特集

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TEXT:桂伸也 PHOTO:三橋コータ、曲香、N-yukano、桜坂秋太郎、桂伸也

 
新たな時代の風雲児となるべく奮闘を続けているロック男子たち。その姿を追う特集「ROCK SAMURAI STORY」。今回は、西洋、東洋のサムライ5人組による新たなロックの開拓者fadeを、4回のシリーズでお送りする。Part2、3では、Ozzfest Japanのステージを終えた直後の彼らに行ったインタビューをお送りする。
 
前回に引き続き、今回もfadeのメンバーに対する個別インタビューをお送りする。今回登場するのはベーシストのnoriyuki、そしてドラマーのruiだ。
 
前回のインタビューでは、バンドのフロントマンと位置づけられるJon、kansei、5°の胸の内を探ってみたが、今回は文字通り縁の下の力持ちとなるリズム隊二人の思い、考えをたずねてみた。ステージの位置づけとしても、またバンドの今を思う考え方としても、フロントマンとは違う視点を持った二人だけに、また別の角度から見たfadeの一面が垣間見られることだろう。
 
hana
 

1.noriyuki(Bass)

 

 

バイオグラフィー:
 
京都出身、ニューヨークとシンガポールで育つ。kanseiruiがニューヨークで始めたfadeの原型バンドに、3人目のメンバーとして1994年に加入。華のあるビジュアルと、非常にインテリジェントで切れ味鋭いベースプレイで、fadeを支える中心として活躍を続けている。

 

—前回のインタビュー時は黒髪でしたが、ヘアスタイルが派手になりましたね?何か心境の変化のようなものでもあったのでしょうか?

 
noriyuki:いや、そういうわけでもないですけど(笑)、まあ今度お世話になるレーベルの方々とお話しした中で、イメージを一新してみようというお話もありまして。
 

—なるほど。今日のステージはいかがだったでしょうか?ステージ前に少しうかがった際に「いや、もういつも通りですよ」というお話だったかと思いますが、今回も平常心という感じだったのでしょうか?

 
noriyuki:そうですね。でもまあ普段これほど大きなステージに立てることはそんなに多くの機会はないので、そういう意味ではいつもの自分たちをそのまま出して、これだけのお客さんに受け止めてもらえるかどうかというところが大事だと思っているので、そこに向けて自分たちは全力投球するだけだと思っています。
 

—でもやはりこれだけのステージというところもあり、ステージを終えた爽快感というのもあったのではないでしょうか?

 
noriyuki:確かに。以前LOUD PARKや韓国のフェスに出たときもそうですが、こういった場所でできる、これだけのお客さんに見てもらえるというところは特別なところだと思っています。でもたとえメジャーになってこの状況が日常化するようなことになったとしても、やっぱり今まで積み上げてきたライブハウスでの見せ方やライブハウスでのfadeは忘れないようにしたい。そんなところで、今日のステージングも多分そんなにいつもと変わらない、いつもの自分たちが出せればいいと思っていました。
 

—逆にそれが今回、メジャーデビューするところで、世界に向けた、という部分があると思いますが…

 
noriyuki:そうですね。世界各国のアーティストもいるし、日本のアーティストもいるレーベルですから、本当にいい機会というか世界にこちらの音を届けてもらうお手伝いをしていただけるということは、すごいことだと思いますね。
 

—ではその期待に応えて、こういった大舞台が「当然だ」という位置まで、自分たちは行くべきだ、とお考えでしょうか?

 
noriyuki:まさしくそのとおりだと考えています。やっぱりそれは自分たちがメジャーレーベルからデビューする上での責任を認識していますし、より多くのお客さんに音を届けて、受け止めてもらえるようなアーティストになっていかなければいけないと思う。やっぱりメジャーに上がってもライブハウスでやっているだけじゃ意味がないと思いますし、今度お世話になるレーベルの方々の持たれる希望もヒシヒシと伝わってくるので、責任を強く感じるところもあります。
 

