特集

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TEXT:鈴木亮介

東北最大級のロックフェスとして2001年より開催されているARABAKI ROCK FEST.(荒吐ロックフェスティバル)が今年も4月27日と28日の2日間に宮城県柴田郡川崎町のエコキャンプみちのくにて開催された。本誌BEEASTでは今年も2日間のライブの模様をたくさんの写真とともに振り返りたい。
 
「アラバキってなんぞや?」「どんなステージがあるの?」という方はまず、昨年の特集記事をご高覧頂ければと思う。
 

◆「野外フェス初心者への指南書」という構成にレポートも加えた2012年の1日目
http://www.beeast69.com/feature/26539
◆各ステージの特長に焦点を当てつつ魅力的なライブをレポートした2012年の2日目
http://www.beeast69.com/feature/26962

 
今年は完全にBEEAST鈴木副編集長の独断と偏見でピックアップしたミュージシャンを中心に2日間のレポを以下お届けしたい。アラバキの特長の一つは、魅力的なステージが数多くあること!いずれも東北に由来し命名された6つのステージに加え、みちのくプロレスのための特設ステージや、アラバキラヂオの公開録音ブース。そして何より美しい蔵王連峰と釜房湖を背景にした豊かな水と緑は、他のフェスではなかなか味わえないスケールだ!
 

 

【1日目】 2013年4月27日(土)

朝から雨模様の仙台、この日の最高気温は14.7度であった。ARABAKI ROCK FEST.の会場である宮城県川崎町は仙台から西に車で1時間。蔵王山麓のキャンプ地ということもあり、市内よりもいっそう寒暖差の大きい土地だ。寒さと戦いながら、開場時刻を待つ。
 
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どうも美味そうな音の匂いがする…そんな”音の嗅覚”をはたらかせて朝イチで向かったのは、HATAHATA STAGE。「こっち来いよ!ヘビメタ聴いても恥ずかしくないから!一番恥ずかしいかっこしてるのオレだから!」日頃は森閑とするキャンプ地で繰り広げられる大熱狂の数々、そのトップバッターに立ったのは、なんとTHE冠だ。「恥ずかしくないから!」という冠徹弥(Vocal)の呼び声に誘われて、徐々にステージ前が埋まってくると、ド迫力のメタルサウンドで朝っぱらからTHE冠に本気をぶちかまされた。体力温存してる場合じゃないぜ!と思ったか、午前11時半にしてそこには既にサークルピットが出現。
 
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しとしとと小雨の降る中、続いてはMICHINOKUステージ、結成25周年を迎えるeastern youthが立つ。吉野寿(Vocal & Guitar)のボイスが、二宮友和(Bass)と田森篤哉(Drums)の奏でる低音に乗って、この小雨すらも演出であるかのような心地良いステージを作った。ブルージーなギターサウンドも心に沁み入る中、5曲目は「青すぎる空」!小雨模様でも何のことはない、透明感あふれるエモーショナルサウンドが心のワイパーとなった。吉野寿が叫ぶ。「たぶんこれから晴れていくと思うよ。楽しくやろうぜ!」
 
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午後1時を過ぎて、雨足の弱まり始めたHATAHATA STAGEに、まだサウンドチェックと油断していたら3人の見慣れた男たちが姿を現した。鈴木研一(Vocal & Bass)、和嶋慎治(Vocal & Guitar)、そしてナカジマノブ(Drums & Vocal)、人間椅子ご本人だ!意外にもアラバキ初登場だが、本番前から早くも歓迎ムード。そして藤原美幸がサイドステージで軽やかな三味線をバックに秋田民謡を披露すると、不思議と空には晴れ間が!
 
満を持して、人間椅子登場。冒頭からハイテンポな「針の山」でそこにいる誰もの体内流るる血を沸騰させると、「賽の河原」で鈴木研一がそのベースと歌声でどろっと客席を支配する。ダムにハマっているというナカジマノブが「会いたかったぜ!」とハイテンションで絶叫すると、「ハタハタステージですけれども、僕らの出ているときだけはナマハゲステージにしたいです!」と青森・弘前出身の和嶋慎治も宣言。「深淵」でググッとディープな世界にいざない、「冥土喫茶」の変拍子で撹拌させ、最後は和嶋慎治が雪駄を脱いで「仙台に来るまたその日まで…『どっとはらい』!」あっという間にステージを駆け抜けていった。
 
