演奏

TEXT & PHOTO:ヨコマキミヨ

GO-BANG’Sのデビュー以来ミュージシャンとして活動を続ける一方、バンド解散後は女優業に加え作詞家としても大活躍の森若香織。「ルンルン」の愛称で親しまれ、正統派アイドルとして事務所から独立後もセルフプロデュースにより歌手活動などを続け、近年は声優、イラストレーター、カメラマンなど活躍の場を広げる宍戸留美。この両名が下北沢の老舗ライブハウス「SHELTER」20周年アニバーサリーをきっかけに結成し始動したユニットこそが魔性姉妹だ。

ともに芸歴20年を超え、女性シンガーとして一目置かれる存在の二人のユニットとあって、各分野から精鋭のクリエイターが集結しているのも特筆すべき点である。初配信シングルの音楽をテクノロックユニット・HONDALADYが手掛けたほか、衣装をゴスロリブランド「Baby, The Stars Shine Bright」の上原久美子と「ALICE and the PIRATES」の三つ葉が担当。さらに、物語設定を『下妻物語』などで知られる作家・嶽本野ばら、イラストをホラー漫画家の児嶋都が手がけている。

 


そんな魔性姉妹の今年初ステージが、2012年3月4日(日)に開催された。日付にちなんで「1-2-3-4 REVUE」と題されたこの日は、中野テルヲ折茂昌美Shampoo)とのツーマンライブだ。春間近ながらも冷たい小雨が降る今宵、会場となる高円寺「HIGH」には開場すると同時にドッとお客さんが押し寄せ、スタンディングの客席はあっという間に埋まってしまった。場所柄もあってか、個性的でファッショナブルな女性が多く見受けられたが、制服姿の女子高生や、その両親の世代と言うべき人々、パンクス風の男性までもと年齢層もタイプも幅広く様々。会場には何とも言えない独特な雰囲気が満ちはじめた。

まず1組目は、中野テルヲ折茂昌美Shampoo)の登場だ。P-MODELLONG VACATIONを経て、日本のテクノポップ、ニューウェーブの重鎮として独自の電子音楽を提供し続ける中野テルヲと、1979年にShampooを結成し、1982年にP-MODEL平沢進のプロデュースによるデビューから、30年以上にわたりオリジナル性高い世界を展開し続けている折茂昌美。この2人によるユニットからのスタートだ。

 



 


淡々としながらも、甘い歌声でミステリアスな魅力を放つ折茂昌美。都会的でいながら、どこかオリエンタルな香りを漂わせる中野テルヲのサウンド。次第に客席が、静かに、でも深く傾聴していくのを感じる。いつの間にか、お洒落で妖しい「オトナな世界」に引き込まれ、もはやアート鑑賞をしているような感覚になっていた。ますます不思議な空気がジワジワとステージをつたって会場全体に膨れ広がっていく。


 


さぁそして2組目、いよいよ魔性姉妹の登場だ。妖しげなSEとともに、物語の読み聞かせのように、嶽本野ばら執筆によるユニットコンセプトのナレーションが流れ出した。1曲目は魔性姉妹のテーマ曲「「魔性都市 〜Femme fatale city〜」。ゴシック様式の衣装に身を包んだ、森若香織宍戸留美が登場!青髪ショートの森若香織が姉・ジャンヌで、赤髪ゆるふわカールの宍戸留美が妹・マリアだ。

 



 


まるで古い絵本の中に入り込んでしまったような、パラレルワールドの幕開けだ。1曲目が終わると、森若香織の持つ魔性姉妹ケータイが「♪チワワ、チワワ」と鳴った。どうやら本日のミッションが告げられたようだ。「はい。もう到着してます」「チワワパワー!!」とジャンヌが叫ぶと、妖しい雰囲気から一転してミディアムテンポの明るい2曲目「チワワパワー」のイントロがはじまった。「みなさん!こんにチワワー!!」オーディエンスにむかって元気よく呼び掛ける2人。魔性姉妹の活動目的は「チワワパワー」で世界中を楽しくすること。「魔性姉妹と一緒に歌い魔性☆ 楽しく怪しく幸せになり魔性☆」というコンセプトの通り、ステージの二人は常に笑顔!オーディエンスもつられて笑顔になる。
 
