演奏

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TEXT & PHOTO:桂伸也

 
2012年には、マヤ歴の予言による地球滅亡説という都市伝説が世界を飛び交った。しかし、世にはびこる不安をもろともせず、この前日に一組のバンドのステージが行われた。昨年、BEEAST太鼓判シリーズ第5弾アーティスト『快進のICHIGEKI』でも紹介したロックバンド、快進のICHIGEKIだ。
 
ハードロックサウンドを踏襲しながらもジャンルにとらわれないユニークな音楽性と、その絶対的なパフォーマンスで支持を得ているバンドだ。常に相当数のステージになる過酷なツアースケジュールを精力的にこなしながら、最近では楽器フェアでのデモ演奏などでも引っ張りダコと、世界観だけに留まらずテクニックと実力にも高い評価を得ており、今一番注目すべきバンドといえよう。この日、彼らは一年の集大成として、渋谷BOXXにてワンマンライブを敢行した。この一年でどれほどの成長を遂げたのか?今回はその白熱のステージの模様をレポート、合わせて彼らの内面にある思いを探ってみた。
 
◆メンバーリスト:
コータ(Vocal)、久雄(Guitar)、(Bass)、佑一(Drums)

ぎっしり詰まった渋谷BOXXのフロア。ステージ前列にはTシャツ姿でタオルをしっかりと握りしめた「快進ソルジャー」(バンドは彼らのファンのことをこう呼ぶ)が、闘志むき出しで彼らの登場を待っていた。会場にはGUNS N’ ROSESの「Welcome to the Jungle」が大音量で流れる。自らのライブを「戦場」と呼んでいる快進のICHIGEKIにとっては、このステージもまさに戦場。その士気を高めるためにもこの曲はピッタリだ。曲のラストに流れる、不安をかきむしるコードが打ち鳴らされるまで、観衆はもうじっとしていられず大きな歓声をあげたり、手拍子でリズムを体に馴染ませたり。しかしそのあとに流れたのは、なぜかベートーベンの「歓喜の歌」。彼らの登場を待ち侘びていたフロアの観衆はあっけにとられた。年末恒例の風物詩を用いた奇襲攻撃。快進のICHIGEKIと快進ソルジャーたちの戦いはそのとき既に始まっていたのだ。
 
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不意にそのハーモニーが途切れると、いよいよメンバーの登場だ。SEがかき消されるほどの大きな歓声に包まれて登場するメンバー。スタンバイを終えると、いよいよスタートとばかりに、SE音に混じった一言でライブの幕開けを告げた。「快進のICHIGEKI!」その一言と共に、久雄のギターがフィードバック音を上げる。そしてここぞ!というタイミングでコータの第一声「絶体絶命の愛の結晶!!」という叫びでいよいよステージはスタートした。
 
ステージ中央に立ったコータの表情には、一抹の不安も見られなかった。ライブで徹底的に鍛え上げられた彼のパフォーマンスには絶対的な自信すら見られる。さらにこの日は久々の東京でのワンマンライブということもあり、気迫に満ちていた。一曲目の「絶体絶命の愛の結晶」のイントロ部分から必死に観衆をあおり観衆全員の気持ちを高ぶらせていった。彼の押さえ切れない激情は、バンドのサウンドそのものとなって観衆に襲い掛かる。それに負けじと必死の形相で大きな歓声をあげ、応戦する観衆。その様子はまさに戦場そのもの。
 
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続いたのはミディアムテンポの哀愁感を持った曲「大人子守唄」。一曲目の激しい雰囲気から、押しまくりの展開を予想した観衆は、その急激な変化に良い意味で期待を裏切られた。快進のICHIGEKIが淡々とプレイをしているにも関わらず、サビにくれば激しくステージの動きに反応する観衆。コータの微妙な歌の変化、そして手の動き、全身の動き。それらがうまく連動し、観衆の注意をステージ中央へと釘付けにした。
 
歌がうまいとか、身体能力が高いとかいったプレイヤーはたくさんいるだろう、しかし単にそれらの具体的な基準を超えた、人をひきつけるパフォーマンスを行うアーティストとしてコータのステージングは特筆すべきものだといえる。そのことを十分認識している久雄佑一はしっかりと彼をバックアップし、彼が吐き出そうとする激情を何倍にも増幅していった。この2曲でもうすっかり快進のICHIGEKIはライブを自分のペースに引きずり込んでしまった。その証拠に、続いた「本音ストリップ」では、猛烈なモッシュすらフロアに引き起こし、会場に膨大な熱気を巻き起こした。その様子に満足したように、3曲を終えるとコータが、キメの一言を叫んだ。「Thank you!俺らが快進のICHIGEKIじゃあ!!」
 
