コラム
地獄のコラムニスト・トレーニング
小林信一
90年代にTV/CMソングのギター録音、作曲などのスタジオワークを開始。ESP・SCHECTERの7弦ギターの開発に協力。 04年執筆の「地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ」が大ブレイク。現在までに7冊のギター教則本を執筆。10年2月に初のソロ『ネクタイ地獄』を発表。地獄本シリーズの著者による凄腕バンド“地獄カルテット”にて活躍中。

地獄のコラム終焉~番外編第三弾「二つの国の音楽交流、および可能性」


だいぶ御無沙汰になってしまいまして申し訳ありません…
 
さて今回は、まもなく中国と日本で同時発売される私のオーケストラ・インストゥルメント・アルバムに関して、PV撮影などを行なった中国杭州での滞在を織り交ぜつつ、日本と中国における音楽の交流と可能性について綴ろうと思います。テーマがデカいかな(笑)


 
そもそもオーケストラ・アルバム制作の話はどこから来たのか?
中国の遺跡とその歴史による漫画の企画があり、それを舞台でミュージカルとして発表する計画があることを中国関係者から伝えられました。そこで、可能ならば舞台音楽を担当して欲しいとオファーを受けたのがきっかけでした。
 
その後、同様なミュージカル仕立ての参考資料VTRが送られて来ました。フルオーケストラとRockバンドが音楽を担当し、その生演奏をバックにミュージカルを行うというものでした。拝見するとそのスケールのメチャクチャ大きいこと!中国語なので内容は分からなかったのですが、凄く大所帯の刺激的なミュージカルと演奏に魅かれ、即座にOKの返事を出しました。
 
その後、その遺跡を直接観てイメージを膨らませて欲しいと言われ、中国浙江省杭州市の北西部に位置する「良渚(リャンジュ)」という町を訪れました。紀元前3500年の文化があったとされているところです。現地に先方から案内していただいたのはとても大きな遺跡博物館で、そこには壮大な文化とロマンが語られておりました。
 
この文化の特徴として顕著に現れているのが、石を精巧に加工した玉の装飾品です。正確には何に使用したのか定かではないので、装飾品と断定してはいけないのですが、道具も器械も無い時代にこんな精巧な細かい加工を石に施したことが信じられないほどの加工がされています。
 
さて、遺跡で音楽の方向性が見えて来たところで、今度は遺跡を原作にした漫画チームとの打合せをし、遺跡での玉石を魔法で操る人種や妖精などが繰り広げるファンタジーの世界を説明していただきました。この漫画「玉作師」は、中国本土だけでなく日本語翻訳版も電子書籍で販売されております。
 
Appリンク先「漫享漫画」
 
音でイメージしていた古代文明の遺跡とファンタジーな漫画のストーリーでのPOPさを足して2で割る作業ですね。
 


 
そして、日本に戻ってから一通りの漫画データを送っていただき、漫画も読破。そのあと、ミュージカルにおける細かいシーンと曲の設定がデータで送られて来ました。そこには13にも及ぶシーンと音楽のイメージ、曲の時間指定が記されていました。

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写真左:参考データの一部 右:作曲譜面の一部

昨年(2012年)の7月末から作曲を始めて9月末までに13曲を仕上げました。全曲フルオーケストラで、数曲はギターも入っています。


 
ここで、1曲ずつ解説して行きましょう!
 
1.「伝説のはじまり」
オープニング序章の短い曲ジングル的な曲です。
 
2.「夏衛の歌」
物語を大きく集約したオープニング・ソング。壮大な映画音楽のような仕上がりのオーケストラ・アレンジにエレキギターでメロディーを奏でてみました。PVになっている曲。
 
