演奏

TEXT:N-yukano PHOTO:荻原ひかり

本誌BEEASTのコラムニストとしてもおなじみ森若香織と、歌手、声優、MC、カメラマンなど多岐に渡り活躍する宍戸留美によるユニット、魔性姉妹。2011年6月の結成から早1年以上が経過、今日は久々にホームグラウンド、下北沢SHELTERでの主催公演だ。共演は藤岡藤巻劇団鹿殺しRJPということだが、今宵は一体どんなステージが繰り広げられるのだろうか?
 
下北沢SHELTERの扉を開けると、そこは、和やかな雰囲気で、幅広い年齢層のファン達が「地下シェルター・魔性都市」に集っていた。開演時間が近づくにつれ、ステージ前方はもちろん、後方まで徐々に観客で埋まっていく。さぁいよいよ、「魔性都市」今宵のステージの開幕だ!

 


1組目は藤岡藤巻!テレビでもおなじみ、メガネの男性を中心に、おじさま方がステージに。静炉厳(Chorus)、川島浩平(Drums & Percussion)、羽生正貴(Bass & Keyboard)、そして藤岡孝章(Vocal & Guitar)が登壇する。
 
藤岡藤巻と言えば、崖の上のポニョでおなじみのユニット。きっと今回のステージもほのぼのとした演奏なのだろうと思いきや…全く違った!まず、藤巻直哉は本日欠席であると藤岡孝章から伝えられ、一曲目「妄想しようよ」が始まる。ズンチャっと軽快なテンポで演奏が始まると、心地良いコーラスとは裏腹に、「思い出は全て色あせる、だから妄想しようよ」「現実から逃げるんだ」…サラリーマンの哀愁漂う歌詞。そして「イチャつくカップルガソリンかけちゃえ!」と、くすっと笑えるブラックな歌詞が、なんとも刺激的!歌の勢いそのままに、MCでは自虐的トークで会場の笑いを誘い、「次は女性にひどい目に遭わされた曲を演奏します」と藤岡孝章。観客の女性達の名前を聞き、曲中に女性達の名前を折り込み、ゆっくりとしたテンポで哀愁漂う楽曲「君を許さない」を歌う。”飲み屋の姉ちゃん”にだまされた?という歌詞で、「不幸になっちゃえ」と歌うが、その”だまされた”内容が何とも些細で、面白い。
 
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まったりとした流れの中、スローテンポな「いーよな若くて」へと続く。そして4曲目は藤岡孝章が前の日の晩、韓国大統領が竹島に上陸したニュースを見ながら歌詞を考えたという、「○・ミ○ンバク応援歌」。明るく歌い上げるが、その曲調とは対照的に、笑っていいのか悪いのか…風刺の効いた歌詞だ。そしてラスト「ドレミの歌を、マイナーコードで陰鬱な曲にしてみました」と藤岡孝章がメジャーとマイナーコードを弾き比べて聞かせながら、「ラシドの歌」を歌いだす。これは藤岡藤巻の前身まりちゃんズ時代に作られた曲だが、藤岡孝章曰く「この(マイナーコードの)方が人生の真実に近いじゃないですか」とのこと。ブラックユーモアあふれる歌詞で笑いの絶えないステージ。毒がありつつも癖になるようなステージだ。
 
 

 

◆セットリスト
M01. 妄想しようよ
M02. 君を許さない
M03. いーよな若くて
M04. ○・ミ○ンバク応援歌
M05. ラシドの歌

 
◆藤岡藤巻 公式サイト
http://fujiokafujimaki.on.coocan.jp/
 
◆インフォメーション
・2012年10月17日(水)【代官山】晴れたら空に豆まいて
藤岡のみの出演


 


 

続いて2組目は劇団鹿殺しRJP!その名の通り、普段は下北沢などの劇場やストリートを中心に活動する演劇集団・劇団鹿殺しの中から派生したユニットで、単なる音楽劇にとどまらず、ユニークなパフォーマンスと完成度の高い楽曲で、野外フェスへの出演歴もある実力派だ。今宵のメンバーは丸尾丸一郎(Vocal & Air Guitar)、山岸門人(Vocal/Air Bass)、オレノグラフィティ(Vocal/Air Drums)、橘輝(Vocal/Air Bass)、高橋戦車(Vocal/Air Drums)、菜月チョビ(Vocal)、DJ鹿(Trumpet/Disc Jockey)、乳輪デカ子(Vocal)の8名だ。
 
