コラム
少年は音楽と恋に同時に目覚める
嘉門達夫
83年デビュー。「小市民/鼻から牛乳/替え唄メドレー」などヒット連発。第6回 日本ゴールドディスク大賞受賞。大阪城ホール/日本武道館公演やNHK紅白歌合戦にも出場。『時代の観察者/言葉の魔術師』異名をとる。テレビ東京ネットのお子様バラエティ番組「ピラメキーノ」で「アホが見るブタのケツ」シリーズがオンエアとなり、お子様人気沸騰中!!12/14にはシングル「アホが見るブタのケツ~ベスト~/鼻から牛乳~キッズバージョン~」発売。最新CDアルバムは「“青春”のさくら咲く~スクールセレクション~」。2012年1月~ツアースタート。詳しくは http://www.sakurasaku-office.co.jp/まで。

第7回「なんでも歌いたい!」


中学2年で初めてオリジナル曲を作りはじめて、高校を卒業するまで、約60曲が生まれた。僕ひとりではこうはいかなかっただろう。親友の中澤テルユキの存在なくして、思春期の歌作りは語れない。当初は現在東大で遺跡を発掘する松山聡も一緒に歌作りをやっていたが、高校に入ると中澤と2人で部屋にこもった。90分のカセットテープの片面45分ずつお互いが録音し、一方が歌っている時、もうひとりもその場に立ち会う形式だ。西岡たかしさんと泉谷しげるさんのコラボレーションアルバムに「ともだち始め」というのがあって、あきらかにこの作品に影響を受けて僕達は「ともだち続き」というタイトルのカセットを作った。僕も中澤もほぼ同量の歌をせっせと作った。お互い批評したり感心したり大笑いしたりしていた。2人の関係はとても楽しかった時期の3篇。

File NO.19「挽歌?親愛なるSに捧ぐー」

俺が大嫌いだった 奴が死んだ

俺がちょっとよそ見を しているうちに死んでしまった

何をしても俺の気にさわる 奴だった

奴の行動ひとつひとつが 俺を腹立たせた

俺にひと言も残さずに あの世へ行ってしまった

俺はもっとあいつと いがみ合いたかった

なんともいえないむなしさが 俺の心の中に残った

俺はもちょっと 奴に生きてほしかった

くやんでみてももうどうにもなりゃしない

奴は奴なりに考えていたんだ 俺が俺なりに考えていたように

いつも何かをうちに ひめてる奴だった

でも奴の目はいつも やさしかった

そのやさしさを俺に 伝えずに奴は死んでしまった

俺も奴のやさしさを わかろうとしなかった

くやんでみてももうどうにもなりゃしない

ただもう少し時間がほしかった でももう奴は灰になってしまった

考察:とにかくなんでも歌いたかった。と同時に身辺の事や、考えを歌うにも限界があった。そんな高2の秋、修学旅行に行っているあいだに、病気療養中だったS君が亡くなった。その事を歌った。友人の死を悲しむと同時に「歌のテーマ見つけた!」と喜ぶ自分もいた。サブタイトルの「親愛なるSに捧ぐ」は、加川良さんの歌「親愛なるQに捧ぐ」からいただいている。

File NO.20「石段」

「この頃ふと 思うんやけど みんなが寝静まった夜中なんかに 昔のアルバムを見たりしながら あの頃はアホやったなぁと 思たりして こないして人間は 成長して行くんやと 思たりして なんやこの 人生ちゅうもんは 山の上にある神社の石段みたいに 一つ一つ確かに登っていくもんやと ひとりで思っています そんな夜中に ふとメロディーが浮かび それを歌にしました」

あの頃の僕を思い出して ひとり思わず苦笑い

若すぎた 子供だった 世間を知らなすぎた

精一杯背のびして みたつもりだったけど

今思ってみると 思わず笑いたくなるような

人はこうして 長い人生を 高く連なる 石段のように生きてゆくのでしょう

ひとり夜の闇にたたずんで 胸は遠い昔へさかのぼる

バカだった 幼すぎた 軽薄すぎた

一生懸命がんばって みたつもりだったけど

今思ってみると 思わず顔が赤くなるような

人はこうして 長い人生を 高く連なる 石段のように生きてゆくのでしょう

今の暮らしを考えを いつか思い出す時がくるでしょう

きっとその時も 僕はまた苦笑い

だけど今は今 その時はその時

今さえくいのない 後悔の残らぬものならば

人はこれから 長い人生を 高く連なる 石段のように生きてゆくのでしょう

人はこれから 長い人生を 高く連なる 石段のように生きてゆくのでしょう

考察:イントロでゆっくりと語る形式は豊田勇造さんのパクリだ。まだ17くらいなのに人生について語っているのがもっともらしくも青い。

File NO.21「すっぽん人生」

とにもかくにも人生は この世に生まれりゃ一度きり

波乱万丈人生を 七転八起のダルマのように

いつでも胸にでっかい夢を

生きてみせますこの道を

線路しかれたかたぎの道を 生きてゆく奴ぁ多いけど

時の流れにさからって 大滝のぼりの鯉のように

夢と希望を心に秘めて

生きて行きます どこまでも

短い人生でっかいことを あとでくいの残らぬように

とことんくいつきぶらさがり スッポン人生歩きます

しくじりつまずきよろめいて

明日に向かって歩きます

考察:これは演歌だ。ぴんからトリオぴんから兄弟の影響。この歌で僕は、朝日放送のABCヤングリクエストのキダ・タローさんがやっておられたコーナー「ミキサー完備スタジオ貸します」に出演した。後年キダさんに言うと「そーゆーたら、高校生で演歌を歌うケッタイなヤツがおったのを覚えてるわ」とおっしゃった。なんかこんなんもアリ!やったなぁ。自分中では。落語家に弟子入りしていたので、そこいらの気持ちを歌っているのだと思う。

続く。