特集

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TEXT:鈴木亮介 PHOTO:矢沢隆則

本誌BEEASTが自信を持ってプッシュする太鼓判アーティストの特集、第30弾はLoVendoЯ(ラベンダー)が登場する。メンバーは田中れいな(Vocal)、岡田万里奈(Vocal)、魚住有希(Guitar)、宮澤茉凛(Guitar)の4名。
 
2012年、当時モーニング娘。の現役メンバーであった田中れいなと「バンドやりたい女子メンバー大募集!」と銘打ったオーディションを実施、4000名にもおよぶ応募者の中から岡田万里奈魚住有希宮澤茉凛の3名が選出され、11月にバンドを結成。サポートに林束紗(Bass)や(Bass)、バンマスも兼ねて小林香織(Drums)が入る強力布陣でライブ活動を始めた。
 
翌2013年にはインディーズデビューアルバム『ラベンダーカバーThe ROCK』をリリースし、三度にわたる全国ワンマンツアーを開催。さらに、NAONのYAON 2013など多数のライブイベントや海外でのライブにも出演した。今年に入り、4月に初のオリジナル音源を収録した『不器用』をリリース。4カ月間にわたるロングツアーを経て、新たな音源制作を開始。11月5日(水)に3rdミニアルバム『イクジナシ』をリリースする。
 
今回は、まもなく結成から2年を迎えるLoVendoЯの4人に、結成当初から現在までの活動を振り返ってもらいつつ、未だ進化の過程にあるLoVendoЯについて、展望を聞いた。
 

LoVendoЯ(ラベンダー)
2012年6月よりオーディションを開催し、総勢約4000名の応募の中から、田中れいなと一緒に音楽活動を行っていくメンバー3名が決定し、11月に結成される!ツインボーカル&ツインギターの編成からなる、4人ユニットとしてのバンド活動がスタートし、2013年5月にインディーズデビューアルバム『ラベンダーカバーThe ROCK』をリリース。2013年度は、3度の全国ワンマンツアーを開催し、多数のライブイベントや、海外公演などにも出演し、計40本以上のステージを精力的にこなした。
 
2014年4月には、待望のオリジナル曲を中心としたミニアルバム『不器用』が完成し、 4カ月間に渡るロングツアーを敢行。2014年11月5日には、3枚目のアルバム『イクジナシ』をリリースが決定し、5度目の全国ツアーも決定!ステージを踏む度に進化し続けている、期待のガールズバンド!

 

 

「デビュー当初からの曲をアレンジ」「ライブで育った曲」「LoVendoЯの新しい形」…
今のLoVendoЯの全てが詰まった1枚に
—11月5日に3rdミニアルバム『イクジナシ』が発売されますが、まずはアルバムの制作経緯から伺えればと思います。

 
田中:今回のアルバムはギターとアルバムを別々に録りました。れいなの歌録りが始まる頃にはもうギター録りは終わっていたから…いつ頃からかな?
 
魚住:9月頃だよね。最初は「イクジナシ」からレコーディングを始めました。
 

—アルバム1曲目の「イクジナシ」ですね。中島卓偉さん作詞作曲のこの曲は、最初からいきなり突き抜ける轟音とキャッチーなメロディが印象的です。

 
魚住:ありがとうございます。この曲はライブでは既にやっていましたが、ライブのアレンジをだいぶ変えて、レコーディングした音源はバージョンアップしたものになっています。ライブで既に聴いてくださっている方もまた違った音を楽しめると思います。
 

—レコーディングに際して、ギターについて何かこだわったこと、意識したことはありますか?

 
魚住:ギターに関して…そうですね、ギターソロもライブのときと同じように弾いているので…
 

—敢えて変えることはなく、むしろライブの迫力をそのままに詰め込んだ感じでしょうか?

 
魚住:そうですね。ライブ感が楽しめると思います。
 
田中:今回はライブで回数を重ねて温めてきたものを音源化できたので、歌入れのときもかしこまらずライブをやっているかのようにできたのが良かったと思います。れいな個人のテーマとしても、今回は「ライブ感を出す」を意識しながらレコーディングに臨みました。
 

—“ライブ感”というと?

