第13回「ヨロン島」
スキー場で「これからは歌でやって行く!」と決意。ヤンタンのプロデューサー「オオナベさん」のところに「旅から帰ってきました!これからは歌手になります!」と報告に行ったら「まだ破門になって半年やろ。暗い時に北の方に旅をして、見通しがついたんやったら、こんどは明るい気持ちで南の方に行け!」と言われて、スキー場時代に知り合った友達の紹介でヨロン島に旅立った。
当時のヨロンは花盛り。アクセサリーショップ「のあぽっぷ」でのバイト生活。バイトの合間にいろんなところに歌う場を見い出した。ライブガーデン「ペペ」のステージによく上がった。貝細工の指輪やペンダントを作ったり、名前を彫ってあげたりしながら、時間のある時は海岸に遊びに行ったりして、今思うともっとも青春を謳歌していた時期かもしれない。いろんな歌が生まれたよ。
FILENo.35 「気付いた時にはサトウキビ畑」
ヨロン献法なんていう酒の飲み方は
悪酔いする以外の何者でもありません
だけどついついその気になって
調子に乗って一気に飲みほしてしまうんよね
そこ迄は別にいいんだけれど
酔った分にはかまわないんだけど
ここで単車に乗って帰ろうと
思った事がすべてのはじまり
信号も何もない一本道を
酒のんで単車で走るなんて
そらもうホンマに気持ちがエエもんで
スピードメーターどんどん上がります
気付いた時にはサトウキビ畑
気付いた時にはサトウキビ畑
ずっとまっすぐな一本道で突然カーブがくるなんて
あっと叫んでみたところでバンド曲がらずひたすら前進
気付いた時にはサトウキビ畑
全身傷だらけの天使とは俺のこと
おまけに単車はつぶれるし修理のお金が2万円
怒りをぶつけて行くところもなく
自分で自分にあたるしかない
気付いた時にはサトウキビ畑
気付いた時にはサトウキビ畑
考察:飲酒運転に対する概念がまったく違う時代だった。今思うと無茶な話。80年前半の通念はそんなもんだった。ヨロン献法というのは、ひとつのグラスに地元のサトウキビから造った焼酎「有仙」を注ぎ、飲み干さないと次に人に酒がまわらないという、島に昔から伝わるもてなしの方法。僕らは海辺で知り合った女の子達を誘って、バイト終わりで車座になって、ヨロン献法でよく飲んだ。結果この歌のような有様。いや、この程度で済んで本当にヨカッタ。内容の道徳的な事は肯定出来ないが、こういうリアルな自分の身に起こった出来事を歌うパターンは、説得力があってよくウケた。
FILENo.36 「新婚行進曲」
新婚さんが町を行く ここは南のヨロン島
やっと2人になれました シアワセいっぱいハネムーン
おそろいのジーンズ おそろいのTシャツ
おそろいの帽子に この分やとパンツもおそろいかしら
イチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャ新婚行進曲
肩からカメラをぶら下げて 記念撮影はいパチリ
2人はシアワセいっぱいね そらあんたらはええよ
仲良く手をつなぎ 仲良く腕をくみ
仲良く肩を抱き そんなにくっつかんでも誰も逃げへんちゅうのに
イチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャ新婚行進曲
やっと結婚出来ました これでひと安心
世間も認めた夫婦です 人目をはばからんでもいいのです
日も沈まぬうちに ホテルに帰って
風呂でも入って やる事はひとつ!あしたちゃんと起きんと承知せーへんで!
イチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャ新婚行進曲
考察:けっこう居たのよ新婚さん。時代ですなー。ほんとうにこの歌詞の様にペアルックでイチャついてるんですよ。22歳の血気盛んな僕は、ひたすらうらやましいようであり、腹立たしいようであり。人間、あるいは特定のジャンルの人の事を歌うパターンのヨロンバージョンですな。歌としては、たいして面白い作品でもなく、数回歌った程度のモノです。
FILENo.37 「ヴェジタブル・レクイエム」
カボチャが怒る ナスビが笑う アスパラガスが泣く
ピーマン タマネギけとばして
キャベツはキュウリとトウモロコシひきつれて
国際線に逃避行
そーなりゃシイタケ黙まっちゃいない
もやしとレンコン引き連れて
レタスが必死に止めるのを振り切って
サンドマメに実家に乗り込んだ
あーなんてセロリなんだろう とても心がホウレン草
フキとショウガはあっけにとられ
ニンニク死んだも知るまいに
ジャガイモ トマトに恋をして
嫉妬に狂ったハクサイは
ニンジン相手に夜更けまで腕相撲
ダイコン ゴボウに肩車
これがさだめとネギが泣く
水菜菊菜も数のうち
シシトウ ニラの頭をこづいて
それじゃあまりにサツマイモ
あーフキはエンドウマメなんかじゃない
それはあまりにカブラとショウガ
インゲンマメは堪忍袋の緒が切れた
ウリはオクラと心中する
あーヴェジタブルレクイエム
犬も歩けば野菜に当たる
野菜も筆のあやまり 野菜も木から落ちる
野菜の耳に念仏 ネコに野菜
考察:羅列シリーズにちょっとした物語性を加えた結果、昇華出来ずに残念な形で終った作品。メロディーにはイキオイがあったので、ライブの前半とかにがなって歌うと「なんじゃコイツ?」という客席の反応。ま、それはツカミになったのかならなかったのか。試行錯誤の代表として、ここに並べておきましょう。
つづく。