連載

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HEAD PHONES PRESIDENT 『RESPAWN』
TEXT:栗林啓

HPP0041年7ヶ月ぶりの初台DOORSでのワンマンライブで本格的に活動を再開させたHEAD PHONES PRESIDENT(以下:HPP)の『Realize』に続く6thアルバム『RESPAWN』が7月23日にリリースされた。ゲーム用語で「(ゲーム内で死んだキャラクターなどが)生き返る」を意味する“Respawn”にちなんで付けられたそのタイトルは、まさに再始動を果たした彼らにふさわしい。このアルバムは、かなりタイトなスケジュールの中で製作されたとのことだが、そのタイトさが逆にバンドの結束力と集中力を生み、素晴らしい作品へと昇華されている。全8曲と昨今のアルバムとしては少なめの印象だが、前作までのスタイルを踏襲するものから、初期のテイストを感じさせるもの、さらには今までにない新機軸を打ち出した楽曲もあり、バラエティに富んだ8曲が収録されており、とても充実した内容となっている。
Until I Die
荘厳なシンセとギターリフが印象的な曲。サビのANZAのキャッチーながらも切なく心に響くメロディはまさにANZAならではのもの。メジャーとマイナーが行ったり来たりする展開の中で繰り出されるHIROのメロディアスなギターソロも秀逸。この曲はMVにもなっており、シンプルでスタイリッシュな映像になっているが、ストーリー性を感じる興味深いMVに仕上がっているので、是非一聴をお勧めする。また、HIROの手による「Until I Die」のギタープレイスルー動画も製作されているので、HIROのテクニカルなギタープレイに興味のある方は是非ご覧いただきたい。(https://youtu.be/4q0Xue9mGSg
Fucking Day
ヘヴィで激しく、勢いのあるパンキッシュな曲。サビの部分は変わった感じなのに聴きやすいという、さすがHPPと思わせる展開が特徴。
I’m Not You
変拍子がアクセントとなって独特のヘヴィなグルーヴを生み出している。キャッチーなサビからフュージョンテイストなギターソロに移っていく展開が秀逸。
For You
山本“KID”徳郁に捧げられたという(インタビュー参照)、NARUMIのメロディックなアルペジオの美しいイントロが印象的な曲。ギターソロでテンポチェンジしてガラッと変わっていくダイナミックな展開が非常に興味深い。
Devil Inside Me
ANZAの情熱的なヴォーカルが特徴的な曲。効果的に使われているシンセのアレンジがヘヴィな曲にさらに深みをもたらしている。コーラスの掛かったNARUMIのメロディアスなベースも印象的。
Respawn
トライバルなリズムパターンやシタールが使われ、HPPの初期のテイストを感じさせる楽曲。プログレッシブロックを想起させるNARUMIのグルーヴィーでメロディアスなベースが素晴らしい。
Echo
「Respawn」から組曲的な流れで、イントロのヘヴィなリフからいきなりギターソロへと展開する。サビのANZAの歌声からシンセにつながって終わる流れは、幻想的で興味深い。
Life Goes On
BATCHの手による今までのHPPにはないテイストのバラード。今までの彼らにはなかった要素をHPPのものとしてしまう彼らのアレンジ力はさすが。
 


 
HPP001◆リリース情報
HEAD PHONES PRESIDENT / RESPAWN
1. Until I Die
2. Fucking Day
3. I’m Not You
4. For You
5. Devil Inside Me
6. Respawn
7. Echo
8. Life Goes On
発売日:2019年7月24日
価 格:¥2,500+税8%
発売元:RADTONE MUSIC
販売元:株式会社FABTONE


 
アルバム発売の前日、7月23日に新宿のロックバーRock Inn DICEにてニューアルバム『Respawn』のリリースパーティーが行われたが、そのリハーサルの空き時間にメンバー全員とインタビューを行い、ニューアルバムに関していろいろな話をたっぷりと語ってくれた。
 
HPP301—いよいよ明日(7月24日)ニューアルバム『RESPAWN』が発売となりますが、現在の心境をお聞かせください。
 
HIRO:こんなに駆け足でアルバムを製作したのは記憶になくて、先月のワンマンライブでもつい最近なのに、先月レコーディングしてライブの前日(6月20日)がマスタリングでしょ?おかしいでしょ?って感じ(笑)。
 