 
田中:いつもレコーディングになると…モーニング娘。のデビュー当初からずっとそうだったのですが、ライブみたいに声が出てなかったり、リズムを気にして伸びがなかったり、躍動感ない歌…ただリズムに合わせて音程狂わず歌ってます、といった仕上がりにしかならなくて。ずーっとライブ感を意識して11年やってきたんですけど…
 

—なるほど。これまでずっと課題にしてきたことなんですね。

 
田中:今までは「仮歌を渡されて次の日がレコーディング」というのが当たり前だったので、全然思うような歌声が出なくて。そのときそのときのレコーディングでは自分の出せる力を全部出し切ったつもりなんですけど、その後1年近くライブをやって、改めてCDを聴くと「うわ、さびしい!」みたいな感じで。レコーディングが最初の練習、みたいになってたんですよ(笑)
 

—多忙なトップアイドルならではのエピソードですね。

 
田中:それがずっと嫌だったんですけど、今回はLoVendoЯのツアーで1年近く歌ってきた曲のレコーディングなので、「今回こそはれいなの思い通りにできるかも!」と思って。ライブで動くように…例えばキーの高いところはライブではふんばりながら歌うから力が出るじゃないですか?そういうのを思い出しながら、レコーディングでも動きながら歌いました。
 

—同じボーカリストとして、岡田さんはいかがですか?今回のアルバムのレコーディングで特に心がけたこと、意識した点などお聞かせください。

 
岡田:最初の1年はただがむしゃらに歌っていたのですが、2年目に突入して、今回「自分の歌い方」が初めてできたアルバムだなと思ってます。今までは「こうしたほうがいいよ」と言われた通りに歌っていたのですが、今回のアルバムは自分で考えて歌うことを意識しました。
 

—それはやはり、ライブで培われた経験が影響しているのでしょうか。

 
岡田:そうですね。ライブをたくさんやってきて、例えば「こういう風にやった方が感情が入る」といったことを色々研究してきて、の今回のレコーディングなので、自分なりの表現がこれまでのアルバム以上にうまくできたと思います。あと、LoVendoЯのレコーディングでは最初に田中さんの歌を聞いてから同じ譜割りで私も歌うのですが、そこが難しくもやりがいを感じる点です。互いの歌い方のクセがあって、それを今回もまた新たに発見できました。
 

—なるほど。田中さんのボーカルが先にあって、後から岡田さんのボーカルを乗せていくわけですね。

 
岡田:そうですね。
 

—その中で「自分の歌い方」を出すとなると、特にどういうことを意識していますか?

 
岡田:前までは声を張り上げて歌っていたので、後から自分で音源を聴くと、がなっているように聴こえていて、そこがコンプレックスでした。迫力と評価してくださる方もいるけど、聞いていて心地よい、女性らしい歌声で歌いたいと思って、その辺りを今回は特に意識しました。
 

—そんな岡田さんのボーカルを、先輩・田中さんとしてはどう評価していますか?

 
田中:声質が違うので2人でユニゾンのときは、全然違うトーンでやることで厚みが出たり、ハモりもたくさんしているので聴こえ方が良くて。でも、2人とも歌い回しが違うから、最初の頃は結構悩みましたね。
 

—そうなんですね。

 
田中:レコーディングのときにはそろっていても、ライブで生になると互いが自分の歌い方で歌うので、後で映像を観ると音程が狂っているように聴こえてしまって。でも一人で歌ってみてもおかまり(=岡田)はズレてないし、おかしくないのにズレるってどういうことだろう?と半年くらいめっちゃ悩んで(笑)、最近やっと見つけ出して、その都度LINEで教えるようにしています。1回1回合わせる努力をしています。
 

—そしてアルバム2曲目の「UNDERGROUNDER」は宮澤茉凜さん作曲ということで、曲が生まれた経緯など詳しく伺えればと思います。

 
宮澤:夏の終わり頃に思いついてイントロのリフのフレーズから考えて書き上げた曲です。私はハードロックやメタルが好きなので、そういう要素を盛り込みたいと思ったのと、でもそれだけじゃただのエゴにすぎないので、ツインボーカルを活かすようなメロディを入れてみたりとか…そういう融合に挑戦しました。
 

—確かに重厚なサウンドのインパクトはありますが、ボーカリスト2人を引き立てているような印象を受けました。普段作曲するときはリフから作ることが多いですか?

 
宮澤:色々ですね。リフから作ったりメロから作ったりバッキングから作ったり…とか、多方面から考えています。
 

—今回の曲は、どういうイメージで作り上げていったのですか?

