連載

TEXT & PHOTO:鈴木亮介
第8回 Stand Up And Shout ~脱★無関心~

Photoあれから一年半が経っても、ずっと「脱・無関心」のままで…「ロックと生きる…ライフスタイル応援マガジン」というコンセプトに基づき、BEEASTでは既存のメディアと一線を画し、当連載を通じて3.11震災等による現地の生声や、被災地関連のロックイベントを紹介している。

今回は6月16日、17日に開催された「TOKYO×FUKUSHIMA HEAVY METAL SUMMIT」第3回の模様を前後半に分けてレポートする。今回初めて、私鈴木が自ら「サミット」に同行。初日の熱いライブの模様に引き続いて、2日目は東京からのメタラーによる現地視察を実施。テレビ新聞では報じられない現地の音楽シーン、そして被災地の実情に迫る。福島第一原発の「半径20キロ圏内」にも入ることができたので、その実情もお伝えしたい。

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6月17日 日曜日

2日目も遅刻者はなく予定通りのスタート。福島C-moonに一晩置いた機材をバスに詰め込み、早朝にもかかわらず手伝ってくださったスタッフの皆さんとお別れ。3か月後の再会を誓い握手を交わす出演者も見られた。

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バスはまず、菊地春香実行委員を乗せるために伊達郡川俣町へ。土産販売店で休憩し、お土産を買う。川俣町はシャモが有名で、その場で食べられる焼き鳥やコロッケに加え、カレーなどのレトルト品も充実していた。残念なのは、日曜にも関わらずやはり観光客の姿がないことだ。東京の机上で難しい理屈を考えるより、「福島行って美味いもの買ってきたよ~」とお土産を渡す方が尊いなと、自分のこれまでの不甲斐なさを痛感せずにはいられない。しかし、売店の”おばちゃん”の笑顔を見た刹那、そんなことは忘れた。暗い顔ばかりしていても、復興はない。

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バスは一路、沿岸部を目指す。菊地実行委員が自宅から持ってきたという地元自治体からの案内文、さらには東電からの事務連絡文が披露され、回覧された。自治体独特の無機質な文章には、機械的なことばが連なっているが、あたかもごみ出しの注意、或いは「ハチに注意」と同様のトーンで、除染のことが書かれている。三崎亜記の小説の世界そのままで、言葉が出ない。そして、飯舘村の看板が車窓に映ると、バス内にはどよめきに近い、静かな空気の振動が起きた。

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さらに、前日にはRADIOACTIVITYで熱いステージを見せた杉岡”Keizy”恵二実行委員もガイド役として合流。地元に生きるロッカーとして、福島の今を語った。杉岡実行委員は福島第一原発に作業員として務めていたということで、震災が起きた3月11日午後2時46分のまさにその瞬間、原発構内にいたという。発生した瞬間の原発構内は「言葉で表せないような動揺だった」とのこと。また、同僚から聞いた話として、「震災時には津波が襲う前に既に停電。エアロックが電子制御のため開かなくなってしまい、破壊して出てきた作業員もいたほど」だという。報道とは異なる実態に、参加者たちも熱心に耳を傾けていた。

杉岡実行委員の家庭も、震災後は食料がなくなってしまって水道も出ない状態。井戸水をもらってトイレを流したり、妻が務める病院からもらった非常食のおにぎりを雑炊にして、子どもたち含め一家5人で少しずつ食べたりと、「命の終わりが近くに見える状態」を生き抜いたという。

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バスは飯舘村を経て沿岸の南相馬市へ。道中、積み上げられたがれきと、処理施設の横を通る。初めて見るとやはり「何もない」一帯を見て動揺せずにはいられないが、3か月前に比べるとがれきが整然と積まれ、新たに送電線も作られたとのこと。着々と復興は進んでいる。一方、震災前にはなかったものも…杉岡実行委員いわく、「この辺り、ものすごくもやが出てますよね。こんなの震災前は一度も出たことないんですよ。何が原因かわからないですけど…たぶん、霊ですね!」

そこから車で5分もしないうちに、市街地へ。幹線道路沿いにチェーン店が立地する、地方都市ではおなじみの光景だが、気になるのはパチンコ屋に止まる車の台数。日曜とは言えほぼ満車状態だ。杉岡実行委員によると、現在避難所生活を送る人には毎月10万円の援助があり、避難せず生活する人との「経済格差」が生じているという。東電からの賠償金も、申請の面倒さや審査の厳しさばかりが報道されたが、「5人家族(杉岡家の場合)で厚み10センチほど」の書類さえクリアすれば、領収書の添付なしに「パソコンを買った」等々理由をつけていくらでも支援金を受け取ることができるという。

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仲間内を非難するようで嫌だけど、と断った上で杉岡実行委員は「(満杯のパチンコ店駐車場を指さして)この中の半分以上は無職でしょう。昼間から働かずにパチンコをしているのは、ほとんどが避難生活で毎月支援金をもらっている人。この『格差』により、真面目に働く被災者との間に亀裂が生じている」と福島の実情を憂いだ。また、「仕事して税金を納めるのが一番の復興だと俺は思う」と力強く語った。

そして、バスは南相馬市の原町区へ。この辺りは計画的避難区域となり、誰一人いない「失われた町」だ。2011年3月11日からずっと時が止まったままになっている。崩壊したままの家屋、アスファルトを突き抜ける植物…JR常磐線小高駅前には、通学のため駐輪された自転車が今もずらっと並んだままだ。

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ベクレルをもじって「この辺から拾ったものはベクれてるから気をつけて!」というように、動詞化した「ベクれる」が僕ら仲間内の流行語だ、とおどけて話す杉岡実行委員。福島の怒りや悲しみを曲に込めて全国へ伝える伝道師(アジテーター)としての役割、3児のパパとして福島に生きる覚悟があるからこその、笑いなのだろう。その生き様には尊敬の念しか生まれない。東京から発信するわれわれBEEASTも、ここで手を緩めるわけにはいかない。
 
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第3回「TOKYO×FUKUSHIMA HEAVY METAL SUMMIT」 2日目ダイジェスト映像

 
1日目 激アツライブのレポートはこちらへ
http://www.beeast69.com/serial/mukanshin/35621

Photo◆RADIOACTIVITY 公式HP
http://radioactivity.xxxxxxxx.jp/

◆RADIOACTIVITY Twitterアカウント
https://twitter.com/info_Radiack

photoTOKYO×FUKUSHIMA HEAVY METAL SUMMIT
 公式ページ

http://www.heavymetalsummit.jp/

東京&福島ヘヴィメタル・サミット第4回は
9月15日(土)&16日(日)開催!

元祖直訳ロッカー王様を筆頭に、BLOOD SABBATH
コジーンオズボーンSIXX TIMES CRUEL
アルプスの撃墜王ハイジBLAST GATEの出演が決定。
詳細は公式HPへ

 
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【特集】Editor’s Note…PASSION Mind1 被災地の音楽店は、今 ~仙台/石巻で聞く~
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【レポート】映画『オジー降臨』
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