エアーパフォーマンスが見られるということで、どのようなステージングなのかと期待を膨らませていると、テンポの良い電子音楽が流れ出し、DJ鹿がMacBookを持って出て来て拳を振り上げ観客を煽る!続々とメンバーが登場。DJ鹿がトランペットを吹き、菜月チョビの「まずは、ストレッチから…右上!」の言葉とともに、メンバーが、右上、左上、右横、左横…とストレッチを始め、「…右上!タオパイパイ」の言葉で、ロックなチューンがかかる。スリリングなサウンドとキレの良いダンスにくぎ付けだ!「タオパイパイ!パイ!パイ!」と観客との掛け合いもありつつ、この曲のメインボーカル山岸門人の笑いを交えたメンバー紹介で、観客は劇団鹿殺しRJPワールドに引き込まれていく。3曲目は菜月チョビがディストーション(歪み)の効いたヘビーな楽曲「燃えて鹿殺し」を歌い、韻を踏んだ歌詞と威勢のいいかけ声が印象的な「絶好調音頭」も続けて歌う。全身を使ったエアーギターソロのパフォーマンスがたまらない!
 
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続いて、丸尾丸一郎橘輝によるフォークデュオ、フィッシュ&チップスの演奏。「わき毛」「せな毛」と短いストーリーを挟みながら、学生時代の恋を弾き語る。さすが劇団から出来たバンド、ストーリー部分ではいきなり舞台演劇そのままの雰囲気に。そして他のメンバーもステージに登場、「恋せよおっさん」が始まる。ハードロック調ながら台詞有りのおっさんの気持ちを歌ったユーモラスな曲だ。その後、ポエム朗読からの「ねこまんま」は、ちょっぴり切ない歌詞にジーンとする。そしていよいよ終盤。山岸門人が「みんな鹿ってどんな風にジャンプするか知ってる?こうやって飛ぶんだ!」と煽り、劇団鹿殺しRJPの勢いを感じさせる「鹿殺しがやってきた」!最後は、『田舎の侍』という舞台公演が後日あることを告知し、「田舎の侍」で締める。汗を振り乱してパフォーマンスするメンバーはとても魅力的で、楽器はエアーでもこれほどライブ感が出るものなのか!という驚きを感じさせられた。
 
 


 

 

◆セットリスト
M01. ストレッチ
M02. タオパイパイ
M03. 燃えて鹿殺し
M04. 絶好調音頭
M05. わき毛
M06. せな毛
M07. 恋せよおっさん
M08. ねこまんま
M09. 鹿殺しがやってきた
M10. 田舎の侍
◆劇団鹿殺し 公式サイト
http://shika564.com
 
◆インフォメーション
ロックオペラ「田舎の侍」
・2012/10/04(木)~21(日)【下北沢】駅前劇場
ラジオ ニッポン放送「チョビラジ~明日もファイト」
毎週火曜夜20時30分~20時50分 放送
ライブ
・2012年11月04日(日)【下北沢】GARDEN
shimokita round up5
・2012年11月18日(日)【三軒茶屋】HEAVEN’S DOOR
打首鹿殺し同好会


そして3組目はいよいよおまちかね、魔性姉妹の登場だ。ナレーションが流れ、ALICE and the PIRATESの洋服に身を包んだ、青髪の森若香織…もとい、姉・マルクト・ジャンヌと、ロリータブランド、BABY, THE STARS SHINE BRIGHTの洋服に身を包んだ、ピンクの髪の宍戸留美…もとい、妹・プルシャ・マリアが登場。もう、一目見てなんて美しいんだろうと思わせるまさに魔性のルックス!時が経っても美少女は美しいままなんだと衝撃を受ける。ライブサポートを務めるのは、魔性姉妹のサウンドメイキングを手がける三浦俊一(Guitar/ケラ&ザ・シンセサイザーズNESS)と、河塚篤史(Drums/NESS)だ。
 
 


 


魔性姉妹と一緒に、歌い魔性、楽しみ魔性、チワワせになり魔性〜♪」とステージが始まる。1曲目はキャッチーなポップチューン「パンキー・スパンキー」。キュートでラヴリーなサウンドにメロメロだ。そのまま続けて、「チワワパワー」。河塚篤史の心地良く刻まれるビートに乗せて、「ワン、ツー、チワワーチワワー」と2人の優しく語りかけるようなボーカルが印象的。そこに三浦俊一の穏やかなコーラスも加わり、自然と体がリズムに合わせて揺れる。そして、二人の自己紹介。「皆さん、こんにチワワ〜♪」とかわいい挨拶をしていると、電話音が!「チワワチワワ♪」という着信音、電話の主はチワワなのだそうだ。この電話を通じて送られる「チワワパワー」には大きな声で一緒に歌いたくなるパワーが含まれている!ということで、客席もいっそう笑顔に!そこに森若香織の「もちもチワワ?」「(電話を切る際)ガッチャッ。あ、携帯だった…昭和だからね!」というユーモアあふれるMCも、いっそう客席を明るくする。
 
