コラム
ファンタジー私小説「ティーンエイジ・ラブリー」
森若香織
スーパーガールズバンド「GO-BANG'S」のヴォーカル&ギターでデビュー。 "あいにきてI NEED YOU"等をヒットさせ、武道館公演を行う。アルバム「グレーテストビーナス」ではオリコン第1位も獲得。 現在は作詞家として活躍中の他、ソロ音楽活動や舞台ドラマ等の女優活動もしている。

「ウォーク・ディス・ウェイ」エアロスミス


~カッパのように~
「ウォーク・ディス・ウェイ」エアロスミス

ザッパ~~~~ン!!!!!!
水しぶきの音が、大きく鳴り響いた。
「何?フランク・ザッパ?」
沙織がそう言った。とたん笹井が、
「え?フランクフルト?」
と言ったことを本当は聞こえたのだが、聞こえないふりをする香織。
というのも、
音もさることながら、水しぶきじたいがかなり大きく、
まるで「噴水全体が噴水」のようになっている光景に驚いたので、
その「驚き」を優先したのだ。
「うわ~なんかポセイドンが出てきそう。バビル2世の」
香織のつぶやきに笹井が反応した。
♪「みっつのしもべに命令だ、やー!」
と、片手をあげている。
そうだ。笹井はある意味「超能力少年」。
あそこに見える「テレビ塔」は、本当は「バビルの塔」か?
香織が笹井を試す。
♪「テレビ塔~に住んでいる~。超~能力少年、笹井~2世~」
予想通り、笹井が瞳を輝かせ「やー!」と言った。

香織「笹井。そこは『やー!』じゃないじゃん。Bメロだよ」
笹井「え?ビー玉?」
香織「♪地球の~てゆーとこだよ。あ、あんた地球の平和守ってんの?」
笹井「え?地球サイズのビー玉?でっけ~~持てないよ」
香織「持たなくていいよ」
笹井「そっか、えへへ」
などと平和な会話をしていると、
さらなる水しぶきがザッパ~~~とあがり、
その大噴水の中から、あの山崎が飛び出た。
当然飛び出るのはポセイドンではなく、
山崎であることは薄々、いや完全にわかっているのだが、
あえて「あの」をつけるなりして、
何らかの「バビル感」を出さなければやってられない香織なのであった。

「どぅわっぷ!」
という素っ頓狂な声をあげながら飛び出る山崎の顔面。
「ドゥーワップ?」
香織と沙織が顔を合わせる。
「どアップ?誰の?ポセイドン?」
笹井が興味津々で質問してきたので、あごで山崎をさす沙織。
「アホか。あいつに決まってるじゃない」
「え?あいつって…あ!まーくん!まーくんだ!みんな、まーくんだよ!」
「あっ!山崎だった!よかった!」
遠山も安堵&驚きの声でそう言った。
でも今「だった」って言った?
まさか遠山クンもガチでポセイドンを期待していたのか?

「山崎!無事だったのかあああ!おおお!」
遠山は歓喜の声をあげ、ミュージカルのようなアクションで、
両手で自分の頭をつかんだ。
(ん?遠山クンて、こういうキャラだっけ??)
ちょっと戸惑う香織。
(遠山クンってカッコいい男子ナンバー1だったのに、
今のはないわ。なんか冷めたかも)
女子は、好きな男子が突然「無理」になることがある。
なぜだかよくわからないが、本当にどうでもいいようなきっかけで、
いきなりそういう気分になるのである。

「あっ!まーくんがカッパっぽい!」
安堵よりカッパに重点をおく笹井。
「本当にカッパだキモザキ…ふふ…あははは!」
「わははは、あいつ今からヤマザキでもキモザキでもなくて、キザクラだから」
ウケる香織と沙織。いつの間にかこの二人は、
山崎をディスることにおいては意気投合し、もはやコンビ。
「ガロじゃなくて黄桜のテーマやればいいのに。♪カッパッパ~ルンパッパ~」
「狸小路のテーマもやりなよ。♪いつも世界はポンポコ祭り~」
「メドレーにしなよ。♪カッパッパ~ルンパッパ~ポンポコ祭り~」
しかし爆笑する女子二人に、遠山がこう言った。
「笑うトコじゃないだろう!山崎は命がけだったんだ!おおお!」
「そうだよ!まーくんは一生懸命なんだ!ううう」
笹井も泣きながらそう叫んだ。
「あ、ごめんごめん」
彼らのモードにつられないよう、一応あやまる香織。
「でも黄桜にはあまやらないから。だって逃げてばっかりなんだもん。
 地上に逃げ場が無くなったから、水の中に逃げたんでしょ?
 なぜそこに命をかけるのか私には意味不明」
「なんてことを言うんだ香織!オレは山崎がカッパでも受け入れるさ!
 命の尊さに人間もカッパないだろう!おおお!」
さらにミュージカルすぎる遠山。ちょっとムカつく。