—今回メジャーデビューをするに当たって、自分たちの中でガラっと変わった部分はあるのでしょうか?あくまで自分たちは自分たちであり、本質は変わらないとは思いますが、次のステップに移るために敢えてチャレンジするようなポイントもあるのではないかと思いましたが。

 
noriyuki:そうですね…もちろんライブをやっていく上でとか、物理的に新しいことをやっていくということでは、もちろん変わっていく部分はあると思います。でも、気持ちの部分で見せるライブをやるということであればそこは変わらないと思っています。どういう場所でやろうが、fadeの本質っていうのは変わらないですし、その上で次のレベルにステップアップする中でいろんなことができる、新しいことができるようになればいいと思いますし。そういう意味でサポートしてくれるお客さんの期待を裏切らないと同時に、逆にある意味期待を裏切っていきたい、良い意味でそうなっていきたいと思います。
 

—乞うご期待、というところですかね。

 
noriyuki:そうですね。実は僕ら自身も楽しみだと思っているんです。今はまだなにができるのかはわからないけど、時間がたつにつれていろんなことができるようになればいいなと思っています。
 

ベーシストは、バンドのリズムとハーモニーをつなげる役割がある。その役割の中noriyukiは派手なフレーズよりどちらかというと堅実なベースラインをキープするタイプのベーシストだ。インタビューから垣間見られた彼の視点は、そんな彼のプレイのように「彼個人のもの」というよりは「バンド全体のもの」、いわばバンドのスポークスマン的な視点であるように感じられる。
 
彼はベースプレイ同様、バンドのメンバー個々の意見を束ね、かつfadeがどういう方向に進むべきかを常に客観的に見据えている。fadeがあることで彼の存在は映える。逆に、fadeは彼がいなければ存在できない。彼がfadeの今後を決定づけていると言ってもいい。
 
彼の考える未来、そして彼らの未来はどのような方向に進むのか?メジャーデビューを決めた現在、彼が語った思いには強い責任感とともにポジティブな期待感が見える。今後のfadeにますます期待していくほかない。
 
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2.rui(Drums)

 

 

バイオグラフィー:
 
ニューヨーク生まれのニューヨーク育ち。ワイルドで激しいドラミングと繊細な作曲家の二面性を持つ。fadeでは全楽曲を手がけている。fadeの活動以外では、TVアニメ「NANA」主題歌であるOLIVIA inspi「REIRA」の曲「Wish」では曲をOLIVIAと共作、アレンジを手がけたことで有名。

 

—これだけ大きなイベントに出られるということは、バンドとしては大きな喜びがあるかと思いきや、みなさんの返答としては「いつも通りの心境です」と、意外にもクールな様相が見られたのが印象でした。

 
rui:そうですね、普段と変わらないというか。大きなところでやろうが、小さなライブハウスでやろうが、やることはやっぱり基本的に変わらないので。もっと多くの人に見てもらえる、というところでの嬉しさはありますけどね。これが決まったからということでそれほど急激にテンションが上がるようなことはなかったんじゃないかなとは思いますね。
 

—逆にそれは例えば、結成10年という中で、その10年前から「こういうところに立つバンドとなるんだ」という目標があったからとか?

 
rui:いや、そういうわけでもないかな。みんなそれは個別には考えていたかもしれないですけど。10年前の方がテンションは上がっていたと思います。こういうふうに実際になると「なるほど、こんなものなのか」くらいの(笑)。まあ、これがメインアクトになるとか、例えばトリになると違うのかもしれないですけどね。でも、僕はライブをやるということに対しては基本的に同じだと思うので、やっぱりそれはみんなも同じように考えているんじゃないかと思います。
 

—でも実際にこれだけの大きなステージでやると、プレイしたときの気持ちという部分で違いはありますよね?

 
rui:もちろん、それはあります。今日はやっていて実に楽しいと思ったし。僕は小さいハコの方が大きいところより緊張するんですよ。大きいとお客さんとの距離感もとれるし、自分のスペースが確保できる感じ。お客さんの顔もよく見えるし、大きい方が落ち着くんですよ。
 

—なるほど。今回のイベント等で、ネームバリュー的にもステップアップし、大きなイベントに呼ばれるようになったことや、メジャーデビューの話等もありますが、そこでご自身に心境の変化はありますか?

