コラム
ファンタジー私小説「ティーンエイジ・ラブリー」
森若香織
スーパーガールズバンド「GO-BANG'S」のヴォーカル&ギターでデビュー。 "あいにきてI NEED YOU"等をヒットさせ、武道館公演を行う。アルバム「グレーテストビーナス」ではオリコン第1位も獲得。 現在は作詞家として活躍中の他、ソロ音楽活動や舞台ドラマ等の女優活動もしている。

「ハロー・イッツ・ミー」トッド・ラングレン


~HELLO罪~
「ハロー・イッツ・ミー」トッド・ラングレン

エアロスミスふう「ササイスミス」のロゴは、
左右の羽をグワシと広げ、本当に「怪鳥ロプロス」のようであった。
真ん中の、エアロスミスでいうところの「A」の文字が「S」になっている。
「笹井のSだ…」
「え?オレのロプロスってこと?わーい!やったー!」
驚愕する全員の前で、案の定喜ぶ笹井。
するとなんと「ササイスミス」のロゴが、ゆっくりと動き出した。
ざぶんざぶんと水しぶきを上げ、笹井と山崎のほうに近づいて行く。
ロゴ共々、喜ぶつもりなのか?

「オーマイガッ!」というアクションで、ミュージカル遠山が叫んだ。
「逃げるんだ!もしかしたら敵かもしれない!」
「うそ、敵なの?なんで?なんのために?」
香織がそう言うと、遠山は緊迫した表情で答えた。
「みんなも薄々気づいているとは思うが、
 笹井は人間業とは思えない能力を持っている」
「薄々じゃなくて濃く気づいてるよ」
「それを妬んだやつの仕業に違いない…」
「そんな人いるの?誰?」
「それは…オレにも分からない」
「えー!?無責任!」
「神よ!」
遠山はクリスチャンでもないのに、胸で十字をきっている。
「なによ。神はアタシよ」
沙織がしゃしゃり出るが、相手にしている暇はない。
ササイスミスが、今まさに笹井に襲いかかろうとしていたのだ!
「あ、ホントだ!敵っぽい!」
「笹井!危ない!」
しかし笹井は驚く様子もなく、ギリギリまで近づいてきたロゴに話しかけている。
「よーしよしよし、ロプロスこんにちは、僕は笹井、こっちはまーくん」
ロゴは、笹井の話を聞いている。
「僕たちがどうして水の中にいるかって?それはね、
 まーくんが心を開かないからなんだ」
すぐそばにいる山崎は、恐怖心と羞恥心が入り交じったブサ顔で、
笹井とロゴの会話を聞いている。
「僕は、まーくんに本当のことを言ってほしいんだけど、まーくんが遠慮するから…」
「え、遠慮じゃない…」
山崎がやっとそう言った。
「あ、まーくんがしゃべった!みんなあ!まーくんがしゃべったよ~!やったー!」
笹井が、香織達に手を振って喜んでいる。
「赤ちゃんじゃないんだから、しゃべるわよ」
ざぶん!
沙織がそう言いながら噴水の中に入って行った。
「あ、沙織!あんたまさか山崎を助けに行くの?どういう風の吹き回し?」
「助けに行くんじゃないわよ!ロゴを見に行くのよ。香織も来な!」
「えー。濡れるのヤだもん。見てきて」
「ふん…あんたロックじゃないわね」
「そういう問題じゃないと思うけど…ねえ」
と、遠山に同意を求めようとしたのだが、すでに噴水の中にいる遠山。
「オレも見たい!」
マジか。そう言われると、
近くで見なければ損なのではないだろうか?
という気にもなってくるが、まあいい。
だって沙織が、ここぞとばかりに、
「あ、いや~ん転びそう!」
などと、遠山に抱きついたりしている。
ここからそっと見守るしかないではないか。

「あ、沙織と遠山!いらっしゃ~い!」
笹井がピョンピョン飛び跳ねながら、歓迎している。
「来るな!」
山崎が叫んだ。
「なによ。あんたそれしか言えないの?」
「来るな~~~~!」
「行くわよ。なんでアタシがあんたに命令されなくちゃいけないのよ」
「そうだ山崎!オレたちは仲間だ!」
ロゴ見に行ったんじゃないのかよ。と香織は心でつぶやいたが、
こうなったら、
1ロゴ見学
2山崎をとっとと水から出す
を、いっぺんに終わらせてしまったほうがよい。
本当は山崎を放置して、もう帰りたいのだが、
笹井があそこで粘る以上、そうもいくまい。
香織は、笹井とは友達でいたいと思っているのだ。
あんな笹井が近くにいれば、これほど面白い人生はない。

