コラム
戦国★コンプレックス
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Tomoaking(The HIGH)と 傷彦(ザ・キャプテンズ)によるユニット。彼らがプロデュースする日本史トーク&ライブイベント【日本史★オーバードライブ】は、 バンドマンならではの視点から、楽しくロックに日本史のロマンを語り尽くします!

第9回「レジェンド&バタフライ」


公開されたばかりの映画「レジェンド&バタフライ」を観てきました。

フライヤーには『魔王と呼ばれた信長と蝶のように自由を求めた濃姫の、激動の生涯を描く感動超大作』とあります。

織田信長を演じるのは木村拓哉さん。濃姫は綾瀬はるかさん。ふたりの圧倒的なスター性が画面上でスパークします。

前半は濃姫の魅力が炸裂。体術も弓術も信長を上まわり、やり込める様は痛快。凛として馬を駆る姿はベルばらのオスカルやジャンヌダルクなどを想起させる。そういえば大河ドラマ「八重の桜」でも戦う女性を演じてましたね。
政略結婚とは言え濃姫は新婿に対してあまりに攻撃的な印象だが敵地にて居場所を確保するのに必死なのだろう。

対して、恥をかかされた信長がガキ大将っぽく面子を保とうとするのが微笑ましい。取り巻きの子分たちに強い男だと思われたいのだ。

お山の大将であった信長のスケールを大きくしたのは、濃姫ではなかったか。そんな想像が膨らんでくる。

この映画のハイライトは、桶狭間の戦の前夜だったと思う。信長を叱咤し鼓舞し導く濃姫。信長は器の大きなリーダーへと成長、戦に勝ちその名を轟かせる。信長を描いた多くの作品が、本能寺の変をハイライトに据えるのに対し桶狭間、しかも戦いの場面ではなくその前夜に光をあてるのは新鮮でした。

二人で露店などを見てまわる場面。信長の、濃姫への気遣いや照れや護り方があまりに自然で実際の信長もかくやと思わせる。そしてそこには木村さんの素の恋愛観も滲んでいるに違いない。それを双方表出して破綻なく演じきることに、天下布武の信長とエンタメ界で天下を獲った木村さんのリンクを感じる。それほどまでに似つかわしい信長でした。 

映画後半は傷つき悩み憔悴していく信長が見どころ。実際に絶食徹夜して撮影に臨んだのではと思わせるほどの木村さんの凄み。苦しみを抱えたままやがて物語は本能寺の変へと…。

作品の一貫したテーマは愛だと感じました。好きなひとに素直に好きと伝えることの大切さ。
令和の時代に相応しい繊細な織田信長像と清冽な濃姫像。東映創立70周年記念作品ということもあり、物凄いクオリティの映画。オススメです。

(傷彦)