 
rui:いや、全くないですね。そういうのは全くない。確かに自分たちの評価が上がることは嬉しいと思います。でも、これは言ってもいいことなのかはわからないですけど、いろんな人たちも集まってきますしね(笑)。変な話、3年前から自分たちがやっていることはなにも変わっていなくて、そのころには相手にもしてくれなかった人が、急に低姿勢になるようなこととか。ちょっと寂しい気もします。「本当に僕たちを良いと思ってくれているのか」と人間不信なところも(笑)。もちろんスタッフの方々にいろいろ頑張ってもらえたおかげで現状を変えてもらえたというのもありますし、それは嬉しく思っています。チャンスをいただけるのはとてもありがたいし、そこに向けて全力で取り組んでいきたいとは思っています。
 

—レーベルがやはり海外に向いた大きなレーベルという点に合わせて、fade自体が和洋折衷的なコンセプトを見せている部分ってありますよね?そんな意味でも方向的に合致するものがあり、なにらか強い意気込み的なところもあるかと思いましたが…

 
rui:意気込みというか、プレッシャーですね(笑)。まあ日本と世界で、ウケるものも違う、逆に両方で被ってウケる部分っていうものも逆にあるでしょうし、そういう意味で曲を作っていくにあたって考えさせられる部分ってあるんですよ。「これは日本でOKだけど、海外ではどうなの?」とか、その逆とか。こういうイベントもそう、例えば今回のOzzfestにも登場したTOOLは僕も大好きだけど、日本での評価はイマイチ。だけど海外に行ったらすごい人気なんですよ。
 

—確かに。本日の彼ら(TOOL)のステージもインパクト十分でしたが、日本国内で彼らの名前はそれほど多くは出てこないですね。

 
rui:そんなところで、僕たちはここ日本に住んでいるわけだし、こっちにウケるものを作らないといけない。だけど日本だけを中心として考えたら、「それで世界にも行けるの?」って考えると、それは僕は違うと思うので、曲を作る際に「日本でウケること」「海外でウケること」とか、そんなことをすごく感じました。まあ、プレシャーという言い方が正しいかはわからないですけど、ハッパを掛けられているというか、そういう万国共通なものを作らなければいけない、そんなことを考えるようになりましたね。
 

—具体的には、ruiさんの中でどのような変化があったのでしょうか?

 
rui:以前はインディーズレーベルからのリリースをしていたし、自分たちが好きなものを作る方向だったけど、今はもっとお客さんの目線からというものを、見ているつもりです。だから以前は感触がいいな、と思って決めていたものが、今回は別にそれほどと思っていない。それは書いている僕自身が決める話じゃなくて、リスナーやスタッフ、レーベルサイドで「この曲がいいな」って選んでもらう話。たまに僕自身が「この曲はイマイチだな」と思っていた曲が反応良かったり、それをライブでやってみると一番盛り上がることもある(笑)
 
だからそこに自分の意見は言わなくなりました。作った曲に対してみんながどうリアクションするのか?メンバーに関してもそうだけど、例えば僕が作った曲に対して、「どの曲を入れたい?」という話を関係者含めしているところに、僕は参加しないんですよ。結果的に、今は自分自身でなにか「自分が好きなもの」とか、そういったリミットを決めないようにはなりましたね。
 

—曲作りのプロセスや考え方自体には、特に自分自身でなにか大きく変わってきたというところはないのでしょうか?

 
rui:そうですね。基本的にはやっていることは一緒なので。
 

—例えば今回デビューするのは、THUNDERBALL667というロック/へヴィメタル界でも名だたるメンツが集まっているレーベルですよね。最終的なジャッジとして作品の良し悪しをみんなに決めてもらうことになるとしても、作曲面でレーベル色を意識するところはありませんか?

 
rui:いや、それは逆にないですね。というかそれをやっちゃうと自分たちが無くなっちゃうじゃないですか?もちろんカッコいいバンドもそろっているところではあるけど、彼らは彼らで、俺たちは俺たちという考えですね、今は。昔は逆にそういう考えもあったかもしれません。ちょっとなにかカッコいいバンドが出てきたら、「あっ、こんなふうになりたい」っていう感じになったり、真逆の方向でもそうなりたいと思ったり。昔はそんなふうにしていたこともあったと思います。10年やってきたというのもあるけど自分たちのスタイルっていうのが出来上がってきていると思うので、それをさらに追求していくことが今は大事なんじゃないかと思っていますね。
 