「笹井、あんたのロゴ見せてよ」
沙織がそう言った。その目は挑戦者である。
「うん!ロプロスだよ」
「違うわよ!ササイスミスよ。私のKAPが呼び出したに違いないわ」
「そうなのか?」
遠山が驚いている。驚くな。と香織は思いつつ、彼らの様子を観察。
沙織が水の中でポーズをとっている。
「アタシは気づいた。神であるアタシがKAPをやれば、
 きっとそのバンドのロゴが現れるのよ」
「でも『SASAISMITH』て書いてあるぞ。間違えたのか?」
遠山のつっこみ。いいぞ。これこそ本来の遠山だ。
「そ、それは…わざとよ。アタシが笹井にプレゼントしたのよ」
「そうなの?沙織!ありがとう~~~!」
笹井がぴょ~んと飛び跳ねて沙織に抱きついた。
とたん、沙織が体勢を崩し転びそうになり、それを支えようとする遠山。
香織の立ち位置から見ると、
なんだか3人で抱き合っているように見える。笑!
そのシルエットがおかしくて「ぷ」と吹き出しそうになった瞬間、

「やめろ!抱き合うな!」
ガチで怒る声がした。山崎だ。
「抱き合ってるわけじゃないよ。沙織が転びそうになったから…うわあ」
遠山の弁解も虚しく、3人は重なるように転倒した。
ざっぶ~~~ん!
「や~~め~~ろ~~!!!」
必要以上に山崎が叫んだ。
すると、なぜかササイスミスのロゴが、山崎めがげて突進した。
「あっ、まーくんが!!!!!」
ササイスミスは、山崎を抱きかかえるようにくっついた。
合体!シャキ~~~ン!
「あっ、まーくん!」
あろうことかササイスミスと合体した「山崎ササイスミス」は、
本物のロプロスの如く翼を広げ、空高く飛んで行った。
「まああああくううううううん!」
「山崎いいい!!!!!」
「うそ、黄桜が飛んだ!笑!」
「なによ!アタシだって飛ぼうと思えば飛べるわよ」
それぞれが、それぞれの感想を叫んだ。
そのまま、山崎ササイスミスは、雲に隠れて見えなくなった。

信じられない光景に、
泣く笹井。
「どうしよう!まーくんが飛んでっちゃった…うわあああん」
驚愕する遠山。
「そんなバカな!こんなことがあっていいのか!!!!」
爆笑する香織。
「ウケる!わははははは!」
対抗意識を燃やす沙織。
「ふん、飛ぶくらい簡単よ。それに黄桜は飛んだんじゃないわ。
 罰せられたのよ。アイツの頑固さとめんどくささは、もはや罪なのよ」
「確かに。山崎もこれで反省するんじゃない?さ、帰ろ帰ろ」
帰ろうとする香織を遠山が引き止める。
「もう少しここで待とう。案外すぐ戻って来るかもしれない」
「ぐすん。そうだよ、ぐすん、沙織、もう一回ロプロスを呼んでよ!
 サランラップとかクレラップで呼べるんでしょ?ぐすん」
笹井がハナをすすりながら言った。
「も、もちろん呼べるわよ。でも、まだあいつは反省中よ!」
「分かった!でも反省終わったら呼んでね…ぐすん…ぐすん…」
「え…すぐには呼べないわ!あいつの罪は重いのよ!」
沙織がしどろもどろで言い訳しているが、
遠山がさらに追い打ちをかける。いいぞ遠山。
「罪とか言うなよ!確かに山崎は頑固だけど、
 オレたちがそうさせてるだけなんだよ。
 山崎がオレに心を開いてくれたら、
 飛んで行ったりはしなかったはずだ…オレのせいだ…」
「違うわよ!遠山くんをそんな気持ちにさせることも、アイツの罪よ!」
「罪じゃない!」
「罪よ!」

♪ハロ~罪…。

全員が耳を疑った。
ラジオもラジカセもないのに、
どこからかトッド・ラングレンの「Hello It’s me」が聴こえてきたのだ。

Photo

♪ハロー・イッツ・ミー
 長い間、君たちのことを考えていたんだ。
 考えすぎかもしれないけれど、何かが間違っている。

「これ、まーくんだ!まーくんが歌ってる!」
「ホントだ山崎の声だ!」
「ばかウケ!わはははははは」
「ちょっと!こんな名曲、勝手に歌ってるんじゃないわよ!これこそ最大の罪よ!」

♪はい…罪…。

空の彼方で、とうとう反省した山崎であった。

つづく。
 


◆森若香織 インフォメーション
■GO-BANG’S25周年ベストアルバム
『スペシャルGO-BANG’S』

2013年5月25日~
ポニーキャニオンショッピングクラブにて発売中!
http://gobangs.com/
 
 
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