演奏

遠藤ミチロウ

TEXT:児玉圭一 PHOTO:野内幸雄

吉祥寺ロックシーンの奇跡!そんなキャッチコピーがふさわしいスペシャル・ジョイントライヴが開催されました。山口冨士夫バンド加納秀人率いる外道――1970年代初頭、時代の変化の大きなうねりの中で、日本のロックにマグマの如く熱い命を吹き込んだ、カウンターカルチャー世代の申し子達が一堂に会する、まさしく歴史的な一夜。あの時代のロックに見果てぬ夢を抱き続けている僕は、久々に熱い胸騒ぎを抱えながら、吉祥寺に向う中央線に揺られていました。
 
山口冨士夫―――1967年、実力派GSザ・ダイナマイツでデビュー。その後、希代のヴォーカリスト、チャー坊との邂逅をきっかけに結成された、日本のロックに関心を持つ者が避けて通れない伝説の村八分裸のラリーズタンブリングスティアドロップス等、そうそうたるバンドでの活動を経て、現在は自らの名前を冠したバンドで活動を続ける日本を代表するギタリスト。圧倒的な存在感を放つ唯一無二のギタープレイと一貫したロック的アティチュードは、世代を超えた多くのファンとバンドマン達から絶大なリスペクトを受け続けています。
 
外道―――1973年、ニューロックバンド、THE Mの元ギタリスト加納秀人を中心に結成された、日本のみならず、海外にもその名を轟かせている至上のロックンロールトリオ。1974年、不朽の名盤と賞賛されているライヴ盤、『外道』でアルバムデビュー。稀有なリフメイカー、加納秀人の破壊的なギタープレイと強靭なバンドサウンドによって多くのファンとフォロワーを生み出し続けている事は有名です。現在の編成は加納秀人(Guitar&Vocal)、松本慎二(Bass,ex:NIGHT HAWKS)、そうる透(Drums)の無敵のスリーピース。

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日本のロックの黎明期に活動を開始して以来40年以上にわたって、数多くのファンを虜にし、後続のミュージシャン達に多大な影響を与え続けて来たロックグレイツたちの夢の共演。幅広い年齢層の観客が詰めかけたGBのフロアーは開演を目前にして、期待と興奮が膨らみ、今にもはちきれそうな雰囲気。

 
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6時45分、オープニングSEの「Slush」が流れ、松本慎二そうる透がステージに上がり、程無く歌舞伎用の白髪かつらと白いキモノ姿の加納秀人が登場。沸き上がる歓声とどよめき。次の瞬間、加納秀人が「外道」のイントロをかき鳴らし、ライヴの火蓋を切って落とします。1曲目から容赦なくリフの一斉攻撃を解き放ち、力強い歌声を聴かせる加納秀人。その傍らでソリッドかつメロディアスなベースプレイでバンドをドライヴさせる松本慎二。そして、四肢を躍動させて強く激しくドラムを叩き続けるそうる透。最高のバンドが演奏する本物のロックに煽られたオーディエンスはビートに合わせて踊り始めます。外道は間髪入れずに疾走感溢れる「腐った命」を熱狂的にプレイ。
 
強靭なパワーコードに闘争心を掻き立られる「I CAN SHOUT, I CAN FIGHT」の後は、痺れるような泣きのギターが胸を締め付ける「いつもの所でブルースを」。加納秀人のJohnny Winter張りのブルースギターは、やはり壮絶。続いてバンドはデビュー曲「日本賛歌」、3人の火を噴くようなインタープレイが鮮烈な「イエローモンキー」「コウモリ男」を次々に披露。それにしても加納秀人の空中を舞っているかのように見える軽快なステージアクションは実に艶やか。

 
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1974年にリリースされた不朽のデビューアルバム『外道』からの「ダンス・ダンス・ダンス」のブレイクで加納秀人がメンバーを紹介。そうる透の気合の入った素晴らしいドラムソロが観客のグルーヴを煽ります。続いて演奏された、そうる透がヴォーカルを取る50’s風味の「悪魔のベイビー」はグッド・ロックンロールそのもの。
 
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「昨日、仙台で仕事があったのですが、そのまま眠らずに、ここに来てくれたみなさんに会いに帰って来ました!」加納秀人のMCに熱い歓声で応えるオーディエンス。ライヴは早くも終盤に入り、外道ファンお待ちかねの「何?」がスタート。ブレイクで加納秀人が音頭を取り、阿波踊りのように両手を上げて掌を下に向けて揺らす『外道ダンス』を一斉に踊りだす並み居る観衆。それに呼応して外道のプレイは一気にテンポアップ。踊り狂うようなビートに乗せられて、ステージとフロアーが一体となり、ライヴはピークへと突入。止まる事のない熱狂のなか、暴走アンセム「ビュン・ビュン」が炸裂。
 