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雨が降ったり止んだりを繰り返し、強風も吹き荒れる中、MICHINOKU STAGEにはKen Yokoyamaが登場。「盛岡に行った時にグッとくるものがあって」と愛のある寄せ書きに溢れた日の丸を掲げると、オーディエンスのみなぎるパワーに応えて全力疾走。「その土地にこだわって生きてる人間は美しいと思う」と前置きし披露した「This Is Your Land」、「ニッポン、トウホク、愛してるぜ」と1stソロアルバムの「Believer」と、説得力のある言葉と音で、満杯のMICHINOKU STAGEに届けた。「まだまだ叫べる範囲で震災についてメッセージを発したい、思ったとおりにやっていきたい」…彼の言葉には明日への希望がぎっしり詰まっていた。
 
このほか1日目の前半はcinema staffoono yuuki(band set)KEMURISiMThe Weather Station(from CANADA)などが出演した。時折晴れ間も見えるが、相変わらず肌寒い。暖を取るかのように、人々はステージに寄り集まり、熱狂した。
 
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時刻は午後5時。キャンプベースに近いBAN-ETSU STAGE、相変わらず風が強く吹く中、黒ずくめの男たちが登場。The Birthdayだ。「風当たりが強いライブですけど、追い風に変えたいと思います」という宣言通り、「カレンダーガール」「ROKA」「2秒」などイントロが鳴った瞬間に大歓声が起きる、もはや”追い風参考記録”な大快走。この日が土曜ということもあってか、現体制になって初リリース、5thアルバム『I’M JUST A DOG』収録の「SATURDAY NIGHT KILLER KISS」には感慨深けな表情を浮かべるファンも多かったようだ。
 
一方、MICHINOKU STAGEにはくるりの姿が。ファンファン(Trumpet, Keyboard & Vocal)の加入で一段と楽曲・パフォーマンスの幅が広がったくるり。野外ステージに響き渡るトランペットが最高に心地良い「ワンダーフォーゲル」、序盤のダンサブル・ナンバーに続いて「静かな曲やるから」と岸田繁(Vocal & Guitar)の宣言に続く「ばらの花」、そして最後は涙腺緩むこと必至のエモーショナル・ナンバー「ロックンロール」。あったか~いココアのようなギターサウンドとボーカルが、会場を優しく包み込んだ。
 
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すっかり日が沈み、キャンプ地独特の空気が流れる。午後6時45分、TSUGARU STAGEには本日のトリ、サニーデイ・サービスが登場した。高野勲(Piano)、新井仁(Guitar)の2名をサポートに加えた5人体制で、4thアルバム『サニーデイ・サービス』の1曲目「baby blue」から演奏スタート。「恋におちたら」「花咲くころ」「NOW」など曽我部恵一(Vocal & Guitar)の力強く瑞々しい歌声が光るサニーデイ・サービスの代表曲を連発。そしてアンコールでは「青春狂走曲」を披露。分厚い毛布のような温かみあふれるメロディを奏で、一日たっぷりと歩きまわり音楽を堪能したオーディエンスをねぎらった。
 
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このほか、初日はドレスコーズRIZE子供ばんどJUN SKY WALKER(S)らが出演。そして終盤、HATAHATA STAGEでは「GTR祭2013」、MICHINOKU STAGEでは「フラワーカンパニーズトリビュートセッションF.C.w.F」と題したセッションが行われた。さらにHANAGASA STAGEでは「MAZRI produce 映像と音の祭」と題して「風とロック荒吐 LIVE福島 CARAVAN日本」や「オワリカラ feat. あがた森魚 / 原マスミ+蜜×掛川康典」などが開催され、この日限定のスペシャルなセッションを堪能することができた。
 
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【2日目】 2013年4月28日(日)

ARABAKI ROCK FEST.13の2日目、仙台の天候は晴れ、最高気温は16.8度。会場の「エコキャンプみちのく」は朝の時点でどんよりとした曇り空であったが、すぐに晴れ模様に。前日とは打って変わってフェス日和となった。
 
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朝イチで向かったのはARAHABAKI STAGE。ザ・ビートモーターズが登場した。明治大学の軽音楽サークルメンバーらを中心に結成され2009年にメジャーデビューした、今勢いのある若手ロックバンドの代表格だ。ノリノリのロックンロールナンバーからスローテンポな曲まで、ジェットエンジン全開。朝の準備体操?いやいや、既におなかを空かせてしまう、アクティブなステージを披露した。
 
