コラム
少年は音楽と恋に同時に目覚める
嘉門達夫
83年デビュー。「小市民/鼻から牛乳/替え唄メドレー」などヒット連発。第6回 日本ゴールドディスク大賞受賞。大阪城ホール/日本武道館公演やNHK紅白歌合戦にも出場。『時代の観察者/言葉の魔術師』異名をとる。テレビ東京ネットのお子様バラエティ番組「ピラメキーノ」で「アホが見るブタのケツ」シリーズがオンエアとなり、お子様人気沸騰中!!12/14にはシングル「アホが見るブタのケツ~ベスト~/鼻から牛乳~キッズバージョン~」発売。最新CDアルバムは「“青春”のさくら咲く~スクールセレクション~」。2012年1月~ツアースタート。詳しくは http://www.sakurasaku-office.co.jp/まで。

第14回「ヨロン島2」


僕がヨロンに居たのは1981年夏。今思うと弾けて楽しかったなぁ。なんせ窮屈な弟子生活から「破門」によって一気に解放されて、不安と同時に自由も手に入れた21歳だ。恋愛的にも、南の島は最高の舞台だったし、恋の初心者運転を堪能していた。あまりにも簡単に事が進むことによって、それまで神格化していた女性に対する考えも変わった。

でも、軽い女の子をサーフィンする中で、「お!これは!」と手応えを感じた女性に出逢う。彼女に対する思いを書いた3曲を、ピックアップしてみよう。

FILENo.38「あの娘が街に帰る」

あの娘が街に帰る 水平線に夕日が沈む
目に映るすべてのものが 新鮮にみえてくる
あの娘はデッキの上で ずっと俺の方を見てる
船が見えなくなるまで しきりに手を振る俺

なんとなくムードに酔いしれて 夜中に降る様な星空あおぎ
波の音身近に感じながら 流れ星に願いをかけりゃ

この愛いつまでもなんていうキザなセリフは やっぱりはかない夢かもね

逢ってわずかの間に 惚れたはれたなんてとても言えない
あいさつがわりに寝るなんて とても俺には出来ない
夏と言う名は誰が付けたか ものすごく夏の響きがある
童話は残酷ねなんて 確か言ってたよね

まるで映画の主人公気取りだけれど ムードのせいにはしたくない
今の気持ちを大事にしたい 高校生の恋みたい照れるね

あなたに逢ってわずかの間に 何かを感じたのは俺だけでしょうか?

考察:船の別れはドラマチック。ヨロンから沖縄に向かう船の見送りに行くのです。少しずつ離れてゆく。当時は紙テープなんかも連なる。これは盛り上がる。けっして一夜の関係には陥らず、別れ際にホッペタにチュッ!みたいな距離感が俄然ハートを熱くした。稚拙ではあるけれど、その気になって歌を作ったよ。今、思ってもせつないね。

FILENo.39「嫌われちゃったサンバ」

あんなに俺の事 愛しているって言ってたあの娘
あん時あんなに トキメいていた2人なのに
手のひら返す様なあの娘の態度 電話のむこうに感じちゃった

この愛いつまでもなんて 言ってた2人なのに
大事にしようねって 約束してたのに
女心ホンマにわからん あの娘の身に何が起きたか
うすうす感じちゃいるけれど

あの娘に嫌われちゃった嫌われちゃった嫌われちゃったサンバ
もーどないせえーっちゅうねん!
羽根があるならあの娘のもとへ 今すぐ飛んで確かめたい
そんな事もあったわねなんて 言うんだろうが

何とかしたくても出来ないこのもどかしさ
ひとりでどんどん卑屈になってゆく
日々の暮らしは単調で限界間近 思い出すのはあの娘の事ばかり

そんなあの娘に嫌われちゃった嫌われちゃった嫌われちゃったサンバ

こんな気持ち何にぶつけろっちゅうねん
ほんのわずかな間でも トキメいていた2人の心
それで満足するというのは あまりに淋しい

あの娘に嫌われちゃった嫌われちゃった嫌われちゃったサンバ
もーどないせえーっちゅうねん!
羽根があるならあの娘のもとへ 今すぐ飛んで確かめたい
そんな事もあったわねなんて 言うんだろうが

考察:彼女が東京に帰り、忙しい日常に戻ってゆくと同時に、南の島のオレの記憶がどんどん薄れていくワケさ。そんな様子をビシビシ感じた。こっちは身動きとれない島暮らし。若いね!一途だね!
都会で暮らす彼女にとっては、けっこう重くてウザいヤツ?なんせ21だったもんで。

FILENo.40「9月になれば」

夏の終わりにふと振り返り思う ひと夏過ごしたこの島で
人と出逢い人と別れ そしてあなたとめぐり逢ひ

生まれて初めてあんなに燃えた 大人げもなくトキメいた
遠く離れて身動き出来ない 自分がずいぶんはがゆかった

あなたと過ごしたわずかな時間を 思い出しては頭のなかで夢を追ってた
電話や手紙の言葉の裏まで あれこれ考えひとりもどかしがってた

9月になれば 9月になれば そう9月になればあなたに逢える

正直言って心配です 街であなたと逢った時
きっと2人は戸惑うでしょう だけど信じてます

すさまじい夏を通り過ぎた今だから きっと確かめに行きます
あのトキメキは決してウソじゃない 再び燃え上がれる事を信じて

9月になれば 9月になれば そう9月になればあなたに逢える

考察:この果てに、僕は東京で彼女と再会。待ち合わせ場所は新橋の蒸気機関車前。食事して、渋谷の薄暗いホテルに初めて泊まったんだ。その後は疎遠。夢ばかりを語る何の実績もない僕と、堅実に社会生活を送る彼女との隙間は埋められなかった。
ひと夏の、素敵なストーリーをもらった。あの夏あの島の盛り上がっていた様子も、いずれ書かねば。

つづく。