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「今日も後悔しないように暴れ狂っていってくれよ!」吐き捨てるようにコータが観衆に語り掛けた。その言葉は彼が一番伝えたかったこと、彼らが日々感じている「今日しかない」「今しかない」と考え、その瞬間を真剣に生きようとする思いをのせていたように見えた。その思いを継承しが荒々しくもタイトなリフを流すと、ステージは「斬り込み戦隊ブシデンジャー」からさらに深い快進のICHIGEKIワールドへと突入していく。まるで尻を叩くように喝を入れる佑一のリズムに、ロックファンなら誰もが大喜びする荒々しい久雄のギターサウンド、そして中央でしなやかに、瞬間に空間を貫くような鋭さを見せるコータのパフォーマンス。
 
コータが歌いあげる詞に心踊らされる観衆たち。その詞は、荒々しいサウンドの中でもしっかりと聴く側にまで抜けて、観衆の気持ちをしっかりと揺り動かしていった。ワイルドなサウンドに合わせてアバンギャルドな荒々しい気持ちを歌った節もあれば、ポップで親しみやすい言葉を敢えて選んだ詞もありと、彼らの曲は表現の幅が広い。そんな内容がライブでもしっかりと耳に届くのだから、聴く側がじっとしていられるはずがない。
 
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ステージは中盤に入り、ワンマンライブならではの趣向も見せ始めた。彼らのナンバーとしては古いものとなる曲をセレクトしたメドレーでこのセクションは始まった。「一気にバンバンバンとやっちまうから!お前たちついて来られるか!?まあ知ってても知らなくても、拳(こぶし)を上げていれば済む話よ。お前ら、いけるか!!」親しみのある雰囲気を要所に漂わせながらも、ここぞというところで声を荒げるコータの一言は、会場を必要な時に一気に盛り立てる力がある。この時彼によって投げかけられたその言葉で、フロアの観衆はまたも気持ちを奮い立たせられ、暴れることをやめようとはしなかった。かと思えば、続いたバラード「四季」では、ウットリするようなメロディと優しい情景を現したような雰囲気で会場を優しく包み込んだ。
 
そして最後のスパートを掛ける前に、この日会場に駆け付けたファンやバンド仲間たちへの礼を告げるコータ。そして、合わせてバンドのスタッフに向けての感謝の気持ちを語りながら、最後の一撃となる言葉を吐いた。「俺らこんなんでゴメンな、俺らこんなだから毎日胃が痛えだろうな。でも俺たちはどんな時でも、どんなお偉いさんが来ようがクソ喰らえなんだ!お前たちも快進のICHIGEKIのライブを見てえだろ!?」「Yeah!」「そう、そこなんだよ!思う存分暴れて帰れよ!いいな!」「Yeah!」それは汚い言葉だったが、それだけに彼らの内にある真の思いがフロア全体に伝搬した。その思いを受け止めた快進ソルジャーたちも身構えた。2012年最後の大暴れをする覚悟を決めたようだ。
 
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「3歩前に来い!」「かかって来いや!」「おい!拳を下げるなよ!」なおも観衆を鼓舞するコータ。ますます激しさを増すビートに観衆たちの気持ちが重なっていく。ステージもいよいよクライマックス。「もっと生きる力を見せてみろよ!?Are you Ready!?」最後に問いかけるようにコータが観衆をあおると、彼と観衆しっかりと息を合わせてその言葉を叫んだ。「音座芸夢、スタート!!」彼らの奥の手ともいえるキラーナンバー「音座芸夢」、そしてラストナンバーの「SHURABA音頭」へ。ラストの一音まで渾身の力を込めるようにプレイし続けた彼ら。そしてこの日を迎えたことに対する感謝の気持ちとともにキメの一撃を観衆とともに打ち込んだ。「最強のロックバンド、それは俺たちのこと。今日その名前を頭に叩き込んで、口に出して帰れよ!We are 『快進の』!?」「『ICHIGEKI』!!」「We are 『快進の』!?」「『ICHIGEKI』!!」「We are fuckin’『快進の』!?」「『ICHIGEKI』!!」そしてその壮絶な戦いにも幕が下ろされた。
 
鳴りやまないアンコールに応えて登場したのは久雄。「いや~今日はどうも殿様(コータのこと)の気性が荒くてねえ…でも同意です!俺らロックバンドだもんね!しょうがないよ!見せつけるしかないよ!」冷静にふるまいながらも、コータと同じ思いでステージに臨んだことを明かしながら、合わせてこの日の感謝の思いを伝えた。アンコールは久雄が奏でる叙情感たっぷりのギターアルペジオから始まった「共存」でスタートした。歌を歌うというようりも、何か思いをぶつけるように言葉を吐いていくコータ。最後まで戦いの姿勢を貫く彼の「かかって来い、快進ソルジャー!」という一言とともにラストの「メガギガテラタリラ」へ。さらにセットにはもともと予定されていなかった2ndアンコールへ。こうしてこの壮絶な戦いもようやく終幕を迎えた。
 