 
宮澤:やっぱりHR/HMを彷彿させるようなメロディやフレーズを入れこんでいって…この曲は構成がちょっと変わっていて、A、B、C、サビとなっていて…
 

—そうですね。Bメロの後にCメロがあってからのサビですね。

 
宮澤:「C」を入れたのは、盛り上がるというか、異空間的な世界観を出したかったので。
 

—LoVendoЯの曲ということでもちろん2人のボーカルをイメージしながら作っていったと思うのですが、歌詞はどんな感じで発注したのでしょうか?

 
宮澤:はい。いや、歌詞については作詞家の方にお任せしました。「あー確かに地下鉄だ!」って。地下っていうイメージがぴったりだったので、良かったです(笑)
 

—魚住さんも作曲されると思いますが、普段どのような感じで曲を作っていますか?

 
魚住:今の私たちにない曲調で書いてみようとか、こういう曲をやったらライブで盛り上がるかな?とか…
 

—バンド内で、できた曲を聴かせあって、意見を出し合ったりも…

 
魚住:あー…4人で曲を作っていった、というのは今のところないですね。メンバー内で「こんな曲やりたいね」「こんな曲合ったら盛り上がるんじゃないか?」って意見を出し合うことはよくあります。
 
岡田:姉さん(=魚住)と私は、よく「こういう曲やりたい」っていう話はしていますね。「夢を語る」みたいな感じでね(笑)
 

モー娘。時代は”画面”で勝負 今は「一人ひとりの目を見て表現する」
—引き続きアルバムの話を伺います。3曲目「この世に真実の愛が一つだけあるなら」はデビュー当初からライブで歌い続けてきた曲ですね。

 
岡田:曲調がリメイクされて、すごく変わったんですよ。オルガンの音が入ったりして…今までライブで聴いてくださっていた方も新鮮な気持ちで聴けるのではないかと思います。
 

—確かに、これまでのライブではキーボードは入ってなかったですよね。

 
魚住:パイプオルガンの音なんですよ。教会っぽい、ゴシック感が出せていると思います。
 

—そして4曲目「Stonez!!」。こちらは「ライブで育った曲」ということですが…

 
魚住:そうですね。ツアー後半からやりだした曲なのでリハに入って合わせる時間をあまりとらず、ライブを通して育っていった曲だなぁと思います。
 

—「育っていった」というのは、具体的にどういうところで感じますか?

 
魚住:お客さんとのコール&レスポンスですね。
 
岡田:お客さんも一緒に歌えるところが多い曲で、レコーディングでも男性のスタッフがコーラスに参加したり、ギター2人も結構歌っているのがポイントです。「ライブでみんなでやってました!」というところがCDでも伝わると思いますし、これを聴いてきてくれれば、初めてライブに参加するお客さんでも自分たちが歌うところが分かるようになっています。
 

—なるほど。CDでしっかり予習すれば、ライブでいっそう盛り上がれる、と。

 
岡田:そうですね!
 
宮澤:あとはライブの見どころとして、私たちの特徴はツインギター&ツインボーカルのハーモニーなので、曲中にたくさんハモるところが出てくるので、そこに注目してほしいです。
 

—確かにハーモニーはガールズロックの醍醐味ですね。そして最終トラックはミディアムテンポの「少年」。この曲の聴きどころなど、教えてください。

 
岡田:この曲は、1番は田中さんがメインですが、2番は私が全部リードボーカルとして歌っています。そういう構成は今までのLoVendoЯにはなくて、田中さんが主メロで私が下でハモるというのがこれまでのLoVendoЯだったので。
 

—LoVendoЯの新しい形が提示された一曲、ですね。

 
岡田:そうですね。元々自分がバラードやミディアムテンポの曲が結構好きだったので、初めて主旋律を歌えるということもあり、私の中では思い入れが深いレコーディングになりました。
 

—激しくテンポの速い曲とはまた違った歌い方へのこだわりもあると思います。その辺り、田中さんはいかがですか?

 
田中:普段はビブラートが出ちゃうんですが、邪魔だ!と思って。この歌では。全部消して、置くように歌うことを目標にレコーディングを行いました。新曲ということもあって、レコーディング前には一番たくさん練習しましたね。
 

—そうなんですね。

 
田中:曲によって人を想像するんです。れいなモノマネが得意なんですけど…
 

—モノマネ?

