コラム
浪漫派宣言
和嶋慎治(人間椅子)
「人間椅子」のギター&ヴォーカルとしてデビュー以来、唯一無二の世界観を貫き、多くのアーティストに影響を与えてきた。そのサウンドの要となるのは、確かな技術に裏づけされた独創的なギタースタイル。2013年8月7日に、通算21枚目(含ベスト盤)のオリジナルアルバム『萬燈籠』をリリースした。

第十四回 エフェクター礼讃


 マヤのカレンダーが物議を醸した2012年も、はや年の瀬である。自分はどう過ごしたかと今年一年を振り返ってみるに、実に様々の現場に関わらせてもらうことができたのだった。気負いすぎかもしれなかったが、僕としたら「雨ニモマケズ」の心境だった。僕が必要とされ、お手伝いできる場所があるんだったら、どこへでも出掛けていく所存だった。(映画出演の話も来ましたが‥‥でもそれは断りました。自分は演技なんて出来ないと思ったし、スケジュールの都合もつかなかったので。監督さん、その節はすみませんでした)
 個人の仕事が増えたわけだが、本来の人間椅子の活動自体も、イベント、野外フェス出演等、さらなる広がりを見せた一年であったように思う。

 そんな中、足元のペダルボードを一新した。変更の主眼点は、初めての会場だろうが何だろうが、慌てず速やかにセッティング出来ること。そのために、電源部分の効率化、幾つかのエフェクターの小型化などを行なった。題して、「野外フェス仕様」だ。実際、夏場以降は基本この仕様で臨んでいるのだが、まったくのノントラブル、準備も片付けも瞬時に済み、かつて畳一畳分ほどのペダルボードに悪戦苦闘していたのが嘘のようだ。(もちろん、その経験あっての現在なわけですが)ほぼ狙い通りのボードに仕上がったということで、今回はエフェクターの話をしてみたい。なんだか、久しぶりの音楽ネタです!

 これが現在のペダルボード。ご覧の通り、何社製かよく分からないエフェクターがズラリと並んでいます。分かってもらえるでしょうか、僕はエフェクター自作派なのでした。
 ──ここはまず順番として、ボードの説明に入る前に、ざっと自作について述べてみたい。
 

 最初にエフェクターを作ったのは、中学二年から三年にかけてだったと思う。レスポールのコピーモデルをラジカセにつないで、マイクの入力感度は最大、バリバリ歪ませて悦に入っていた頃だ。が、歪めばロックとはいえ、このラジカセのブチブチ途切れる音があんまりいいサウンドでないとは中学生にもだんだんと分かってくる、やがてディストーションがほしくなる。しかしながらエフェクターはとても高価で、特に海外製品なんて異常に値が張り、中学生のお小遣い程度で買えるものではない。さあどうするか。作ることにした。
 当時ロッキンfという雑誌が、よく自作記事を載せていた。オリジナル回路あり、MXRのフルコピー記事あり(!)と、今だったら何々風とぼかすところを、ドンズバ完コピと謳っていたんだから、大らかな時代だった。ある時MXRディストーション+の製作記事が掲載されていて、僕にはそれが神の恵みか天啓のように感じられたのだった。
 ラジオを作ったり、簡単な電子工作には親しんでいたので、ハンダごてを持つことに抵抗はなかった。その頃は、アマチュア無線、BCLといったものが立派な趣味として市民権を得ていて、僕の住む田舎の街にも無線店は何軒もあった。抵抗を買いコンデンサを買い、ICなんて宝石のように見えたことだ。フットスイッチは売ってなくって、ひょろひょろの押しボタンスイッチで代用した。

