を唱えたフランシスコ修道会の思想にもつながっているというこの曲。オークションで買ったというサイレン音も生で轟かせ、真っ赤な照明とともに江戸時代(品川心中)から鎌倉時代(13世紀)へとタイムスリップ。ありったけのエネルギーを注ぎ込む、音と言葉が、客席を完全に飲み込む。
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続く「膿物語」では鈴木研一がメインボーカル。軽快な、しかし人間椅子らしい一ひねりを加えた、14thアルバム『真夏の夜の夢』収録のナンバーだ。ベース鈴木研一とギター和嶋慎治が寄り添い、どろどろ弾き合う!「こんなにノってくれてありがとう!すごく気持ち良かった。(客席が)海の波みたいだった…」と鈴木研一もご満悦。タイトルにちなんで饒舌なパチンコトークが展開され、和嶋慎治も「なかなかこれ、社会派な歌じゃないですか!松本清張みたいですね!」と絶賛。
 
江戸から鎌倉、そして海へ出た人間椅子号、いよいよ宇宙へ飛び立つ。スペーシーな、渦巻く銀河を連想させるイントロがこだまする「衛星になった男」。三億光年の彼方に叫ぶような和嶋慎治の歌声も哀愁が漂う。
 
ザクザクとしたギターリフから始まるのは、12thアルバム『三悪道中膝栗毛』収録の「洗礼」だ。「裁きの時が 近付いた」「終わりの時が やって来た」「助けてほしいか」と、まるで斧を持って忍びよる死神のような鈴木研一の歌唱法が印象的な、人間椅子の真骨頂とも言うべき一曲。
 
そして6thアルバム『無限の住人』から「黒猫」。こちらもまた和嶋慎治のギタープレイが随所で堪能できる、ザ・人間椅子と言える一曲だ。ギターソロを弾く都度、歓声が上がる。
 
こうして前菜、メインディッシュ、と来たら仕上げはデザート!「きょうもオレの歌う時間がやってきました!」「オレの最近の大ヒット曲、一番新しいアルバムに入ってる曲、あれをお前らにお見舞いするぜ!」「アニキって呼んでくれ~!」力いっぱい明るい、ナカジマノブが「蜘蛛の糸」を熱唱し、完成!もう完全に人間椅子という名の蟻地獄から抜け出せない!

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さあここから怒涛のラストスパート!軽妙洒脱でダンサブルなロックンロールナンバー「青森ロック大臣」(4thアルバム『羅生門』収録)、ナカジマノブの力強いばちさばきが爽快な「天国に結ぶ恋」(1stアルバム『人間失格』収録)と、往年のナンバーを立て続けに披露。そして本編ラストは前日に引き続き、やはりこの曲。「針の山」!イントロのギターフレーズが鳴り響いた瞬間に沸き起こる大歓声!それに応えて鈴木研一も前日同様、いやそれ以上におどろおどろしく歌い上げる。そして和嶋慎治も右手を挙げて客席を煽り、また超高速ギターリフで煽り、ピョンピョンと身軽に飛び跳ね、客席を煽りまくる!瞬く間に駆け抜け、いったんステージの幕を下ろす。
 
決して予定調和ではない、「ありがとう!でもまだ観たい!」という思いの込められた、熱い熱いアンコール。その声に応えて、再登場したメンバー。約1ヶ月におよぶ全国ツアーの最終日ゆえの嬉しさからだろうか、3人のMCは楽屋話をそのまま持ってきたかのような、親しみのあるものに。「このツアーTシャツ、さっき楽屋で僕のTシャツがない!と思ったらノブくんが着てまして」「すみません!なんだかピチピチになったな、と」「そうしたらすっごいノブくんの汗がびっしょりで…ノブくんの香りを嗅ぎながら…ちょっと(Tシャツが伸びて)大きくなったかな」「鈴木君はXLLぐらいじゃないと」「XLはちょっと小さいんだよね」
 
…と、完全に客席サイドは油断しきっていたら、おもむろに鈴木研一が弦を鳴らしはじめ…そこに和嶋慎治ナカジマノブもスッと合わせ、なんとBlack Sabbathの「Paranoid」をイントロからAメロまで即興で披露!嬉しいサプライズに沸き立つ客席を制するように、代表曲の一つ「りんごの泪」を演奏。さらに3rdアルバム『黄金の夜明け』収録の初期ナンバー「幸福のねじ」を熱く披露!
 
さらに、ダブルアンコール。再々登場したメンバー、鈴木研一は前がはだけておなかとふんどしが丸見えの状態に!貴重なセクシー(?)ショットも披露されたところで、前日に続き今宵も人間椅子今後のライブスケジュールが和嶋慎治の口から語られる。とりわけ、来年1月の東名阪、締めくくりの東京公演が向かいのO-EASTで行われることを発表すると、客席からは「おめでとう!」コールが次々と起こる。「またこのWESTに戻ってくるか、それともEASTでこのまま行くか、さらに大きい所に行くかは皆様次第ですので、よろしくお願いします!」と和嶋慎治。そして、鈴木研一も謝辞を述べる。「感謝の気持ちを込めまして、皆様お一人お一人のご健康をお祈りいたしまして…」
 
最後の最後、ツアー全行程を締めくくるナンバーは、9thアルバム『怪人二十面相』収録の「地獄風景」!三・三・七拍子でで会場を一つにし、鈴木研一の小気味よいボーカルに合わせて頭を振り、大団円!「また会いましょう!」ナカジマノブが絶叫し、萬燈籠ツアーを締めくくった。
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もしかしたらここO-WESTで人間椅子を観ることはもうないかもしれない。四半世紀、一貫して自分達の世界観を作り上げてきた生けるレジェンドによるこの急上昇は、若いバンドがスターダムにのし上がる過程とは全く異質な楽しみがある。地獄のロックバンド・人間椅子の織り成す世界。来年のO-EASTでは一体どのような風景が見られるのか、今から待ち遠しい。
◆セットリスト
M01. 新調きゅらきゅきゅ節
M02. 人生万歳
M03. 時間からの影
M04. 狂気山脈
M05. 猫じゃ猫じゃ
M06. 品川心中
M07. 十三世紀の花嫁
M08. 膿物語
M09. 衛星になった男
M10. 洗礼
M11. 黒猫
M12. 蜘蛛の糸
M13. 青森ロック大臣
M14. 天国に結ぶ恋
M15. 針の山
-encore-
E01. りんごの泪
E02. 幸福のねじ
E03. 地獄風景
 
 
◆人間椅子 公式サイト
http://ningen-isu.com/
 
◆人間椅子 公式ブログ
http://ningenisu.exblog.jp/
◆リリース情報
人間椅子 21thアルバム 『萬燈籠』
2013年8月7日~発売中

 
◆インフォメーション
樋口宗孝追悼ライブ vol.5 EVERLASTING MUNETAKA HIGUCHI 2013 6th MEMORIAL
・2013年11月30日(土)【東 京】Zepp Tokyo
出演:LOUDNESS / 人間椅子 and more
 
人間椅子ワンマンツアー
「バンド生活二十五年 ~猟奇の果~」

・2014年01月15日(水)【大 阪】ROCKTOWN
・2014年01月16日(木)【名古屋】Electric Lady Land
・2014年01月18日(土)【東 京】渋谷O-EAST

 

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