 
田中:自分で歌うと満足しないので、誰かを想像してその人になりきって歌うんです。それができたときの楽しさが半端ないんですよ。うわ!誰々だ!って。お客さんも飽きないように、曲によって歌い方を変えたらいいんじゃないかなぁって。
 

—それは面白い!ちなみにこの曲では誰を…

 
田中:言わないです!(笑)
 
魚住:言わないんだ(笑)
 
田中:その人ならこう歌うかなーとか、そこに自分の歌も織り交ぜたり…「少年」はゆっくりだから歌いやすいと思いきや、意外とリズムがややこしくて、歌いやすくないんですよ。生で歌うの大丈夫かな?ってちょっと不安です。
 

—もうすぐ始まる全国ツアーで、初披露するわけですよね。

 
田中:まだ(レコーディングを終えたばかりで)そろえてもいないんですよ。
 

—歌い手として11年のキャリアがあって、その中でバンドを従えて歌を歌うというスタイルになってから2年になりますが、バンドでのライブの違いはどのように感じていますか?

 
田中:ライブが”生”という点では共通していますが、バンドの場合は音も生になるので…モーニング娘。のときは聴こえ方が変わることはないし。「あ、誰か音程はずした!」みたいなことはあっても(笑)
 

—そうですね(笑)

 
田中:バンドになると、みんなのテンションやリズムもその都度違いますよね。テンションが上がってテンポが速くなると「うわ、歌詞噛みそう!」って。そんなとき「バンドだなぁ」って思います。昔誰かから「バンドはボーカルに合わせてリズムをとってくれるから、好きに歌っちゃっていいんだよ」って言われたんですけど、全然そんなことなくて!私の場合は音楽を聴いて歌うんじゃなくて、元々の曲のリズムを覚えて歌ってるので、ちょっとでもズレると細かく分かっちゃうんですよ。それが嫌なので、最近はあまりリズムを考えすぎないように、ちゃんと今あるバンドの音で歌うようにしています。
 

—ライブでは、お客さんとの物理的な近さもモーニング娘。時代と異なると思いますが、その辺りはいかがでしょうか。

 
田中:あー最初は「大丈夫かな?鼻水とか見える!」みたいな(笑)
 

—そこですか?(笑)

 
田中:風邪の日とか、ホール公演だと下向いたときに(鼻水を)吸ってからまた上を向いてキメ顔ができるけど、ライブハウスだと下向いたときですら見えるんですよ。どうしよう?って思って…最初は息ができなかったですね。風邪のときは。でも最近は「近いほうが直でアピールはしやすいな」っていう風に考え方が変わりました。ホールだとカメラがあって背後に画面があるので、れいなはそこに勝負を持っていくんですよ。顔で表現するっていうのを。
 

—なるほど。そこで表情を”決める”わけですね。

 
田中:ダンスももちろんなんですけど。でもライブハウスだと画面がないので、一番後ろのお客さんまで伝えきれないなぁって…れいなはまだそこで個性を出し切れていなくて。早く画面がある(ような大きい)会場でやりたいなぁっていう思いもありますし、逆に前の方のお客さんには生でそういった表情を見せられるので、一人ひとりの目を見て表現する、ということをLoVendoЯになってからは特に意識しています。
 

「LoVendoЯはLoVendoЯで行かないといけない」 表現者としてのこだわり
—まもなく結成2年を迎える皆さんですが、今回のアルバムではこれまでの等身大の思いを歌った曲から、アダルトな一面というか、LoVendoЯの新たな側面が見られるアルバムに仕上がっているように思います。皆さんは「自分自身の表現を磨く」ということを、普段どのように意識し、取り組まれていますか?

 
田中:普段?…自分の映像を見て、日々改善していく、とかですかね。不思議なのが、バンドになって思ったように歌えていないことが多いんですよ。「え?れいなこんな歌い方してないのに」って。たぶんロックバンドの爆音の中で歌うということに苦手意識があって…自分の声が聴こえてないんですよ。冷静に聴けるようにならないとハモれないなと思って、家帰って一人で自分のライブ映像を観てクソ!と思って。なんかもう…いいと思ったことが一回もないんですよ。自分が。
 

— 一回も、ですか?

