演奏

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TEXT:鈴木亮介 PHOTO:幡原裕治

本誌コラム「先生!これはロックですか?」も好評の三原勇希が、2014年4月3日~6日に開催された舞台「聖澤女学院物語 ラストディーバ」に出演した。ニコラモデルやtvk「sakusaku」4代目MCを筆頭に、モデル、パーソナリティ、ドラマ出演とマルチに活動する彼女だが、舞台への出演は自身初であり、しかも初出演にして主演という大役だ。
 
三原勇希の記念すべき初舞台初主演の模様を、全出演者が同世代の女性という本作の魅力とともにお伝えしたい。

 

 

 

「東京女子演劇部」とは、演技はもちろん音楽、声優、モデル、グラビアなど様々なジャンルで活躍する女性タレントが舞台を通して学び成長することを目的に始動したプロジェクトで、本気の創作現場で切磋琢磨しあいながら、モノ作りに必要な技術はもちろん、プロ意識、ストイックさといった心の在り方も学び、将来の飛躍につなげてもらおうというものだ。
 
その「東京女子演劇部」の企画第1弾公演として制作が行われた「聖澤女学院物語 ラストディーバ」は脚本を米山和仁、演出を宇治川まさなりが務める書き下ろし作。キャストは総勢36名が参加。サクラ科とスミレ科に分かれ、伊倉愛美、中塚智実、光希沙織の3名を除きダブルキャストでの公演だ。三原勇希はサクラ科の主演を務め、スミレ科の主演はグラビアやバラエティ番組でも活躍する齊藤夢愛が務める。(※本記事ではサクラ科の公演をレポートします)
 
 

 

 

 

 

「人間は生まれ変わることができるのか…」――舞台は美術系の女子大、聖澤(ひじりさわ)女学院。桜吹雪が舞い踊る入学式の朝、キラッキラの笑顔で校門に立つのは、三原勇希演じる主人公の蓮美華(はすみか)すみれだ。すみれは高校時代にいじめを受け、知り合いが誰もいない地域の美大を受験。晴れて合格し、雑誌で研究し尽くしたファッションで初登校を果たしたのだ。心に闇を抱えつつも、根はお茶目な”関西人気質”、そして人前に立つスターの素質を秘めた…そんな単純でない役どころを、三原勇希は初舞台と思えないほど自然体に演じきる。
 
 

 

 

 

 

さて、主人公すみれは誰も知り合いのいない美大に入学したはずだったが…「あなた、蓮美華すみれさんでしょ?」謎の人物に声をかけられる。その人物こそ、杉山みどり演じるスター開発部部長、春日部峰子だ。中塚智実(ex:AKB48)演じる発明オタクの峯崎千恵子ら個性派ぞろいの部員にも温かく歓迎され、すみれは「女として輝くこと」を目標に、演劇部の主役オーディションを半ば強制的に受けることになる。
 
主役オーディションという現実離れした課題に、一見ごく普通の女子大生が挑んでいく脚本の中には、リアリティあふれる女性ならではの「生」、「夢」、「輝き」といったテーマが詰まっており、一つ一つのセリフも印象的だ。偶然通りかかった先輩(谷須美子演じる先坂亜衣)に「(外見を飾って自分を変えようとしても)それはただの衣替えだ!」と一蹴されるすみれ。内面の美しさを手に入れるためには、乗り越えなければならない壁がある…
 
 

 

 

 

 

オーディションの一次審査で頭が真っ白になったすみれは、かつていじめられていた頃の持ちネタであるハトの物まねを披露。ライバルからは失笑を買い、すみれ自身「封印したはずの醜い自分」を表現してしまったことに自己嫌悪になる。しかし、その演技は演劇部の看板女優、清家とも子演じる音無響子の心に留まる。一方、演劇部には「オーディションを中止せよ」という、なんとも物騒な脅迫状が届く。その後ストーリーはすみれの学園生活、バイト、オーディション、脅迫状…と幾重にもクロスし、テンポよく展開していく。
 
華麗なアクションやダンス、コミカルな演技とそれぞれのキャストがそれぞれの個性を発揮するが、その中でも目を引くのが、主人公すみれの妹、蓮美華しおり役をシングルキャストとして演じた伊倉愛美だ。憎らしくもかわいらしい、”調子のいい妹”として登場。中盤、自らも姉同様に友人関係で悩んでいることを明かすと、姉に寄り添い、二人三脚で壁を乗り越えていく。主人公・すみれの心の葛藤と成長を立体的に表現する重要な役どころだ。
 