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最後の曲は「完了」。激烈なギターリフと躍動するリズムは外道ロックンロールの真骨頂。ブレイクでは加納秀人がフロアーに飛び込み、ファンに囲まれながら渾身のギターソロを披露。縦横無尽にベースを唸らせる松本慎二、クライマックスに向ってドラムを連打するそうる透。ヒートアップする熱気と歓声…そしてエンディング…SE「やさしい裏切りの果てに」が流れ、至高のパワートリオ、外道のライヴは華々しく終了。

 

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◆外道 セットリスト

SE~SLUSH
M01. 外道
M02. 腐った命
M03. I CAN SHOUT, I CAN FIGHT
M04. いつもの所でブルースを
M05. 日本賛歌
M06. イエローモンキー
M07. コウモリ男
M08. ダンス・ダンス・ダンス
M09. 悪魔のBaby
M010. 何?
M011. ビュンビュン
M012. 完了
SE~やさしい裏切りの果てに

◆外道 公式サイト
http://www.ainoa.co.jp/music/gedo/

◆加納秀人 公式サイト
http://www.geocities.jp/guitarmanhk22/


午後8時過ぎ、聴衆から大きな歓声が起こり、山口冨士夫バンドが登場。編成は山口冨士夫(Vocal&Guitar)、P-Chan(Guitar:ブルースビンボーズ)、中嶋KAZ(Bass,ex:ティアドロップスフールズ)、安藤ナオミ(Drums:THE TRASH)のフォーピース。
 
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妖気漂うギターイントロダクションを披露する山口冨士夫のメンバー紹介後、ROLLING STONESの「Gimmie Shelter」でライヴはスタート。山口冨士夫のギターから放射される妖艶なリフに導かれ、オープニングから絶妙なグルーヴを聴かせるバンドのサウンドは身震いするほどのカッコ良さ。吟遊詩人のように即興で歌詞を紡ぐ山口冨士夫のヴォーカルと安藤ナオミのソウルフルなコーラスは、核爆発と戦争への危機感に満ちたこの曲の世界に大いなるリアリティを与えています。バンドは続けざまにブルージーに転がる「ROCK ME」を力強くプレイ。
 
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中嶋KAZの奏でるベースラインが不穏なムードを醸し出す「死ぬまでドライヴ」。「あんたと俺の人生にドライヴかけようよ」と語りかける山口冨士夫のメッセージに熱く応えるオーディエンス。曲は続いて、山口冨士夫のスリージーなカッティングとド迫力のシャウトが印象的な「瞬間移動できたら」へ。ここでP-Chanのロックンロールギターが場内を大いに盛り上げます。「今日のメニューはバンドみんなで作ったんだよ」という山口冨士夫のMC後に披露されたのは、60’sソウル・フィーリングの「Talk to me baby」。ビタースイートな メロディとフロント3人のラフなハーモニーは落涙モノ。
 
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ジェントルなスローバラード「捨てきれっこないさ」の美しいアルペジオギターの余韻も覚めやらぬうちに聴こえて来たのは、Jimi Hendrixの「Red House」。不敵な笑みを浮かべ、漆黒のサイケデリック・ブルースを奏でる山口冨士夫。曲はそのまま、1974年の傑作ソロ『ひまつぶし』から「誰かおいらに」へと雪崩れ込みます。焼けるようなブルースギターは圧巻の一言。
 
ショウは終盤に入り、山口冨士夫のシャープなカッティングから始まるのは村八分「操り人形」!ダンサブルなアフロリズムにのって絶妙なタイム感で絡み合う山口冨士夫P-Chanのツインギターが醸し出す呪術的なグルーヴに煽られて、観客は踊りまくります。バンドは続いて、聴く者を覚醒させる魔力を放つ「ひとつ」を圧倒的な迫力でプレイ。そして「俺の友達が作った曲だよ」と山口冨士夫が紹介したのはJohn Lennonの曲に忌野清志郎が日本語詞をつけた「Imagine」。80年代、2人が様々な形で競演し、共闘していたことは有名です。今から20年以上前から反原発の姿勢を貫いて来た山口冨士夫忌野清志郎……今は亡き盟友に優しく話しかけるように歌い、天に向かって両手を掲げて叫ぶ山口冨士夫。「清志郎!…居るんだよ、姿が見えないだけでな…」
 