続いても魔性姉妹のテーマソングとも言うべき、その名もズバリ「魔性都市」を演奏。スローな楽曲に、森若香織宍戸留美のハーモニーが美しい。うっとりしていたら、再びチワワ電話が!ここで「チワワパワー!ターイムスリップ!」と、ここからはロック・クラシックのカバーだ。テクノロック調の曲「パートタイムパンクス」が始まる。ピロリンと鳴る電子音がとても印象的で80年代テクノガールズバンドという感じだ。続く「Muddy Honey Moon」も、もわっとしたロマンティックな音の連なりの中へ引き込まれるような楽曲だ。
 
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さらに、GO-BANG’Sの「スペシャル・ボーイフレンド」をセルフカバー!曲が始まるとともに喜びの声を上げる観客。元々キャッチーでついつい口ずさんでしまうような曲だが、魔性姉妹バージョンでは、テクノサウンドにアレンジされた楽曲に、宍戸留美の大人の色香漂うボーカルが加わり、また新しい魅力を放っていた。観客も、手拍子や身体を揺らしてこの空間を楽しんでいる。
 
ここで、本日1組目のステージに立った藤岡孝章が登場!ここで宍戸留美との意外な関係性が明かされる。実は宍戸留美藤岡孝章と最初に出会ったのは、アイドルとディレクターという関係だったのだ。確かに、藤岡孝章はソニー・ミュージックエンタテインメントのディレクターとしてシブがき隊の『スシ食いねェ!』の制作に携わったことでも知られているが、宍戸留美の『ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・シ・シ・ド・ル・ミ 』や『地球の危機』のディレクターとして、まさに”宍戸留美のアイドル時代を築いた男”なのだ!
 
そして、GO-BANG’S宍戸留美の曲がテクノポップに合わさった一曲「サマンサのキキ」を、藤岡孝章もタンバリンをたたきつつ歌うというファンにはたまらない展開に!観客の一緒に歌う声も一段と大きくなり、とても”チワワせ”なムードだ!
 
熱烈なアンコールの拍手と共に、再びステージに戻って来た魔性姉妹。「地球の危機みたいなヘンテコ曲だけじゃなくて正統派な曲も本当は歌いたかった」「GO-BANG’Sで武道館に立った時の衣装は何のためらいもなくブドウの衣装を着た」…といった当時のエピソードで会場を沸かせる。そして最後は再び「チワワパワー」で、会場中にチワワパワーを充満させ、鳴り止まない拍手の中「またお会いし魔性!」となごやかに今宵のステージは幕を下ろした。
 
 


 


アイドル、バンド時代の昔話に花が咲く中、森若香織が興奮さながらに語ったこの言葉に、今宵のステージの魅力、そして魔性姉妹の今後の方向性が全て集約されている。
「若い頃は昔話ばかりするような大人なんて!と思ってたけど、昔話、すっごい面白いの!」
今私たちはネット動画で昔の曲を聴くことはできても、その時の興奮や感慨を同じように体感することはできない。でも、この「魔性都市」に来れば、その感動が再び味わえるし、キャリアを積み進化した森若香織宍戸留美のボーカルとパフォーマンスも加わって、「リメイク版」のように珠玉の旧曲たちをもう一度楽しむことができるのだ!MCでは「40禁!若い人はいい!」と言われてしまったが、私たち若い世代も一緒に共感できるライブだ。次は10月26日に同じ下北沢SHELTERでワンマン公演。再び、この興奮を味わい魔性!
 

◆セットリスト
M01. パンキー・スパンキー
M02. チワワパワー
M03. 魔性都市
M04. パートタイムパンクス
M05. Muddy Honey Moon
M06. スペシャル・ボーイフレンド
M07. サマンサのキキ
-encore-
M01. チワワパワー
◆魔性姉妹 ポッドキャスト『魔性姉妹のポッディーパワー』
http://www.voiceblog.jp/mashoshimai/
 
◆インフォメーション
・2012年10月26日(金】【下北沢】SHELTER
 
◆森若香織 ラジオレギュラースタート
ニッポン放送『AGES~エイジス~』 月~木 21:00~21:50 生放送
(※森若香織は毎週火、木担当)
http://www.1242.com/program/ages/

 

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【レポート】魔性姉妹 
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