2013年、デビュー40周年記念、かつ約10年ぶり(同)となるスタジオ・アルバムアルバム『魂の叫び』をリリースし、バンドとして大きな存在感を改めて示した外道。前回リリースから約1年、ニューアルバム『Rocking The BLUES』をリリースした。
 
40年以上もバンドを存在させている彼らが、コンスタントな活動を展開し続ける方向と見られるこのリリース。ロックファンとしても外道ファンとしても今後を改めて期待できる動きでもある。今回はこのアルバムから見える彼らの姿を探ってみたい。
 
全編を通して聴いてみると、聴きなれたサウンドのなかに不思議な感覚を覚えることだろう。ここで「聴きなれた」という表現をしたが、まずこのポイントが実は難しい。ここでいう「聴きなれた」サウンドというのは、「ほぼ万人に共通するもの」という意味。人それぞれ感覚の指向は違うものであり、多くの人に同じような感覚を覚えさせることはほぼ不可能に近い。しかし恐らくこのアルバムのサウンドを聴いたときに「ロック」「ロックンロール」というキーワードをイメージする人は、たくさんいることだろう。それは、外道が初期より日本のロックの歴史を築き上げた一バンドであるという理由にほかならない。

たとえば彼らの代表曲の一つ「ビュン・ビュン」を髣髴とさせる「OH my my」や、泣きのギターを目一杯フィーチャーしたインスト「Life and Death そして運命」、ブルージーなフレーバーたっぷりの「Play BLUES」など、音に対する基本的な姿勢は前作『魂の叫び』のスタイルをほぼそのまま踏襲している。にもかかわらず、たとえば外道を知らない若いリスナーにも、外道というバンド、サウンドをアピールするだけではなく「ロックンロールってこんなにカッコイイんだ」と、新鮮な刺激を与えてくれるだろう。従来のロックファン、外道ファンにも、彼らのスタイルが変わらないにもかかわらず、「待ってました！」と叫んでもらえる、彼らのアクティブでフレッシュな面をアピールしている。
 
何より刺激的なのは、外道の中心メンバーである加納秀人の歌自体にある。まさしく「さあ一緒に踊ろうぜ」という楽しさを感じさせる「SHAKE IT BABY」や、「Rockで行こうよ！」、自らの厳しい人生に攻め入る様をアクティブに描いた「What a BITCH」や「逃げるんじゃねえ！」と、彼が言わんとしていることをさまざまなスタイルで見せているポイントは非常に印象的だ。
 
また、世の不条理に叫びを入れるようなハードなサウンドを聴かせる「It’s a MAD WORLD」のユニークな曲構成にも注目。この曲にも、加納のメッセージはふんだんに盛り込まれているが、それをAメロは語り、Bメロはユニゾンで分厚いハーモニーを聴かせ、メロディを曲中で引き立てるなど、ユニークな試みを大胆に行っている。曲を聴きながら詞の内容を追及していくと、さらに深い世界観を感じられるかもしれない。
 
さらに演奏レベルの高さにも注目だ。たとえば「Play BLUES」は、その整然としたサウンドにさっと聴き流してしまう人もいるかもしれないが、「聴き流す」ほどのプレーを見せるのは、相当に洗練されたテクニックとスキルが必要だ。かつ彼らのプレーにはリズム的にイーブンな16ビートのはずなのに、何故かグルーブたっぷりのスウィング感が見られる。具体的に譜割りで表現できる完成度も相当高いが、その上に「彼らならではのサウンド」を披露し、外道サウンドがこのアルバムには構築されている。まさに彼らにしか出来ないサウンドだ。
 
教則本で学べるテクニックもあるかもしれないが、外道のこのアルバムから学べるものはまた違った、音楽を作り上げる上で大切なものだ。彼ら自身の姿を明確にサウンドで表わしながら、一方で新しい発見を聴くものに与えてくれる『Rocking The BLUES』。本当にロックを知りたい、ロックから得られるものを知りたいと思う人は、是非その世界観を味わってみてほしい。