3.「玉水じいさんの授業」
マーチングのアレンジ・ソング。陽気な子供達の遊びと授業風景を想像しました。
 
4.「御風登場」
魔術師のヒーロー的な存在の「御風」さまのカッコいいテーマ曲。
 
5.「玉樹の城」
神秘的なお城の世界をファンタジーに演出しました。これもエレキギターでメロディーを奏でています。
 
6.「蔦の賛歌」
主人公とヒロインとの出会いのシーン。羽の生えた妖精と突然の出会いを演出。
 
7.「玉樹城の日常」
ヒロインの女心の演出した3拍子ラブ・ソング。
 
8.「禁忌の一族」
悪者の一族が悪さを始めるシーン。
 
9.「蛇皇」
悪役のボス「蛇皇」さまの出現シーン。大名行列のような長蛇の列による練り歩きを演出。
 
10.「羽民祭り」
羽民の人たちのお祭りのシーン。
 
11.「刹羽神伝説」
羽の神による平和を守る伝説が語られるシーン。ピアノ主体の曲。PVになっている曲。
 
12.「歌者の声」
そして伝説が語られてすべての戦いが終わる。
 
13.「刻印の羽」
壮大なエンディング的な主題歌。すべての戦いの後に平和が訪れたハッピーソング。
 
この曲データを元にミュージカルのダンサーが踊りを付けて、10月末にイベントで発表する予定でしたが、不幸にも尖閣諸島問題が勃発しイベント自体が中止に。ここまで準備して来たすべてがお蔵入りになりました。しかしその後、発表する場を失ったこの企画を世に出すためにCD&DVDでの発売計画が浮上し、今回ついに発売となったのです。

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写真:CD&DVDダブルディスク表裏

CDは13曲すべてを音源化。DVDはダンスチームとのコラボによる1曲、アニメーションと私のギター演奏による1曲の計2曲のPVと、中国杭州で行われたライブイベントでの生ギター演奏やPVメイキングなどが収録されています。このPV撮影とライブは、今年(2013年)の5月頭に行われました。

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写真左:PV撮影風景 右:中国楽器店にて生演奏撮影風景

こちらの商品は下記のサイトにて通信販売となっておりますので、興味の有る方はご購入宜しくお願いします!
 
通販サイト:
http://www.store.amg-net.com/shopdetail/009001000001/order/


 
と、ここまで読んでいただいてありがとうございます。ここで1つ読者の皆さんに伝えたいのは、この宣伝だけではありません。上記のCD&DVDを含め、原作の漫画、そしてダンスとオーケストラとロックギターとを融合させたミュージカル音楽、これらを文化の発展のために出資しているのは中国政府だということです。とても興味深いですよね?
 
日本人の感覚では、一体どこの企業がこの企画を上げてスポンサーを募ったのかな?とか採算は取れるのか?とか考えたりしますが、そんな視点はないんです、彼らには。もちろんビジネスとしてお金を稼ぐことは間違っていないのですが、そこがスタートではないのですね。将来のための文化の発展と考えられれば、お国が出資してくれます。
 
日本では考えられないですよね。日本では文化を保守することにはお金を使うけど、文化を作ることにはあまりお金を使わない傾向があります。だからまず人気が出るもの、人が集まるものを作る発想がスタートになってしまいます。もちろんこれも大事なことだけど、人気取りだけに走りがちなのも事実。そういった意味で日本も純粋に好きなことを発信しているだけの「ニコ動」や「ニコ生」に面白い盛り上がりをみせているのは当たり前のように感じられますね。
 
偉そうなことを発言できる立場ではありませんが、こんなふうに国が違えば文化に対しても考え方や経済が違うことで自国の方法論を見つめ直すきっかけにでもなれば、それもいいと思います。アジアでのコラボレーションが起きれば、もっと新しい刺激が増えるのではと考えているので、これからも私はアジアの国々へ活動を広げて行きたいと思っています。


 
さて、今までお届けして参りましたこの「地獄のコラムニスト」ですが、今回をもちまして最後とさせていただきます。私の地獄教則本の話から数回連載してみようという軽い気持ちではじめて来ましたが、こんなに長く連載させていただくとは思っていませんでした。
 
いろいろと濃い内容も書かせていただいたので、この機会を与えて下さったBEEASTさんには大変感謝しております。この場を借りてBEEASTさんすべてのスタッフにお礼を申し上げます。ありがとうございました。私の弟子チームもいろいろとお声をかけていただいて感謝しております。
 
今後は機会があれば単発の企画などに参加させていただいたり、私の活動の宣伝などさせていただければ嬉しいです。読者の皆さんもここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました!これからも小林信一の音楽活動を末永く宜しくお願いします!!
 


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