先述のnoriyukiと、ruiの思いにはなにか共通したものがあるように見える。ドラムというバンドの最後尾の定位置で常にバンド全体を見ていること、そしてfadeの楽曲のメイン担当であることから、バンドを見通す範囲は、どちらかというと内面に視点を置いたもの。fadeが作る楽曲、プレイ、パフォーマンスにおいて、作り手側の視点で自分たち自身のジャッジを行っているようだ。
 
noriyukiがバンドの外、音楽の世界の中でどうfadeはあるべきか、ファンに対してfadeがあるべき姿を見つめているのに対し、ruiはバンドの内面、制作に携わるスタッフの立場としてfadeのあるべき姿を考えている。どちらかというと一歩引いたところでバンドを見つめる二人。
 
彼らの存在はバンドにとって非常に大きな存在だ。その中でも常に厳しい目線でバンドと自己を見つめるruifadeが今後どのような姿を見せるのかは、きっと彼の頭の中に存在している。次に見せようとしている手の内は果たしてどんなものか?感情をあまり強く表情に表さない彼は、そんな中でもしっかりとfadeの未来を見つめているに違いない。
 
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hana
 

予告

次回、最終回となるPart4では、シリーズの締めくくりとしてfadeを象徴するフロントマンJonの生い立ちと音楽との出会いを探るロングインタビューをお送りします。お楽しみに!
 

◆トピックス


 
1.fadeのメジャーアルバム『Crossroad〜History of fade』が遂にリリース!※NEW※
昨年11月にリリースされたDigital Single 「Cross Road」に続き、いよいよ待望のフルアルバム『Crossroad〜History of fade』が2014年2月26日にリリースされることが決定した。さらなる躍進を遂げる第一歩となるこのリリース、今後の彼らの動向を確かめる上でも是非チェックしてみてほしい。尚、3月にはアルバム購入者限定による東名阪ワンマンツアーも決定した。fadeの熱狂的なファンにはたまらない企画だ。こちらも要チェック!
 
【リリース情報】
『Crossroad〜History of fade』:Deluxe Edition【初回限定デラックス盤】
【SHM-CD+DVD】発売日:2014年2月26日
 
■「Crossroad〜History of fade」東京公演チケット付き
<東京公演>
日時:2014年3月22日(土)
OPEN:17:30 / START: 18:30
場所:東京・代官山UNIT (東京都渋谷区恵比寿西1−34−17 ZaHOUSE /03-5459-8630)
※入場時ドリンク代別途必要
商品番号:PDCI-1920
販売価格6,600円(税込)[送料別途 500円]
http://store.universal-music.co.jp/fs/artist/pdci1920
 
■「Crossroad〜History of fade」名古屋公演チケット付き
<名古屋公演>
日時:2014年3月13日(木)
OPEN:18:30 / START: 19:00
場所:名古屋 ell.FITS ALL (名古屋市中区大須2-10-43 3F /052-201-5004)
※入場時ドリンク代別途必要
商品番号:PDCI-1921
販売価格6,600円(税込)[送料別途 500円]
http://store.universal-music.co.jp/fs/artist/pdci1921
 
■「Crossroad〜History of fade」大阪公演チケット付き
<大阪公演>
日時:2014年3月16日(日)
OPEN:17:00 / START: 18:00
場所:大阪・心斎橋CLUB DROP (大阪市中央区西心斎橋2-18-9 itビルB1F /06-6213-9101)
※入場時ドリンク代別途必要
商品番号:PDCI-1922
販売価格6,600円(税込)[送料別途 500円]
http://store.universal-music.co.jp/fs/artist/pdci1922
 


◆公式サイト
http://fadeonline.com/

 

Photo
Single『Cross Road』(ダウンロード販売)
発売中
250円/曲(税込)
M01. Cross Road (English Version)
M02. My Way (English Version)

◆関連記事
ROCK SAMURAI STORY fade(Part2)
http://www.beeast69.com/feature/79399
ROCK SAMURAI STORY fade(Part1)
http://www.beeast69.com/feature/79397
密着レポート 第11弾 fade 『天~TEN~ LIVE TOUR 2012』 Part2
http://www.beeast69.com/feature/32970
密着レポート 第11弾 fade 『天~TEN~ LIVE TOUR 2012』 Part1
http://www.beeast69.com/feature/32991