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黒木渚「虎視眈々と淡々と」
TEXT:まりな

孤独というのはどういうことだろう。身の回りに友達や恋人がいることだけで孤独ではないとは言えない。
そんなことは関係なく心の芯から独りきりに見える人もいて、黒木渚はその類の人間だと直感していた。
 
あわせて自分の為すことに確固たる自信を持ち、その精神からは清高さすら感じられる。カリスマ的存在、例えるならばジャンヌダルクだ。
 
鮮烈なソロデビューを果たした1stフルアルバム『標本箱』から9カ月、待望のニューシングルは収録されている曲全てが生命力の溢れた、力強い意志を持っている。
 
「体ひとつ女ひとり、虎視眈々と淡々と」
 
まるでたったいま心に決めたことのように、唐突に歌いだす表題曲「虎視眈々と淡々と」は特に今の黒木の決意を表した曲だと思う。
 
なんといっても彼女の一番の魅力は文学チックな歌詞であり、前作では曲のそれぞれが一つの物語になっていてその多様さに驚いたものだが、今回は自分自身の物語としてより抒情的に書かれている。
 
「世界で一番暗い場所は 人間の黒目の中にある」
「世界で一番素敵なのは いつもさよならの中にある」
 
人間の真理を、文字という限られたツールでここまで美しく情味ある組み合わせに出来るのは、学生時代から読書や絵画に熱中してきた黒木だからこそと言えよう。
そんな歌詞を飾るのは疾走感のあるストリングスの演奏だ。忙しなく、様々なことが起こり続ける世の中を表現しているかのように狂騒的でもある。
 
 
二曲目に収録されている「ピカソ」はまるで童話だ。「君」に語りかけるようなリフレインが強く印象に残る。曲間に子供の声を入れたり、童謡のサンプリングを用いるなど今までになかったアレンジもされている。
 
三曲目「ようこそ世界へ」この曲は激しく鳴り狂うドラムに、難しいことをあえてしないシンプルなギターサウンドの正統派なロックチューン。歌詞は生々しくドロっとした表現があるのが黒木らしい。しかし、全体的に陽で暖かい雰囲気の曲だ。
 
アコースティックアレンジにより、魅力的な歌声を改めて深く感じることが出来る最後の曲「大本命」は、切実ではあるが押しつけがましくない、ひとり言のような彼女の願いが込められている。
 
総じて彼女の歌は孤独であるが、それは決して独りよがりではなくリスナーにも語りかけてくれる。
まだソロとして走り出したばかりの黒木の魅力を、彼女の気高い主張に惹きこまれながら今後さらに感じていくことだろう。
 

 


 
◆リリース情報
黒木渚 3rdシングル「虎視眈々と淡々と」
2015年01月21日(水)発売
限定盤:LASCD-0057 / ¥2,484(税込)
 ※黒木渚 × POWER PLACE デザイン 木製鹿オブジェ(ジュエリーツリー)付き
 封入特典:CD購入者対象の黒木渚書き下ろし小説特設サイトへのQRコード付き
通常盤:LASCD-0058 / ¥1,296(税込)
<収録曲>
M01. 虎視眈々と淡々と
M02. ピカソ
M03. ようこそ世界へ
M04. 大本命

 
◆ライブ情報
レコ発ワンマンツアー ”虎視眈々と淡々と”
・2015年03月28日(土)【仙 台】enn 2nd
・2015年04月11日(土)【東 京】東京グローブ座
・2015年04月19日(日)【大 阪】JANUS
・2015年04月26日(日)【名古屋】ELL
・2015年05月03日(日)【福 岡】DRUM Logos
 
◆黒木渚 オフィシャルサイト
http://www.kurokinagisa.jp/
 


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