LAGOONについて、自分はこれまで「母娘で共感できるバンド」(参照:【連載】新譜るLIFEダイアリー LAGOON「Rhapsody In White」、「女性に人気のガールズバンド」(参照:【レポート】Girl’s UP!!! vol.170)という形容をしてきた。と言って男性からの人気も当然あるわけなので、つまるところ「国民的ロックバンド」なのだが、それにしてもなぜ同性からの支持をこれほど多く集めることができるのだろう、とずっと疑問を抱いていた。
2008年10月にSCANDALが「制服を着た女子中高生バンド」としてメジャーデビューして以来、2010年代には”ガールズロックバンド”が多数デビューし、それは高校の軽音楽部ブームとも相まって、ライブハウスシーンにも波及した。音楽性やパフォーマンス、売り出し方法は多岐にわたるが、メジャーに対してのカウンターカルチャーになることはなく、サブカルチャーとして、”多様化、細分化された中の一部”にとどまっているのは否めない。そうした状況を尻目に、たくさんのアイドルがメジャーシーンを席巻。結果的に、バンド側がアイドル側に寄せていく、或いはアイドルへの楽曲提供、アイドルライブでの生演奏という関わり方で活路を見出すミュージシャンも増えたが、そうした戦略の結果としてライブハウスに目をやると、男性ファンが圧倒的大多数を占め、ともすればライブステージより終演後の物販の方が盛り上がりを見せている…という状況さえある。
そんな2010年代の音楽シーンに彗星のごとく現れたのが、LAGOONだ。華々しいデビュー、アリーナ規模でのライブと話題に事欠かなかったが、その中で着実に10代~20代女性の支持を拡大し、2016年に入るとライブハウスでの定期公演も始めるなど、多岐にわたる活動を展開してきた。「可愛いだけじゃない」、性別を超えて支持を広げるLAGOONの魅力とは? 2016年6月25日(土)に東京・原宿アストロホールにて行われた東名阪ワンマン『LAGOON Presents 「1st LIVE HOUSE TOUR 2016」』の東京公演初日を取材した。
◆LAGOON メンバー:
MIORI(Vocal)、AMI(Guitar)、NANA.(Bass)、YUKINO(Keyboard)、yuri(Drums)
午後4時半、開場。すし詰め状態のフロアを見渡すと、「原宿に買い物に来た」といういで立ちの女子が多く見られる。中にはヒールの観客もいるが、フロアの後方に陣取っているのでまぁ大丈夫だろう。
午後5時、暗転と同時に手拍子が起きる。大歓声の中、NANA.(Bass)、yuri(Drums)、AMI(Guitar)、YUKINO(Keyboard)、そしてMIORI(Vocal)の順にメンバー登場。涼しげな衣装だ。セッティングも早々に、ドラムが4カウント。快走するギター。1曲目は「サヨナラ」。2016年6月発売の新譜『僕たちの毎日が永遠になる。』収録曲だ。躍動感あふれるピアノ。MIORIはお立ち台に上り、波打つフロアに両手を広げて笑顔を振りまき、歌い上げる。その様はビーナスのようだ。
軽快な手拍子に乗せて、2曲目「KNOCKED-OUT BOY」へと続く。高橋久美子(ex.チャットモンチー)とMIORIが歌詞を共作した、パンチのある楽曲。NANA.がフロアを煽ると、MIORIはお立ち台に腰かけて歌う。その佇まいはミュージカルを観るようだ。「すごくすごくすごく会いたかった、トーキョー!」会場の熱気をさらに高めつつ3曲目、アダルトなダンスロックナンバー「プラチナのシークレット」へ。AMIのカッティング、そしてyuriの刻む音がライブではいっそうクールに聴こえて楽しい。そうしたクールな音に乗せて、MIORIは一点を見つめながら…なのに全方向の観客を掌握し、全身で、全員を魅了する。これほどの表現力を持ったボーカリストは国内には稀有だと思う。
4曲目「Red eye~1人の時間が教えてくれたこと~」ではYUKINOの鍵盤が冴える。マイクスタンドを持ち、クールに歌うMIORI。この曲ではボーカルにスポットを当てすぎず、ハードな演奏を前面に出し、”ボーカルも楽器の一部”という印象だ。いわゆる「オケ歌唱」の「ボーカリスト」のポップなライブとは対極の空間。女優・瀧本美織が歌ってるキュートな女の子バンドでしょ、くらいの予備知識で初参戦した観客は、これには度肝を抜かれたことだろう。