演奏

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TEXT:まことZ PHOTO:N-yukano

BEEASTのコラムでもお馴染みの、Kelly SIMONZ(以下、Kelly)。Kellyのことを知らない人間にKellyの話をすると、え?外人ですか?なんて聞かれることも多いのだが、BEEASTの読者ならもう彼のことは当然のごとくご存知だろう。(これに関するエピソードは、是非BEEASTのコラムを参照してほしい。)日本人ギタリスト達の中には、和製Yngwie J. Malmsteen(以下、Yngwie)と呼ばれるスーパーテクニックを持つ者がいるが、彼もその一人。そんなKellyのサマーライブだ。場所はBEEASTでもお馴染みの、高円寺ShowBoat。Kellyは身体も大きく見た目はいかつい感じだが、楽屋に挨拶に行くと、笑顔で迎えてくれた。楽屋の雰囲気もとても和やかで、リラックスしていた。
 
会場はスタンディングで満員。客層は男女半々くらいで、20~30代が多い様だ。このジャンルのコンサートで若い女性がこんなにもいるのは、特異にも感じられた。もっとゴツゴツした男臭い空間を想像していたのだが、まるでダンスミュージックでも始まるかの様な雰囲気だ。ステージ上にはMarshall 1959とFender Tone Master Headが。Kellyによれば、1959がメインで、Tone Masterはディレイ音の出力に使っているとのことだ。Kellyの抜けの良いクラシカルなトーンは、1959によって作られている。

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開演時間を過ぎた。15分押しでオープニングにパイプオルガンのクラシカルな曲が流れ、Kelly SIMONZ(Guitar,Vocal)、川崎哲平(以下、川崎:Bass,Cho)、Yosuke Yamada(以下、Yosuke:Drums,Cho)、坂本学(以下、坂本:Guitar,Cho)が入場、歓喜の声が上がった。インスト曲の「Future Desitnation」が始まり、8ビートが刻まれる。ギターのリフはエッヂの利いたドライブサウンドで、会場に一気に火がついた。早々にKellyの超絶速弾き。曲の中盤でテンポを落とし、メロディアスな鳴きのフレーズ。そしてKelly坂本のハモリギターと、最初の曲から全てが投入された感がある。続けざまに「Anything Goes」。ギターのハモリフレーズから始まるインスト曲だ。フレーズの切れ目にKellyが客席に右手を差し向けると、観客がそれに呼応する。ファンとの間にある暗黙の決めごとらしい。そんな中でも、Kellyのフレーズにはよく感情がのっている、歌心のあるギターを聴かせる。途中、バスドラを中心とした8ビートが刻まれ、楽器隊の音が小さくなると、そこでKellyが観客を煽り、会場は一体となり沸いた。その後Kellyの超絶速弾き、坂本とのハモリ、そしてキメとしてピックを投げるKelly。最初の2曲を続けて聴いて、Kellyのポテンシャルとその指向性を、これでもかといわんばかりに堪能できた。
 
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ここでMC。Kellyは「です」「ます」調のしゃべり方で、お笑い芸人の様にトークがユニークだ。これ以降ほとんどの曲の合間にMCが入り、笑いを取り続けることとなる。印象としては、演奏:しゃべり=6:4くらいの感じだろうか。それだけ「しゃべり」を得意とする、超絶ギタリストなのだ。
続いてKellyの教則曲から「EX40」。フュージョンっぽい曲調で、カッティングによるギターバッキングを披露。ここでは川崎のスラッププレイからランニングベースがフィーチャーされ、Kellyの他の曲からすると、異色な感じだ。この曲調でもKellyは相変わらず超絶フレーズをのせてくる。そしてこの曲では、元々Kellyの教え子という坂本がソロプレイを披露。Kellyとは若干スタイルが異なるものの、さすがはKellyの生徒、かなりのテクニシャンだ。坂本のソロの後に川崎のベースソロ、そして再びKellyがメインをとる。そして同じく教則曲から「EX97」。先ほどの「EX40」よりもテンポを落とし、同じカッティング系のファンク調だ。この曲ではKellyのソロ、川崎のソロ、再びKellyのソロだった。
 
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続いてKellyの作品のうち、ヨーロッパで発表したアルバムにボーナストラックとして収録されたという「Dancing On The Edge」。彼のプレイの原点の重要なアーティストとして、Yngwieがいるが、曲調、フレージングから、ギターのハモり方まで、ここではイングヴェイを彷彿とさせる。Kelly坂本が速弾きをしながらハモるのは、目を見張るものがある。2人が相当なテクニックを持ち、かつ息が合わないと、これだけのハモりはできないからだ。最後にはKelly坂本によるソロの掛け合いも行われたが、こうして比較すると坂本のアウトしたフレーズから彼の志向が伺える。ヘヴィ・メタル系はもとより、フュージョン系、ジャズ系も好んでいるようで、その個性がよく現れていた。
 
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続いては「Blue Monday」。ピアノから始まるバラード曲だ。ギターはボリューム奏法から始まり、鳴きのギターフレーズが続く。鳴きのフレーズでは「顔で弾く」Kelly。ここまで超絶を中心に取り上げてきたが、この「鳴き」のギターこそKellyの真骨頂とも言える。Kellyはフレーズに感情をのせる能力があり、のせ方は尋常ではない。さも、ギターを弾くたびに命を削っているかの様だ。身も心もフレーズと一体になるKelly、かなりの体力を消耗するはずだ。
 