 ──鳴らなかった。どうためつすがめつして見ても、配線が間違っているわけでもない、ハンダはちゃんと付いてるし電池も入ってる、でも、さっぱり分からないけれども、鳴らない。
 神の啓示からどん底に叩き落された気分で、それを見るのも嫌になり、押入れにほっぽり込んだ気がする。そのすぐ後で、傷を癒すわけでもなかろうが、ブースターやコンプレッサーを作ったみたいなのだが‥‥よほどディストーションが不完動だったのがショックだったらしく、どうもこの辺りの記憶が曖昧なのだ。今、実家に戻って押入れを開けると、中学生の頃自作したであろうブースターやらコンプやらが確かに出て来る。でも、作った覚えがない‥‥。
 さて失意の日からひと月以上は経った頃だろうか、何を期待するでもなく、再びディストーションを手にとってみた。──!!──なぜ音が出ないのか、原因が分かった。なんとも単純な話だが、ジャックのスリーブがアースに結線されていなかったのである。僕はボディにジャックを付けるだけで勝手にアースに落ちると思い込んでいたのだったが、無線店で購入したジャックは絶縁型で、ただ取り付けただけではアースに落ちないタイプだったのだ。
 気が付いてみれば、簡単な話だ。なるほど、確かに自分は基板の方にばかり注意を払っていて、ジャック部分はほとんどチェックしていなかった。思い込み、先入観でかなり人の目は曇ってしまうということを、思い知らされたようだった。
 肝心のディストーション+の音だが、ラジカセのもっさりした歪みとは比較にならない、粒立ちのいい、きらびやかな高音域を持った素晴らしい音だった。中学三年の終わりまで、ずっとこのディストーション+は愛用した。エレキギターを通じて友達になった後輩に、「先輩、そのディストーションいいっすね!」とかねてから言われていたので、卒業と同時に、彼にそれを譲った。
 

 それからしばらくは、自作から遠ざかる。興味の対象と、創作のエネルギーがもっと別なものに向かったからだ。エフェクターへの思いは、まあ買えばいいのでは、ぐらいの意識に留まる。
 再び作り出すのは、人間椅子でデビューして五、六年も経った頃。ある日、古臭いファズの歪みが欲しくなった。手持ちのディストーションで試してみるが、どうもあの感じにならない。まだブティック系ハンドメイドエフェクターが登場する前、中古品を探すという選択肢もないではなかったが、いっそ自分で作ってみようと思い立つ。もちろん名著、ハンドメイド・プロジェクトありきなのだったが、ハニーのファズを作ってみる。サイケな響きに、満足。
 

 二十世紀もぼちぼち終わらんとする辺りだったろう、突如エフェクター製作に拍車がかかった。これにはおそらくそうだろうなという理由があって、その頃肉親、親族の不幸が重なった。体が空っぽになったみたく感じられ、テレビや新聞を眺めてもまるで別世界のよう、これっぽっちも現実感が湧かない。しばらくは呆けたように暮らしていたが、やや気持ちが落ち着いてきた頃だ、手を動かして物を作っていると、悲しみを忘れられることに気がついた。それはただ気を紛らす方便に過ぎないのかもしれなかったが、僕はのめり込むようにエフェクターを作り出したのだった。(女性も、悲しみを癒すために手芸などに没頭することがままあると聞く)

 先のハンドメイド・プロジェクトver.1にver.2、ロッキンf別冊、知人が自作本を持っていると聞けば、コピーを取らせてもらった。とある町の小さな図書館で、初歩のラジオ別冊「エフェクター入門」を発見した時は、狂喜したものだ。トランジスタの参考書をどっと買い込み、高校時代に物理で赤点を取った自分にしたら信じられない話だが、ひねもすバイアスの計算なんかを始める。雑誌の広告を頼りにわざわざ地方の電子パーツ店まで車で赴き、使うあてもないのに珍しい半導体やコンデンサを買い漁る。
 そのうち、ネットが一般化し出す。著作権などどこ吹く風、海外のサイトには堂々と大量の回路図がアップされており、それらをせっせとプリントアウトしては、うっとりと眺める毎日。いつしか僕の作るエフェクターも、ペラペラのアルミニウムのケースからアルミダイキャストに変わり、フットスイッチはDPDT→ミレニアムバイパス→3PDT、LEDは袋買い幾らの赤色から青色高輝度に、配線材もヴィンテージの単線かなんかになる。市場には日々、エフェクターに特化した部品が溢れていっていた。世界中に、大きなうねりのように、ストンプボックス製作がホビーとして浸透しつつあるのがはっきりと分かり、その様は、どこか感動的ですらあった。

 しかし世の動向とは裏腹に、僕自身の情熱は徐々に沈静化していくのだった。悲しみが和らいだとでもいうのだろうか、いや、それよりも、また新たな苦しみと思える状態が僕を取り巻き出していて、そのことで頭を悩ます日々が始まったからだった──。