ANZA:1ヶ月前はそんな感じでしたね(笑)。
 
HIRO:マスタリングが終わったら即プレス工場で、めちゃくちゃ慌ただしくて、いよいよ明日発売だって感じではないです。今までの作品では、みんなの反応はどうかな?みたいなドキドキ感はあったんですが、今回はないです(笑)。
 
NARUMI:本当に今回は時間がなくて、マスタリングが終ってから発売まで1ヶ月。マジで時間がなくて、あんまり記憶が無いくらい忙しかったです。もっと時間よこせみたいな(笑)。3ヶ月は欲しいよな。リリースできることはできるけど、1ヶ月はやり過ぎ。やらない方が良いと思います(笑)。
 
—次回からの教訓ということで(笑)。その分凝縮したものが出来上がった感じでしょうか?
 
NARUMI:プロモーションの時間があったら、もっといろんな動きが出来たのになぁ。
 
HIRO:確かにそういった意味でのスリリングさはありました。生き急いでいる感じというか(笑)。
 
NARUMI:製作自体はものすごい短期間でやって、そのまま怒涛のプロモーションに入って、今年に入ってからの記憶があんまりないです。2019年明けて、令和ってなに?みたいな(笑)。
 
BATCH:あっという間に来ちゃった。もう明日か?っていう感じ。
 
ANZA:今回だけじゃなく、HPPって毎回CDをリリースする時には何かしらトラブルが起きるので、私はまたか?って感じで。そもそもこんなに時間がなくなる予定じゃなくて、本当は歌録りが終わって、ミックスからマスタリングの予定だったんだけど、エンジニアさんのスケジュールの都合でワンマンライブの前日になっちゃって、本来なら余裕があったはずだけど2週間ぐらい何も出来ない時間があって、それで時間がないんだったらメンバーが自分たちでできるプロモーションをNARUMIを筆頭にアイディアを試してみようと。「HEAD PHONES PRESIDENTからの挑戦状」とか。(https://youtu.be/MuqcwSB2IqI
 
—謎の男のヤツですね(笑)。
 
ANZA:謎の男、誰だか分からないですけどね(笑)。ほんと誰だか分からないですけど(笑)。今まではスタッフ任せだったものを、メンバーが一人ひとりが限られた予算の中で、何か自分たちでできるものはないかと考えられたので、ものすごい大変だったけど、私たちとしてはこの短期間で得られたものは大きいし、メンバーがやることをきちんとやってくれたので、意味はあったと思います。
 
—この後イベントにてアルバム全曲聞かせていただく訳ですが、新作の聞きどころがあれば教えてください。
 
HIRO:今回の製作では「For You」が一番印象に残ってまして、U2というかアイリッシュテイストのバラードなんですが、出だしはそんな感じで始まりつつ途中のギターソロで急にドライブ感ましましのご機嫌なソロになるという。そこのプレイの組み立てがめちゃくちゃ難しかったです。個人的には一番苦労した曲なので、そこを聞いて欲しい感じですね。
 
NARUMI:「For You」のギターかな?(笑)あの曲にこんなソロ入れるか?みたいな。さすがHPPっていうところなんじゃないでしょうか?(笑)。
 
HPP302HIRO:まあ、そうだよね(笑)。
 
NARUMI:あんなご機嫌になるとは?っていう(笑)。俺、レクイエムと思ってて作ってて、神聖な感じをイメージしてたと思ったらご機嫌なギターソロが入ってて(笑)。でも、みんないいって言うからいいんだろうなって。
 
HIRO:一番最初のテイクを渡した時に『GUITARHYTHM』(編集部註:布袋寅泰の1988年のアルバム)じゃんって(笑)。
 
NARUMI:『GUITARHYTHM』感が凄かった!(笑)
 
HIRO:Tomoyasu Hoteiテイストが凄かった(笑)。最初にプレゼンしたやつは完全にもう『GUITARYTHM』で、その時これはちょっとやり過ぎなんだと思ってちょっと変えたのが今のヴァージョンです。そういう経緯がありました。
 
—BATCHさんの曲が入るんですよね?
 