伊倉愛美の芸歴は既に19年。NHK「ひとりでできるもん」の三代目まいちゃん役や「天才てれびくんMAX」のてれび戦士、ももいろクローバーの初期メンバー、3年B組金八先生ファイナルの増田祐美役など、確固たるキャリアを持つ彼女の存在感は本作の見どころの一つと言ってもいいだろう。
 
 

 

 

 

 

舞台は終盤。オーディションの最終選考にて、脅迫事件の真相が明らかになる。そこには唯一無二のパートナーへの看板女優・音無響子の思い、光希沙織演じる何としても興行を成功させたい演劇部マネージャー・柳千尋の思い、そしてすみれをスターダムにのし上げたい春日部峰子らスター開発部の思い…様々な人の思いが交錯している。そして三原勇希演じるすみれは車いすに座ると、まっすぐに前を見据える。かつて先坂亜衣が演じた主役になって、クライマックスのシーンを堂々演じきる。
 
「嫌なら逃げればいい。でも逃げ続けるのも疲れちゃう。だったら受け入れよう」「大丈夫、仲間がいる」…そんなセリフの一つ一つは、今この舞台に立っているキャストたち自身の未来をも明るく照らす、珠玉の言霊だ。最後は三原勇希も含め全キャストがダンスと歌を披露。20名の女優がステージに勢ぞろいしての主題歌の斉唱は圧巻だ。
 
決して派手な演出があるわけでもなく、ストーリーに幾つもの伏線が張られているというわけでもないが、エンタテインメントの根源を問い直すような、個々の女優のリアルな「生き様」が垣間見える、非常に熱量の高い舞台であった。
 
 

 

 

 

 

最後に20人のキャスト全員で主題歌を斉唱する際――これは敢えてそういう演出にしたのだろうが――20人がそれぞれ手のふりや表情をそれぞれのペースで行った。テレビなどでアイドルグループの統一感ある振り付けを見慣れていると、今回の振り付けは一見バラバラに映るのだが、すぐさまその印象は変わった。
 
そこに立っている一人ひとりは紛れもない一女優であって、それぞれにカラーがある。その動きを統一させることで生まれる表層的な一体感もあるが、20人それぞれが自分の花を咲かせることで、映像ではない生の舞台だからこそ感じられるグルーブ、深層的な一体感をそこに感じることができた。
 
この公演中である4月4日に24歳の誕生日を迎えた三原勇希。念願であったラジオのレギュラーパーソナリティが決まったり、週刊プレイボーイのグラビアに登場したりと、ますます活動の幅を広げている。共演者も含め、それぞれのステージで輝きを放ってほしい。そして是非「東京女子演劇部」第2弾の開催を願ってやまない。
 
 

 

 



 

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◆東京女子演劇部 vol.1 「聖澤女学院物語ラストディーバ」
世のため人のため輝くため!本気の女子力向上演劇部誕生!
芝居&ダンス&歌のエンタテイメント作品 女子大生達の夢と友情と絆を描いた青春群像劇

【キャスト&スタッフ】
ダブルキャスト公演(一部シングルキャスト):
[サクラ科]
三原勇希/伊倉愛美/中塚智実/光希沙織/杉山みどり/網島恵里香/華子/
根本茉登香/宮武真央/清家とも子/谷須美子/清水若菜/吉田ゆい/野村由貴/
辻祐香/家永恵理/田村夏奈子/長縄莉穂/土屋里奈/井上紗綾
[スミレ科]
齊藤夢愛/伊倉愛美/中塚智実/光希沙織/倉本夏希/根本玲那/榎あづさ/
谷口明日菜/今井瑞/麻生あゆみ/鶴田葵/加藤優香子/辻野泉葉/渡邉万優茄/
吉岡末紗/栗原みさ/野村由貴/山田せいら/上野詩織/木下結愛
 
脚本:米山和仁 
演出:宇治川まさなり
【公演期間】
2014年4月3日(木)~6日(日) 
【劇場】
東京・品川 六行会ホール
 
企画製作/東京女子演劇部実行委員会
主催/株式会社スタンダードソング
http://www.umanpro.jp/lastdiva/
http://jyoshigeki.jugem.jp/
 


◆三原勇希 オフィシャルブログ
http://ameblo.jp/yuki-de/
 
◆インフォメーション
・週刊プレイボーイ 2014年6月2日号に登場!
 
・ラジオ「劇団サンバカーニバル」出演中!
(FM-FUJI 毎週土曜夜20時~22時)
http://geki3.fmfuji.co.jp/
・テレ玉ほか「フィッシング倶楽部」出演中!(不定期)
http://www.fishing-club.jp/

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