 
田中:全然。もう2年も経ったのに全然満足できてないので…まぁ満足できたらそこで目指すものが終わっちゃうんだろうなぁとは思いますけど、早く自分が思うような歌とかパフォーマンスができるようにしたいなぁと思いながら日々ライブをやっています。
 

—そうすると、「きょうのライブはうまくいったなぁ」というのはこの2年間全くない?

 
田中:もちろん(ライブとして)これはうまくいったっていうのはありますよ!映像を振り返っていて「この曲の歌めっちゃいい」って思ったらおかまりにすぐ連絡して「見て」って(笑)。そういうときって、自分でも歌っていて気持ちがいいんですよ。うまくいかないこともあるけど、しょうがないって思うしかない。歌のことばかり考えていたら自分が全然楽しくないので、表情豊かにやろうとしてやり始めたら、ライブが楽しくなりました。
 

—その辺は、トップアイドルとして駆け抜けていた10代の頃と、今の20代の自分とではまた考え方が変わってきますよね。

 
田中:自分がバンドをやるってなったときに、どちらかというと今までバンドに興味がなかったタイプなので、参考にしようと色々なバンドを研究したこともありましたが、最近はバンドにとらわれず、自分がなりたいものを目指せばいいのかなと思うようになりました。20歳過ぎてからずっとそうなんですけど…今までずっと後藤真希さんにあこがれてきて、モーニング娘。に入ったら「石川さんの踊り方が好きだ」とか…
 

—身近に目標にできる存在がたくさんいましたよね。

 
田中:先輩の色んないいところをいっぱい見て吸収しよう、というのがあったのですごく楽しかったんですけど、自分が上の世代になってくると、自分は自分だって自信を持ってきたので、目指すところがなくなっちゃったんですよ。
 

—なるほど。

 
田中:そうすると、今は楽しいけど、がむしゃらな心を忘れてるわけじゃないですか。「こうなりたい!」みたいなのがなくなっちゃって。それで最近、自分が先輩の背中を追いかけてがんばっていた頃の映像を見たらそのときの気持ちがよみがえってきて、次こうしてみようって案が出てきたんですよね。
 

—今は特定の目標を追うのではなく、自分と対峙する時期なんでしょうね。それも、決して「自分オンリー自分大好き」みたいな意味でなく、自分を客観的に見ているというか。

 
田中:うーん、そうですね。
 

—2年連続で出演したNAONのYAONは、ジャンルもキャリアも様々な女性ミュージシャンがたくさん出ますよね。そういうところで刺激を受けたりというのはありますか?

 
田中:寺田恵子さんはいつも元気にお客さんが楽しめることをやっているのですごいなぁって思うし、相川七瀬さんもたった一人でステージに立っているのにお客さんみんなを自分一人に注目させているのがすごいなぁって思うし…れいなは踊ってパフォーマンスで魅せている人が好きで、自分もそうなりたいなぁと思っています。だから逆に、踊らないパフォーマンスでこういう魅せ方があるのか?!っていうのはすごく勉強になりましたね。
 

—なるほど。岡田さんはいかがですか?

 
岡田:対バンをしたときに色んなボーカリストの人と話をするように心がけています。私は人と話すのが好きで、人見知りもしないのですぐ仲良くなれるんですよ。ライブはお客さんとしても結構行きますね。ガールズバンドのライブに行って、「こういうバンドがいるんだ?」って。
 

—研究熱心ですね!

 
岡田:かぶらないようにしないといけないって思ってて。ガールズバンドが増えているので、LoVendoЯLoVendoЯで行かないといけないけど、一方で同世代にどういうバンドがいるのか自分で知っておかないといけないなと思ってます。
 

—ご自身のライブについては、やはり田中さん同様映像で振り返ることも多いのでしょうか。

 
岡田:そうですね。毎回、スタッフさんが優しいのでDVDにしてくださるんですよ。ライブは音源でも聴いて、振り返るようにしています。
 
魚住:私もライブにはよく行きますね。あと、新譜もチェックするようにしています。
 

—新譜はやはりガールズバンドが多いですか?

 
魚住:はい。最近おかまりと私が特にお気に入りなのがFLiPさんで、NAONのYAONで共演した際にも色々お話しさせてもらいました。
 

—NAONのYAONといえば、今年魚住さんは森高千里さんなど他のアーティストのバック演奏でも活躍されてましたね。

 
魚住:森高千里さんの後ろで弾かせていただいたのはとても嬉しかったですね。緊張していたのであっという間のステージでした!
 

