演奏

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TEXT:菅野美咲、鈴木亮介 PHOTO:鈴木まさみ

Photo本誌特集でもおなじみ、22歳以下のバンドコンテスト「JYOJI-ROCK」で、大会史上唯一の2連覇を成し遂げた、ボトルズハウス。東京・下町育ちで培われた本格ブルースロックには、クールに気取ったシティボーイをコテンパンに打ち砕く、”かっこいい泥臭さ”がある。それはもう、浅草・三社祭の神輿のような、或いは江戸川の河川敷の野球少年のような、或いは足立の町工場で響き渡る金属加工音のような…全身の血が騒ぎ、踊りまわりたくなるようなナンバーを奏でてくれる、それがボトルズハウスだ。
 
昨年は「FUJI ROCK FESTIVAL ’12」にも呼ばれた実力派・ボトルズハウスが、満を持して自主企画「炎のストッパー」を2013年より始動。その記念すべき第1弾の対バン相手に指名されたのは、彼らが「尊敬する大先輩」と公言するQomolangma Tomato(チョモランマ・トマト)だ。「格上」と崇めるバンドを迎えての開催。この辺りにも、企画の成功、すなわち「お客さんを楽しませよう」とする、彼らの気概を感じる。

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さぁいよいよ対決の火ぶたが切って落とされる。先攻はQomolangma Tomato!2003年に横浜で結成されたオルタナティヴ・ロックバンドだ。メンバーの石井成人(Vocal)、小倉直也(Guitar)、北沢寿浩(Bass)、大工原幹雄(Drums)がステージに立つと、パンドラの箱をひっくりかえしたようなチョモランマ・ワールドが全開だ。
 
熱量と強さで緊張した3人のサウンドに根を張るように、石井成人が日常に対する違和感と葛藤を込めた歌詞を、一気に爆発させる。高まる心拍数のようにメロディが徐々に加速すれば、呼吸ができなくなるような歌詞を真正面から叩きつけ、超満員のフロアを圧倒させる。
 
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「どこにも住む場所なんてないんだ!東京!」一点を見据えながら一瞬たりとも目が離せない勢いの愛を宣言。誰もが仕方ないと諦めてしまっている当たり前を当たり前にしない、間違っていることは間違っていると胸を張って表現する彼らのメッセージは清々しく、力強い。
 
「2013年になりましたが、俺達だけはどんどん先にいきましょう!俺達の人生はまだまだ続いています!俺たちについて来い!」と石井成人が強くリードすれば、警告のアラーム音のように小倉直也のギターがかき鳴らされ、石井成人は爆発したようにステージを飛び出す。オーディエンスをかきわけずとも切り拓かれる道を後ろまで駆け抜け、叫び、対人間に無反省な日常を訴える。続くように小倉直也もフロアに飛び降り、かかってこいやといわんばかりのサウンドをかき鳴らしてフロアを煽る。
 
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「新宿という街は、横浜で育った自分らにとって、好きでもあり嫌いでもあり、いろんな目にあった街です。大人になってからイベントとかやって、子どもの頃の自分はどう思うのかなと思いますが、こんな人間になってしまいました。これからもこういう感じでやっていこうと思うのでよろしくお願いします。」と、石井成人の確固たる意志が響く。石井成人は何度も飛び跳ね、両手を広げ、全力で何かと戦い、全身で何かを受け止めた。それらを3人は責任ある音で支え、新たなエネルギーを放出させる。進化の途中のような興奮と爽快感で溢れる、迷いのないアクトだった。
 

◆Qomolangma Tomato 公式サイト
http://qomolangmatomato.com/
 
◆インフォメーション
・2013年04月01日(月) 【渋谷】O-nest

熱気が半端ない会場にスタンバイしたのは今夜のイベントホスト、ボトルズハウス。2009年に結成された5人組、東京下町ゲットーブルースバンドだ。メンバーのラッコ(Bass)、駿平(Guitar)、こすげ(Vocal)、ジェジュン(Guitar)、オガケン(Drums)がステージにあがると、新たなる決意と存在の証明への挑戦がはじまった。
 
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「どうも、ボトルズハウスです!」というこすげの宣言から呼びかけるようにこれぞブルース「ファンキー兄ちゃん」を重力あるサウンドでぶちかますと、勢いそのままに「今日はどうもありがとう、下町のボトルズハウス、ジャストミート!」からの「JUST」へ。「ジャスト!」というかけ声を爽快に決めながら、テンションは一気にスピードアップしていく。比例するようにオーディエンスの興奮もヒートアップしていくとともに、「満たされない毎日、ぽっかり!」という紹介からの「ぽっかり」ではハーモニカがインして畳みかけていく。
 
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「どうもありがとう。今日はありがとう!」とこすげが感謝の意を叫ぶとイベントタイトルである「炎のストッパー」の由来について語る。「広島東洋カープの伝説のピッチャーがいて、剛速球すぎてあの原辰徳のバットをへし折っちゃった人がいるんだよ。そいで俺、炎のストッパーに対してすごい思い入れがあるのよ」と説明した所でフロアから「津田恒実だろ!」とすかさずツッコミ。さらに、話のオチを言おうとした所で「でも(入口のボードには)ストリッパーって書いてあったよ」とまさかのネタばれ。
 
そんなまさかの展開に開き直るかのように「こんな…ドラマじゃない、ドラマじゃない現状が待ってますよ…!」からの「ドラマじゃない現状」では勢いが刻み込まれたグルーヴが絡み合い、新宿JAMが一気にダンスフロアへと化す。半端ない一体感でタテに揺れたかと思えば、「抱きしめたい」では一変、ゆっくりとヨコに揺らせるような心地よさをくれる。
 
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後半は「ゲテダン」「時は金なり」と一気にノリの良いハイテンポナンバーで攻めまくる!「貧乏」「牛丼屋」「カネ」「平等」そんな、ともするとネガティブにも聴こえるフレーズが、ボトルズハウスの手にかかったら最後、そうした日常の鬱蒼をぶっ飛ばす爽快な曲に仕上がるから、不思議だ。彼らの標榜する「下町」は、決して飾りじゃない。ブルースロックを奏でるべくして生まれた、とも言うべき地域性、それをこの「下町」という二文字で表しているのだ。最後は渾身の新曲「FRONTIRE」を披露し、ステージを降りる。
 
威勢の良いアンコールのかけ声に呼ばれて再登場したボトルズハウス。1stアルバムにも収録されている「FD」を演奏。そこに込められた決意は確実にフロアの心の底に響いて忘れない。ジャンルの可能性をとことん追求したような純然たるブルースを響かせた彼らは、攻めの守りで立ち向かう「炎のストッパー」そのものになりつつあるのだ。
 
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◆セットリスト
M01. ファンキー兄ちゃん
M02. Just
M03. ぽっかり
M04. ドラマじゃない現状
M05. 抱きしめたい
M06. なんやそれい
M07. ガンバンナ
M08. 季節は変わる
M09. ゲテダン
M10. 時は金なり
M11. 頭ん中
M12. FRONTIRE
-encore-
M13. FD
◆ボトルズハウス 公式サイト
http://bottles-house.jimdo.com/
 
◆インフォメーション
・2013年03月29日(金)【新宿】JAM
ボトルズハウスpresents
「炎のストッパー VOL.2」
w/ 8otto

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