 とまれ、数年間ほど狂ったように作った後は、年に一台製作するかどうかといった程度になり、そのまま現在に至る。(したがって、ずっと自作を続けている方々のエフェクターをブログ等で散見するにつけ、その創意工夫、研究熱心さに頭の下がる思いがします)
 

 では、ようやくペダルボードの説明を。
 以前本コラムで機材の紹介をしたことがあったが、その記事と若干の内容の重複があることをお断りしつつ。(頭の数字は、接続順と思ってください)

──(1)BOSS PSM-5──
 これで、全体のループを行なっている。センド/リターンには、後述するミュートボックスやチューナーを含む、すべてのエフェクターが繋がれている。PSM-5によって、アンプ直か、何らかのエフェクターを選択するわけだ。例えばワウの場合なら、予めワウをオン、任意の箇所でPSM-5をオン、となる。つまり本来のスイッチ操作の倍手間がかかってしまうわけだが、(ワウ・オン/ワウ・オフの場合は、ワウ・オン→PSM-5・オン/PSM-5・オフ→ワウ・オフ)慣れれば大したことはない。
 PSM-5は生産完了品だ。しかしPSM-5のようなただのバッファ内蔵のループボックスって案外なくって、未だにこれを使わざるを得ない。ただのバッファ(増幅率1倍)というのが重要で、なぜだか現行のループボックスにはたいてい皆ゲイン調整がついている。余計なことしなくっていいと思うんだが、おそらくそのせいだろう、必ずといっていいほど、ループ内のエフェクトから音が漏れてきてしまう。マーシャルだと使えない。
 トゥルーバイパスの、パッシブのループボックスならいいのでは、と思われるかもしれないが‥‥いくらトゥルーバイパスといっても、バッファアンプなしで三つも直列にするとやっぱりハイ落ちしてしまうのであり、エフェクターを幾つか直列につなぐ限り、最前段にバッファは必要なのであった。
 とこう考えると、ループは廃し、一等最初にバッファで、後はただトゥルーバイパスのペダルを直列につなげばいいだけじゃないかという気もしてくる。実際、PSM-5内のエフェクトをすべてオフにし、バイパス/ループと切り替えても、ほんの少しハイが落ちるだけでほとんど音は変わらない。そんなにエフェクターを多用しないのであれば、頭にバッファ、後はトゥルーバイパスのものを複数個直列、が一番シンプルで使いやすいのかもしれない。
 もちろんループならではの利点──複数個のエフェクトを一気にオンにできる、何かトラブルがあってもすぐにバイパスできる──があるからこそ、僕はこだわってしまうわけだが。
 PSM-5は、スペアも持っている。これの信号が通るところ、FETやコンデンサ、配線材などを、グレードの高いものに換えてみようかと、ただ今画策中。

 
──(2)UFO-TRON──
 怪しげな名前だが、これは何かというと、発振回路の周波数をギターで操作できるようにしたもの。元はもっと大きかった。

 写真は、今年七月の渋谷O-WESTでのライブ時のもの。左端にある、VCFと書いてあるのがそれに当たる。ちなみに、隣のショッカーは、エーストーンFuzz Master FM-2のクローン。マーシャルで出しても耳に痛くないようにと(とはいえどうやっても悲鳴のような音色だが)、ミドルを追加してある。
 さてVCF、ロッキンf別冊に載っていたロッキンVCFを自作したものだ。
 Voltage Controlled Filter──要はオートワウである。オートワウの場合は、ギターのアタックの強さで、ギターの音源の周波数を操作するわけだが、このロッキンVCFの凄いのは、その音源に発振回路を選べるところ。すなわち発振回路の周波数を、ギターのピッキングの強弱で上げ下げする‥‥いったいどんな音がするのかさっぱり分からないかもしれないが、強いていうならテルミンに近い。ただしテルミンほど繊細に、幻想的にはならず、ただもう上がったり下がったりの、忙しい、およそそこにメロディを聴き取ることなど不可能な、奇怪な音なのだった。一言でいって、使いどころがない。
 でも飛び道具としたら大したもので、当時ロッキンfの編集をなさっていたOさん、この方に不思議な縁で僕は知遇を得ることができたのだったが、「いや、あのロッキンVCFは名機ですよ!」とまず感想を述べたところ、大変に喜んでいただいた──。
 人間椅子の曲で、UFO、あるいはUMAを感じさせる部分で使用している。一つのステージで、出番があるかないか。その割りには図体がでかいので、なんとかダウンサイジング出来ないかと考え、ああ、そういえばオートワウはほとんど使わないやと該当箇所をばっさり切り捨て、発振回路のみに焦点を絞って、自作してみた。それが、②UFO-TRONだ。
 僕の最新作である。せっかくなので、内部写真を。