カッパ山崎は水を飲んだのか、むせかえっている。
「げほげほ!はーはー」
「カッパくん、あ、間違えたまーくん!今行くよ!」
ぴょ~~~~ん!
笹井がJUMPし、着陸(着水?)した噴水の中でざぶざぶと歩いている。
「水中ウォーキング!」
満足そうな顔をキラキラと輝かせ、山崎の手をつなごうとしている。
「わーいカッパのまーくん!手をとりあって!わーい、わーい」
しかし、山崎は笹井の救助を拒否り、その手を振り払った。
「わーい、わ…Why????」
偶然英語になった笹井が、ショックを隠しきれない震え顔になった。
「…」
黙って下を向いているカッパ(ずぶ濡れ)。
「カッパって言われてムカついてるんじゃないの?
 せっかく笹井が助けに行ったのに。何あれ…」
香織がぼそっとつぶやくと、
「救助待ってました、て思われるのが悔しいのよ。そういうパフォーマンスよ」
沙織がそう言った。
「それだ。やっぱマジめんどくさいわ~黄桜」
「僕はめんどくさいなんて思ってないよ!
 さあカッパくん!遠慮しないで僕の肩につかまって!」
地獄耳笹井が、真剣な表情でカッパの手をとった。
「さあ山崎!この両手につかまるんだ!」
ミュージカル遠山も、両腕を伸ばしている。

「ねえ沙織、あの遠山クンどう思う?」
「どうって、ちょっとロックオペラ入ってるわね」
「私は、もっとクールな遠山クンのほうがいいと思うんだけど」
「何よ。じゃ別れなさいよ」
ぎょ。やはり沙織は、香織と遠山がつきあっていることを知っていた。
まあいいや。この際だからそのへんははっきりしておこう。
そう思った香織は、沙織に言った。
「つきあってるっていうか、ただなんとなくそういう感じに…」
ここまで言って、沙織がギロリと睨んでいるのを感じたので、
ちょっとニュアンスを変える香織。
「つきあうより、一緒にバンドやるほうがいいかも。沙織は?」
「アタシもそうよ」
「ホントに~?アタックする気はないの?」
「は?アタシから?ありえない」
「じゃ、遠山クンが万が一沙織にアタックしたらどうする?」
「万が一って何よ。万が万くらいの可能性よ」
「へー。じゃ、待ってるんだ。へへへ」
「待ってないわよ!遠山クンは、唯一
 『アタシにアタックする権利』をあげてもいい男子だと思ってるだけよ」
当然上から目線で言う沙織ではあるが、どうやら本当に遠山のことが好きなようだ。
考えると、このメンバーでバンドをやりたいのも、
遠山といつも一緒にいられるという理由も大きいのだろう。
神だロックだと威張り散らしている沙織ではあるが、恋をしているのだ。
「あ、そ、じゃ頑張って」
恋しているくせに。などと言うとまた一波乱ありそうなので、そっけなく言うと、
沙織は「ふん」とそっぽを向いて言った。
「アタシは、神のヴォーカリストよ。頑張る必要なんてないのよ」
「頑張りなよ。沙織、歌ヘタだし」
すると沙織は、負けず嫌い丸出しの顔で、香織を睨みつける。
「アタシの歌は魂の叫びなのよ!下手も上手もないのよ!」
「え、でも音痴じゃん」
「なんですって~~~~?!アタシの方法で歌えば神の歌なのよ!」
「沙織の方法って?威張ること?ブチキレること?鬼顔になること?
 それが沙織の魂の叫びなら、私は感動しないんだけど」
「アタシには神のやり方があるのよ!」
「どうな風に?」
「こんな風によ!Like this!」

walkthisway

その時だった。
噴水の真ん中で、まだ笹井とあーだこーだやっているカッパ山崎のポケットから、
何やらドラムの音が鳴り出した。
「あいつのウォークマン、防水だったの?」
香織がつぶやくと、沙織が言った。
「違うわ!『防水ウォークマン』じゃなくて『防水ウォークディスウェイ』よ!」
「はああ?」
そしてエアロスミスのウォーク・ディス・ウェイの「あの」ギターリフが聴こえ、
あろうことか沙織がこう歌い出した。

♪カッパッパッパパ カッパッパッパパ ポンポコまつり~~!

「何それ!」
のけぞる香織の顔にジリジリ詰め寄りながら、
沙織は、これでもか!というほど口を最大に開けて歌っている。
沙織の顔が近すぎてぼやける。若干スティーブン・タイラーにも見える。

♪カッパッパッパパ カッパッパッパパ 逃げるなキザクラ~~~!
 カッパッパッパパ カッパッパッパパ 魂の叫び~~~!

「沙織…あんたまさか、それってウォーク・ディス・ウェイの替え歌のつもり?」
香織が恐る恐る質問すると、沙織はシャウトした。
「替え歌じゃないわよ!ラップよ!」
「ええええ?全然ラップになってないし!カッパだし!」
「これがアタシの方法よ!RAPよりスゴい、KAPよ!」
「沙織!エアロスミスにあやまって!」
思わず香織がそう言うと、噴水方面から笹井の声がした。
「え?エアロビクス?」

つづく。


◆森若香織 インフォメーション
■GO-BANG’S25周年ベストアルバム
『スペシャルGO-BANG’S』

2013年5月25日、
ポニーキャニオンショッピングクラブより先行発売決定!
http://gobangs.com/
 
 
◆森若香織 オフィシャルブログ
http://ameblo.jp/moriwaka



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