演奏

OZZY

TEXT,PHOTO:桂伸也

この度、メタル界の帝王ことオジー・オズボーンの生涯を描いたドキュメンタリー・ムービー「オジー降臨」が日本で2011/12/17より公開となった。ミュージック・ドキュメンタリーが次々と発表される中でも、そのライフスタイルでメタル界のみならず、カルチャーを含めたロック・シーン全体に与えた影響の大きいオジーの半生に迫った意味で、この作品の存在価値は大きい。
この公開に先立ち、今回のリリースに対して日本版制作担当者等による思いを語るトークと、まさしくBLACK SABBATHに身も心も捧げた男達の熱い想いを込めたトリビュート・バンド「BLOOD SABBATH」のライブを組み合わせたイベントが開催された。今回はその模様をレポートする。

1.入口
 
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高田馬場ESPミュージカルアカデミー本館B1ホール入り口にはイベントのチラシがビッチリと貼られ、嫌が応にも気分を盛り上げてくれた。入り口を抜けるとすぐに展示ブース。そこにはESPミュージカルアカデミーのギタークラフト科内で製作した作品が並ぶ。イベントの趣旨に合わせ、飾られたギターはそっくりそのまま、トニー・アイオミを象徴するSGモデル、そしてオジー第二の象徴ともいえるギタリスト、ランディ・ローズのトレードマークともいえるランディVモデルが。思い思いの志向に合わせ、様々なアーティストモデルへのマイナーチェンジを重ねてはいても、この形のモデルがこれだけ並ぶと、そのギター・シェイプがいかにランディ自身が、オジーを、そしてメタルを象徴しているかが十分理解できるだろう。
※ESPミュージカルアカデミー
日本を代表するギターメーカーの『ESP』が母体となっている専門学校であり、多くの著名なギター制作者やミュージシャンを排出している。ギター制作においてはそのクオリティの高さとネームバリューにより、国内に限らず海外メタル系アーティストにも多く使用されている。


2.トークショー及びプレビュー

イベントのオープンと共に、観衆の前には司会者と、今回の日本版制作担当である、ヤマハ・ミュージック・アンド・ビジュアルズの西田さんが登場。この映画自体の印象と、この映画を世に伝えるものの立場としての思い等を語ってもらった。

—:今回の作品について
西田:基本的にこういった作品は、海外の制作会社より「日本でも劇場公開したい」等とオファーを頂き、こちらで可否を決定していくというような進行なんですが、特に今回の経緯としては、最初にDVDをリリースということで話をもらってて、その後に劇場公開という話が出てきてたんですが…
最初にトライベッカ映画フェスティバルで上映された予告編、これはステージ舞台裏から始まり、リハーサル、そしてステージの幕が上がる瞬間で終わるという衝撃的なシーンで終わるものですが、それを見た瞬間に“これはスゴイものになりそうだな“という印象を受け、今回の上映、及びDVD制作を決めたといういきさつになりました。

—:邦題の「オジー降臨」(原題:God Bless Ozzy Osbourne)というタイトルの経緯は?
西田:原題そのままでっていう案もあったのですがね…この映画の劇場公開を決めようと話が進んでいた時に宣伝の担当と話を進めていたのですが、この宣伝用ポスター(写真参照)を見ながら考えて、“邦題でインパクトのあるものにしたほうがもっと面白いものになるぞ”という声が上がりまして、何にしようかぼーっと考えていた時に、メンバーの一人が“「オジー降臨」とか…”って一声上げた途端に決まりました。他の案もあったのですが“もう間違いない、それ以外ない”って(笑)ポスターのデザインにある、降臨の“降”の文字に十字架が組み込まれているでしょ?これもポスターのデザインを考える際に、十字架というモチーフがオジーにとって重要なアイコンであることから、“これはもう絶対でしょ!”ということで、あれこれ考えたわけではなく自然に決定したんです。

—:映画の見所って教えていただければと思いますが。
西田:この映画の制作、宣伝をしていく中で、私達制作に携わる者はこの映画をもう100回くらい見ているんです、決してオーバーな数字ではありません(笑)。にもかかわらず、この映画を“もう一回見たい”と思うくらい、オジーの魅力が詰まっている作品です。
オジーの人生を眺めると、こんなにアップダウンの激しい人生を歩んでる人ってミュージシャンの中でもそんなにいないんじゃないかって思うんですよ。人生の凄まじさという意味では世界No.1といっても過言ではないんじゃないかと。そんな映像が順に映し出され、数々のエピソードが出てきます。いろんな角度から描いているオジーの人生は本当に魅力的で、面白さがにじみ出てくるようです。
プロデューサーは彼の息子であるジャック・オズボーンが担当しており、家族からのメッセージやプライベートショットも多く盛り込まれています。後半には家族の中で、オジーとはどういう存在なのかという観点も描かれており、とあるミュージシャンの物語というポイントだけでなく、一人の人間として、家族再生的なシーンも盛り込まれており、この映画でしか見られない画も沢山あります。そんな意味で非常に貴重な映画であると思っております。

