コラム
メタル・ギタリストは陽気な裸のギャング達の夢を見るか?
島紀史
日本のHM/HRシーンを牽引するCONCERTO MOONのリーダー兼ギタリスト。4歳からクラシック・ピアノを始め、13歳でリッチー・ブラックモアに衝撃を受けた事により、ギターを手にする。関西で数々のバンド活動を経て、96年にCONCERTO MOONを結成、98年にVAPよりメジャー・デビュー。暗黒時代と言われたジャパニーズ・ヘヴィ・メタル界に彗星のごとく現れたギター・ヒーローとして、ギター・キッズを熱狂させた。00~07年には、CONCERTO MOONと並行して、プロジェクト・バンドDOUBLE-DEALERでも活躍。シンフォニーXらと共に行ったフランス・ツアーや、ストラトヴァリウスやイングヴェイ・マルムスティーンの日本公演でのオープニング・アクトに抜擢される等、海外アーティストとの競演も多数あり、国内外を問わず、高い評価を得ている。

ギャング2


皆さん、こんにちは。
 
 
前回からすっかりご無沙汰してしまいましたが、決してこのコラムを忘れていたり、長田の様に毎夜毎夜パーティー三昧に明け暮れていたりした訳ではなく、我々CONCERTO MOONにとって10枚目になるアルバムのレコーディングに勤しんでおったのです。なかなか同時進行で色々な事が出来るタイプではないもんで、レコーディングに集中すると周りが見えなくなってしまっていました。申し訳無い!許してね!ごめんなさい!不器用ですから。(苦笑)
 
1という訳で、前回の最後に書いたように、今回は只今行われているレコーディング作業を、無理矢理プロレスに例えながら書いていこうと思います。プロセスを試合の組み立てに例えて行くと判りやすいかも?
 
ご存知の通り、レコーディングの作業は、一昔前ならメンバー全員が「せぇ~のっ!」と同時に録音したりしていた訳ですが、現在はそんな事をする人達も少なく、パートごとに録音して、どんどん楽器をダビングしていくのが通常です。
 
2我々も、録音する順番を試行錯誤したりした時期もありますが、(ギターが最初とか、ベースが最後とか)今回はノーマルにドラムから録り始めました。ここが大事な所でして、最初のドラムが土台になる訳ですから、ここが揺らいでおると、後からどんな凄いプレイ(大技)を決めても寒い事になる訳です。
 
プロレスの試合に例えるなら、最初から大技だらけのドタバタした試合というのは個人的にはしんどいですな。ガチっという音が聞こえてきそうなロック・アップから入り、ベーシックな、それでいて濃厚なマット・レスリングが展開されるからこそ、中盤以降のフィニッシュに向かう展開が盛り上がるってもんだと思います。
 
3ドラムというのはこのベーシックな部分を大きく担うので、派手だがビートがフラフラとか、曲の事はさて置きのプレイでは困る訳です。
 
その点を長田と二人で細かくやっていく訳ですが、それはそれは細かいです。(苦笑)多分、長田は僕の事が嫌いになる位の細かさです。(苦笑)僕には曲を作った者としてのイメージがありますから、それと長田のプレイの良い所を共存させたテイクを模索するのは、毎度ですが時間も掛かりますし、厳しいジャッジにもなります。そこは長年の付き合いですから、彼の限界のプレイを引き出すのには慣れていますし、それ以上やると身体に無理が生じるポイントも理解しています。
 
4例えばリストを取って絞り上げるにしても、長田が自らの肩周辺を2、3回、格闘技で言う所のタップの様な動きで叩いたら、「ヘイ、ヘイ、それ以上絞られるとマジで決まるぜ。」と言っているのが判るし、長田の得意技が華麗に決まったら、静かに目を閉じて3カウントを聞く訳です。(笑)
 
そんな巌流島の猪木vs M•斎藤の試合の様な長丁場(2時間5分14秒)【写真1】のドラム録りを経て、長田が途中でプロレス・スーパースター列伝に出て来る弱い選手の様に、声高らかに「ギバァ~ップ!」と叫ぶ事無く録音されたテイクは、凄まじい勢いと緻密な手足のコンビネーションが同居した良い物に仕上がっています。
 

毎度の事ながら、根を上げずに懸命に取り組んでくれる事には感謝感激ですが、今回を経て、感じた問題点や反省点を踏まえてアルバム発表後のツアーに備えて欲しいですな。
 
まぁ、彼はやるでしょう。やらないと目立とう精神が旺盛なのに目立てないですから。(笑)
 
5そのドラムに、今回サポートという形で参加してくれている三谷耕作のベースをダビングします。これはもう安心です。
 
どれ位の安心感かと言うと、タッグ・パートナーがヒロ・斎藤【写真2】、道場破りが来た時に居るのが藤原喜明【写真3】、外国のスーパースターが挑戦してきた時のチャンピオンがエル・カネック【写真4】、マッチメイクを考える時のフロントのリーダーが大塚直樹【写真5】、自動販売機の前でごっちゃんですと言う相手が上井さん【写真6】という位の安心感なのだ!(笑)
 
彼自身が、CONCERTO MOONの最近のベースラインが忙し過ぎると思っていたと言う事で、収められたプレイはビートに重きを置いたシンプルなライン中心だが、抜群のタイム感で長田のドラムとよく噛み合った抜群のコンビネーションになっています。
 
6これ難しいんやで。伝わりにくい部分だとは思いますが、今回の耕作のベースプレイを完璧に弾けたら、あなたは素晴らしいベーシストだと言えると思います。ここでも細かさを発揮してジャッジしたのですが、耕作自身のジャッジの方が細かかった。(苦笑)
 
重箱の隅を突き続けて、穴開けて、もう一度完全に修復する位の細かさなので、見てれば良かった程でしたよ。(笑)とにかく最高なリズム・トラックが出来上がりました。最高だ!
 
ここからギター録りに行く訳ですが、その話は次回に。次はすぐ書きます!(苦笑)
では今回は以上!
 
 


CONCERTO MOON


Member
島 紀史(Guitar)
久世 敦史(Vocal)
長田 昌之(Drums)


Support Member
三谷 耕作(Bass)
Aki(Keyboard)

 
公式サイト:
http://concerto-moon.com/