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オーラスは「いきなりサンシャイン」。激しくローリングする極上のロックンロールナンバーが焦げつきそうに熱く会場をヒートアップさせ、狂熱の渦の中、ライヴ本編は終了。
「サンキュー、ありがとう…後で外道の人と2、3曲やらせてもらうよ……外道!」
 

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◆山口冨士夫バンド セットリスト

M01. Gimmie Shelter(ROLLING STONES)
M02. Rock Me
M03. 死ぬまでドライヴ
M04. 瞬間移動できたら
M05. Talk To Me Baby
M06. 捨てきれっこないさ
M07. 誰かおいらに
M08. あやつり人形(村八分)
M09. ひとつ
M10. Imagine(John Lennon/RCサクセション)
M11. いきなりサンシャイン

◆山口冨士夫 公式サイト
http://fujio-yamaguchi.com/


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山口冨士夫の呼びかけに応えて現れたのは加納秀人!日本を代表する2人のギタリストが初めて同じステージに立つ歴史的瞬間。一体何が演奏されるのか?……そして始まったのは村八分の名曲「逃げろ」。艶やかなフレージングと安定感のある加納秀人のプレイに絡む、ワイルドなカッティングとリフで魅せる山口冨士夫のスリリングなギター。2人の個性の異なるギタリストが展開する火を噴くようなギターバトルはやがてクライマックスに達し、曲はそのまま外道の「逃げるな」へ突入。ロック史上に残る貴重な場面を目に焼き付ける、夢のようなひととき……。
 
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お楽しみはまだ終わりません。加納秀人外道のメンバーを呼び込み、リズム隊が交代。「冨士夫とは昔から仲が良いんですけど、お客を前に2人で演るのは初めてです…海辺とかでジャムしたことはあるけれど…さっきの曲は冨士夫のリクエストで…次も冨士夫のリクエストです…これはおそらく歴史になるかもしれないよ…何故この曲か?それは冨士夫が絶対演りたいって言ったから…いくよ!」期待ではち切れそうなフロアーに向けて暴発したのは、外道の代名詞的な騒乱アンセム「香り」!
 
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ハイエナジーなパワーコードの一斉射撃。体中にアドレナリンが駆け巡るこの瞬間!会場は祝祭の空間と化し、観客と一緒になって「ゲ、ゲ、ゲ、外道!」とシャウトする山口冨士夫加納秀人。リズム隊の厚い音の壁を突き破ってうねる2人のギター。ステージはオーバーヒート直前。吹き荒れるフィードバック、連打されるドラム。やがて雷鳴のような轟音が曲の終わりを告げ、山口冨士夫バンド外道はステージを去ります。
 
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鳴り止まないアンコールの歓声に応えて、山口冨士夫外道が披露したのは加納秀人内田裕也に提供した「ロックンロールバカ」。そして最後に演奏されたのはクールに熱気をやわらげる無題のブルースジャム。歴史的瞬間が何度も炸裂したスペシャルライヴは、こうして終演を迎えました。
 
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ワン・ナイト・ドリーム……対抗文化世代を代表する2大巨頭が熱きバトルを繰り広げた、夢のようなジョイントライヴ。終演後、仲睦まじく歓談している山口冨士夫加納秀人を眺めながら、僕は今夜2人が発したメッセージを噛み締めていました。そのメッセージを端的に表せば「この世の中、どんなに未来が見えなくて、崖っぷちに追い込まれても、逃げずに闘って生き延びろ」ということです。40年以上にわたり、一点の曇りもなくアウトサイダーとしての姿勢を貫き続ける山口冨士夫加納秀人率いる外道。彼等から荒野で笑うためのヒントを貰った、忘れられない貴重な一夜。そしてDIE-HARD ROCKERSたちは、必ず再び会いまみえ、怒りと誇りに満ちたロックの真髄を見せてくれることでしょう。LONG LIVE ROCK ‘N ROLL !!!
 

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◆山口冨士夫&加納秀人セッション
 セットリスト

M01. 逃げろ(村八分)~逃げるな(外道)
M02. 香り(外道)
M03. ロックンロールバカ
M04. UNTITLED BLUES JAM


※山口冨士夫&外道のサインをBEEAST読者1名にプレゼント!
応募の詳細については近日中にビーストインフォメーションにて公開します
http://www.beeast69.com/category/news

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