演奏

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TEXT:鈴木亮介 PHOTO:三橋コータ

Photo本誌インタビュー特集BEEAST太鼓判シリーズ第25弾アーティストでもご紹介した3ピースガールロックバンド、浮遊スル猫が、自身初となる全国流通盤『フカシンリョウイキ』を1月22日に発売し、そのリリースパーティーとなる初めての自主企画イベントを渋谷チェルシーホテルにて開催した。共演はFOOLAリリーローズ惑星アブノーマルの3組。それぞれが持ち時間もたっぷり、ハイセンスな”ふゆねこ“ファンの耳を満足させるステージを披露した。
 
このリリースパーティーを皮切りに、浮遊スル猫は全国ツアーへ出発。その道中には、オープニングアクトコンテストで優勝し、「NAONのYAON」のステージに出演決定という快挙を成し遂げた。その勢いは天井知らずだ。
 
自らをアンダーグラウンドと称する彼女たちは今、地下を抜け出し、野外音楽堂のステージへ。そしてさらに高いステージへと走り続けている。そんな浮遊スル猫の門出の第一歩をレポートしよう。
 
◆浮遊スル猫 メンバー:
さはら(Vocal & Guitar)、やがわいちる(Bass & Vocal)、おみ(Drums)

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深い森に迷い込んだかのような静寂の中、静かにギターがリフレイン…突如、シンバルが切り裂き、スコールがここ渋谷チェルシーホテルに打ちつける。
 
1組目に登場したのは2011年9月に結成した3ピースロックバンド、FOOLA。そのギターの歪みに、メロディアスな歌声に、激情を込める山下マサキ(Vocal & Guitar)。長髪を振り乱し、バスドラの威力と同様に全身で重低音を表現する横堀ユウコ(Drums)。コーラスの優しさとベースプレイの強さとが同居するミステリアスなプレイヤー、白石アユミ(Bass)。3人の個性が爆発するサウンドには、「オルタナ」「ガレージ」…そういったジャンルの括りをぶっ壊す力強さと奥深さがある。
 
冒頭からトップギアに入ったままの演奏。4曲目「BREATHLESS」では爽快なギターの旋律が心地良い。5曲目「GLOW」でスローテンポになった時に、改めて3人の音作りの秀逸さが伝わる。そして終盤は再び怒涛の高速ロックンロール。8曲目「DEAD MOVIE STAR」も、ラスト9曲目「遺言」も、曲の入りのフレーズが都度クールでしびれる。全てを出しきった入魂のステージ、3人が降りた後もしばらく拍手とどよめきが鳴り止まなかった。
 
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◆セットリスト
M01. GOTHAM
M02. FOOL
M03. SUNSET
M04. BREATHLESS
M05. GLOW
M06. BLACK NOIZ
M07. RAIN DOWN
M08. DEAD MOVIE STAR
M09. 遺言
◆FOOLA 公式サイト
http://www.foolafoola.com/
 
◆インフォメーション
・2014年04月25日(金)【 柏 】616
・2014年04月28日(月)【渋 谷】チェルシーホテル
・2014年05月09日(金)【三軒茶屋】HEAVEN’S DOOR
・2014年05月15日(木)【渋 谷】
・2014年06月03日(火)【池 袋】Adm

 

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今度は渋谷チェルシーホテルが一瞬にして英国庭園に早変わり。真紅の薔薇が4輪、つぼみを開いた。2組目に登場するのはリリーローズ。メンバーはayumi melody(Vocal & Keyboard)、アイカワエリナ(Bass)、sei(Guitar)、梶原春奈(Drums)。”ドラマチックエモきゅんガールズバンド”というキャッチフレーズの通り、洗練されたピアノロックからゆったり癒しサウンドまで、曲ごとにガラっと場面が展開していく、メリハリあるステージが魅力だ。
 
1曲目「Fever」では中央に座するayumi melodyのメインボーカルに、四弦を抱えスラッと立つアイカワエリナのコーラスも加わり、さらに4人のちょっぴりダークなロックサウンドで魅せる。3曲目「そういうこと」は清涼感あふれるサウンドにのびやかなボーカルを乗せる。曲ごとに変わる表情に、ぐいぐい引き込まれる。
 
4曲目「マジックワード」はリリーローズのテーマ曲だという、等身大の優しい曲。四者四様、それぞれの音が華麗に舞い、それが見事に調和。MCでも4人のキャラクターが立つ、ゆるふわなハーモニーが奏でられる。最後6曲目「波と波と波」はシリアスな曲調。その一体感は、ステージからフロアに伝播した。
 