ANZA:HPPBATCHが加入してから何曲かは実は書いてくれてはいたんですが、採用になったのは初という。BATCHが骨組みを書いてくれた曲は「Life Goes On」といって、この前の復活ワンマンライブの時に絶対に歌いたいと思って。
 
BATCH:ANZAが自由に歌える曲が欲しくて作りました。
 
ANZA:骨組みの段階ではどシンプルで、ギターもBATCHが頑張って弾いてくれていたんだけど、「Life Goes On」の骨組みができて、私がメロディを入れてHIROたちの所に送ったんだけど、全然着手してくれなかったんですよ。その時はHIROが「Until I Die」を仕上げるのに何ヶ月も掛かっていて、それまで放置されていたんです。MVの撮影が終わるか終わる前かの頃に「できたから聞いて」って、聞いてみたら随分変わっていてなんかすごくいいじゃんって(笑)。
 
HIRO:どうせあんまりかっこよくないんだろうと思って聞かなかった、うそうそ(笑)。
 
ANZA:失礼な!ほんとこの人失礼なんです(笑)。HPPのアルバムでは最初の曲と最後の曲はすごく重要で、それま今までのアルバムでもそうなんだけど、この曲は聞く人からするとすごくキャッチーな曲に聞こえると思う。メロディがすごくキャッチーだし。さっきの「For You」ってメジャーキーで、メジャーキーの曲って今まであまりなかったと思うけど、おそらく今回の聞きどころって言われた時にまた進化したでしょ?って感じ。
 
—「Life Goes On」は独特の空気感で今までのスタイルとは違うっちゃ違うけど、やっぱりHPPだなって。さすがですよね(笑)。
 
ANZA:それは嬉しいですね(笑)
 
HIRO:ANZAさんが歌えばどんな曲でもHPPですから(笑)。
 
ANZA:来年20周年になるんですけど、この1年7ヶ月はこれまでの19年間活動した中で唯一休んだ期間で、リリースやアコースティックライブはありましたけど、ライブをしない1年7ヶ月という期間は、我々にとっても重大なことだったんですね。個々には活動していたけれど、HPPの音楽から離れてみて初めてできた8曲なわけで、おそらくあるべき曲なんだなと。変に話し合った訳でもなくみんなが好きに作ってくれた曲。今まではHIROが全部骨組みから作ってくれてたけれど、今回はNARUMIが数曲作ってHIROそしてBATCHの曲、メンバー一人ひとりが曲を提示してくれてできたアルバムで、もちろんアレンジはHIROがやってくれてはいるけど、19年も掛かってやっとバンドになったというか、HPPは当然バンドなんだけどよりバンド感が出たんじゃないかなって。私はライブをやるとどうなるかなって楽しみで、ライブヴァージョンでは変わる訳だし。休んでいる間にHIROがソロ活動を頑張ってくれたお陰で、今まではHPPに出し惜しみしてたものをめちゃくちゃ出してる(笑)。今度のアルバムはベースとドラムが主役みたいなところもあるけど、負けずに弾きまくってますから(笑)。
 
ANZA:「For You」は山本“KID”徳郁さんへのNARUMIの強いメッセージのある曲で(編集部註:KIDが主宰しているジム「KRAZY BEE」においてNARUMIANZAKIDに師事していた)、歌詞もNARUMIから出てくる歌詞の思いが強すぎて悩んだりしたけど、今まではあんまりそんなことはなかったんですが私はレコーディングの時一発録りで1回しか歌ってないんです。でもギターソロがご機嫌で(笑)、初めて聞いた時は「やってくれたなコイツ」って思ったんですが、KIDさんが飛び蹴りでKOしたヤツあるじゃないですか?(編集部註:2006年5月3日HERO‘S‘S対宮田和幸戦で開始4秒で左飛び膝蹴り蹴り一発で失神KO勝ちした試合)あのシーンが浮かんできちゃったから、HIROがどういうつもりで書いたかは知らないけど、ハマってるじゃんって(笑)あと「I’m Not You」。私は変拍子の曲はやめてくれって散々HIROに頼んでいるのにまた性懲りもなく書いてきやがって(笑)。
 
HIRO:やめてくれって言われてないよ。
 
ANZA:やめてくれって言ったよね?私たちね?
 