また、部分的な映像の試写を交えながら会は進む(内容については割愛)。途中、当日行われたESPミュージカルアカデミーのギタークラフト科講師である袖嶋さんを交え、オジーに関わるギタリスト、ランディ・ローズの魅力について語ってもらった。

—:袖嶋さんにとってのランディの思い出を教えていただけますか?
袖嶋:実は私、あのランディ・ローズ・モデルを好きになったあとにランディ・ローズを知ったっていう、普通とは逆のパターンなんですが(笑)彼のプレイは今からすると、それほど飛び抜けたことをやっているというわけでもなかったですけど、(プレイが)とても感情的だし、メロディの組み方に特徴があるんですね。元々クラッシックを勉強していたっていうことで、それがかなり反映されていたようです。とにかくギターソロが泣けるんですよね。
—:「ランディのプレイがオジーの声を変えた」というシーンが劇中にあるんですが、それがランディ加入の前後の、楽曲の違いでよくわかりますよね。
袖嶋:そうですね。クラッシックから得たメロディセンスというところでしょうか。実際そこにコードやメロディを作って乗せる際に、ランディの意見が入っているのがよくわかるんですね。ランディがそれ以前に入っていたクワイエット・ライオットのポップなところなんかも。「CrazyTrain」なんか聴くとよくわかりますよね。
西田:その時々の、ギタリストとの関係でオジーが変わっていくところっていうのがね。何かオジーって、ギタリストを見つけてくるめぐり合わせが良いっていうか。
袖嶋:そうですよね。あとに続くジェイク(・E・リー)とかね。ある意味ギタリストによって全く違うバンドになっちゃうような、“ギタリストが成長していく”というようなところもオジーの魅力かなと思いますね。
—:袖島さんにとって外せないお勧めの、ランディの曲ってありますか?
袖嶋:まあ、定番曲の「Crazy Train」、「I don’t Know」とか、「Over the Mountain」なんかのノリのいい曲もあるんですが、僕は「Dee」とか、「Goodbye to Romance」の、静かめで美しいラインが聴ける曲が好きですね。あれ、涙出ますよ。「Goodbye to Romance」のソロなんか最高ですね!
西田:そういう“泣ける曲”って、“恐怖を感じさせる雰囲気”が特徴のBLACK SABBATH時代との対比がよく見えてきますよね。オジーが作り出すサウンドがその遍歴で変わっていく様というのも、劇中で見えてきます。

3.BLOOD SABBATH ライブ
 
トークイベント終了後は、いよいよBLOOD SABBATHの登場だ。落とされた照明の中、バンドメンバーが登場、そして薄暗いステージの中を爆音と共に現れる“オジー”こと水野王子(オウジィ)。その滑稽ながらも気味の悪さを伴ったアクションは、正しくオジーが降臨したかのようだ。他のトニーギーザービルもかなりラウドでヘヴィなサウンドの中、本家を彷彿させるかのごとく渋いプレイで、まるでここは“黒い安息日”を楽しむ宴。

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その本人さながらのプレイに圧倒されたのか、観客は身動きも出来ずただ呆然とステージを見つめるばかり。
だが、バスドラのキックから、トニーのチョーキング・ダウンが鮮烈なあの名曲「Iron Man」が始まると、何かが吹っ切れたようにシートを立ち、ステージ前列に集まる。そしてシメはこれまた代表曲「Paranoid」へ。
彼らの熱く、奇怪で不思議な世界は、こうして幕を閉じた。

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公式サイト

「オジー降臨」 オフィシャルサイト

http://www.ozzy-movie.com/

シアターN 関連ページ

http://www.theater-n.com/movie_ozzy.html

BLOOD SABBATH オフィシャルサイト

http://www.bloodsabbath.com/

ESPミュージカルアカデミー オフィシャルサイト

http://www.esp.ac.jp/

 
ヘヴィ・メタル界で絶大な影響力を持つ“帝王”オジー・オズボーンの半生。その全てがここで語られたわけではないが、この映画「オジー降臨」が一つの鍵となることは十分に伝えられ、オジー・オズボーンという一人の人間自身の魅力を含めて非常に興味を引かせる内容であることをうかがわせるイベントとなった。まだオジーという名前を知らないというメタル・ビギナー、あるいはヘヴィ・メタルという音楽自体が未知の領域となっている音楽ファンにも、是非一度劇場に足を運んでいただくことをお勧めする。
尚、当日参加したバンド「BLOOD SABBATH」ギタリストの三谷佳之氏は、東日本大震災と原発事故で大きな被害を受けた福島への復興支援イベント「東京&福島へヴィメタル・サミット」を主催、多大な活動を展開している。この模様も、近日BEEASTにてレポートする予定、乞うご期待だ。