 このぐらいになると、もはや蛇の目基板を使ったポイント・トゥ・ポイントは無理なので、プリント基板で作ってある。オペアンプは、コーセルのDC‐DCコンバータを用い、9Vから±12Vに変換して動かしている。(ちょっと前までは、こんなに便利な部品が手に入るなんて、思いもよらなかった)
 自分的には、まだ試作段階。おそらくもう一回は作る。
 本機はロッキンVCFに加え、かなりMU-TRON Ⅲの回路を参考にした。UFO-TRONは、そのことに敬意を払っての命名なのだった。(ところで、僕が実際に間近で?見たことのあるUFOは、UFO-TRONのような音ではなかった‥‥)

 
──(3)OVER DRIVE──
 PEARL OD-05 OVER DRIVEのクローン。これはもうまったくの、クローン。効きのいいパラメトリックEQが、何といってもこの回路の秀逸なところ。あともうちょっとでワウの半止め、ぐらいに僕は中域を持ち上げて、ロングトーンが必要なソロなんかで使っています。

 
──(4)BIG MUFF──
 BIG MUFFは、BIG MUFFとしかいいようのない音がする。ファズでもない。もちろん年代によって違ってくるんだろうが、それでもやっぱりあのモーッと吠える独特の音だろう。この個体は、ラムズヘッド期の定数で自作したもの。ややタイトで硬質な響きがあり、それは2SC1815や1S1588など、日本製の部品で製作したためかとも思ったが、実はケースによる影響が多々ある気がする。
 というのも、随分昔にペランペランの大ぶりのアルミケースで作ったBIG MUFFがあるんだけれども、これが抜群にいい音がする。もう飽和しきって箱全体で鳴っているというか、モーッじゃなくてヴォーッと、試しにケースを軽く叩いてみると、ゴンゴンとアンプからお返事が。本当に箱鳴りをしているわけだ。(これはもっぱらレコーディングで活躍)
 でも、MXRサイズに入れたBIG MUFFが別に悪いわけではなく、むしろ抜けがいいのでライブ向きともいえる。何より、この大きさじゃないとボードに入らないし。

 
──(5)JEN Cry Baby SUPER──
 何台かワウは試してみたが(ブティックメーカーは除く)、やっぱり自分にはJENが一番ぴったりくる。滑舌が良すぎもせず、適度にいなたいというか。
 今までに直したところは、ガリが出てきたのでポットを交換、3PDTスイッチにしてLED付に改造、ぐらい。音色に影響するコンデンサやインダクタはいじっていない。

 
──(6)PRESET VOLUME── 
 要は、ボリュームペダル。フルテンのマーシャルでクリーントーンを出すためには、ギター側のボリュームを絞らなくてはいけないわけだが、曲によっては一瞬でクリーンを出さねばならない場面がある。そうした時に、これで切り替える。本機レベル10で、増幅率1。音を小さくするためだけの箱。
 以前は最後段のミュートボックスに併設していたのだったが、よく踏み間違ってしまうため、今回新たに独立させて作った。が、単純に見えて、ただのボリュームのみというのでもない。FETのバッファで受けてレベル調整、さらにまたFETのバッファでインピーダンスを下げて出力してある。いい感じにハイが抜けてくるようになった。

 
──(7)PHASE SHIFTER──
 Electro-Harmonix SMALL STONEのクローン。これも、ダウンサイジング化したものの一つ。今までの薄いアルミのケースから、一回り小ぶりのダイキャストのケースに入れ直した。
 本来COLORはスイッチのはずなのに、ツマミになっているのはなぜ?と疑問に思われる方がいるかもしれない。それは、初歩のラジオ別冊の製作記事を参考にしたからなのだった。
(ただし発行年によっては、SMALL STONEが載っていないものもあるので注意。瑣末な話で恐縮です)