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続いて訪れたのは「HASEKURA Revolution×東北ライブハウス大作戦STAGE」だ。風の草原側入場口からすぐの位置に立てられたこのステージ、小さいからと言って侮ることなかれ。開催地・宮城県川崎町に縁の深い歴史的人物、400年前の慶長18年(1613年)に「慶長使節」としてヨーロッパを目指し出航した支倉常長の名を冠したこのステージは、未来のARABAKIを担う新しい才能を発表できる場所を創るべく生まれたステージで、東北ライブハウス大作戦とタッグを組んで、なんと100%ソーラー発電で賄っているステージだ。未来への希望、秘めた可能性は、むしろ今年のARABAKI ROCK FEST.13の中で最も大きいかもしれない。
 
そんな「HASEKURA Revolution×東北ライブハウス大作戦STAGE」に登場したのは、佐賀・唐津出身の5人組ガールズバンド・たんこぶちんだ。AKBINGOやGoogleのCMでその名を記憶した人も多いだろう。小学生からバンドを組み、今なお現役の女子高生というフレッシュな5人は、7月に念願のメジャーデビューが決まっている。揃いの衣装で登場し、可憐かつパワフルなロックナンバーを続け様に披露した。
 
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昼下がりのBAN-ETSU STAGE、心地良いボーカルにトランペットが溶け込む。ステージに立つのはandymoriだ。「きれいな空がみたいだけなのに」(「ベンガルトラ」)、「青い青い空の色に恋い焦がれ」(「Sunrise&Sunset」)と、この青く澄み渡った陸奥の空に相応しい選曲。さらには「(同じBAN-ETSU STAGEに)奥田民生さんが来ているということで」と、「イージュー☆ライダー」をカバー。緩急つけたラインナップで楽しく爽快なステージを展開した。
 
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andymoriに続いてBAN-ETSU STAGEに現れたのは奥田民生。ソロ名義では初のアラバキ。弾き語りだが「ひとり股旅」の作務衣&アコギスタイルではなく爽やかな白パーカーに濃紺なハットで、エレキスタイルのステージを見せた。「トリッパー」でまっすぐ突き進む”一本の光”を放って客席を一つにすると、リズムボックスを使ってスローバラード「The STANDARD」を心地良く演奏。ソロ始動初期の「野ばら」(1997年リリース『FAILBOX』)から、ライブレコーディングツアーの中で生まれた「最強のこれから」(2010年リリース『OTRL』)まで、新旧織り交ぜたラインナップで楽しませると、「(寒くなるので)早く帰った方がいいですよ」とおなじみ飄々としたMCで笑いを誘う。
 
特筆すべきは、「ピンクは売ってないんですよ。俺しか持ってない」と紹介した、新しいギター。見慣れないルックスのそれは、アンプとスピーカーを内蔵したVOX TeardropのAPACHEシリーズ(VOX APACHE-Ⅰ)で、60種のリズムパターンに加え数小節分のドラム・パートを収録したソング・パターン6種も内蔵されたトラベルギターだ。その活かし方はまだ探究中という様子だったが、一本の、最強のスタンダードを持ちながらも、因習には”気にしない”姿勢で常に好奇心を持ってさすらう、そんな奥田民生博士の研究室を見ているような楽しいステージであった。
 
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MICHINOKU STAGEに、若大将降臨だ。加山雄三 & ARABAKI YOUNG KING BANDが登場!白いジャケットでキメた加山雄三、まずはステージを広く使ってロックンロールの王道、Elvis Presleyのカバーで、パンチの効いたボーカルとアコギを披露。「素晴らしいお客さん、メンバー、最高!」…満杯のオーディエンスと、両脇を固める佐藤タイジ(Guitar)、ウエノコウジ(Bass)、高野勲(Keyboard)らバックバンドを称えた加山雄三。中盤からはエレキギターに持ち替えて、自身のオリジナル曲を立て続けに披露。クールなギターリフをお見舞いし会場を沸かせると、最後は全国民が知る「君といつまでも」を熱唱。「二人を夕闇が 包むこの窓辺に」そのダンディな歌声に優しく包まれながら、MICHINOKU STAGEの日が暮れた。
 