HPP303—HIROさんお得意のやつですね(笑)。
 
ANZA:お得意の変拍子を入れてきやがったんですよ(笑)。
 
NARUMI:ANZAがすごいオレに言ってきたんですよ。全然歌えないんだけどHIROにどう言えばいいの?って(笑)。
 
ANZA:BATCHにも言ったじゃん?あの曲どうやって歌ったらいいのか分かんないんだけどって。
 
NARUMI:5拍子だとすんなり聞けないから、歌聞いてても気持ち良くないなって。
 
ANZA:結構難しくって。だけど、ギターソロはイカれてるんですよ(笑)。それも聞いて欲しいし。「プログレの館」(http://www.beeast69.com/news/beeastinfo/172889)に出させていただいた影響で(笑)。うまくなんとか1曲できましたけど、ライブでできるかどうか?休んでいた間に個人が色々と培ってきたものがちゃんと集約されたかな?経験してきたものがちゃんとまとまったんじゃないかな?っていう感じがします。聞きやすさはもちろんあるけど、HPPの新しい幕開けにふさわしい進化したアルバムだと私は思います。だからライブが楽しみです。
 
—ワンマン、ダスクフェス、名古屋公演と3本ライブが終わりましたが、久々に4人でライブをした感想は?
 
ANZA:意外と普通で。
 
—この前のワンマンライブでは、すごく楽しそうなのが伝わってきましたよ(笑)。
 
ANZA:なんかみんなにそれを言われてて、特にNARUMIBATCHがニコニコだったらしく、私は必死だったんだけど。
 
NARUMI:アイコンタクトをしているときはどちらかが間違えている時です(笑)。
 
ANZA:らしいですよ(笑)。
 
NARUMI:アイコンタクトが多いってことは、ミスが多いってことで(笑)。
 
ANZA:私は別に間違えることがダメな事だとは思ってなくて、以前はアイコンタクトさえもできる余裕がなくって、それができるようになったのは休んで逆によかったな、無駄じゃなかったなって。私は歌えるかどうかより体力が持つかどうかが心配で(笑)、名古屋ではすごい動けてたらしく、よしよしと(笑)。年取った割には動けてたかな?それから、またロングスカートに戻したんですけど、動けば動くほど大きく見えて、そこは戻してよかったかなと。ライブは、さすが19年もやってるバンドだけあってすぐに戻るんだなって。
 
—すごいコンビネーションがよかったです。やっぱりいいバンドだなって思いましたよ。
 
ANZA:単純に楽しい(笑)。
 
—それがすごく伝わってきましたよ。
 
ANZA:今までは雰囲気や世界観を大切にしなきゃいけないバンドだったけど、なんかみんな顔が緩んでて(笑)写真とか見ててもみんな顔が緩んでて、穏やかな顔をしてる。ダスクフェスの写真はまだメリハリがあるんだけど、まだ楽しいっていうのが勝っていて、これからどうなるんだろう?って(笑)。
 
—最後にファンの方々へメッセージをお願いします。
 
ANZA:1年7ヶ月お休みをいただいて、皆さんには寂しい思いをさせてしまったかもしれません。来年の20周年に向けてその第1弾となるアルバム『RESPAWN』ができましたが、来年につながるいい作品になったと思います。また、ライブの本数自体は少なくなるかもしれないけど、HPPにしかできないイベントをやっていきたいと思っています。まだまだ若いものには負けませんぞということで(笑)暴れていきますので、ぜひぜひよろしくお願いします。ライブ会場でお会いしましょうという事で、ありがとうございました!
 
—ありがとうございました。


 
◆ライブ情報
HEAD PHONES PRESIDENT『RESPAWN』リリースイベント
■日時:2019年8月23日(金)OPEN:19:00 START:19:30
■会場:dues新宿
■イベント内容:アコースティックライブ&私物サイン会
https://diskunion.net/metal/ct/news/article/4/81545
 
大阪公演
■日時:2019年8月30日(金)
■開場/開演:OPEN 18:00/START 18:30
■会場:VENUE 大阪・心斎橋Varon
■チケット:前売TICKETS / 当日券TICKETS:¥2,500 / ¥3,000(+1Drink)
■予約:イープラス 7月20日10:00~発売 https://eplus.jp/sf/detail/3033030001-P0030001


 
HEAD PHONES PRESIDENT Official HP
http://headphonespresident.com/
HEAD PHONES PRESIDENT Official FACEBOOK
https://www.facebook.com/headphonespresident/
HEAD PHONES PRESIDENT Official Twitter
@HPPofficial


 
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【連載】新譜るLIFEダイヤリー:HEAD PHONES PRESIDENT『REALIZE』
http://www.beeast69.com/news/rockinfo/161917