連載

ロック1年生エントリーNo.20 TARANTonS

TEXT:鈴木亮介 PHOTO:荻原ひかり、鈴木亮介

PhotoBEEAST復刊に伴い、創刊当初から続く長寿連載「ロック1年生」も復活!このコーナーでは毎回、TEENAGERへのロングインタビューを通して、彼らがなぜ音楽に魅せられ、どのような日常を過ごし、どういう展望を描いているのか、また、バンドブーム2世として親の影響はあったのか、その頃の音楽をどう考えるか…など、現30代~50代が気になる息子、娘たち世代の本音に迫ります。

今回登場するのは、タイトル通り1年生の、TARANTonS!2010年1月、青山学院高等部の同級生により結成しました。メンバー7名全員19歳のブラスロックバンド!

1年生と言っても初心者バンドではなく、結成3年目・全員大学1年生のバンドです。今回は、多くの学生バンドにとってターニングポイントになる「卒業・進学」にも焦点を当てつつ、彼女らのここまでの足跡を辿ってみたいと思います。「バンドの活動、どうしようかなぁ」と悩んでいる同世代の皆さんにとってのヒントが見つかるかもしれません。

まずはメンバーの簡単なプロフィールから
PhotoPhoto

Natsumi(T-Sax)
TARANTonSのシャイガール
実はバレリーナとしての一面も!

Arisa(A-Sax)
TARANTonSの母的存在
いざという時にやってくれる、安心感!

PhotoPhoto

Rina(Vocal&Guitar)
TARANTonSの天才
全作詞作曲を担当。特技は妄想?

Ayana(Bass)
TARANTonSの秀才キャラ
単車を乗りこなす尾崎豊マニア!

PhotoPhoto

Naoko(A-Sax)
TARANTonSの会計係
清楚キャラだけど…気付いたら寝てる!

Tomoyuki(Drums)
TARANTonS唯一の男子メンバー
さりげない気遣いが光る、デキ男!

Photo

Honoka(Trombone)
TARANTonSのムードメーカー
驚異のマシンガントーク!



11月11日、東京・町田。2日後のライブに向けて練習中のメンバーを訪ねました。
7人を相手に取材するのはロック1年生史上最多!7人の迫力に圧倒されて、思わず声が裏返ってしまいました…

吹奏楽に馴染まなくて…バンドへの溢れる思いが結実!
―――高校生の頃にこうしたブラスロックバンドを組むということ自体とても珍しいと思うのですが…まずはバンド結成の経緯から教えてください。

PhotoRina:TARANTonSを結成したのは2010年の1月6日です。Natsumi以外の6人と、今は辞めてしまったテナーサックスの男の子、トランペットの女の子の計8名で結成しました。きっかけは、その少し前に組んだビッグバンドです。吹奏楽部の同級生ら13~14人で、部活の中でビッグバンドをやってみようということになって、スタンダードなスウィングガールズみたいなジャズを練習して、クリスマスライブをやりました。楽しかったけどメンバーの中には温度差があったので、やる気のあるメンバーを集めてもう少し少人数でやりたいということで、結成しました。

Honoka:私とRinaが吉祥寺で遊んでいた時に、たまたまライブハウスの前を通って、JYOJI-ROCKのチラシを見て「これ出ようよ」っていう話に。結成してすぐの頃です。最初はオリジナルがなかったので、椎名林檎東京スカパラダイスオーケストラのコピーを練習して、一発撮りして音源を送ったところ、運良く本選に出られることになりました。よくよく話を聞いてみると、コピー可ではあるものの他の出演者はみんなオリジナルをやるということで、これはやばい!と(笑)私達も急遽オリジナルを作ることになりました。

Rina:それに加えて、管楽器の入っている曲のコピーとなると選択肢が少ないので、だったら自分達で作った方が早くないか?と考えて、作りました。

―――なるほど。結成してすぐの初舞台が、あのJYOJI-ROCKだったとは!そんなにすぐに曲が作れるのも驚きですが…Rinaさんはこのバンドの前に作曲経験があったのですか?