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バックには、今回のライブよりサウンドメイキングを手がける三浦俊一(Guitar/ケラ&ザ・シンセサイザーズNESS)と、河塚篤史(Drums/NESS)が参加。重厚感溢れるサウンドが魅力な「Honey Muddy Moon」、そしてテクノにパンキッシュなリズムが乗った「パートタイムパンクス」と、シャープに引き締まったハードな曲が続いていく。

 



 


そして5曲目に披露されたのは、GO-BANG’Sの「サマンサ」と、宍戸留美の「地球の危機」とがテクノポップとなって見事に融合された「サマンサの危機」だ。どちらも1991年にリリースされた曲で、「サマンサ」は「奥さまは魔女」がモチーフになっている曲。「地球の危機」はテクノサウンドで当時アイドルとして全盛だった宍戸留美のイメージを一新させた曲。どちらも魔性姉妹というコンセプトにぴったり合致する楽曲だ。魔性姉妹の原型は20年前には既に出来あがっていたのかもしれない。ともかく、「サマンサの危機」はこのユニットでしか聞くことのできない貴重な一曲だ。

 



 


弾けるようにパワフルで力強い「パンキースパンキー」で一旦幕が閉じられた。大きな拍手に包まれて、再び三浦俊一河塚篤史、そして宍戸留美が登場。アンコールは、三浦俊一流にスタイリッシュにアレンジされた、これまたGO-BANG’Sの名曲「スペシャルボーイフレンド」だ!まずは宍戸留美がキュートに歌い上げ、途中から森若香織もステージ上に登場。2人で熱唱し、幅広い世代が集結したオーディエンスを一つにした。そして最後は再び「チワワパワー」を歌い、エンディングとなった。
 


魔性姉妹 Episode 1「魔性都市〜Femme fatale city〜」

それにしても、ジャンヌとマリアというキャラ設定がイマイチあやふやな加減も、この二人らしいキュートでラブリーなところだ。まるで魔法にかけられたかのように、その可愛らしさにすっかり魅了され、最後には「チワワパワー」をたっぷり吸収し幸福な気持ちに包まれることができた。彼女たちのパワーと優れた音楽性にきっと読者の皆さんも魅了されることだろう。貴方も「チワワパワー」を吸収してみては?
 




◆セットリスト
M01. 魔性都市~Femme fatale city~
M02. チワワパワー
M03. Honey Muddy Moon
M04. パートタイムパンクス
M05. サマンサの危機
M06. パンキースパンキー
-encore-
M01. スペシャル・ボーイフレンド
M02. チワワパワー

◆魔性姉妹 公式サイト
http://www.loft-prj.co.jp/masho/

◆インフォメーション
2012/04/13(金)【下北沢】SHELTER
『魔性姉妹プロジェクト2012』
【出演】
魔性姉妹
森若香織宍戸留美
音楽:三浦俊一、Drums:河塚篤史
LASTORDERZ
田口トモロヲ淡谷三治森若香織小野かほりDen(バクテリア))
OPEN 19:00/START 19:30
前売3,000円/当日3,500円(+D)
チケット取り扱い:
ぴあ(Pコード:164-104)、
ローソン(Lコード:71322)
問い合わせ:TEL03-3466-7430
(下北沢SHELTER)
さらなる進化をし続ける魔性姉妹が、今度は田口トモロヲ淡谷三治森若香織魔性姉妹・姉のマルクト・ジャンヌとは別人?)等を擁するパンクバンドLASTORDERZと対バン!ゴシックポップ×リアル大人パンク=伝説化必至の異色ツーマンライブを是非、お見逃しなく!