 
──(8)Uni-Vibe──
 自作Uni-Vibe。
 先年Jim DunlopのUni-Vibeを入手した。きれいに揺れるのだが、どうも音が良すぎるというか、やや自分のイメージしていた音色と違う。もっと混沌としていてほしい。内部を覗いてみると、やっぱりICなんかが使われていて、ここは本家シンエイのように、オールディスクリートでいきたいところだよナァ‥‥などと思っていたら、今は凄い時代だ、Uni-Vibeのキットだってある。一から基板を設計するのも億劫だったので、僕はそのキットを注文することに。
 もろもろ、自分なりに手を加えてはある。コンデンサを一部オーディオグレードのものに変えたり、トランジスタの増幅率を上げたりとかだ。まだ改良の余地はあるものの、だいぶ泥臭くて納得のいく音がするようになった。

 
──(9)Maxon AD-900 Analog Delay──
 半年以上前、珍しくほかのディレイを鳴らしてみたくなり、某社のモジュレーション付の製品を繋いでみた。最初は劇的な掛かりが面白いと思ったが、だんだんと不自然に聴こえ出し、結局は元に戻す。Maxonのディレイには、Maxonでしか出せない、素直で艶やかな響きがある。
 再び組み込む際、トゥルーバイパス化の改造を行なった。

 
──(10)MUTE BOX──
 これで、ミュート(チューナーアウト)とスルーとを切り替える。アンプの直前ではなく、PSM-5のループ内に入れてある。したがって普段は常にスルー、チューニング(ミュート)をしたい時は、チューナー・オン、MUTE・オン、PSM-5・オン、ということになる。

 
──(11)KORG DT-10──
 チューナー。MUTE BOXのチューナーアウトに繋がっている。

 
──(12)電源スイッチ──
 このペダルボードの中で、一番の目玉とでもいうべき代物。三つの異なる電源を、一つのスイッチで集約してオン/オフできる。4PDTという夢のような機械式フットスイッチによって、可能となった。(電源スイッチのアイディア自体は、楽器用エネループから拝借しました)
 何といっても便利。電源関係のプラグの抜き差しは一切なくなり、セッティングの際には、PSM-5のインとアウトにシールドを差せばいいだけ。ご覧のように僕はオール電池化しているわけだが、スイッチさえあれば、電池の無駄な消費も抑えられようというものだ。

 
──(13)電源a──
 単三電池6本、9V。電源スイッチを介して、チューナーとスイッチ自体のLEDに電気を送る。

 
──(14)電源b──
 単三電池6本、9V。スイッチを介し、(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(10)に供給。

 
──(15)電源c──
 単三電池8本、12V。電源スイッチを介し、昇圧ボックスに向かう。
 ちなみに電源a、b、c合わせて単三電池20本。おそらく3~4ステージは持つものと思われるが、万全を期して2ステージで交換。充電式電池は、きっとツアー中に充電を忘れるか面倒に思う日が来るはずなので、使わない。
 あくまで電池にこだわることの理由の第一は、電源ノイズを減らしたいがため。

 
──(16)昇圧ボックス──
 入力12V、出力12V、24V。コーセルのDC‐DCコンバータで昇圧している。
 12VはAD-900用、24VはUni-Vibe専用である。

 
 ──ペダルボードは、十人十色であっていい。このところ思うのは、皆さん大変に美しくボードを組んでおられる。でも、どうも没個性というかステレオタイプの傾向にあるというか、とりあえず無難にまとめました、みたいに見えなくもない。何だろう、他人と同じシステムにしていたら、他人と似通った音しかしないと思うのだが。我々がやろうとしていることは表現であって、右へ倣えではないだろう。大事なのは脱線を恐れずに試行錯誤することであって、その結果が(詰まるところ過程だが)、無茶苦茶な直列配線だろうと華麗なスイッチングシステムであろうと、そこにその人の息吹きが感じられるのであれば、まあ何だってカッコいい。
 そんなことをいいたくて、僕のボードは変則的だけれども、ここに紹介してみました。
 

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和嶋慎治(人間椅子)

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