Rina:吹奏楽部で編曲経験はありましたが、1からオリジナルで、というのはこのバンドが初めてですね。それで初めてできた曲が「青写真」です。私は管楽器をベースに作曲しています。まずやりたいフレーズが浮かんできて、そこから広げて肉付けしていきます。

現パート、実は第2志望? 7人の多彩な楽器歴
―――ではここで、メンバー個々の音楽を始めたきっかけを教えてください。

Tomoyuki:僕は小学校の時にエレクトーンを習い始めたのが最初です。その後、中学で吹奏楽部に入り、管楽器は難しそうだなぁと思ってドラムを始めました。あと、ベースも中学の時に少しやっていましたね。高校では、吹奏楽部には入らず他の所でバンドを組んでいました。そんな中、ビッグバンドで元々ドラムを叩いていた人が出られなくなってしまい、代わりを探しているということで自分の所に声がかかり、TARANTonSに入ることになりました。

PhotoHonoka:幼少の頃はピアノをやっていました。小学生の頃に映画『スウィングガールズ』を見て、管楽器いいなぁと思って中学で吹奏楽部に入りました。本当はサックスがやりたかったのですが、オーディションで落ちてしまい、トロンボーンをやることに。高校でも吹奏楽を続けました。でも、自分では吹奏楽にあまり向いてないと思うようになって…それで、バンドがやりたいという気持ちが強くなり、仲間を誘ってTARANTonSを結成しました。ちなみに、普段は小田和正とかをよく聴きます。バンドと全然違う音楽ですね(笑)

Arisa:小4からクラブ活動が始まって、私は当初バドミントンを希望したのですが、何故かじゃんけんで勝ったのに「君は吹奏楽に行きなさい」って先生に言われて、吹奏楽にさせられました!さらに、その中だったらフルートがやりたいなぁと思ったのですが、フルートは人気で、不人気なサックスを友達に「やりなよ」と勧められて、「じゃあ、やります」と(笑)。それ以来サックス一筋ですね。今はアルトサックスですが、中2から高3まではバリトンサックスをやっていました。

Natsumi:私は幼少の頃からピアノをやっていたので、何となく音楽には親しみがありました。小4から小6までは金管クラブでトロンボーンを吹き、中学の頃は吹奏楽部でテナーサックスをやっていました。吹奏楽部に所属していたのは中学までですが、その後は仲の良かったRinaたちとバンドを組んで、キーボードを担当していました。内心、TARANTonSはライブに1回行ってかっこいいなぁと思っていたので、誘いがあったときはとても嬉しかったです!

PhotoNaoko:小5の時に管楽器がかっこいいなと思って、小学校の金管バンドに入りました。最初はトランペットでしたが、肺活量があまりなくてキツかったので、楽な楽器はないかと顧問に相談して、アルトホルンに転向。楽器を買いに行ったら、「アルトホルンは吹奏楽ではマイナー。せっかくやるならサックスの方がいいんじゃないか」とオススメされて、アルトサックスと出会いました。その後中学で吹奏楽部に入り、高1まで続けていました。

Ayana:小4で吹奏楽のクラブに入り、トランペットをやることになったのがきっかけです。一年間やったけどあまり高い音が出ず、飽きてきたので先生に他の楽器をやりたいとお願いしたところ、「チューバがある」と勧められました。それで小5から高2まで、部活でチューバをやっていました。その他にも、小6の頃に尾崎豊に憧れてアコギを始めて、またQueenが凄く好きだったのでエレキギターを買って、自分でバンドスコアを見て練習するようになりました。さらに、高1の誕生日に友達からベースをもらって、一時バンドを組んでいたこともあります。ベースでライブに出たことはなかったのですが、何故か友達の間で私がベースもできると知られていて、先ほど話が出たビックバンドを組むことになった時、自分ではチューバをやるつもりが、誰かに「ベースできるんでしょ?」って言われて、ベースで入ることになりました。

