先日、BEEASTの『ROCK ATTENTION 33 ～Kelly SIMONZ～』でも報じた、Kelly SIMONZ’s BLIND FAITH名義のメジャーデビューアルバム『BLIND FAITH』が、2014年3月26日にリリースされた。圧倒的なテクニックや音楽センスを持ちながらも、今までその実態はほとんど知られていなかったKelly SIMONZだが、この一枚によりついにその神秘のベールを脱ぐこととなる。今回はこのアルバムの魅力を紹介しよう。
先述のインタビューで語られたKellyの曲作りの特徴、すなわち歌のメロディを主体に曲作りがされているというポイントが、全編から感じられるだろう。いわゆる彼の身上とするハードロックサウンドをベースにリズムやギターサウンドが構成されているが、彼の超絶ギターの応酬が随所に見られる一方で、ギターが耳障りにならない秘密がここにある。
各曲で聴かれるメロディは、歌モノの楽曲だけでなくインストのナンバーでも十分に感じられるものになっている。メロディのつくり方が秀逸で、曲において「メロディが主体」という観点で完結しているのではなく、「歌うようなメロディが主体」と考えられていることが、その特徴ともいえるだろう。「ポップであること」「メジャーであること」という意味を、彼なりに突き詰めた結果として作られたメロディが、非常に耳に残る強い印象を感じさせる。
一方で、やはり超絶テクニック満載のギターも聴きごたえ十分だ。目を見張るようなスピード感、疾走感を醸し出すギターは、オープニングの「N.W.O.」からパワー全開で展開している。しかしそのギターにすら彼の持つギターのセンスの良さが感じられる。「Revelation」で聴かれるギターソロでは、ゆったりした歌うようなフレーズと、超絶ハイスピードテクニックが織り交ぜられたもの。しかしそれは、単なる譜割りにのっとった「ギターの音が鳴っている」というものではなく、むしろ譜割りをずらすくらいの勢いを込めアナログ感を強調することにより、生身の音であること、理論ではなく体からにじみ出るような生きた音であることを感じさせている。
また、メジャーキーのポップナンバーである「Burning In My Soul」や、彼の新境地ともいえる日本語バラードの「Requiem」のように、他の曲調とは違う雰囲気のものをうまくアルバムにちりばめているところに、プロとしてのアルバム作りを見せていることが感じられるだろう。要所に、彼の敬愛するYngwie J.Malmsteenへのオマージュともみられるキメが織り込まれているのも聴き逃せないポイントだ。
全編を通して歌っているのがKelly本人と、ゲストのYAMA-B。ロックでポップな雰囲気を作り出すKellyと、メタルボーカリストとして一級の腕を持つYAMA-Bの、それぞれのスタイルの違いを感じるのも、このアルバムの面白い聴き方の一つだ。まったく異なる二つのタイプのボーカリストであるが、そこに共通するのは曲の荒々しさ、歌心を強く表現した珠玉のメロディ。さらに「Allegro Maestro」では、ゲストとしてCONCERTO MOONの島紀史と、Kellyの教え子であるTaka Minaminoと、三つ巴の壮絶なバトルを繰り広げており、ギターキッズ必聴のナンバーとなっていることは、言うまでもないだろう。
玄人肌のファンの要望に応える巧みさと、ハードロック入門者にも十分アピールできるほどのキャッチ―な雰囲気が同居するという、ある意味では難しい命題に真っ向から立ち向かった力作だ。全編でリズムを力強く支えるKaz、Yosukeの奮闘ぶりも、音で聴こえてくるほどの勢いを感じさせる。キャッチフレーズにある「復活の狼煙（のろし）」という言葉では到底おさまり切らないほどの可能性も感じられるアルバムだ。Kelly SIMONの意気込みが詰まったこの一作、是非その魅力を感じてみてほしい。
Kelly SIMONZ’s BLIND FAITH『BLIND FAITH』
発売中
KICS-3035/3,000円（税抜）
【収録曲】
M01. N．W．O
M02. Burning In My Soul
M03. Toki-No-Kakera
M04. Requiem
M05. Signs Of The End Of The World
M06. The End Of The Beginning
M07. Opus#2-No．1
M08. Revelation
M09. Opus#2-No．2
M10. Nocturne
M11. Allegro Maestoso
M12. Silent Sorrow
M13. Now Your Turn
オフィシャルサイト
http://www.kellysimonz.com/
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