—魚住さんと宮澤さんはLoVendoЯ結成前からバンド活動のキャリアがありますが、それまでに組んだバンドとLoVendoЯでの違いというか、LoVendoЯのギタリストとして意識していることはありますか?

 
魚住:所詮アイドルバンドだろ、って思われてることが多くて、ギターも当て振りじゃないかとさえ思われていて…そこはずっとバンドをやっている身としては、ちゃんと「バンドだぞ!」っていうアピールはしていきたいですね。
 
宮澤:普段はこんなんですけど、ステージに立ったときにロックさをパフォーマンスに出そうという気持ちはいつもあります。前は自分だけの視点でパフォーマンスをしていましたが、そうじゃなくて、お客さんを虜にするような、魅せられるようなパフォーマンスをしたいということを最近は意識しています。
 

—LoVendoЯのお客さんは、これまでのいわゆるロックバンドのお客さんと比べて、やはり違いは感じますか?

 
宮澤:やっぱり特殊ですね。私もバンドをちょっとやっていましたが、ライブハウスにサイリウムっていうのは変わってるなーって思いましたし、乗り方が特殊だなーって感じで。盛り上げ上手な皆さんで楽しいです。
 

—特に抵抗はなく?

 
宮澤:そうですね。楽しめてます。
 

「武道館でやりたいってまだ誰一人思ってない」
「アイドルと思われようがアーティストと思われようが、どうだっていい」
—今回のアルバム『イクジナシ』を引っ提げて、11月1日より全国ツアーも始まります。3年目のLoVendoЯ、今後の展望をお聞かせください。

 
魚住:私たちも既に何曲か曲を書いているので、フルアルバムを出せるように、自分たちで作った曲をどんどん世に出していきたいです。
 
岡田:今回のツアーでは初めて「ツアーのためのミーティング」を行って、メンバー同士かなり話し合ったんですよ。これまではスタッフの方からの提案をそのまま実践するということが多かったのですが、私たちのやりたいことも積極的に提案して、自発的にLoVendoЯを作り上げていきたいです。
 
魚住:あ、あとアニメのタイアップがやれたらいいね、とは話しています。
 

—アニメ、いいですね!皆さんアニメは好きなんですか?

 
魚住:はい。アニメはギタリストでこじらせてる者が…(宮澤の方を見つめる)
 
岡田:そして、ツアーの内容では、テーマを決めて、テーマに沿ったエンタメ性というか、楽しめる仕掛けを色々考えています。ツアータイトルもみんなで決めたり…LoVendoЯの色をなるべく出せるようにしたいです。
 
宮澤:私はファンの方との交流がもっとできれば…と思います。例えばUstなどの配信番組とか。あと、今年はイナズマロックフェスに出演させてもらいましたが、大きな夏フェスにもどんどん出演したいです。
 

—LoVendoЯの公演としてももっと大きな会場で…

 
宮澤:うーん…
 

—そういうわけではなく?(笑)

 
田中:そんなに思ってないみたいだね(笑)。4人とも、今が楽しいんですよ。で、もっといろんなお客さんがLoVendoЯを必要としてくれて、気づいたら大きいところでやれているね、という状態が理想なんです。今「武道館でやりたい」ってこの4人誰一人思ってないと思うんです、まだ。広さにとらわれていないというか、ちゃんと「LoVendoЯだね、この4人が」というのを作り上げていって、それを観て楽しんでくれるお客さんが増えてくれれば、と思います。
 

—なるほど。単純にデカい会場目指してます、っていうわけじゃないんですね。

 
田中:やれたらすごく嬉しいですけどね。あと、私はあまり後のことを考えないので…なるようになるだろう、と思って生きていこうと思っているんですが、ライブについてはずっと続けていきたいと思います。モーニング娘。を卒業して、ファンの方のありがたみがすごく理解できるようになったんです。静かに音を聴くというのもライブの楽しみ方ですが、LoVendoЯのファンはライブでものすごく盛り上がって大きな声を出してくれて、ファンのみんなもどう盛り上げようかと考えてくれているみたいで、それが私にとっては誇りで、ありがたみを感じます。
 