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このほか、2日目・28日(日)は各ステージに怒髪天0.8秒と衝撃。サンボマスターM.J.QPOLYSICSBEGIN七尾旅人MIYAVI岡村靖幸9mm Parabellum BulletTheピーズザ・クロマニヨンズクラムボンORANGE RANGEthe HIATUSらが出演、熱いステージを展開した。
 
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最後はセッションだ!2日間にわたって幾つか行われたセッションの中でも、血気盛んな若手バンドが集結した「THE GREAT PEACE YOUNG SPIRITS “RESPECT FOR 忌野清志郎”」の模様をご紹介しよう。
 
「みんな~キヨシロー愛してるかい?」オカモトショウOKAMOTO’S/Vocal)が呼びかけた。OKAMOTO’S黒猫チェルシーのメンバーを中心に結成された一夜限りのロックンロールバンド、チャラン・ポ・ランタンもも(Vocal)、小春(Accordion)の女性プレイヤー2名も加わり、華やかな編成。「よォーこそ」で呼び込み、「ドカドカうるさいR&Rバンド」で結束を固めると、3曲目からはゲストボーカルが登場!「トランジスタラジオ」では奇妙礼太郎、「つ・き・あ・い・た・い」では鈴木圭介フラワーカンパニーズ)、そして「デイドリームビリーバー」と「スローバラード」を挟んで「君を呼んだのに」ではTOMOVSKY、「世界中の人に自慢したいよ」は阿部芙蓉美という、代わる代わる強力布陣でキヨシローを歌い上げる!
 
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それぞれが思い思いに忌野清志郎を歌い上げ、ステージ前に張り出したランウェイに乗り出し、絶叫する。「きもちE」をOKAMOTO’S黒猫チェルシーで気持ち良く演奏し終えると、ゲストボーカルも全員再登壇。最後は全員で「雨上がりの夜空に」を熱唱した。「どうしたんだ Hey Hey Baby」は客席も全員で大合唱し、歌詞がこだました。出演者の年代が若いこともあって、「忌野清志郎への追悼」といったムードはほとんどなく、とてつもない希望と明るさに満ちた、忌野清志郎の再現。ここでしか観られない一夜限りのステージは、いつまでもARABAKI参戦者たちの記憶の中で輝き続けるだろう。
 
過去最多の来場者数を記録した、今年のアラバキ。来年は一体どんなステージになるだろうか、来春まで期待し続けたい。
 
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◆THE冠 公式サイト
http://www.thekanmuri.com/
◆裸足の音楽社(eastern youth)
http://www.hadashino-ongakusha.jp/
人間椅子 公式サイト
http://ningen-isu.com/
◆PIZZA OF DEATH RECORDS (Ken Yokoyama)
http://www.pizzaofdeath.com/
◆The Birthday 公式サイト
http://www.universal-music.co.jp/the-birthday
◆くるり 公式サイト
http://www.quruli.net/
◆サニーデイ・サービス 公式サイト
http://rose-records.jp/artists/sunnydayservice/
◆ザ・ビートモーターズ 公式サイト
http://www.thebeatmotors.com/
◆たんこぶちん 公式サイト
http://tancobuchin.jp/
◆andymori 公式サイト
http://andymori.com/
◆奥田民生 公式サイト
http://okudatamio.jp/
◆加山雄三 公式サイト
http://www.kayamayuzo.com/
◆OKAMOTO’S 公式サイト
http://www.okamotos.net/
◆黒猫チェルシー 公式サイト
http://www.kuronekochelsea.jp/

 

◆ARABAKI ROCK FEST. 公式サイト
http://arabaki.com/
(※本記事の会場雑観とたんこぶちんは鈴木亮介撮影、
 その他ライブフォトは全てオフィシャル提供によるものです)
 
◆ARABAKI ROCK FEST.13
2夜連続×5時間 計10時間放送決定!

フジテレビNEXT(スカパー!、スカパー!e2、各ケーブル局で視聴可)
day1…6月22日(土)22:00~27:00
day2…6月23日(日)22:00~27:00
http://www.fujitv.co.jp/otn/b_hp/913200089.html

 

◆関連記事
【特集】ARABAKI ROCK FEST.12 (2日目)
http://www.beeast69.com/feature/26962
【特集】ARABAKI ROCK FEST.12 (1日目)
http://www.beeast69.com/feature/26539
【連載】ACTION 05 脱・無関心(東北ライブハウス大作戦)
http://www.beeast69.com/serial/mukanshin/21051