PhotoRina:私も中学で吹奏楽部に入ったのがきっかけです。当初はサックスがやりたかったのですが、オーディションで落ちてトロンボーンをやることになりました。中高と吹奏楽部を続け、今でも大学のビッグバンドに入ってトロンボーンを続けています。TARANTonSではボーカルとして、最初はマイク1本のみだったのですが、バンドとして音が薄いかなと感じるようになり、大会等に出た際にもキーボードかギターを入れた方がというアドバイスを周りからもらったので、去年の12月頃からギターを買ってやるようになりました。まだ一年ほどです。ちなみに、Natsumiたちと組んでいたバンドではベースをやっていました!今はもうバンドが解散したのでやめちゃいましたが…

順風満帆なスタート、しかし夏に最大の危機が!
―――皆さん吹奏楽の経験があるということで、実力は十分にあったし、練習もスムーズに行ったのだと思います。冬に結成し、春には数々の大会にノミネート。順風満帆な滑り出しのように見えたのですが…

PhotoArisa:そうですね。TARANTonSは少人数で仲良くやれたので、多すぎてまとまらないところもある吹奏楽に比べ、楽しく活動出来ていました。JYOJI-ROCKの本選出場に加え、ラジオにも出演して…今思い返してみれば、だいぶ調子に乗っていましたね(笑)

Rina:コンクールは色々エントリーしました。編成が珍しいから1次審査は通るけど、その後落とされる…ということが何度かありましたが、その中でもYHMFだけは決勝に行くことができました。しかしそこで、TARANTonS最大の危機が…

Honoka:YHMFの決勝の日と、高校の吹奏楽部のコンクールの日が一日違いで、YHMFに出場するためには吹奏楽部の直前の全体練習を休まなければいけませんでした。そこで、どっちを優先するんだ?という話になり、メンバーの中で吹奏楽部に入っている人と入っていない人の間で壁が出来てしまったのです。

―――補足しておくと、吹奏楽部に入っていたのは、Rina、Arisa、Honokaと、元メンバー2名の計5名で、入っていなかったのがAyana、Tomoyuki、Naokoの3名ですね。

PhotoHonoka:最初にテナーサックスをやっていた男の子が「俺は吹奏楽部の方を頑張りたいから前日の練習に出たい」と言って。私たち他の吹奏楽部組は当初YHMFを優先したいと思っていたのですが、少し経って、やっぱり吹奏楽のコンクールの方も高校での吹奏楽部として締めくくりだから大事じゃない?と思うようになりました。その思いを、吹奏楽部に所属していないAyanaたちに打ち明けたところ、「何なの?」となって…

Ayana:どっちも捨てられなかったんだよね。それで互いに雰囲気も良くないまま本番が近付いてきて…。

Honoka:片や吹奏楽部の方は、コーチから前日に「私たちはバンド頑張りたいから明日の練習に出ません」って皆の前で言え、って言われて。部員が80人以上いる前で…そんな空気壊すことできないよねってことで話し合って。

Rina:あれは修羅場だった!結局YHMFを辞退することになったのですが、「私たちはこれからもTARANTonSやっていきたいからよろしくお願いします」ってAyanaたち3人に言ったら、「ありえない!何考えてるか分からない」って言われちゃって…。その後出場が決まっていたJYOJI-ROCKも、この状態では出る気になれないということで、辞退することになってしまいました。

Photo高3の夏、吹奏楽もバンドの決勝大会も、どちらも一生に一度しかないチャンス。二律背反状態で、メンバーの仲にも亀裂が入ってしまいました。その後、年明けまでメンバーが集まることはほとんどなかったといいます。
「活動休止状態」…メンバーは全員同じ大学への内部進学が決まっており、受験勉強こそなかったものの、高3の冬ともなれば「自然解散」となってもおかしくなかったはず。
TARANTonSは一体どのような経緯で、再始動することになったのでしょうか。そして、その後さらに待ち受けていた危機とは??
気になる続きは記事後篇で!

photo
TARANTonS
http://x31.peps.jp/tarantons/

photo
【取材協力】
クラウドナインスタジオ 町田店
http://www.cloud-9-studio.com/studio/machida.html