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そしていきなり8ビートの、テンポのいい曲調に変わった。ボーカル曲の「Silent Scream」だ。チェンバロの音が入った、モロに様式美といった感じだ。さすがKellyの得意とする曲調だけに、超絶速弾きも感情がのった鳴きのギターも、これでもかというほどにグイグイと主張してくる。特にハイポジションでのチョーキングは、Yngwieを彷彿とさせ、Yngwie好きもニヤリとしてしまうところだろう。そしてボーカル曲の「Stay In My Heart」に流れる。Kellyが19歳の時に作り、20年以上歌い続けている曲だ。この曲は20年以上歌い続けるだけの価値を感じる、実にいい曲だ。シンセで始まるバラードなのだが、20年以上前の作品でも全く古くささを感じない、普遍のメロディを持っている。サビでKellyが声を張るところも、かなりシビれる。
 
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ステージはクライマックスを迎え、カバー曲が3曲続く。KellyGary Mooreが好きとのことだが、Gary Mooreにちなんだ曲である。まずはBlue Murderの「Billy」。Blue Murderの中心メンバーであるJohn SykesGary Mooreに影響を受けているから、とのことでの選曲だ。やはりカバー曲ともなると、これまでのKellyの曲調とはだいぶ異なる。先述の“Yngwieらしさ”を醸し出す要因の一つであるハーモニックマイナー・スケールを使わないため、灰汁が抜けるとでも言った感じだ。この曲ではKellyのメインボーカルに加えて、川崎、Yosuke、坂本もコーラスをとっていた。全員がコーラスをとれるバンドは、音の厚みが出て素晴らしい。
 
続いてGary Mooreの「Spanish Guitar」。この曲ではクラシックギターが用意された他、Gary Mooreの音を出すためにレスポールタイプのギターを手にしたKelly。クラシックギターとエレキを交互に弾いていた。曲の後半でテンポアップしたのだが、ここからは例のKellyのプレイだ。カバー曲であっても、やはり最後はKellyの色になるのだが、これはファンも期待していることだろう。この曲ではYosukeが笑顔で叩いていたのも、印象的だ。とりあえずの最後が、Gary Mooreの「Wild Frontier」。内戦のあるGary Mooreの故郷、アイルランドのことを歌った曲で、政治色が強い。Kellyはこの曲をじっくり聴いて欲しいと言う。筆者は英語がわからないので歌詞を聞いてもピンと来ないのだが、英語を理解するKellyにはこの歌が心にしみるのだろう。「Back to the wild frontier」というサビが印象的。Kellyにも取り戻したい故郷があるのだろうか?そんな何かを思わせるようなプレイで、ステージを締め括った。
 
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一度メンバー全員がはけてからの再登場、アンコールだ。出て来て早々、またもやKellyのMC。観客はずっと笑わされっ放しだ。インスト曲であるためもうマイクは要らないと、マイクを外したにもかかわらず、それでもしゃべり続けるKelly。壇上からの生声は聴き取りづらいのだが、それでもずっと笑いをとり続けている。いよいよ「Pray For The Moon」の演奏開始。ボリューム奏法から始まるバラードだ。やはり鳴きのフレーズを顔で弾くKelly。ここにきて最後の力を投入するがのごとく、特に感情的な印象だ。魂を込める、そんな言葉で表した方がいいかも知れない。そして続けざまに、最後の最後、「Opus#1」。ノリのいい8ビートの激しいインスト曲で、最後に盛り上がって終わるのにふさわしい選曲だ。Yngwieを髣髴する曲調だが、ファンにも人気の曲。様式美全開、Yosukeがツーバスを叩き、Kellyは持てる技術と感情の全てをぶつけた。最後はKellyがピックを、投げる、投げる、投げる。そしてYosukeがメンバー全員のサインの入ったドラムのヘッドを投げて、ファンサービス。
 
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◆ 公式サイト:
http://kellysimonz.com/

 
◆セットリスト:
M01.Future Desitnation
M02.Anything Goes
M03.EX40
M04.EX97
M05.Dancing On The Edge
M06.Blue Monday
M07.Silent Scream
M08.Stay In My Heart
M09.Billy
M10.Spanish Guitar
M 11.Wild Frontier
Encore
E01.Pray For The Moon
E02.Opus#1

これにて終演。コンサートのタイトルに「超絶・壮絶・悶絶」とある。ずっとずっと熱かった、Kellyの超絶速弾き。これだけの音数のつまったギタープレイは、壮絶だった。そして最後、悶絶とは何だったのだろうか。それは、感情をのせた鳴きのプレイのことだったのではないだろうか。悦に入った様な、悶絶した様なあの表情、あれのことを言っていたのか。そして感情をのせればのせる程、心も身体も消耗するため、そのことを悶絶と言ったのだろうか。
 
筆者の感想は、超絶、感情、笑い、の3つに集約される。Kellyだからこそ表現できる、身と心が一体となった音楽。これはまさに上質のものであり、是非BEEAST読者にもKellyのライブコンサートに足を運んで欲しい。そこで体験できるものは、自分に何らかの影響を与えるだけの力を持っているはずだからだ。そして、音楽的にも、生でKellyのプレイに接することの意義を感じるのはもちろんだが、生だからこそ触れられるKellyのお笑い的要素も、お勧めだ。ずっと笑える。本当に面白い。2時間弱の、濃密な時間だった。
 

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