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◆ ライブ情報:
2013年03月19日(火) 【東 京】渋谷 CHELSEA HOTEL
2013年03月22日(金) 【愛 知】名古屋 ell.SIZE
2013年03月26日(火) 【東 京】渋谷 Star Lounge
2013年04月07日(日) 【東 京】目黒LIVE STATION
2013年04月14日(日) 【東 京】渋谷eggman
2013年04月19日(金) 【愛 知】名古屋ell.FITS ALL
2013年04月22日(月) 【千 葉】LOOK
2013年04月23日(火) 【埼 玉】熊谷HEAVEN’S ROCK VJ-1
2013年04月24日(水) 【栃 木】宇都宮HEAVEN’S ROCK VJ-2
2013年04月26日(金) 【埼 玉】さいたま新都心HEAVEN’S ROCK VJ-3
2013年04月27日(土) 【東 京】六本木morph-tokyo
2013年05月17日(金) 【大 阪】心斎橋Clapper
2013年05月25日(土) 【愛 知】名古屋 ell.SIZE
2013年05月31日(金) 【東 京】渋谷 Star Lounge
2013年05月05日(日) 【千 葉】柏 PALOOZA
◆ 公式サイト:
http://k-ichigeki.com/

 
◆セットリスト:
M01. 絶体絶命の愛の結晶
M02. 大人子守唄
M03. 本音ストリップ
M04. 斬り込み戦隊ブシデンジャー
M05. 英雄娘
M06. 的なbaby
M07. MASAKAレボリューション
M08. 舞唄舞魂
M09. メドレー
(ドラマスカイ~官能サバイバルストーカー~ライライライ)
M10. 四季-喜怒哀楽-
M11. キラキララ
M12. 江戸っ恋Honey B
M13. バイバイダンサー
M14. 音座芸夢
M15. SHURABA音頭
 
Encore
E01. 共存
E02. どんでん返スキャンダル
E03. メガギガテラタリラ
 
2nd Encore
E04. マドンナ

本編ラストにプレイされた曲「SHURABA音頭」の一節にはこんなことが歌われている。「閻魔サマお願い教えて 『人生とは何ですか?』 そんな答えあるわけない 三途の川に捨てて来いよ」不安の蔓延した世の中で、快進のICHIGEKIのメンバーは今が大事、今この瞬間を真剣に生きることが大切と説いた。コータは翌日に迫ったマヤ歴の世界滅亡説を、たわごとと一笑し叫んだ。「俺ら別に伝説のバンドなんて興味ねえんだ!そんなのただの思い出じゃねえか!俺は今しかねえんだよ!おめえらにも今しかねえんだよ!伝説なんて、クソでも喰らっちまえよ!」一見、退廃的ではあるがそうは聞こえない。彼らはこの日このステージで真剣に生きている姿を見せ、それを叫んだ。
 
快進のICHIGEKIには「江戸前四重奏」というキャッチフレーズがある。和的なスタイルにそれは象徴されているが、日本語で書かれた詞にある強い思いの中にもそれじは感じられる。武士、戦い、生きることへの執着。真剣な思いを表現したその歌に込めた思いは、彼らのライブでこさらに明確に映える。一件ユニークに見えるタイトルの数々からは想像できないほどに、ストレートで真剣な思いをじかに感じ取ることが出来るだろう。既に始まった新たな戦いにも、自身の強い思いで勝ち続けていくことを期待してやまない。
 

快進のICHIGEKI『其の四』
発売中
MCIC 0003/0004/2,500円(税込)
収録曲:
CD1
M01. 暴奏セッション
M02. 華々しくパラリパッパ
M03. MASAKAレボリューション
M04. キラキララ
M05. 赤色の生命
M06. 欲しがりまshow勝つまでは
M07. Public Enemy#1
M08. 君にBANG!
M09. 斬り込み戦隊ブシデンジャー
M10. 少年ダイナマイト
M11. 本音ストリップ
M12. Public Enemy#2
M13. 居合斬り三重奏
M14. 前を向いて歩こう
M15. SHURABA音頭
 
CD2 -ACOUSTIQUE-
M01. サンキューバイバイ
M02. 大人子守唄
M03. 四季-喜怒哀楽-
M04. ビューティーラバーStyle
M05. 人類デストロイヤー
M06. 乳母車
(※通信販売及びライブ会場での直販のみ)

 

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