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◆セットリスト
M01. Fever
M02. ヒーロー
M03. そういうこと
M04. マジックワード
M05. メテオ
M06. 波と波と波
◆リリーローズ 公式サイト
http://www.lilyrose.jp/
 
◆インフォメーション
・2014年04月29日(祝)【新 宿】Motion
 ※ニューアルバム『LILY e.p.』リリースパーティー
・2014年05月19日(月)【代官山】LOOP
 ※浮遊スル猫と共演

 

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ステージがまだ暗いうちから、既にそのバンド名の通りの”アブノーマル”さが醸し出されている。アレックスたねこ(Vocal)、テナ・オンディーヌ(Keyboard)の女性メンバー2名と、黒子姿に身を包んだサポートギター、ベース、ドラム、パーカッションの4名がセッティング。3組目はKioon Musicの新人発掘オーディション「キューン 20 イヤーズオーディション」ファイナリストとしてデビュー前から注目を集めた惑星アブノーマルだ。
 
洗練されたシティポップに、メンバー2人の”気”が乗り移った、独特のステージが序盤から展開。2曲目「アレルギー」はユニークな変調が楽しい。3曲目、新曲の「人生はロマンティック」はどこか懐かしさを感じるサウンドで、アレックスたねこもマイクの握り方から鼻をさする仕草、表情まで一挙手一投足が往年のアイドルを彷彿させる。
 
今宵のこのステージに、実に多様な要素を詰め込んできた惑星アブノーマル。小宇宙を探検するようだ。中でも5曲目「月夜海水浴」は壮大なピアノロックナンバー。鍵盤もボーカルもスケールアップし、観客の心をつかんで離さない。
 
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◆セットリスト
M01. 流星
M02. アレルギー
M03. 人生はロマンティック
M04. 臆病舎ラプソディー
M05. 月夜海水浴
M06. 愛してやまない
M07. 息衝く
◆惑星アブノーマル 公式サイト
http://wakusei-abnormal.com/
 
◆インフォメーション
・2014年04月19日(土)【北堀江】club vijon
・2014年04月20日(日)【名古屋】CLUB ROCK’N’ROLL
・2014年04月27日(日)【渋 谷】チェルシーホテル
・2014年04月29日(祝)【渋 谷】LUSH
・2014年05月02日(金)【仙 台】FLYING SON
・2014年05月14日(水)【渋 谷】TSUTAYA O-WEST
・2014年05月24日(土)【新木場】若洲公園
 ※TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2014への出演
・2014年06月06日(土)【浜 松】FORCE
・2014年06月12日(木)【代官山】LOOP

 

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ここまでの3組はスタイルやジャンルの違いこそあれど、共通して「浮遊」「飛翔」といったワードを連想させる、シャボン玉が弾けるような楽しいステージを展開。次の舞台へ、全国ツアーへ旅立つ浮遊スル猫へのはなむけを贈った。
 
そしていよいよ主役、浮遊スル猫の登場だ。さはらいちるが対面し、一音一音丁寧に鳴らす。そこにおみも加わり、三つ巴の音が融和する。さながら、コーヒーカップの中を泳ぐミルクのように、軽やかに歯車が回り始める。
 
1曲目「好奇の眼(アルバム3曲目収録)」、2曲目「惰性と憂鬱(アルバム3曲目収録)」と、1stアルバム『フカシンリョウイキ』の収録順に進む。ほしいところに着実に決めてくるおみのドラム、泰然と構えるさはらの太いギター、大きな神輿を担ぐように力強く暴れるいちるのベース。いったい小柄な3人のどこにそれほど爆発的なエネルギーが眠っているのか、と毎度ながら驚嘆させられる。
 
3曲目は新曲「虚栄心パラドックス」。加速してきた。自然と体が踊るロックなナンバー。おみのスネアもバスも相変わらず痛快に突き刺さるし、さはらいちるのクロスするボーカル、その躍動感に身震いする。「一瞬の情熱を指折り数えこのままじゃもう…」瞬間、瞬間、どこを切り取ってもハイセンスだ。
 
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前日は大雪となった東京。1組目のFOOLAが登場した頃から既にフロアは満杯であったが、改めて大入りとなったチェルシーホテルのフロアをステージから見渡したメンバー、その顔がほころぶ。「足元の悪い中渋谷のど真ん中に来てくれてありがとう!嬉しすぎる!」「バンドさんも来るの大変だったと思う。お客さんも大変だった。本当に。それでもみんな来てくれて、本当に本当に嬉しいです。嬉しいしか言ってない!」…いちるも安堵の表情を浮かべながら話す。
 