—大歓声で盛り上がってくれるのが嬉しい、と。

 
田中:だから、今はまだあまりできてないけど、ファンのみんなともっと交流したいんです。それは昔からずっと思っていて、ファンのみんながいるからこそこういう仕事ができているとは思っていますが、「ありがとう」っていう気持ちをライブやその後の握手会だけではまだまだ伝えきれていないんですよ。そうじゃなくて、直でありがとうって言える場がほしい。(ステージを降りて)素の女の子に戻って接するとみんなの思いや温かさがよりいっそう伝わってくるので、みんなとゆっくり交流できる機会がほしいんです。
 

—「交流」というワードはロックバンドからはあまり聴かれないですね。

 
田中:ですよね。あんまりバンドの人ってやらなくて、どちらかというとアイドルの人がやるようなイメージですよね。でも、もうそんなの関係ないと思うんですよね。LoVendoЯはアイドルと思われようがアーティストと思われようが、どっちでもいい、というかどうだっていい。良いと思ってくれる人がついてきてくれればそれでいいし、ファンクラブツアーみたいなことも全然やっていいと思ってます。
 

—それを突き詰めていくと、アイドルとロックバンドのいい所取りができそうです。

 
田中:どっちも観れる、みたいな?何かにとらわれずに、音楽もそうですけど、「これ」って定めずにやっているつもりです。アイドルとかバンドとか定めずに、全部いけたらいいなって思ってます。
 

—田中さん個人的には、音楽の好みはどんな感じなんですか?

 
田中:最近わからなくなってきちゃって。でも、これまで幸せな歌、元気な歌もいっぱい歌ってきて、やっぱりみんなが思いっきり声を出せる曲が歌いたいなぁっていうのはずっと思ってます。楽しい曲が歌いたいなぁって。今回のアルバムの曲だと「Stonez!!」は楽しい曲だけど、それ以上に、もっともっと楽しい歌が歌いたいです。
 

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語弊を恐れずに言えば、ミュージシャン・田中れいなはそれほどロックが好きではないのだと思う。だからこそ、LoVendoЯというバンドには既存のロックバンドには為し得ない可能性が詰まっているように思う。適度な距離感があるからこそ、どう魅せれば輝けるかを冷静に考察、体現することができるのだ。
 
そして、対照的にガールズロックを純粋に突き進む岡田万里奈のボーカルがそこに交わることで起こる化学反応。岡田万里奈自身が進化の途上にいることもあり、これからますますLoVendoЯの表現の幅は広がっていくだろう。そして、魚住有希宮澤茉凛は間違いなく王道のロックギタリストだ。耳の肥えたロックファンも納得させる重厚なサウンドは、NAONのYAONをはじめ様々なライブ、イベントでも実証済み。そんなLoVendoЯの独自の世界観を、まずはCDから体感してみてほしい。
 

◆3rd mini album『イクジナシ』
・2014年11月05日(水)発売
<収録曲>
M01. イクジナシ
M02. UNDERGROUNDER
M03. この世に真実の愛が一つだけあるなら
M04. Stonez!!
M05. 少年
<ディスク2:DVD ミュージックビデオ2本と7月ツアーファイナルのライブ映像を収録!>
M01. イクジナシ(MusicVideo)
M02. 少年(MusicVideo)
M03. Stonez!!(Live@WWW)
M04. 愛の儀式(Live@WWW)
M05. だけどもう一度それでももう一度(Live@WWW)


 
◆LoVendoЯ 公式サイト
http://lovendor.jp/
◆ライブインフォメーション
LoVendoЯ LIVE TOUR 2014-15
・2014年11月01日(土)【原 宿】アストロホール
・2014年11月09日(日)【大 阪】americamura FAN-J twice
・2014年11月21日(金)【岡 山】IMAGE
・2014年11月22日(土)【福 岡】DRUM SON
・2014年11月29日(土)【名古屋】Electric Lady Land
・2014年11月30日(日)【岐 阜】club-G
・2014年12月04日(木)【吉祥寺】CLUB SEATA
・2014年12月14日(日)【埼 玉】HEAVEN’S ROCKさいたま新都心
・2014年12月20日(土)【水 戸】ライトハウス
・2014年12月22日(月)【横 浜】赤レンガ倉庫1号館 3Fホール
・2015年01月12日(月)【渋 谷】clubasia
・2015年01月18日(日)【札 幌】DUCE
・2015年02月01日(日)【仙 台】MACANA

 

 

 
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