そんな和やかな空気にしばし浸ったところで、怒涛の後半戦。さはらのギターが鋭く切り裂く。4曲目は「深い不快な眠りについて」。日常に横たわる不快感、ダークさを巧妙に表現したこの曲も、『フカシンリョウイキ』4曲目に収録されている。音に合った詩なのか、詩に合った音なのか、いずれにせよ彼女たちにしか作り出せない言葉と音が一体となった世界観だ。
 
アルバムに収録された「インタールード」を挟んで、ギターとベースが優しく唸り始める。5曲目はアルバム収録曲の中でもライブ人気が高い「over」。切ない旋律を奏でるギター。存在感を示すドラム。さっと自然に入るベース。のびやかなボーカルに乗せて、3人の感情、そして観客の熱は高まっていく。歪むギターを徐々に絞り、最後はアルバム最終トラックの「宇宙猫」。スローテンポで、会場全体を優しく包み込む。「おやすみ世界、さよなら、またね!」
 
浮遊スル猫の音楽には”ダークな心地よさ”がある。暗いのではない、と言って蛍光塗料のような明るさはない。それは、夜明けの東の空のような、明るさ。覚悟を持った明るさがある。温かい音楽だ。
 
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「愛してやまない」「一生の宝です」…共演者と集まった観客に向けて最大級の賛辞を送った浮遊スル猫メンバー。確かにこのリリースパーティーの共演者は、単なる寄せ集めではなくふゆねこファンをしっかり満足させる、選ばれた3組であった。演奏時間も、会場の音作り、空間作り、フードも含め、一イベントとしても非常に完成度の高いものであった。それが実現できたのも、1回1回のライブを大切にし、共演者やライブハウススタッフとの関係性を大事にするふゆねこメンバー&スタッフの人徳ということに尽きるだろう。
 
アンコールではアルバム未収録、ライブでは人気の高い「俯瞰」と「loop」の2曲を披露。スペーシーな音の土台に「羊さん」「狼さん」が跳梁跋扈するユニークな歌詞がクセになる。「loop」はさはらの声域の広さといちるのキュートな声が絶妙なハーモニーを生み出す、こちらもエモーショナルな楽曲だ。いずれも自主製作の1stデモCDに収録されており、結成当初から応援しているファンへのいっそうの感謝の意を込めたアンコールとなった。

仙台、名古屋、大阪、神戸など全国を回り、4月2日にはバンド結成2周年。そして冒頭に書いた通りNAONのYAONオープニングアクトコンテストで優勝も果たすなど疾走を続ける浮遊スル猫。NAONのYAONの3日前、4月26日(土)には新宿Motionで全国ツアーのファイナル公演を行う。一回りも二回りも大きくなった”猫”たちを是非その目に焼きつけてほしい。
 

◆セットリスト
M01. 好奇の眼
M02. 惰性と憂鬱
M03. 虚栄心パラドックス
M04. 深い不快な眠りについて
M05. over
M06. 宇宙猫
-encore-
E01. 俯瞰
E02. loop
 
 
Photo
◆浮遊スル猫 公式サイト
http://fuyuneko.com/
◆浮遊スル猫 公式Twitterアカウント
https://twitter.com/fuyusuru_neko
 
◆リリース情報
浮遊スル猫 1stミニアルバム『フカシンリョウイキ』
2014年01月22日~発売中

 
◆ライブ情報
・2014年04月17日(木)【渋 谷】チェルシーホテル
・2014年04月21日(月)【渋 谷】Mt.RAINIER HALL
・2014年04月26日(土)【新 宿】Motion
 ※ツアーファイナル
・2014年04月29日(火祝)【日比谷】野外音楽堂
 ※NAONのYAON 2014 オープニングアクト出演
・2014年05月03日(土祝)【渋谷】LUSH & HOME
 ※2会場往来自由型イベント
・2014年05月19日(月)【代官山】LOOP
 ※リリーローズと共演
・2014年05月23日(金)【下北沢】GARDEN
・2014年06月25日(水)【下北沢】Club251

 

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【連載】目指せYAON!Cute Girls Live最前線 Section 02~卒業GIG~
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【特集】BEEAST太鼓判シリーズ第25弾アーティスト『浮遊スル猫』
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【レポート】TOKYO BOOT UP!2013 プレイベントvol.4
http://www.beeast69.com/report/85659
【PHOTOレポ】浮遊スル猫 @立川BABEL
http://www.beeast69.com/report/72229